春から夏、やがて冬

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163809205

感想・レビュー・書評

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  • 2023/06/25読了
    #歌野晶午作品

    万引き犯の少女を更生させるため
    献身的に支援する平田。
    しかしその少女が長年探していた
    娘を殺した轢き逃げ犯であると知る。
    救われない世界観(いや救われたのか?)
    にモヤモヤする。

    で結局平田は2千万円を誰に託したんだ?
    しっかり読み解けてないのか??

  • もう一つの方にレビューした。

  • 歌野晶午の「本格でない方」における傑作。
    歌野は自身でも言っているように、かなり飽きっぽい作家で、いろいろなパターンを試すことに心血を注いでいる。
    そのなかで、歌野が「社会派」と正面から向き合ったであろう痕跡が、この作品の端々に残っている。
    現在とトラウマの回想を行き来するプロットは単純だが、最後の章が秀逸。ネタバレになるので詳述できないが、この最後の章を主人公視点で描かなかったことで、余韻が何倍にも残るように仕掛けられている。
    謎を追うというより、ひとりの人生に迫るという作品。どこか横山チックな硬質さと、連城三紀彦のような哀愁があって、直木賞候補にも納得。
    とにかく文章が素晴らしいです。

    ①魅力的な謎……4/6
    ②精緻なサスペンス……5/6
    ③鮮明な結末……6/6
    ④印象的な文章表現……6/6
    ⑤先鋭的なテーマ性……5/6
    計26/30
    星5

  • バッドエンドとも取れる作品ですが、私は結構良い終わり方だなと思いました。
    主人公の人物像が掴めないながらに読み進み、少しずつ腑に落ちていく展開と、何度かひっくり返される終盤が歌野晶午さんらしいです。
    誰に感情移入するかによって、読後感が変わる作品だと思います。

  • 歌野晶午ということで、どうしても何かあるんじゃないかという先入観を持って読んでしまった。事実、読んでいる間中、ずっと煙に巻かれているような文章。
    帯にある『ラスト5ページで世界が反転する!』なるほど、確かにそう来たか!という思いはあった。でも、葉桜のようなどんでん返しではなく、スンナリと入ってくる物語でした。嘘の切なさを強く感じた。優しい嘘があるのだと。

  • かなしい。

  • 葉桜と比べて~という話を何度か聞いていたのですが、私は葉桜とは違う種類じゃないかな、と言う印象でした。なんて救いのない…一応これで平田は満足なのでしょうか。いざ感想を書こうと思うと、なんだかいろいろなところに違和感が…。(以下中身に触れてます。)姪の話とか、メールが長すぎとか、コインロッカーの現金とか、結局犯人はだれだったのかとか。読み手にお任せなのか自分が理解できなかったのか、もう一度読んですっきりさせたいけれど彼らの気持ちをまたなぞらなくてはいけないと思うと、すぐには読みたくないですね。またいずれ。

  • 地味に暮らす一見平凡な男に、何が起こったか。
    誰に起きても不思議はないかも知れない~事件を描きます。

    大手スーパーで警備員を勤める男・平田誠。
    今日も万引きした女性をつかまえ、「これは犯罪だ、あなたは泥棒なんだよ」と諭す。
    万引きの被害は、ベンキョードー吉浦上町店だけで年間、一千万円にもなるのだ。
    だが身分証明書を見て、予想以上に彼女・末長ますみが若かったのに驚き、すぐ解放する。
    顔色が悪くてやつれていたため、老けて見えたのだ。
    昭和60年生まれの20歳というその年齢は…娘の春夏と同じだった。
    ますみとの曖昧な関係がちらほらと続くうちに、しだいに平田の過去が明らかに。

    17歳の時に自転車に乗っていて、ひき逃げされ、帰らぬ人となった春夏。
    妻の英理子は茫然自失、やがて事故の目撃者を求めて、熱心にチラシを配り始める。
    何もわからないまま1年が過ぎ、英理子は娘が側にいるかのように話しかけるようになる。
    平田は、事故が起きるのを止められなかった後悔にさいなまれていた。
    2002年当時は、自転車走行中に携帯電話を掛けることは、まだ禁止はされていなかった。
    だが、注意義務を怠った非は、被害者にもあるとみなされたのだ。
    生意気盛りで父親をちょっとばかにしていた娘に、押され気味だった平田。携帯を使うのは危ないと、もっとキッチリ言えば良かったと。

    娘も妻も失い、仕事に身が入らなくなって、自ら退職しようとしたが慰留され、環境を変えたらと違う土地での勤務になった。
    左遷されたと思われていて、誰とも付き合わない平田はしだいに妙な目で見られるようになる。
    万引きをした娘と一緒にいる所を見られて、何かあるのではと疑われてしまう。

    ますみに何度も待ち伏せのように話しかけられ、当惑しながらも、春夏と同じ年齢で、苦労している様子のますみを突き放すことが出来ない。
    何か出来るのなら、助けてやりたいと思うのだ。
    ますみという女性も弱々しく危なっかしいが、ただお金を貰うわけにはいかないと遠慮したり、それなりの考えもあるのだ。
    ところが、同居している男リョウはたちが悪く、ますみに怪我をさせたかと思うと、平田に強請を仕掛けてくる。
    平田は、ますみが逃げられるように、まとまった金を渡すことを考える。

    ある日、事件が起きる。
    平田の主治医は思わぬ事を知り、驚くが…?!

    突然、一人娘を失い、やりきれない思いに苦しむ夫婦。
    交通事故は残酷ですね…

    その後の思いがけない成り行きで読ませます。
    人を思いやる心が一筋の光にはなっているけれど、救いというよりも、悲痛さがきわまります。
    2011年10月発行。

  • 全体的にどんより暗い話でした。雨の日に読んだからかなぁ。

  • スーパーの保安責任者・平田誠と、店で万引きを働いた女・末永ますみ。一人娘を轢き逃げ事故で失った平田は、娘と同じ年と知ったますみをつい気に掛けてしまう。ますみも平田に心を開き始めるのだが。

    なんとも絶望的な話でやりきれない。

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著者プロフィール

1988年『長い家の殺人』でデビュー。2004年『葉桜の季節に君を想うということ』で第57回推理作家協会賞、第4回本格ミステリ大賞をダブル受賞。2010年『密室殺人ゲーム2.0』で第10回本格ミステリ大賞をふたたび受賞。

「2022年 『首切り島の一夜』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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