春から夏、やがて冬

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 195
  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163809205

感想・レビュー・書評

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  • 地味に暮らす一見平凡な男に、何が起こったか。
    誰に起きても不思議はないかも知れない~事件を描きます。

    大手スーパーで警備員を勤める男・平田誠。
    今日も万引きした女性をつかまえ、「これは犯罪だ、あなたは泥棒なんだよ」と諭す。
    万引きの被害は、ベンキョードー吉浦上町店だけで年間、一千万円にもなるのだ。
    だが身分証明書を見て、予想以上に彼女・末長ますみが若かったのに驚き、すぐ解放する。
    顔色が悪くてやつれていたため、老けて見えたのだ。
    昭和60年生まれの20歳というその年齢は…娘の春夏と同じだった。
    ますみとの曖昧な関係がちらほらと続くうちに、しだいに平田の過去が明らかに。

    17歳の時に自転車に乗っていて、ひき逃げされ、帰らぬ人となった春夏。
    妻の英理子は茫然自失、やがて事故の目撃者を求めて、熱心にチラシを配り始める。
    何もわからないまま1年が過ぎ、英理子は娘が側にいるかのように話しかけるようになる。
    平田は、事故が起きるのを止められなかった後悔にさいなまれていた。
    2002年当時は、自転車走行中に携帯電話を掛けることは、まだ禁止はされていなかった。
    だが、注意義務を怠った非は、被害者にもあるとみなされたのだ。
    生意気盛りで父親をちょっとばかにしていた娘に、押され気味だった平田。携帯を使うのは危ないと、もっとキッチリ言えば良かったと。

    娘も妻も失い、仕事に身が入らなくなって、自ら退職しようとしたが慰留され、環境を変えたらと違う土地での勤務になった。
    左遷されたと思われていて、誰とも付き合わない平田はしだいに妙な目で見られるようになる。
    万引きをした娘と一緒にいる所を見られて、何かあるのではと疑われてしまう。

    ますみに何度も待ち伏せのように話しかけられ、当惑しながらも、春夏と同じ年齢で、苦労している様子のますみを突き放すことが出来ない。
    何か出来るのなら、助けてやりたいと思うのだ。
    ますみという女性も弱々しく危なっかしいが、ただお金を貰うわけにはいかないと遠慮したり、それなりの考えもあるのだ。
    ところが、同居している男リョウはたちが悪く、ますみに怪我をさせたかと思うと、平田に強請を仕掛けてくる。
    平田は、ますみが逃げられるように、まとまった金を渡すことを考える。

    ある日、事件が起きる。
    平田の主治医は思わぬ事を知り、驚くが…?!

    突然、一人娘を失い、やりきれない思いに苦しむ夫婦。
    交通事故は残酷ですね…

    その後の思いがけない成り行きで読ませます。
    人を思いやる心が一筋の光にはなっているけれど、救いというよりも、悲痛さがきわまります。
    2011年10月発行。

  • 全体的にどんより暗い話でした。雨の日に読んだからかなぁ。

  • スーパーの保安責任者・平田誠と、店で万引きを働いた女・末永ますみ。一人娘を轢き逃げ事故で失った平田は、娘と同じ年と知ったますみをつい気に掛けてしまう。ますみも平田に心を開き始めるのだが。

    なんとも絶望的な話でやりきれない。

  • 推理小説ではないので、こういう感想は不毛かもしれないが、必然性なく話が二転三転しているという印象だ。各登場人物の気持ちの上でも、話の筋の上でも、ある程度の伏線というものが必要だ。それがなければ、まるで作者の単なる気変わりで、話が変わって行っているように思えてしまうことに、筆者は気づいているだろうか?
    目の付け所は面白い、筆者にそれを書く力量が少し足りなかったのだろう。

  • ミステリ

  • <あらすじ>
    スーパーの保安責任者の男と、万引き犯の女。偶然の出会いは神の思い召しか、悪魔の罠か?これは“絶望”と“救済”のミステリーだ。

    ミステリーかなぁ?
    最後は想像通りというか・・・。

  • 「葉桜の季節に・・・」以来の歌野晶午。
    スーパーの保安員である平凡なサラリーマン平田誠が、万引きをした女性末永ますみと出会うところから話は始まる。
    娘を交通事故で失い、妻は自殺、自らも肺癌に侵され生きる気力もなく治療さえ拒否している平田。娘と同じ年のますみに何かと手助けをする。そして起こった事件。

    歌野さんだから、一筋縄ではいかないだろうと身構えての読書だったからか、帯にあったという「ラスト5ページで世界が反転する」ということはなく、「そういうことか・・・」という印象。

    ただ、全体を通して描かれる平田の苦悩は読んでいて辛すぎる。娘を失くすということは、たとえそれが事故であっても、親はこうして自分を責めて責めて、赦さないんだろうな・・・。自分を責める先に生きる望みはないのだ。
    結末は皮肉な結果に終わったけど、平田が安らかに家族のもとに旅立てるといいなと思った。

  • 最後まで悲しい展開だった。でも当事者たちは、少しだけでも救われたのだろうか・・・真実は違っていたとしても。

  • 本当の他者への思い遣りがスレ違う哀しみ でしょうか。

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著者プロフィール

1961年千葉県生まれ。東京農工大学卒。88年『長い家の殺人』でデビュー。2003年に刊行された『葉桜の季節に君を想うということ』が「このミステリーがすごい!」「本格ミステリ・ベスト10」共に第1位、第57回日本推理作家協会賞、第4回本格ミステリ大賞を受賞。10年には『密室殺人ゲーム2.0』で史上初、2度目となる第10回本格ミステリ大賞を受賞。その他の著書に、『世界の終わり、あるいは始まり』『家守』『ずっとあなたが好きでした』等がある。

「2019年 『Dの殺人事件、まことに恐ろしきは』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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