笑い三年、泣き三月。

  • 文藝春秋 (2011年9月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784163808505

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

日常の中に潜む豊かな人間ドラマを描くこの作品は、戦後の浅草を舞台に、個性豊かな登場人物たちが織り成す物語です。善造の実直で温かい言葉が心に響く一方、光秀の軽妙なジョークが場を和ませ、ユーモラスな日々と...

感想・レビュー・書評

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  • 「最後に、もんっ、と大きく叫んで汽車が止まった。」
    何気なく過ごしていく日常を豊かに描く木内昇さんの文章が好きだなぁと、善造が上野駅に到着する最初の1行目から再確認した。
    実直で温かい善造の言葉が随所に散りばめられていて感動します。
    それと反対に、薄っぺらいと揶揄される光秀の遠慮のない軽口が、失礼ながらもおもしろい。
    戦争で生き延びた人たちが、これまでの仕事や家族を失い人生を模索していく様や、当時の町の様子を知れることもよい。
    起伏の少ないストーリーのわりにボリュームのある小説なので正直退屈に感じる部分もあるけど、読み終えて振り返るとやっぱりいいな、としみじみ思う。

  • カタバミを読んでから好きになった木内昇さん。
    こちらのお話も戦後の貧しい時代の話だけど、逞しくて、芯があって、憎めない感じの登場人物ばかりで読んで良かった。

  • 戦後の浅草を生きた人々の物語。

    それぞれの個性が光り、歯車が動き始めると、おもしろくなる。

    いい加減で、中途半端で、いまひとつパッとしないミリオン座。
    力の抜けたユーモラスな日々に、ふと戦争と死が顔を出す。

    おそろしいほどの自己肯定感の高さと、だれに対しても変わらぬまなざし。
    最初は滑稽なくらいだった善造の人のよさが、だんだんと浸透し、人情味あふれた世界に。

    特に世間ずれした武雄との交流には、グッときた。

    読後感もよかった。

  • 戦後まもない浅草六区のエンタメ界隈のあれやこれや。戦争に翻弄され尽くした人々が何を見て、感じて、折り合いをつけながら日々を生き長らえたのか。

    時に涙、時に笑い。心の機微を掬い取った木内さんの美しい言葉に心を過去に馳せ、立ち止まり、そしてページを捲り…。本当にいい作品に出逢うことが出来た。

    住まい、衣服、食料すべてに充足がない時期に人はどう振舞ったのであろうか。

    「お国の為の戦争」と信じて疑わなかったイデオロギーが青天の霹靂のごとく一変したことを庶民はどうとらえ、呑み込んだのか。

    生と死が紙一重の時代に、親しい人や家族を失い、たまたま生き残ってしまった人の罪悪感はいかばかりか。そしてどうやって光を見出し、前に進むことが出来るのか。

    戦時中娯楽から遮断されていた人々は、映画・漫才・歌・踊り等エンタメの萌芽をどのように伸ばしていったのか。

    ちょうどNHKの朝ドラで「ブギウギ」が戦時中の苦悩のシーン放映中。笠置シズ子さんの『東京ブギウギ』が木内さんの本作の舞台のBGMで登場する。

    登場人物たちは本当に魅力的。誰もが何か欠けている。それぞれ疑心暗鬼になりつつも、互いに関わり時間を経て、次第に自分自身を問うきっかけをさりげなく差し出してくれる。

    木内さんの含蓄に富んだ時代小説が本当に心地よい。時代を超えて人間とは? 生きるとは?といった深いところに流れる事柄を正義や正答の押し付けなくさらりと描ききる。

    巻末の参考文献が示すよう丁寧に調べたうえで、実在の地名や人名等も織り込みながら作品が呈される。
    装丁も挿画も内容にぴったり。

    困難な時代に共に生きた、血の繋がりのない、不完全でうだつがあがらなくて、ある意味頑固で、理不尽な目にも遭い、不運のくじも引っ張ってしまった人たちの辛くて、甘くて、苦くて、酸っぱくて、素敵な物語でした。

  • 戦争を生き延びた男、旅芸人岡部善造、復員兵の鹿内光秀、戦災孤児の田川武雄の三人は、ひょんなことから安劇場に拾われて、踊り子のふう子こと風間時子のぼろアパートで珍妙な共同生活を始めることになる

