氷山の南

  • 文藝春秋 (2012年3月26日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (552ページ) / ISBN・EAN: 9784163807904

みんなの感想まとめ

テーマは、青年の成長と多様な人間ドラマが織り成す冒険物語です。近未来の南極海を舞台に、アイヌの血を引く主人公が氷山を曳航するプロジェクトに参加し、様々な職業の人々との出会いを通じて自己を見つめ直してい...

感想・レビュー・書評

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  • 池澤夏樹の氷山の南、やっと読了。ハードカバー で547頁...。 なかなか一気読みというわけにはいかず、少しず つ大切に読み進めた感じ。 南極の氷山をオーストラリアまで曳航するという プロジェクト。そのプロジェクトに密航という形 で関わることになった少年の話。 読んでみて、ネットって面白いけれど、やっぱり 本には敵わないなとしみじみ思った。 今回、この本を家事の合間や電車の中や病院の待 合室で読んできたのだけれど、何処にいても一旦 集中すれば気持ちは直ぐに南極へ...。 ちょっとアブナイ? でも、GoogleEARTHやYouTubeでは味わえない自 分だけのリアル感。 主役のジンという少年。 なにかアクシデントがあった時にそれを人のせい にするのって一番楽で一番狡い行動と思う。彼は じゃあ自分はなにができる?なにしよう?と自然 に考えることのできる強い人間だと思う。なん か、いいなあ。 この作品、もし映像化することがあれば、ぜひニ ノに演じて欲しい。切望します。

  • 氷山の南

    池澤夏樹氏の久々の長編。南極の氷山をオーストラリアまで曳航してその水を灌漑に使うというプロジェクトの物語。主人公はアイヌの血を引く高校を卒業したての少年、仁。 仁はニュージーランドの高校を少数民族交換留学プログラムで卒業したばかりで、このプロジェクトを知り密航を決意します。密航が見つかりますが、同乗していたオキアミの研究者のアイリーンの助けも有り、船の壁新聞の記者と厨房の手伝いという資格で雇ってもらえることになります。新聞の取材を通して、プロジェクトの意義、科学的な方法論などが語られていきますが、池澤氏のことなので綿密な取材で実現可能性は充分検討済みなのだと思います。とてもリアリティのあるプロジェクトに感じました。
    さて、この物語にはいろいろな主題が織り込まれています。少数民族の問題、人類の人口問題、少年の成長と大人へのイニシエーション、そしてアイシストと呼ばれる組織を通じた人と自然を巡る哲学。
    冒険色や推理色をもっと強めた方が面白かったとは思いますが、リアリティとの折り合いを考えるとこれくらいが良いという判断でしょうか?
    いろいろと考えさせられることが多い物語でした。

    竹蔵

  • またもう一度読みたい!!
    すごく良い物語!!

    出てくる土地や、人、考え方、何もかもが魅力的!

  • これを「中日新聞」で連載途中から読み出して、私は池澤夏樹の小説のファンになった。
    今回、単行本を読んで、最初の部分がやっと読めて、ジンとジムの出会いもわかり納得。一年間続いたこれを毎日読んでいるときは、本当に毎日が楽しみだった。

    さて、お話は、アイヌの血をひくジンがニュージーランドの高校を出て、生き方を模索する中で、「氷山アラビア協会」の「シンディバード」という南極へ出発する船に密航する。
    生物学者のアイリーンに見つかってしまうが、仕事を2つ与えられ、いっしょに南極へ向かうことになる、という冒険小説。
    ジンに与えられたのは、船内新聞の発行と、厨房の助手。
    船には、氷山曳航計画を実行するスタッフ、船を動かすクルー、そして、研究者、という3種類の人間が乗っている。人種も年齢も性別も違う人が、長期間同じ船の中で生活するのだ。
     ジンがインタビューすることで、乗っている人の紹介や、この船の目的がわかってくる。
     この船は、南極の氷山を特殊な布で包んで持ってきて、それを融かして水資源として使うという計画をもっていた。
     その計画を「アイシスト」が妨害してくる。「アイシスト」は、「アイシズム」を信奉する者のこと。「アイシズム」は、氷を超越的な存在として拝める考え。彼らにとっては、その氷を経済活動の対象とすることに良い思いを持っていない。
     ジンは、氷山の表面近くに埋まっていた石を発見する。それは、46億年以上、宇宙を漂い、地球に落ちてきた隕石だった。彼は、それを彼のムックリと共にずっと身に着けることになる。
     彼は、その石に圧倒される。「これと対抗できる自分があるか?」

