天上紅蓮

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163805009

感想・レビュー・書評

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  • 「エロが物語世界から分離してしまった・・・ 」

    平安末期、藤原公実の末子で祇園女御の養女であった璋子(たまこ)は14歳で、62歳ながらその荒淫で知られた白河法皇の寵姫となる。法皇の愛欲の手解きを受けながら、その孫の鳥羽天皇の后となり、のち国母にまで登りつめた平安最後の華、待賢門院璋子の愛の物語。

     60歳を越えている白河法皇のエロっぷりがあっぱれです。白河法皇発案、やんごとなき深夜の蛍プレイ。日の本一の権力者の性生活はもうなんでもありだったんですねぇ…(溜息)

     孫のような少女を女にした白河法皇も凄いですが、彼に愛され尽くした璋子さんはその上をいっています。彼女は法皇にその愛の技の限りを教え込まれ、女性としては最上の性の悦びを与えられました。

     これを読んでいると、性交はあくまでもテクニックの問題で、男性の年齢とか容姿とかはあまり関係ないのか?と改めて妙なところに感心したりして。もちろんそこに細やかで深い愛情があることでその喜びは相乗するのでしょうけれど。

     すっかり法皇仕様の女体にされた彼女は、法皇の孫である鳥羽天皇の后となってもなお、呼ばれるがままに法皇のもとに通い、彼の思惑のままにあまつさえその子供を産むことになります。

     「法皇さまがおのぞみなら…」って、そりゃ彼女の立場ならそうなるのでしょうけれど、そこには時代のせいだけではない、何か飼い慣らされた女の罪深い無垢さや男のために思考停止になった女の愚かさの臭いがしてしまうわけです。

     そう感じるのは、本作品が平安の世が舞台の時代ものでありながらこと濡れ場のシーンになると、極めて現代ぽくなってしまっているためかもしれないです。千年前の男女が言わなかったと思うんですよね、「こんなの、初めて…」とか「ねえ」「やめて」「だめっ」とか。

     几帳の向こうで行われている情事をのぞいてみたら、そこには老練なエロ社長と新人の女子社員が絡み合ってたみたいな。たとえばこれが源氏物語のように本物の古典であったなら、例の蛍プレイのシーンもさぞかし趣があったのではないでしょうか。

     璋子と白河法皇の愛の物語は、官能的な小説で人気を博した著者には持ってこいの題材ではあったと思いますが、結果的にエロが物語世界から分離してしまっている印象が残りました。

  • 貧乏性なのでなんとか最後まで読んだけど、なんど止めようかと思ったほどつまらなかった。これは歴史官能小説という新しい分野の本だなw

  • 大河にアヤカってるよな……。

    うっかり本屋で見つけました。

    買ってはいませんが。
    いや、買うつもりもありませんが。

    一言で言ってしまえば

    讃岐院が生まれる元の話。


    一説に讃岐院は白河院のご落胤(この場合も落胤と言うのか?)という説が当時からまことしやかに流れていたわけですが(鳥羽院は信じていたようですがね。で、それが保元の乱の発端になるわけだけど)、


    それを小説にしてしまうほどの美談にするとはね!


    というのが素直な感想でしょうか。
    大河にアヤカってるのでしょうが、その大河が史上最低視聴率を誇っているとかなんとか……。
    アヤカりたくてもアヤカれないんじゃない?


    図書館にあったら読んでもいいかな、という程度。

    私は、崇徳院自身の話の方がよっぽど読みたい。
    天狗上等! そうなってまで呪わずにはいられなかった崇徳院自身の内面の方がよっぽど涙を誘うぜぇ~?(笑)

  • 前半は確かに物語だったのに、後半は史実の羅列というかなんというか。平安時代のやんごとない雰囲気に浸りたくて読んでるのに、所々に出てくる現代医学考察が邪魔。医者だかなんだか知らないけど月経周期なんかいちいち数えるな。

  • 渡辺淳一らしく、歴史物と言っても男女間となる。白河法皇と待賢門院のモラルなき繋がりだが、権力者には何でも出来るのかって空しさだなぁ、平安時代の無節操と無駄を描いた作品?この続きが今NHKでやってる平清盛の時代になる。しかし、天皇、上皇、法皇と覚えきれねぇ~(爆)
    まぁ、庶民感覚で読むと、羨ましくも何ともなく面倒で呆れるし共感部分なし。身勝手な言い分ばかり目立つ。

