ジュージュー

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (159ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163806501

作品紹介・あらすじ

下町の小さなハンバーグ店に集う、おかしな人たち。みんなちょっとずつ何かが欠けていて、つながりあって、ひとつの命になっている。世界の美しい色を回復させる、滋養たっぷりの小宇宙。

感想・レビュー・書評

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  • いつか死ぬことだって、それと全く同じ道な気がする。前にママがいるから、こわくない道だ。
    (美津子)

    あったかくなるお話。ブックス宮坂行って後にジュージューに食べに行きたい。

  • 漫画も歌も知らないけれど、なんとなくあったかい気持ちになれた。
    下町の雰囲気、田舎な感じ、近所中顔見知りであることの、重苦しさや気安さ。

    生まれた家で育ち、そこで働き、一生を終える。
    『店の外にはぼちぼちもう待っている人がいた。
    雑誌を読んだり、おしゃべりしたりしながら数人が立って並んでいる。
    いつもその人たちを見るとき、愛おしさで胸がつまりそうになる。彼らが「よし、今夜はジュージュー行くか」と玄関を出た様子を思うと、力が湧いてくる。私が運んで行く重いお皿をそのときからもう待っている人たち。』
    この感覚を大切にして、店に立ち
    焼きたてを丁寧に運んでくれる。
    そんなハンバーグがどれだけ美味しいことか。
    ジュージューが近くにあるお店なら、本当に行って食べてみたいと思う。

    『山、店、夕子。人生をこのみっつだけにする』
    進一の考え方も、しっくりきた。
    それがとても狭い世界で、特に若い内には嫌気がさすこともあるのだろうが
    いろんなことを乗り越えて、それはそれで大切で愛おしいのだということが
    わかってくる時期というものがあると思う。

    「あれは俺の親だけれど、俺の人生ではない」
    いくら言葉に出しても割り切れるものでもないだろうが
    自分の人生を生きることの大切さに、”子供”は気付くべきだ。
    出来れば、親も。

    嫌なことがあって億劫だったりするときこそ体を動かして
    そこにある悲しい記憶を”上書き”することの大切さ。
    早く上書きしてしまわないと、過去の記憶が膨れあがって
    とても立ち向かえないものになってしまう。
    更新することは必要だ。
    遺された人は、残された時間を生きていくのだから。

    あとがきにあった
    『人間は大地にはりついて、体という制限を持ちながら、寿命までせいいっぱい生きる生き物です。それはとても空しい、しかしすばらしいことだと思っています。』
    という言葉も、私にとっては理解しやすく、染みいる言葉だった。

  • ばななさんのお話を読むといつも、匂いといっしょに思い出す記憶達に出会う。言葉にしたかったあれこれ、今感じてること…限りがあるなかで生きていくこと。ハンバーグ店の娘に生まれた女の子の日常のあれこれのお話なのに、読むと幸せになる。なんだろう〜日常をゆっくり重ねたいとか主人公の気持ちに共感できるから特に今回よかった。読んでよかった〜。

  • 出産間近の読書。ハンバーグ屋“ジュージュー”の看板娘の主人公は最近病気で突然母を亡くし、一家でやっていたお店は母という灯りを失ってなんだか少し暗くなっていた。複雑な事情で親戚であり養子である進一は料理学校を卒業してジュージューで働いていた。進一は夕子さんという幽霊のように美しい女性と結婚しているが、昔は主人公と付き合い、猿のように毎日体を合わせていた。主人公は進一の子を身籠るが、進一のあまりの狼狽える姿にショックを受け流産してしまった過去がある。そんな彼女の新たな恋と、ジュージューという場所の魔法、夕子さんの妊娠への健やかな喜びを得ながら、彼女は光を放っていく。
    肉は食べられないけれど、ジュージューのハンバーグは美味しそうだ。

  • 彼女の新境地ではないだろうか。
    アマゾンの論評ではキッチンより軽いと書かれていたが、キッチンより世界観が格段に広がっている。
    決して軽くない微妙にこんがらがった人生を重くせずに生きている人達がいる風景が描かれている。
    あとがきにこうある
    昔、プリンスがほほに「slave」と書いていたときは、なにかの冗談か行き過ぎた風刺だろう、と思ったのですが、最近になってほんとうにわかってきました。あれは本気だし、本当だったんだ、私たちの自由は、あらゆる意味で奴隷の自由なのだと。
    カスタネダもそう言っていたし、とても多くの人がそのことに気づいています。
    「だから革命を」という主張ではなく、私はおとぎばなしに置き換えながら、奴隷の自由の無限の可能性を描きたいと思っています。
    人間は大地にはりついて、体という制限を持ちながら、寿命までせいいっぱい生きる生き物です。それは、とても空しい、しかしすばらしいことだと思っています。

    素敵。描き続けてくれい。でも、この文脈でカスタネダ?

  • みっちゃんの心に抱えるモヤモヤはきっと他の登場人物も、そして、生きとし生けるもの全てに当てはまる何かであり、それでもひたむきに生きることの虚しさ、力強さ、素晴らしさが小さなハンバーグ店にあったのだ。

  • 読み終わると、きっとあなたも洋食屋さんのハンバーグが食べたくなーるージュージュー

  • 読みながら話の情景や景色が目の前に広がって心地良い気持ちになりました。
    登場人物たちの心の繋がりや距離感が素敵です。
    話の途中で出てくる地獄のサラミちゃんも読んでみたいです!

  • 映画化したらいいと思う。

    小さな町のステーキ屋さんの物語。肉の話が多いのかと思いきや、店に携わるひと達の繋がりの物語。

    主人公は、家族や恋人、常連のお客さんなど、狭い世界の中で、自分の目の前に大切な物がたくさんあるって気づかせてくれる。

    特に幼馴染である元カレとの関係は、やっぱりどこかでつぐみを思い出させる。あのキラキラさがある。

    とっても心にジーンとくるシーンがたくさん。
    ばななさんの作品の中でも、かなり好きかも。

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著者プロフィール

1964年07月24日東京都生まれ。A型。日本大学芸術学部文藝学科卒業。1987年11月小説「キッチン」で第6回海燕新人文学賞受賞。1988年01月『キッチン』で第16回泉鏡花文学賞受賞。1988年08月『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞受賞。1989年03月『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞受賞。1993年06月イタリアのスカンノ賞受賞。1995年11月『アムリタ』で第5回紫式部賞受賞。1996年03月イタリアのフェンディッシメ文学賞「Under 35」受賞。1999年11月イタリアのマスケラダルジェント賞文学部門受賞。2000年09月『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞受賞。『キッチン』をはじめ、諸作品は海外30数カ国で翻訳、出版されている。

「2013年 『女子の遺伝子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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