宇宙が始まる前には何があったのか?

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163768700

作品紹介・あらすじ

「種の起源」に匹敵! 宇宙論のパラダイムシフト無からなぜ有が生まれたのか? 最先端の量子物理学は宇宙誕生の謎を解明しつつある。宇宙は平坦だった、加速膨張する宇宙、2兆年後はすべての天体が姿を消す、、。「種の起源」にも匹敵すると賞賛された全米ベストセラーとなった本書は、コンパクトなサイズなのに、脳みそを鷲づかみにされるような濃密さに満ち満ちています。 科学翻訳の第一人者・青木薫氏による奥深く精密な文章と大胆な解説もお見逃しなく。目次まえがき 宇宙は無から生じたはじめに 何もないところから、何かが生まれなくてはならない第1章 いかに始まったのか?第2章 いかに終わるのか?第3章 時間の始まりからやってきた光第4章 ディラックの方程式第5章 99パーセントの宇宙は見えない第6章 光速を超えて膨張する第7章 2兆年後には銀河系以外は見えなくなる第8章 その偶然は人間が存在するから?第9章 量子のゆらぎ第10章 物質と反物質の非対称第11章 無限の未来にはあとがき リチャード・ドーキンス訳者解説 青木薫

感想・レビュー・書評

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  • 先日読んだ「量子革命」の訳者、青木薫さん繋がりで読んでみました。難しいのは難しくわからないのはわからなままなのですが、「量子革命」ほど数式や理論が複雑ではなかったのでそちらよりは読みやすかったでしょうか。

    私自身は神や創造主というものについては考えませんが、精神世界とか超常現象には興味があるほうです。
    「科学と宗教」の論争はもう何百年も昔からあることの
    ようですが、科学者の話も宗教者の話も私にはどちらの言い分も面白く感じられます。

    本書のようなずばぬけた知識の持ち主が、真面目に様々な事象の様々な論を戦わせ、かつそれを私たちのようにそれ程の知識もない者に理解しやすいように噛み砕いて解説してくれることは、とてもありがたいことと思います。

    宇宙のこと、量子のことなんて何も知らなくても生きていけますが、自分が知らない知的世界を日々生きている人を知ることは自分のスケールの小ささや大きな視点や自分とは違うものの見方を知る良い機会だと思っています。

    「われわれは量子的な無から生まれた」という言葉、そして今私たちの生きている時代が宇宙観測をするうえで稀有な時代であるという事実、二兆年先には今の時代のような宇宙観測は出来なくなるだろうという話には言葉にならないような壮大さを感じました。

    先日読んだ「量子革命」の知識も少々役に立ちました。
    次に読むべき物理の話は「ヒッグス粒子」と「ひも理論」かな。
    何の知識もないから理解できないでしょうけれども(笑)

  • #3518ー135ー341

  • 『利己的な遺伝子』のリチャード・ドーキンスが「『種の起源』に匹敵する、宇宙論のパラダイムシフト」というタイトルであとがきを書いている。さすがにそれは言いすぎの感はあるが、最新の宇宙論をベースにして、宇宙の「起源」について解説した力作である。

    原題は、”A Universe from Nothing”、つまり「無から生まれた宇宙」、ということになる。そして副題は、"Why there is something rather than nothing"。正確には、本文でワードの選択を間違えたと書かれている通り、ここで重要なのはWHYではなくHOWと考えるべきである。「いかにして、何もないのではなく、何かがあるようになったのか」というHOWを本書では問題にしている。この問いに対して著者は、「(無という)言葉の意味そのものが、かつてのそれとは変わっていること、そして「何かある」のと「何もない」のとのあいだの区別が消滅しつつあることを踏まえて、新たな観点から捉えなおさなければならない」としている。量子宇宙論の世界では、「無」の定義は「何もない」ということと同じではないのだ。「無から生まれた宇宙」ー 著者が量子宇宙論の第一人者であることを踏まえると、大変に知的好奇心が刺激されるタイトルである。

    アインシュタイン以降、宇宙の姿に対するわれわれの認識は大きな進歩を遂げてきた。宇宙の姿を描いた理論として、古くは膨張する宇宙とその開闢を規定したインフレーション理論があるが、最新の宇宙理論はさらにその先を問い続けている。最近の歴史的発見により、ヒッグス粒子・ヒッグス場の存在がほぼ証明されたが、これらの宇宙観測物理の成果によって、量子宇宙論がさらに洗練され、その正確度が上がってきている。本書で紹介されている理論を少し挙げると、

    ・WMAP衛星を使った宇宙のマイクロ波背景放射測定からわかった137億2千万年という宇宙の年齢(有効数字4桁で判明しているらしい!)
    ・天体物理学の観測から裏付けられるダークマターの存在(99%の宇宙は見えないらしい)
    ・宇宙の曲率がゼロであること(宇宙が無から生じたことを示しているらしい)
    ・宇宙は今も光速を超えて膨張している(したがって、遠い未来には隣の銀河も見えなくなっているらしい)
    ・場の量子論からわかった真空のエネルギー(真空はエネルギーを持って揺らいでいて、常に物質・反物質を生み出しているらしい)
    ・自発的対称性の破れの理論(らしい)

    特にその中でも本書で注目されているのが多宇宙論(マルチバース)である。「(多宇宙論は)単なる可能性にとどまらない。それどころか、現在の素粒子論研究を牽引する重要な説はすべて、マルチバースを必要としているように見えるのである」という。多宇宙論は、科学者がおそらくは避けたいと思っている人間原理に容易に落ちてしまう恐れがあるが、量子論の側からも宇宙論の側からもサポートされている理論となっている。