    焼け跡の浅草六区、戦後の混乱の中、その日の食べ物も不自由な中、人々が求めている娯楽を追求していくミリオン座のおかしな面々
    焼け跡から不死鳥のように立ち上がっていく人々の逞しさが伝わってきたが

    何よりもそんな混乱期、自分が生きることで精一杯、他人のことなど考えられない状況の中、愚直なまでの温かさ・優しさを持ち続ける善造に胸を打たれた

    善造の文中の言葉を追っていくと、まるで神様か天使のようで『岡部善造語録』ができそうだ
    フィクションとはいえ、こんな捉え方もあるのだなと胸を打たれ、温かく優しい気持ちになれた

    自分を財閥令嬢だと語るふう子の嘘をみんなが冷たくあしらう中、善造は武雄に
    「嘘というのは、その人が『そうなりたいなあ、そうなれたらなあ』という願いと同じ。事実ではないかもしれんけど、本当じゃないとはいえんとよ。その人がそう思っているゆうことは嘘じゃあないけん」

    「相手の気持ちも慮らんと、『嘘だからダメ』って何でもかんでも杓子定規に白黒つける人を見るのは、好かん。
    とってもみすぼらしいことよ」
    と言って諭す

    四人の共同生活
    貧しいけれど、四人にとって安らげる居場所だったに違いないが、いつまでも寄りかかって過ごすわけにはいかない
    それぞれが新しい生活へと旅立っていった
    もっと四人のこの生活を見ていたいような、それぞれの新生活を知りたいような複雑な気持ちだ

    「こうなっちゃ、しょうがない!
    さあさ、お陽気にまいりましょーう」
    という大きな善造の声が聞こえてきそうだ

  •  図書館より。
     戦後間もない浅草を舞台にした群像劇。

     主な登場人物は東京で一旗揚げるため上京してきた善三、その善三と行動を共にすることになる戦災孤児の武雄、ひねくれ者の復員兵の光秀、彼らは浅草のストリップ小屋で働くことになるのですが、そこの踊り子ふう子と4人で共同生活を送ることになります。

     初めは善三の考えの甘さや光秀の嫌味っぷりが鼻についたりということもあったのですが、読んでいくごとにそれが登場人物たちの魅力に置き換えられていきました。

     戦後すぐの復興期、何かを失った人たちが懸命に生きていく姿や、善三が武雄のことを”坊ちゃん”と呼び続ける姿など、その時代を知らない自分にもどこか懐かしさを感じさせる筆勢でした。どことなく『always 三丁目の夕日』を彷彿とさせる感じです。

     時代描写もやはり上手です。4人の他人の共同生活の様子や闇市や当時の浅草の劇場や観客たち、そして特に卵かけごはんに大喜びする登場人物たちなんかは、その時代を捉えた描写だな、と思います。

     別れの場面は絶対にジーンとくるだろうな、と思い身構えていましたが、やっぱりやられてしまいました(笑)。人間関係が出来上がる過程がしっかりと書き込まれているので、それぞれの成長と別離の切なさがしっかりと伝わってきました。

  • 戦争直後の上野浅草界隈の様子が良く描かれている。
    ミリオン座というストリップ劇場とそこで働く男女の人情ドラマ。

  • 初め何の事か、文は読み易いが頭に入らない現象に陥った、ぐっと我慢し、急速に面白くなった。戦争の死線を乗り越えてきた人々の話。戦争で色々なものをなくした人の再生の物語、辛さがぐっとくる。

  • 「漂砂のうたう」で直木賞受賞の女性作家、木内昇(のぼり)作品。

    昭和21年10月、まだ焼け野原の景色が延々と続く東京。そこへやってきたのは、万歳を極めようと地方から出てきたばかりの岡部善造。45歳。
    大空襲で両親、兄をいっぺんに失い、浮浪児となった田川武雄。栄養失調の11歳。そのせいで耳から滲出液が出て垢も鱗の様に嵩を為している。
    そんな武雄は、こののんびりした、間の抜けたおじさんについて、しばらく食料を得ようと思っている。
    決して感情を表さない子供だった。
    武雄は文字しか信じない。印刷物になっている文字だけを、貪る様に求め読んだ。およそ子供らしくない子供だった。
    栄養失調で体も小さく物事を多く知る武雄は、他の子どもよりも屁理屈を言う様で、いつも傷が絶えない。

