ばくりや

著者 :
  • 文藝春秋
3.59
  • (31)
  • (93)
  • (99)
  • (15)
  • (0)
本棚登録 : 464
感想 : 113
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163809304

作品紹介・あらすじ

ご不要になったあなたの能力お取り替えします。北の街の路地裏に、その店はあった-。ハンサムでもないのに異常に女にもてる、就職した会社が必ずつぶれる。古い自分を脱ぎ捨てるため、「ばくりや」を訪れた者たちの運命は。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 自分の「こんな能力いらない!」というものを別なものと「ばくって(=北海道弁で「交換して」)」くれる不思議なお店「ばくりや」の利用客をめぐる短編集。

    「ついてなくもない」

    人生の局面局面で何かと間が悪いことに悩むのぞみさんの話。ばくりやでその能力(?)を差し出そうとするも、わざわざ行ったばくりやは定休日だったり(うわあ…さすが間が悪いよね)、ばくるのはやめたほうがいいと止められたり。

    その前までのエピソードでは、だいたいの登場人物が不要としている能力がほかのものと交換されているので、「へえー!ばくらない方がいい能力もあるなんてね〜」と思いつつ読み進めると、のぞみさんのアンラッキーなハプニングの裏では、実は周囲の人たちの人生の重要な選択肢を、ラッキーな方や難を逃れる方へもれなく進めさせているという一面が隠されていて、意表を突かれた。このエピソードが一番面白かった。

  • 「ばくりや」って方便だったって事を忘れてた!
    要らない能力を交換してくれる不思議な場所。
    なかなかに不穏な感じの終わりを迎える短編集。

  •  個人の技能や能力を他の人と交換することができる謎の組織(?)「ばくりや」を描く連作短編集。7話からなる。

         * * * * *

     設定に工夫が凝らされていました。

     自分の技能や能力にほとほと嫌気が差した人間にだけ提示される案内。
     そして契約は猫の引掻きによる「血の契約」。
     さらに、技能や能力の移植は当人には自覚のないまま実行される。

    と、実にオカルト的な設定。

     また移植については、臓器や血液のように型の適不適があることと、復元できないなどの条件がつき、移植相手は明かされないなど、現実的な設定もされています。このあたりはなかなかうまい。

     ある種の雰囲気のある1話目は導入として申し分ありません。
     2〜4話は軽すぎて印象に残りにくい出来だったけれど、5話目以降はよく考えられたストーリーで、読み応えがありました。

     「ばくりや」を営業させている謎の女の正体や、その目的等、気になる要素が不明のまま物語が終わるので、続編を望みたいと強く思いました。

  • 「提供するものは本当に要らない能力で、なおかつかわりになにがきても受け入れる、という度量のある方にしかお勧めしません」。(19ページ)

    世にも珍しい能力、技術、才能。
    持つことによって不幸になる人もいれば、幸福になる人もいる。
    もし一つの能力を手放すことができるとすれば、何を選ぶだろう。
    そう考えさせられる物語り。

  • 最後の1ページで結構ゾクっとした
    軽くホラーじゃん!と突っ込みたくなった
    ワールドトレードセンターの話は怖かったなぁ

    もっと笑える軽いお話だと思っていたので、期待と正反対で面白かった

    能力交換…自分だったら何を交換してもらおうかな?と考えたが、今の自分で良いやと思った

  • 「能力」を交換してくれる不思議なお店「ばくりや」。そこを訪れる、様々な能力を持った人たちの短編集。能力と言っても、その内容は本当に個性的で、ストーリーも様々。ほっとする話もあれば、ちょっとゾッとする話もあり、最後にはしっかりオチもつく。おもしろかったなー!「狙いどおりには」の結末にはニヤリとした。一番好きかな。短編:逃げて、逃げた先に/雨が落ちてくる/みんな、あいのせい/狙いどおりには/さよなら、ギューション/ついてなくもない/きりの良いところで

  • 不要になった能力や才能を
    他の人のものと交換してくれる「ばくりや」

    異性に好かれる。勤め先がつぶれる。
    超泣き虫  等々、本人たちには重荷な才能を
    誰かの何かの才能と交換!

    どの話もラストにさまざまなエッジが効いてます

  • 不要になったちょっとした能力を、
    自分が持っていない他の能力と
    交換してくれる店「ばくりや」。

    自分の持っている能力を
    忌々しく思っている人の話だが、
    結局自分の気持ち次第なのかも?と。
    能力を生かすも殺すも自分次第。
    病は気からじゃないけれど、
    ばくりやに行ったという事実が
    その人を変えさせてるようにも感じた。

    少し不穏な話が多いけれど、
    1つだけ泣いてしまった話があった。
    自分に何か特別な能力があったら良いのになぁと
    今まで何度も思った事があるが、
    能力があったらあったで大変なのかもしれないな。

  • 不要になった能力を他人と取り替えるという「ばくりや」に訪れる人達の顛末を綴った短編作。

    ・逃げて、逃げた先に
    ・雨が落ちてくる
    ・みんな、あいのせい
    ・狙いどおりには
    ・さよなら、ギューション
    ・ついてなくもない
    ・きりの良いところで

    容姿が良くもないのにやたらとモテる男や雨男、必ず就職した会社が潰れる男など、一見羨ましいものもあるが、主人公達にとっては厄介な能力を捨てようと「ばくりや」を訪れるが、意外な能力と交換されることで幸か不幸を手にする。

    笑うせぇーるすまん的作品。


    さよなら、ギューションにはホロッときました。
    作品の構成も緩急がついたもので、グイグイと引きこまれ、最終話も納得の〆。
    安心して読めるエンタメ小説。

  • 今すぐ失くしてしまいたいと忌々しく思っている自分の能力。
    それを誰かの能力と交換してくれるという「ばくりや」。
    ただ、その能力が何かは交換されるまでわからないー

    ブラックなテイストのほうですね。この作者さんの本の中で。
    捨てたい能力だとしても大博打ですよねぇ
    災害級の天災で地元から一歩も出られないとか嫌だなぁ
    ちらちらと明かされていく店の秘密が楽しい

全113件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

乾ルカ
一九七〇年北海道生まれ。二〇〇六年、「夏光」でオール讀物新人賞を受賞。一〇年『あの日にかえりたい』で直木賞候補、『メグル』で大藪春彦賞候補。映像化された『てふてふ荘へようこそ』ほか、『向かい風で飛べ!』『龍神の子どもたち』など著書多数。8作家による競作プロジェクト「螺旋」では昭和前期を担当し『コイコワレ』を執筆。近著の青春群像劇『おまえなんかに会いたくない』『水底のスピカ』が話題となる。

「2022年 『コイコワレ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

乾ルカの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×