    本書は最新宇宙理論を扱うため難しい内容を含んでいる。それを補うために、たとえば重要なポイントになっている真空のエネルギーや自発的対称性のやぶれについては新書ながら丁寧な解説の好著『真空のからくり』(山田克哉著)が参考になるだろうし、多田将さんの『すごい宇宙講義』などもあわせて読むと理解が進むと思う。少なくとも自分にとってはとても参考になった。
    また多宇宙論に限れば、サスキンドの『宇宙のランドスケープ』も長いけれどよいだろう。リサ・ランドールの『ワープする宇宙』やブライアン・グリーンの『隠れていた宇宙』もひも理論の観点から多宇宙論を支持している内容の本だ(本書の著者のローレンス・クラウスはひも理論をまだ確立した理論としては見ていないようだが)。

    なお著者は、無から宇宙が誕生したとの主張が、神を否定するものとして神学論争に巻き込まれたらしい。本文の中でもそのことは色濃く反映されている。宗教家からの批判に対して著者は、自らを積極的に反神論者と位置づけている。
    「「宇宙は、われわれが好むと好まざるとにかかわらず、あるようにある」。造物主が存在するか否かは、われわれの願望とは関係がないのだ。神もなく目的もない世界は、厳しく無意味に思えるかもしれないが、だからといって神が存在するという証拠にはならないのである」というのが神学に対する著者の態度だ。神の存在を全面否定しているわけではないが、ワインバーグの言葉「科学は神を信じることを不可能にするのではなく、神を存在しないことを可能にするのである」を自らが賛同する主張として引用する。そして、本書の最後を「どちらのシナリオでも、全能という神でさえも、われわれの宇宙を作る際に自由裁量の余地はなかったということになりそうだ。...そんな神ならいてもいなくても同じなのである」という言葉で締めるのである。

    この神の存在に対する論争の経緯を通して、分野は違えど同志として筋金入りのアンチ宗教の進化生物学のリチャード・ドーキンスがあとがきを書くこととなったようである。この辺りの神学者、宗教者との議論は、日本で育った日本人としては、まったくナンセンスな議論に感じるが、アメリカではかなり実際的な問題であるようである。このような問題に対応しなくてはいけないというのはある意味で大変不幸なことのように思う。

    なお、訳者は青木薫さん。訳者紹介で、「科学書をもっとも美しく訳す訳者としてファンは多い」と紹介されている。そんなふうな紹介をされる翻訳者は見たことない。という自分もファンのひとりである。
    青木さんは、本書のテーマに重なる『宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論』という本も出していることもあり、今回も読みやすかった。何より信頼がおける。また、これからもいい本を日本に紹介してほしい。

  • ビッグバンとか、「開いた宇宙」とか、暗黒物質とかの話までは何とかイメージしつつ読めました。でも、「量子の揺らぎ」とか「反物質」などの概念になると、ちょっと「??」。物理学の最前線を専門家でない読者に少しでも判りやすく伝えようとすると、簡略化し過ぎるが故に返って判りにくくなってしまうのかもしれない。でも、一般読者にそのような知識を知ってもらいたいという著者の気持ち、小説みたいにある程度売れることが予想できる本とは違って売れるかどうか未知数なテーマのこのような本を出版した出版社の意思は素晴らしいと思う。できればこういう本が翻訳されるのではなく、日本人の著者による本を手に取れる機会が増えれば、積極的に理系を選ぶ子供たちも増えそうな気がする。

  • サイエンスの本、特に宇宙物理学や素粒子物理学に関する解説ものを時々読むことで、いつもとはまったく違って、イメージし難いものをイメージすることで自分の脳を刺激することができるのではないかと思っています。本書でもイメージできたり、全くピンと来なかったり。苦しみながらも楽んでいると言ったら良いでしょうか。 こういう読書も大切にしなければと思っています

  • 何もないのに何かがある。見えないものがひょんなことから見えてくる。その理屈はわからないけど小さな非対称から生じる事実は目の前の世界にある。静止しないこの空間にどう切り取れば事物の発端がわかるのか、大切なのはファクトよりも探究心に宿る。私たちは知りたい、まだわからない宇宙に好奇心を抱く。神を否定する先に万物を圧倒する力は存在する。

  • 途方もない。

    途方もないんだけど、そんな途方もない宇宙の中に僕は生きている。

    この宇宙は、生まれてから137億年だという。
    僕が生まれたのは47年前だからそれまでの13699999953年間(もちろん、そんな厳密なものではないが)、僕のいない宇宙があった。
    そして僕の死後も、僕のいない宇宙が遥かに長い時間続いていく。
    それが、今のところ高い可能性で現実。
    そういう立ち位置で、自分って何?生命って何?みたいなことを捉えたいと常々思っているのでこういう本を読んだりするのが好きなんだけど、そうはいっても宇宙スケールの話と自分スケールの話を一つの視野で考えることはなかなか難しい。

    しかし一つだけ、確固たる思いになりつつあることもある。
    それはこの地球上で、いま同じ時間に生きている人たちが、いかに愛おしいものかということだ。

    みんな死んでいくんだから、生きている間に精一杯愛したいと思う。


  • 難しい数式を省いて哲学的な問いを自身の研究とともに論じています。
    現在の理論に至るまでの歴史なども学べました。

  • ☆━━…‥・企画展示・‥…━━☆
        宇宙(そら)をよむ
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    宇宙の始まり「ビッグバン」。
    無からいかにして宇宙が生まれたのか、原初の宇宙の状態と宇宙からもたらされる証拠をもとに、その始まりについて論じる。

    ・‥…━━☆・‥…━━☆・‥…━━☆

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  • 専門的な内容が多いですね

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