やわらかな生命

  • 文藝春秋 (2013年8月9日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784163765600

作品紹介・あらすじ

つよく、しなやかで、やわらかい生命のありようを語ろう――。

人気生物学者の思索を集めた最新エッセイ集が登場です。



生命は細かいパーツにわけていけば、機械のようなものなのか。

いや、生命を構成するパーツには重複性があり、可変性がある。余剰があり、融通無碍で、遊びがある。生命の特性は、その自由度、すなわち「やわらかさ」にあるのだ――。



硬軟自在、ときに美しく、ときに軽妙な筆はますます冴えわたります。

学びとは何か。記憶とは何か。芸術とは何か。

まさにアートとサイエンスをつなぐがごとく、一見多様なテーマが次第に生命の自由さという大きな主題に集まってゆき、気づけば読者を深い思索へといざなってゆくでしょう。



健康診断の「糖尿気味」の意味、夢の長寿薬の正体、肥満の仕組みなどの日常的な話題に意外な光を当てる。そういえば電波って何? GPSってどうやって働くの? 充電池ってどうやって電気をためるの? 身の回りに存在する科学をあらためて解き明かし、光より速いニュートリノ、金環食などの科学のニュースも、誰よりもわかりやすく読み解きます。中でも山中教授のiPS細胞とノーベル賞受賞の話題の解説は、福岡ハカセ自身の研究分野が近いこともあって、出色の明快さです。

深く、色鮮やかな光彩に満ち満ちた、やわらかな生命の「動的平衡」の世界を、身構えることなく楽しめる好著です。

感想・レビュー・書評

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  • 文春に書いたエッセイをまとめたものらしい。1回分3-4P。こういうのはだいたい、他の記事に混じってちらっと読むから面白いのであって、まとめて読むとスパイスだけ無理やり食わされたような気分になるものだが、さすがの福岡先生、面白かった。

  • まあ面白いが、結構知っている事も多いかな。

  • 興味深いエッセイ。
    以前に口演を聞きに行ったことがあるけれど、お話より文章のほうがスッと入り込んでくるように思う。
    夢中になれることがあるって素晴らしい。
    あ、これ面白そう!
    と思ったら躊躇せず突き進めば、さらにおもしろいことが待っていそうだなぁ。

  • 週刊文春に連載されたコラムをまとめたもの。
    ひょっとして、表紙写真は粘菌の子実体では?と思っていたら、案の定。
    コラムでも粘菌の話題が幾度も登場する。
    そしてやはりいつも通り、昆虫の話、動的平衡の話、レーウェンフックの話、フェルメールの話に何度もかえっていくのだが。
    う~ん、やっぱり福岡先生のエッセイは基本いつも同じだよな、などと思いつつ、でもそれぞれ3ページ足らずの短い各コラムでありながら、不思議といつも惹きつけられセンス・オブ・ワンダーがくすぐられ、福岡ワールドへいざなわれるのだ。

    多田富雄氏の能の話、ジョブズのハーバードでのスピーチの話が特に印象的。思わずすぐYoutubeで全スピーチを確認してしまった。

  • もくじ

    第一章 日常と生命
     明日への充電
     生命は機械か
    └生命は単なる機械ではない。生命を構成するパーツには重複性がある。パーツ構成にも可変性がある。余剰があり、融通無碍で、遊びがある。生命の特性はその自由度にこそある。
     生命のリベンジ
    └生命現象が時間の関数である。生命は時間とともにリベンジを開始する。平衡が動く。
     不寛容は、年齢とともに、ますます寛容を失いがちになる。
     アクセル&ブレーキ
    └ブドウ糖とヘモグロビンが結合したものがHbAlc
     ヒトをずっと苦しめてきたことは飢えである。アクセル役のほうが得意。
     肝心なはなし
    └クワシオコワ(アフリカ飢餓地域で腹部が異常に膨れる病気)の原因は、・離乳が早く主食イモになると糖質は多くタンパク質が不足・肝臓はタンパク質不足により脂質の運搬ができず脂肪肝となる
     綿をふく女

     too good to be true
     電波って何?
     低山は安全?
     「進歩と調和」の跡
     シンプルな均衡

    第二章 野生と生命
     集合!
     トンボの体位
     あこがれの高級ゼミ
     どっちが先輩?
     血の濃縮
     生命の年輪
     粘菌・3つのナゾ
     神さまは昆虫がお好き
     落下運動の楽しみ
     真夏のスキーヤー
     かわいいだけじゃない