  • 残念ながらまったく面白くない。

  • 平安の時代を少し感じられた
    エロい

  • 白河法皇とその寵愛を受けた璋子の物語。
    48歳差か・・・最近も年の差婚とか多いケド、権力や財力にモノを言わせているだけでしょ。

  • 白河法皇と養女・璋子の愛を描いた作品。
    今の大河ドラマに出てきた年の差カップル。
    白河の側室・祇園女御に子がなかったため、5歳で養女として引き取られた。藤原北家の閑院流の公実の末娘。実母は堀河天皇の乳母。
    祇園女御が元は人妻で白河が略奪したのだったとは。やれやれ。
    白河は20歳で天皇に。天皇だった時代に中宮を亡くした後に荒れたが、10年ほどは祇園女御で落ちついていたのだったが…

    可愛がられた少女が花開いていき、15の頃には相思相愛に。
    法皇はこのとき63歳。
    この作家でこのテーマならこうもあろうかという予想&期待にはまあ違わないでしょう。
    当時の人にしては妙に現代的な知識や感覚も混じっているけど。

    50代で死ぬ人が多かった時代。
    治天の君として権力を誇った白河が60過ぎて燃え上がった恋。
    自分の最愛の女性を国で最高の地位につけようと考え、しかも璋子の最初の子だけは自分の子を、と望む。
    作家は肯定的に恋の情熱を描いていますが、この悪魔的な発想が世を乱す元となったのでは。それが恋?!
    孫に当たる鳥羽天皇はいい迷惑…
    といっても、自分を天皇にしてくれた祖父には逆らえず、年上で美貌の璋子への敬慕もあったらしい。

    後に崇徳天皇となる皇子はまあ白河の子なんだろうとは思ってましたが、ここまで作為的に行われたとは?
    その意図までは証明されてはいないのでしょうが、里帰りの時期は記録が残っていて、確かに異常に頻繁で、そう解釈も出来る。この頃妊娠したという研究まであるそう。畏れ入りました~。

    妊娠の度に璋子の安産を祈って大がかりな祈祷や寄進が行われ、貴族達も右往左往。
    すべて白河の仕切りで、鳥羽上皇は知らん顔だった。
    璋子は待賢門院という院号を与えられ、財産も出来て、白河鳥羽と共に出かけることを三院行幸などと言われた。
    3人で熊野詣でに行ったり、揃って行事に顔を出すことは珍しくなく、少なくとも一見した所は和やかだった。
    璋子は7人も子を産んでいて、おそらく3人目からは鳥羽の子。
    二の皇子、三の皇子の二人は病弱だったのが一番の気がかりだっただろうという。
    第四皇子は後の後白河。

    白河法皇が亡くなると、鳥羽上皇は別な皇后を立てたんですね。
    大河ドラマでは端折られていましたが、藤原氏の身分の高い37歳の女性。
    藤原家でも璋子とは別の家系と手を組むという意味でしょう。
    璋子が「自分は何とも思わないがこれは自分への嫌がらせだ」という意味の手紙を残しているとか。

    得子の隆盛に璋子がうつ状態になったため、得子の家族の何人かの役を解いたり追放するなどの処分を崇徳天皇がしたこともあったとか。
    鳥羽のほうが政治の権力を握ってはいるが、いったん天皇大権で決定すれば上皇といえどもすぐには覆せない。
    得子の家族に人も無げな振るまいがあったと察せられます。
    崇徳は母思いではあったのですね。

    尼になることを決めた後も、そのために新たな寺を建てる財政に不自由はなく、晩年は崇徳や娘のいる邸に身を寄せていたとか。
    穏やかな日々もあったのかな。

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著者プロフィール

1933年北海道生まれ。札幌医科大学卒。1970年『光と影』で直木賞。80年『遠き落日』『長崎ロシア遊女館』で吉川英治文学賞受賞。2003年には菊池寛賞を受賞。著書は『失楽園』『鈍感力』など多数。2014年没。

「2021年 『いのちを守る 医療時代小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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