     ついに良い氷山がみつかり、それを包み運ぶ段階になって、ジムから「来い!」という手紙が届く。彼はいったん船から降りることになった。
     
     オーストラリアでのジムとジンと老アボリジニー、トミー・ムンガの過ごす時間が、彼の生き方に新たな道を作り出す。それは、アボリジニーの世界観だ。そして、それは、彼の中にあるアイヌの世界観でもある。
    トミー・ムンガはひたすら歩く。かれは、自分のカントリーをきちんとしたいのだ。それは、自分の部屋を綺麗にしておくというのと似ている。彼らが歩くトラックの網の目が大地全体にひろがっていて、かれらはそこの中で生きる。そして、踊る。
    カスタネダの「ドン・ファン」を思い出した。南アメリカのネイティブ・アメリカンと世界を模索する白人の話だ。それは、大地を裸足で歩き続ける人間の世界観かもしれない。

    そして、ジムは、絵を描く。彼はムックリを口にあてる。
    そして、ジンはジムを連れて「シンディバード」に戻る。
    新たな冒険が始まる。それは、また、新しい冒険だ。

  • なかなか面白く読めた。高校生くらいの若い人に読んでもらいたいお話。

    2009年9月から約一年にわたって連載された新聞小説。舞台は2016年の近未来。南極海の氷山をオーストラリアまで曳航して水不足を補うというプロジェクトに観察者として参加することになったアイヌの血を引く青年のビルドゥングロマンス。

    この手の小説は発表年が気になる。2011・3・11の前か後かで印象が変わる。

    氷山協会の船には言語や宗教の異なる多国籍の人が乗り組んでいる。職種は三つ、船のクルー・協会のスタッフ・南極海や氷山の研究者。会話は英語でおこなわれるようだ。

    主人公のジンはニュージーランドに3年留学している。その間に他国の人々と、意思を疎通させるスキルを身につけている。どうすればよいのか一つ一つ確認し、実行する。
    言語スキルのほかに、船では専門がものをいう。寒冷地の野外生活や山岳ガイドの経験、料理の腕など彼は船に受け入れられるために基本的な技術をあらかじめ持っていた。そのうえでの「お話」である。

    南極海、カーボンナノチューブ、地球温暖化、アボリジニ・アイヌの文化、航空機や船、宇宙といった広い話題について面白いトピックが続く。心理学や宗教についても語られる。

  • ぐいぐい読める、冒険小説。
    飽きさせない展開ってほんとに素晴らしいと思いました。

    17歳の青年が南極に向かう大きな船に密航するお話なのですが、船には色んな職業の様々な人たちが乗っており、人間ドラマをメインにして描かれています。海外ドラマでいうと「ギャラクティカ」に近いかもしれません。

    私が印象に残ったのはお話のなかで青年が自分の「仕事」を意識するところで、船の中の色んな職業の人と会い、青年はこれから自分が就く職業を意識する訳ですが、あー自分もこの時期にこういう出会いが出来たら将来への見方が変わったかもなぁとしみじみ思い返しました。

    あと、理系のお話が多くでてくるのも意外と楽しめました。荒唐無稽ではなくあくまで現実的なお話なところが、読んでて頭に入ってき易く、良かったと思います。

    ところで、若者が冒険に出て迷いながらも成長していく、「ライ麦畑で捕まえて」「海辺のカフカ」的な小説ってジャンルが確立されているような気がしますが、なんていうジャンルなんだろう。このジャンルを仮にライ麦系としますと、この本もいわゆる一般的なライ麦系と呼べそうです。

  • 南極海の氷山をオーストラリアまで曳航しようという船に密航した青年が主人公の、スケールの大きな冒険物語。550ページ位あったけど、これは面白かった。先が気になり、久しぶりに一気に読んだ小説。

    ずいぶんと前の『バビロンに行きて歌え』もそうだったけれど、この人の作品には、社会の主流とは外れた出自や事情を抱えた主人公がしばしば現れる。そこから生まれる葛藤や独自の感性など、そうした人たちの描き方が、とても魅力的。

    また、決して声高だったり押し付けがましかったりはしないけれど、人間と自然の関係を静かに見据えながら問いかける著者の姿勢にも共感した。

  • 難しい。宗教とか信仰とか。でもストーリーは真新しく、最後まで読み切れた!