    第三章 科学と生命
     世界は分けても……
     脳が見ている
     大発見か、トンデモか
     日食と地球食
     肥満の遺伝子
     ”最恐”の読
     世紀のキリ番
     戦友
     もっとも尊敬すべき研究者
     新品に戻る辞典
     人は何でできている?
     シジフォスの労働

    第四章 色彩と生命
     ハカセ、館長になる
     街の記憶
     「発見」の発見
     信じたい心
     フェルメールの青、北斎の青
     生命の色
     赤い話
     ロング・ウォーク
     メタボな建築
     日本のガウディ
     定足数
     水のない井戸
     夢の長寿薬

    第五章 地図と生命
     地図で旅する
     地図のない道
     本が呼んでいる
     娼婦か、貴婦人か
     水上の幻影
     色の振動
     点と点をつなぐ
     しごとがしてある

    第六章 学びと生命
     源流と河口
     日高さんのカンアオイ
     「記憶」の正体
     iPS細胞と「わたし」
     動く大広間
     M、Ex、VG、G
     コレクターの祝祭
     デベロップメント=「開発」?
     ドラえもんは生きている・
     勝利の理由
     神様降臨
     始まりの季節
     学びという旅路
     人生のプレゼント

    あとがき

  • 「動的平衡」の福岡伸一ハカセの本です。
    これは、週刊文春に載ったエッセイをまとめたものですね。
    あいかわらずこの人の文章は美しく、読みやすく、面白いですね。
    エッセイ集なので、何か一つのテーマについて書いたものではありませんが、それでもさまざまな生き物たち(含ヒト)の生き様が語られます。
    たいへん良い本でした。

  • やや繰り返しになるが、
    それなりにおもしろかった。

  • この本には、生命のあいまいさ、しなやかさ、やわらかさを感じられるエピソードがちりばめられています。
    科学は細部へ細部へと分析を進めてきたけれど、細胞のレベルにまで降りると、プロの研究者ですら、ヒトとサルの区別がつかなくなること、私たちはありのままの世界を見ているのではなく、見たいと思っているものを見ている、目でものを見ているのではなく、脳がそれを見ているのだということ、スーパーマーケットの食材売り場においしい匂いが漂っていて心魅かれたら、実は、赤外線センサーで人の往来を感知し、おいしい香りを霧状に噴霧する道具があること、電波ってなに?重さもなく媒体もいらないのに二点間をつなぐなんてまるでテレパシー?「記憶」の正体って何?胃袋がなくなったら他の部位が代わりに働く、などなど。
    読んでいると、生命、というものが、とてもとても魅力的で可能性にみちた粘土細工のような気がしてくる本です。

    私なんてどうせこんなもんだ、と後ろ向きになったときにいい本かもしれません。福岡さんは、生命ってものそのもののやわらかさや可能性をまるごと肯定してくれます。生きていることを肯定できます。

  • 福岡先生の文春連載のエッセイ集。

  • 読書録「やわらかな生命」3

    著者 福岡伸一
    出版 文藝春秋

    p240より引用
    “福岡ハカセが言いたいことはいつも、とて
    もシンプルである。みなさんには、なにか一
    つ自分が好きなことがあるでしょ。”

    目次から抜粋引用
    “日常と生命
     野生と生命
     科学と生命
     色彩と生命
     地図と生命”

     生物学者である著者による、生命と世の中
    の出来事との関わりを綴ったエッセイ集。
     電化製品の充電についてから再びのアメリ
    カ生活への出発についてまで、詩的で情感
    たっぷりに記されています。

     上記の引用は、学びについて書かれた話で
    の一節。好きこそものの上手なれ、好きであ
    る好きでいることが出来る、それこそが才能
    であるとは、岡田斗司夫氏の「プチクリ」で
    書かれていたように記憶しています。
    好きで打ち込めるものが、幸運にも世の中の
    流れと合っていれば、とても幸せな人生をお
    くれることでしょうね。
     柔らかな小説を読んでいるような、そんな
    雰囲気のいい一冊です。

