キャパの十字架

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (335ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163760704

感想・レビュー・書評

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  • 報道写真史上もっとも有名なロバート・キャパの「崩れ落ちる兵士」。スペイン内戦の重要な記録だが何処で、何時、そして誰がどんな状況で撮ったのか?疑問に思うことを徹底的に追及する著者の姿勢に脱帽する。すべてにうなずけるわけではないが内容には説得力がある。

  • キャパの代表作の真実を巡る旅

    あまりにも熱心な為に、途中で真実なんてどうでもいいような気にもなったけど、この本の締めくくりにはホロリとさせられた。

    沢木さんのキャパに対する愛情を感じたし、優しい人だと思う。

    人は見えるモノに騙されやすい
    FBの写真でさえ、それらしい文章がつくだけで、人は簡単に騙されてしまう。
    真実と違っていても、「いい話ならそれでいい」と言う人もいる
    「そうだろうか」と私は思う。
    キャパはそんな大きな波に飲み込まれてしまった1人なのかもしれない。
    あまり、よく知らないロバート・キャパについて、もっと知りたくなった。

  • さすがに沢木耕太郎だと思わせる一冊。キャパという題材えらびは彼に対する思い入れの深さ故だろう。それに綿密な取材、確かな裏どり、現地へ足を運ぶことたびたび。一つずつ確証を積み重ねて、真贋を解き明かしていく。一枚の写真をこれほど多方面から検証するのも沢木ならではだろう。そして最終的にこれまで、賛辞を得てきた「崩れ落ちる兵士」の真実をみごとに「崩れ」落としていく。読み応えのある1冊だ。

  • 「崩れ落ちる兵士」の真贋を突き止めるべく、多くの写真を検討し、撮影地を訪れ、専門家への聞き込みをしながら、推論を重ねていく。
    少しずつ真実に迫っていく様は、じつにスリリング。
    ノンフィクション、ドキュメントに類する作品で、ここまで引き込まれることは滅多にない。 
    P325の一枚が心に残った。 背景を知る事で、一枚の写真がこんなにも色々なことを語りかけてくるとは…。
    今まであまり意識してこなかったけど、写真てすごいな。

  • 勇気ある検証をした本でした。ひとつの写真の真実について、撮影したカメラや場所を特定して、再現してみるなど長い期間をかけて調べています。写真についたタイトルやコメント次第で、真実とはかけはなれた背景を持たせてしまうことがあるんだと思いました。

  • 写真家ロバート・キャパの代表作”崩れ落ちる兵士”について感じた違和感を追求し、キャパの出世作となったこの写真について、克明な調査をすることにより、キャパにとって重い十字架ともなった写真に隠された秘密を明らかにしていく。
    キャパ、写真について深い造詣がある方にはかなり面白いのではないかと思うのですが、私は理解不足。
    面白い? うん、面白いことは面白かった。

  • 几帳面で理詰めなレポートは沢木さんらしく、
    良い仕事をされたと思う。
    同時にキャパに対する思いもひしひしと感じた。
    写真の検証を、文章で理解するのに少してこずる。
    そういう意味では NHK スペシャルも観てみたかった。
    岡本太郎さんや逢坂剛さんのお名前には不意をつかれた。

  • 伝説的な戦場カメラマン、ロバート・キャパ、そして彼の手になると伝わる傑作「崩れ落ちる兵士」を題材としたノンフィクションです。各地で話題になったのでご存じの方も多いでしょう。

    内容的には非常に興味深い。「崩れ落ちる兵士」にまつわる話題は数多いですが、かなり突っ込んだ議論を展開しています。その結論に賛同するにせよ反対にするにせよ、本書でなされた指摘を無視することは困難でしょう。その意味では、キャパに限らず写真に興味のある方なら必読といえます。

    特筆すべきは文章の見事さ。名手・沢木耕太郎の手になる文章は練達のそれであり、達人的ともいえる業前を見せています。才気頼みでも経験によりかかったのでもない文章の冴えは優れたベテランのみが持つものといえましょう。その意味でも読んで損のない一冊かと。

    お勧めです。

  • キャパの『崩れ落ちる兵士』について、その信憑性を検証している。本当にキャパが撮影したのか?ヤラセでは?などなど。

  • ロバート・キャパ決定版という写真集と並行して読んでみました。
    本書は小説ではなく、キャパの「崩れ落ちる兵士」という一枚の写真についての謎解きのようなものでした。
    「崩れ落ちる兵士」スペイン内戦時代に撮られた写真ですが、これまでも何度か何人かにより、その真偽を問われた問題多き写真だそうです。
    それは、これは本当にキャパが撮ったものか、とかこの状況で本当にこんな写真が撮れるものなのか等々。
    要するにそれだけ、この写真が真に迫った優れた一枚だということです。
    それを今回沢木さんが謎解きをされるというものですが、う~ん私はっきり言って、どうでもいいです。キャパが撮ったというのならそれでいいし、同じ日に撮られた写真を前後つなぎ合わせたり、背景に目を凝らせたり・・・面倒くさいです。
    よって、本なかば、ぱたんしました。

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著者プロフィール

1947年東京生まれ。横浜国立大学卒業。73年『若き実力者たち』で、ルポライターとしてデビュー。79年『テロルの決算』で「大宅壮一ノンフィクション賞」、82年『一瞬の夏』で「新田次郎文学賞」、85年『バーボン・ストリート』で「講談社エッセイ賞」を受賞する。86年から刊行する『深夜特急』3部作では、93年に「JTB紀行文学賞」を受賞する。2000年、初の書き下ろし長編小説『血の味』を刊行し、06年『凍』で「講談社ノンフィクション賞」、14年『キャパの十字架』で「司馬遼太郎賞」、23年『天路の旅人』で「読売文学賞」を受賞する。

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