  • 文学

  • 物語の骨組みがしっかりしていてリアリティがあり、引き込まれた。

  • ニュージーランドの高校を卒業したアイヌの血をひくジンは、南極へ行って氷山を曳航してくるという任務を負ったシンディバード号に密航する。
    厨房の手伝いと船内の新聞記者という職を得て、ジンは南極への航海を通じて、宇宙の成り立ち、世界や人類の在り方、地球、存在することの意味といったものについて深く考えるようになる。
    オーストラリアの原住民の考え方、アイシストと呼ばれる者たちの哲学、資本主義、いろいろな考えがあり、正解はたぶんない。
    みずみずしい冒険小説を読んだ気分になる。

  • 氷山や冷たい海、船の様子などがことこまかく描かれていて、行ったことがあるんじゃと思わされる。そのリアルな冷たさ、白さをずっと思い浮かべながら一気読み。
    主人公の青年・ジンとその友人・ジム、ふたりの成長譚が柱なんだと思うけど、何を信じるかという宗教のことや、失われてしまった文化・生活スタイルを今どう捉えるかということ、などについて考えさせられる。

  • 灌漑対策として南極の氷一億トンを曳航しようという壮大なプロジェクト。

    非常に読みごたえのある長編小説だった。
    人類の生存のためにどこまで自然に手を加えていいのか?
    何をやっても許されるのか?

    アボリジニ、またはアイシストの考え方、共感する箇所も
    あり興味深いものだった。
    何度も読み返してもっと深く考えを巡らせてみたい。

    手元に置いておきたい一冊。

  • おもしろいエピソードがたくさんあるが、盛り込み過ぎの感があり、結果としてぼやっとした印象しか残らない。一つ一つのエピソードは間違いなくおもしろいのだが……

  • 随所に池澤らしさはあるが、結構子供っぽい。

  • 2014/3 小説というより壮大な物語です。氷山って引っ張れるんだろうか?

  • いわゆる自分探しとか冒険譚ではあるのだけれど、そこには筆者の自然と文明に対する真摯さが滲みでている。

    淡々としたプロットの中に、最近の著作にあるような、彼なりの思想と思索が込められている。そこには確実にメッセージがあって、我々に思索を促す。爽やかで、かつ優雅な思索。

    ストーリーとしては、水不足に悩む人類のために、難局から氷山を運んできて、利用するための船「シンディーバード」号に主人公が密航するところから始まる。(シンディーバードはシンドバッドのことだ)

    うまく紛れ込んだ主人公は、船内でパンを焼く仕事と、船内での情報共有のための新聞を作る仕事を得る。与えられた仕事を上手くこなし、信頼を得た主人公は、曳航する氷山で、貴重な隕石のかけらを発見する。

    そこから、年上の生物学者との恋と数々の議論、アイシストと呼ばれる宗教団体との接触や、アボリジニの文化との交感、溶け行く氷山でのイニシエーション、そこでの神秘的な体験。

    どれもが環境問題や、人類の作り上げた文明といったものへの批判が込められている。その辺、筆者の思想は固まっているのだろうが、判断については読者に委ねられるような結末となっている。(何となくふぬけた感じの終わり方のような気もするけれど)

    重要なのは、その過程が充分に詩的であること。後半の隕石のくだりは、「スティルライフ」の夜空を見上げている時のような、ビジュアルで圧倒的な体験をもたらす。個々の視点を捨てて、大局的に想像すること。

    こんな作家だから、安心して読んでいられる。

  • ロマンティックな冒険小説。

    主人公ジン・カイザワは北海道出身でアイヌの血をひいている。先住民族交換留学プログラムというのに参加して、ニュージーランドで高校生活を送る。高校卒業後、日本に戻らず、大学に行かず、働かず、納得できる道を探していたときに、オーストラリアから南極に向けて出港する船について知り、密航することになる。アラブの出資者に認められ、調理場でのパン焼きと船内新聞の制作というやりがいのある仕事も手に入れた。