    そんな武雄と善造が雇ってもらえたのは元映画人の杉浦。
    小屋を建てて、出し物、初めはストリップをしようとしていた。そこで初めは全然受けなかった、誰をも傷つけない笑いを目指す善造のコントが、しばらくすると、その妙に朴訥で、ほのぼのとした内容の笑いがうける様になる。。。。。。

    初めは、お笑いの創世記の話なのだろうかと、読み始めたのだが、100ページを過ぎたあたりで気づく。
    ミリオン座で知り合う踊り子や、同僚などと戦争を経験したあとの人格と価値観の違いから問題も起こる。
    決してブレない善造の生き方と武雄への接し方。
    決してブレない冷淡な光秀。
    戦争に協力してしまうことになった映画人、杉浦の絶望。戦争記者として従軍した大森。

    それぞれの悩みと苦しみは彼ら自身の生きにくさでもある。

    読み進めるうちに、それぞれの人生の再生と、
    反戦のテーマが

    不器用な生き方しかできない岡部善造の言葉に、涙するページも多数。心に残る言葉がたくさん出てきます。
    感動の一冊でした。

  • 木内昇(てっきり男性だと思ってたら女性だった)を読むのは初めて。
     
    戦後直後、焼け野原の浅草が舞台。浅草で一旗挙げようと流れてきた万歳芸人のおじさんと、そのおじさんをいいカモだと近づく戦争孤児の男の子。口の悪いみっちゃんに踊り子のふう子さん。4人の奇妙な共同生活が始まる。

    小劇場の支配人に踊り子たち。悪人はひとりもいない。貧しいけれど肩を寄せ合って生きる姿。当時の世相や街の様子の描写も上手い。「東京キッド」が流れるシーンなんて、じーんとしてしまった。

    4人はやがてそれぞれの道を歩む。切ないハッピーエンド。この作家、他の作品も読みたい。

  • ちょっと退屈かなーと思いながら読んでいたが、終盤一気に感動。
    善造、武雄、光秀、ふうこ、みんなと一緒に自分も暮らしているような、離れたくない気持ちになった。

    善造やふうこの素直なストレートな言葉はもちろんだけど、ちょっとひねくれた武雄や光秀の気持ちも、とっても沁みます。

    善造と出身が近いので方言はすんなり入ったけど
    なじみのない人は違った印象を受けるかも。(逆にうさんくささを醸し出して、そっちの方がいいかも?)

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「終盤一気に感動。」
      木内昇は「茗荷谷の猫」を読んで、好きになったのですが、次は文庫になってる新選組物にしようかと思っているのですが、、、此...
      「終盤一気に感動。」
      木内昇は「茗荷谷の猫」を読んで、好きになったのですが、次は文庫になってる新選組物にしようかと思っているのですが、、、此方も良さそうだなぁ~
      2013/07/31
    • booooklynさん
      木内昇さんいいですよね!大好きです。いま私は「ある男」を読んでるとこです。7冊目ですが今のところハズレなし!(大興奮。笑)
      一番泣いたのは「...
      木内昇さんいいですよね!大好きです。いま私は「ある男」を読んでるとこです。7冊目ですが今のところハズレなし!(大興奮。笑)
      一番泣いたのは「幕末の青嵐」かなー。「浮世女房洒落日記」は笑えますよ。うーん…どれもおすすめ。
      2013/08/01
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「笑えますよ。」
      笑えるのも良いなぁ、、、どれにしようか決められず迷うので、出版された順にノンビリ追い掛けます。。。
      「笑えますよ。」
      笑えるのも良いなぁ、、、どれにしようか決められず迷うので、出版された順にノンビリ追い掛けます。。。
      2013/08/05
  • 初の木内昇さん。
    時代小説で直木賞獲ったイメージから、ちょっと難しめなのかと思いきや、文章もテンポもユーモアと軽さがあって読みやすい。
    時代の空気の描き方も、その場のにおいまで感じさせてくれるくらい。
    ホント見てきたかのような取材力。

