あかんやつら 東映京都撮影所血風録

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163768106

感想・レビュー・書評

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  • 東映京都撮影所の興亡を俳優、スタッフ、東映の重役等々をからめて記した本。著者はまだ30代と若い人のようだが、よくこのような古めかしい場所に興味を持ったものだと感心。本文はもちろんだが、あとがきにも著者の思い入れが十分表現されててよかった。なんか「仁義なき戦い」や「トラック野郎」が観たくなった。

  • 力作です。10年以上の取材に基づき、日本映画愛・時代劇愛・東映愛にあふれています。
    清濁併せのむというか、ほとんど濁ってる感の東映映画ですが、松竹はじめ、他社もえげつない歴史があったようですね。
    「東映京都撮影所血風録」という副題はえらい大げさだなあと思っていたのですが、読みすすめると決して大げさではないと思えてきます。

    大川博、岡田茂と言った東映の歴史を作っていった人たちは、とかくダーティなイメージを持ちがちだったのですが、特に岡田茂にという人については、新たな認識を持つことができました。

    スター達の伝説については、これまでにあちこちでエピソードが語られてきているのですが、わりと初見のものもあり新鮮でした。
    そして、スターの影に隠れることの多かった裏方たちの、それに優るとも劣らない武勇伝の数々も飽きさせません。

    牧野省三から始まる東映という会社の流れが、今ひとつ分からなかったのですが、本書では非常にわかりやすく赤裸々に描かれます。

    素晴らしい創造も多々ある中、昨今の中韓をパクリだなんだと言ってる人たちにも認識してほしい、どこも一緒だよというようなパクリ体質。バイタリティの発露と一言で片付けられない赤面事。薄々気付いてはいましたが、ここまでだったとは。
    「宇宙からのメッセージ」とか、今見てもかなり恥ずかしい映画です。

    私は昔一度だけエキストラとして東映京都撮影所に行ったことがあります。
    俳優会館で衣装をもらって、ロケバスで京都の山の中に連れて行かれました。
    その件の詳細は割愛しますが、その当時は当然時代劇も任侠路線・実録路線も過去の栄光であり、テレビ時代劇がそこそこ作られていた時代です。

    しかし、あの独特の雰囲気は忘れられず、はまってしまったら抜け出せない麻薬のような空気を感じたことは覚えています。

    東映と言えば、あの泥臭さしかイメージできない世代としては、昨今の良く言えば洗練された、悪く言えばボツ個性的な「相棒」シリーズとかは違和感しか感じません。とても「温泉みみず芸者」を作っていた同じ会社とは・・・。

    映画好きはぜひ一読を。電子書籍化と望みます。

  • かつて日本の時代劇映画をささえた東映京都撮影所の栄枯盛衰.膨大な取材で映画にかけた男達の涙と笑いを描ききる.

  • 本書は東映の一大盛衰記なのだが、他の映画会社ではなかなかそうはいかないエピソードに事欠かない。
    その結果、東映だけが突出して面白い会社になってしまう。
    読んでて思ったのはとにかくよく調べている。

    時代劇がなぜダメになって任侠映画が何故隆盛を極めたのか、そこにはちゃんと理由があり、エピソードで語られるように
    そこには撮影所長岡田茂の武勇伝、大川博社長の滅茶苦茶さ、旧時代的な労働環境体制や武勇伝、ヤクザとのやり取り、とても映画会社とは思えないのだが、
    それはこの会社でしか、成しえない物が確かにあったわけだ。
    しかし、読んでわかるがとにかく無理に無理を重ねた結果であり、表面上は華やかに見えてもやはり歪んでいる。その歪みこそが魅力的に映る要素であるが、本人たちはいい思い出だったかもしれないが私は決していたくない現場である。

    なかなか面白く読ませてもらいました。

  • 映画作りに賭ける命懸けの情熱に半ばあきれつつも感動!読みながら見てない作品は見たくなり、見ている作品ももう一度見たくなりました。

  • 自分が21~22(1991~1992)の頃、大阪のイマジカで働いていた頃を思い出した。社員の方はみんな京都人で、京都弁が飛び交う職場だった。フィルムの時代は終わろうとしていたが、京都の東映撮影所はまだ終わらない。

  • 東映京都撮影所 という魔界に生息する映画人を通して、東映映画の歴史を描いた記録。

    近代映画史の中で、黄金時代を築いた太秦撮影所。そして、マキノ一族、岡田茂、時代劇、任侠もの、深作欣二。その全てが、ギラギラしていて映画が好きだ。
    そんなドロドロした匂いが感じられた。

  • とにかく痛快!

  • ブログに掲載しました。
    http://boketen.seesaa.net/
    当たる映画だけが、いい映画

    映画はあくまでも商売。
    当たる(売れる)映画(商品)だけが、いい映画(商品)。
    みもふたもない。

    高尚な理想や芸術論はくそくらえ。
    俗でけっこう、下品で上等。
    粗製乱造の製作現場は、まるでブラック企業なみの長時間低賃金労働。
    疲れたら看護婦がヒロポンをうちにくる(当時は覚醒剤は合法)。

  • 面白かった。
    私が映画や映画界に興味を持っているせいも
    あるだろうが、とても読みやすくわかりやすい。
    電子版が出たら買いたい。
    タブレットに入れて常に持っていたい本。
    たびたび読み返したくなる本。
    しみじみとした気持ちで2時間ドラマに出ている
    渡瀬恒彦を見てしまうのはこの本を読んだ者の中で
    私だけだろうか。

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著者プロフィール

映画史・時代劇研究家。1977年東京都生まれ。日本大学大学院博士後期課程修了。映画界を彩った俳優とスタッフたちのインタビューをライフワークにしている。著書に『時代劇聖地巡礼』(ミシマ社)、『天才 勝新太郎』(文春新書)、『ドラマ「鬼平犯科帳」ができるまで』(文春文庫)、『すべての道は役者に通ず』(小学館)、『時代劇は死なず! 完全版』(河出文庫)、『大河ドラマの黄金時代』(NHK出版新書)、『忠臣蔵入門 映像で読み解く物語の魅力』(角川新書)など多数。

「2023年 『時代劇聖地巡礼 関西ディープ編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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