    航海途中で出港直前に知り合ったアボリジニの少年のもとへと向かう。オーストラリア内陸、砂漠のど真ん中でアボリジニの叡智を知る。

    氷の上で子供だけで行う成人儀式。

    アイシストとの創始者との出会い。

    アイリーンとの恋。

    環境テロリストによる計画失敗とアイシスト信奉者の存在。

    いくつもの非日常的な出来事を重ねて少年は青年へと成長していく。
    少年の中で世界は重なり合いつながっていく。少年を通して自分も世界とつながった気持ちになれたお話でした。

  • この本は読むのにかなり苦労しました。
    ちょっと読んでは眠ってしまい、ちょっと読んでは本から目を離したくなる。
    つまり、この本の文章が私には合ってないのだと思う。
    ちょっと読んで、まるで海外の小説みたい・・・と思った。
    何となく馴染みにくい文章と表現。
    心理描写も登場人物の関わりもあっさりしている。

    主人公はアイヌ出身の18歳の青年、ジン。
    ジンは南極の氷山を運搬して灌漑に使用するというプロジェクトを帯びた船に密航する。
    が、すぐに船員に見つかり、仕事をする事を条件に船にとどまる事を許される。
    その仕事とはパンを焼く事と船内新聞を作る事。
    ジンはクルーに聞き取りをし、記事を作成する。
    様々な国籍の、様々な生い立ちのクルーたちとのふれあい。
    そして、見つけた氷山の上で、あるはずのない石が埋まっているのを見つける。
    その後、このプロジェクトに反対するアイシストから反対の意思を伝える行為が-。

    図書館で何も考えずにポッと借りてしまった本ですが個人的には大失敗です。
    最初はとっつきにくいけど、ストーリー的には壮大で面白そうだから・・・とずっと我慢して読んでいましたが、この設定でワクワクハラハラするような出来事が全くと言っていいくらいなかった。
    そしてそのまま、訳の分からないままにラストへ・・・。
    多分、この文章はかなり好き嫌いがはっきりすると思う。

  • 南極の氷山を農業用水として利用する為に曳航する船シンディバード号に,密航者として乗り込んだアイヌの血を引く日本人ジンの冒険小説.中東の富豪によってサポートされている船には,生物学,材料工学,石油工学,機械工学等々のエキスパートが乗り込んでおり彼らの話を読んでいるだけでも,結構楽しい.

    氷山曳航に批判的な,新興宗教団体アイシストを絡めて,氷山を動かしてまで文明を維持しようとする人間への批判や,アイシストが船に送り込んだと思われるスパイ探し等、ミステリーっぽい話もある.

    印象に残ったのが,ジンがニュージーランドの高校でおしえられた「ノックは必ず3回以上して,ここに自分がいるという事を主張しなくてはならない」というくだり.本全体を通じて,ジンの超積極的でアグレッシブな人柄が好意的に描かれているけど,こういうのってあまり好きじゃないかな.

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著者プロフィール

(いけざわ・なつき)
作家。1945年、北海道帯広市に生まれる。小学校から後は東京育ち。30代の3年をギリシャで、40~50代の10年を沖縄で、60代の5年をフランスで過ごす。ギリシャ時代より、詩と翻訳を起点に執筆活動に入る。1984年、『夏の朝の成層圏』で長篇小説デビュー。1987年発表の『スティル・ライフ』で第98回芥川賞を受賞。その後の作品に『母なる自然のおっぱい』(読売文学賞)、『マシアス・ギリの失脚』(谷崎潤一郎賞)、『楽しい終末』(伊藤整文学賞)、『静かな大地』(親鸞賞)、『花を運ぶ妹』(毎日出版文化賞)など。その他、自伝『一九四五年に生まれて――池澤夏樹 語る自伝』(聞き手・文 尾崎真理子)、編著に『池澤夏樹=個人編集 世界文学全集』(全30巻)、『池澤夏樹=個人編集日本文学全集』(全30巻)などがある。

「2026年 『遙かな都』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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