    ーーーーー

  • 【生命の色「青」はなぜ人工的に作り出せないのか】人気生物学者の最新作。日常の食、健康から芸術、機械文明まで、科学的かつ叙情的に解き明かす筆致が、色鮮やかな生命の世界に誘う。

  • 週刊文春で読んだ記憶のあるものもあったが、まとめて読むとまた面白い.博識だ! 興味を持って読んだのは、ピルトダウン人の話し.何時の時代も捏造はあるのだ.サラブレッドの話も、昆虫の話も奥が深いと感じた.

  • 福岡先生の週刊文春の連載エッセイを集めたもの。こうしてみると、同時期に執筆された他の著書の素描であったり、背景であったりということに気付きます。福岡先生の関心のうつろいを追うことができるように思います。

  • 福岡先生、表の華やかさの割に学会では冷遇されてる・・

  • p87
    ネオテニーという言葉がある。幼形成熟と訳される。
    ネオテニーの例としてよく取り上げられるものに、ウーパールーパーがある。
    ヒトは、チンパンジーの幼い時に似ている。つまりヒトはサルのネオテニーとして進化したというのだ。なかなか魅力的な仮説だと思いませんか。
    p100
    まさにarXiv(アーカイヴ)は、インターネット時代の玉石混交新発見発表の場となっているのである。
    p132
    秩序は無秩序の方へ、形あるものは崩れる方へ動く。エントロピー(乱雑さ)増大の法則である。時間の矢はエントロピーが増大する方向にしか進まない。
    p174
    アグレッシブに生きれば自らを傷つけてしまう。消極的に生きれば外部から攻め込まれる。スキをつくるのだ。

  • 週間文春のコラムをまとめたもの。一話一話が福岡ワールド。
    でも、「生物と無生物のあいだ」、のようなスリリングな感じが好みかな。

  • 知的好奇心を満足させてくれました。

  • 生きるって何か、ロジックを知りたい方にオススメ

    ・宮沢賢治の「わたくし」という生命自体について

    わたくしという現象は
    仮定された有機交流電燈の
    ひとつの青い照明です

    など、読むと凄いと感動します。勉強になりました。

    私個人が「なるほど」と思ったところは、付箋、折り曲げがあります。

  • 大好きな作家、福岡伸一さんのエッセイ本。週刊文春連載していたをまとめ直して出版したらしい。ただ、ボクにとっては、ちょっと物足りなかったかな。『動的平衡』や『生物と無生物のあいだ』の方が刺激的だった。

    この本で気になった福岡さんの一言。

    ===================================================
    「わたくし」という生物は、モノとしてみると、それは物質の集合体である。これは近代科学がずっと追求してきた生命観でもある。しかし、生命はモノでできてはいるけど、むしろその本質はモノものものではなく、モノとモノがどのように交信し、相互作用しているかという、その有機的な関係性にある。つまり生命とは、淡く明滅を繰り返す、一回限りのかそけき現象にすぎない。生物学者として私がようやくたどり着いたこの事実に、宮沢賢治はずっと最初から気づいていた。『春と修羅』は次のようにはじまる。

       わたくしという現象は
       仮定された有機交流電燈の
       ひとつの青い証明です

    ===================================================

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著者プロフィール

福岡伸一 (ふくおか・しんいち)
生物学者。1959年東京生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学医学部博士研究員、京都大学助教授などを経て、青山学院大学教授。2013年4月よりロックフェラー大学客員教授としてNYに赴任。サントリー学芸賞を受賞し、ベストセラーとなった『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)、『動的平衡』(木楽舎)ほか、「生命とは何か」をわかりやすく解説した著書多数。ほかに『できそこないの男たち』(光文社新書)、『生命と食』(岩波ブックレット)、『フェルメール 光の王国』(木楽舎)、『せいめいのはなし』(新潮社)、『ルリボシカミキリの青 福岡ハカセができるまで』(文藝春秋)、『福岡ハカセの本棚』(メディアファクトリー)、『生命の逆襲』(朝日新聞出版)など。

「2019年 『フェルメール 隠された次元』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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