    終戦間もない焼野原の浅草。
    小さな見世物小屋「ミリオン座」に集まったのは、古い芸しかできないオジサン芸人、人を信じられない戦災孤児、いい加減な復員兵、自称『元財閥のお嬢様』踊り子・・・。

    芸人の善造が本当に善良で、愛すべきキャラクター。
    孤児の武雄は善造を利用しようとして行動を共にするけど、善造は本気で武雄の親代わりになろうとする。
    善造が武雄のことを「こんな素敵な子はめったにおらんとです!」って全力で肯定してくれて、武雄がどうしようもなく嬉しくなってしまう、という場面があって、なんだかじんと来た。

    踊り子のふう子も、生きようとする生命力は誰より強いけれど、人を押しのけたり出し抜こうとするのではなくて、ひたすらやさしくて強い。

    あたたかさ、とか、やさしさ、とか、笑い、みたいなものが、やっぱり生きていく上では一番必要な糧なんだよね。
    どんな時代であっても。

  • 万歳芸人の善造の「坊ちゃん」への思いやりが篤くて良い。

    やっぱりこの作家さんがつくりだす空気感がいいんだろうね。
    チープなドラマになりやすい舞台のはずなのに、薄っぺらさを感じない。

    完全に自分の主観ですが、文章をにじませてる技術を感じました。

  • 終戦直後の浅草を舞台にストーリーが展開するが、そこには大きな波乱や意外な事の顛末が語られているわけではない。むしろ物語は読者の予想の範囲で淡々と進行するのだが、そこに表現される人情の機微にページを繰る手が止まらない。
    当時の社会情勢や世相、そして舞台の中心となるストリップティーズの様子が興味深く描写される。なかでも、農家への買い出しの様子や、終盤の卵かけご飯の場面が素晴らしい。前を向いて生きていこうという気にさせてくれる作品。
    キャスティングが難しそうだが、ぜひ映画化して欲しい。

  • 合わなかった。一章で挫折。

  • ふむ

  • じんわり心が温まる物語。笑いと泣きのバランスが秀逸。戦後の荒廃した風景、日本人の心の変遷。時代背景と共に登場人物を際立てる精妙な筆致に唸る。実直で優しい善造、素直で賢い武雄、穏やかなふう子…小説とはいえ、人間味のあるいい人に出逢えて嬉しかった。

  • ひと笑いも涙もなし。戦後をたくましく生きる姿が、多少感じられたかなって程度。

  •  「漂砂のうたう」で直木賞、1967年生まれ、木内昇(のぼり)「笑い三年、泣き三月。」、2011.9発行。昭和21年10月、岡部善造45歳、博多を出て30年、万歳芸を極めんと上野に到着。東京を案内するのは11歳の少年、田川武雄。彼らに復員兵の鹿内光秀、浅草ミリオン座支配人の杉浦保との出会い。更に、踊り子のふう子らとの語らい。戦争で傷ついた男女が再生に向かう「泣き」と「笑い」。踊り子の「シュミーズ」「ズロース」、そんな言葉からも戦後の一生懸命さとそこはかとないエロスが漂ってきます。

  • 戦後の芸人たちのお話。苦労した時代だと思いますが、何か人情溢れる人が多いなあ、と。善造の人柄が温かくて素敵。武雄は善造と出会えて良かったなあと思いました。
    光秀がこれからどう生きていくのかだけすごく気になりました!

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著者プロフィール

木内 昇(きうち・のぼり):1967(昭和42)年東京生まれ。出版社勤務を経て独立し、インタビュー誌「Spotting」創刊。2004(平成16)年『新選組 幕末の青嵐』で小説家デビュー。11年に『漂砂のうたう』で直木賞、14年に『櫛引道守』で中央公論文芸賞・柴田錬三郎賞・親鸞賞、25年に『奇のくに風土記』で泉鏡花文学賞を受賞。著書に『茗荷谷の猫』『よこまち余話』『光炎の人』『球道恋々』『火影に咲く』『化物蝋燭』『万波を翔る』『占』『剛心』『かたばみ』『惣十郎浮世始末』『雪夢往来』他多数。

「2025年 『転がるように 地を這うように』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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