かわいそうだね?

著者 :
  • 文藝春秋
3.66
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本棚登録 : 2867
レビュー : 587
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163809502

作品紹介・あらすじ

同情は美しい、それとも卑しい?美人の親友のこと、本当に好き?誰もが心に押しこめている本音がこぼれる瞬間をとらえた二篇を収録。デビューから10年、綿矢りさが繰り広げる愛しくて滑稽でブラックな"女子"の世界。

感想・レビュー・書評

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  • 綿矢さん、面白い!
    真面目なのに、コントのようなコメディのような文章、もう中毒性がありすぎです。

    公私とも充実して幸せだったのに、彼氏・隆大の家に、家賃滞納で住むところのなくなった求職中の元カノ・アキヨが居候することになる。
    今カノの樹理恵は、認めてくれないなら別れるしかないという隆大を前に、別れを決意できず、何とか受け入れようとする。
    しかし、妄想は広がり内心穏やかではいられない…

    男の庇護欲と、女の嫉妬は、どっちもとっても厄介なものでして。
    嫉妬は醜いってわかっているから、何とか嫉妬心を抑えて、物分りのいい女になろうとする樹理恵の気持ちはよくわかる。
    途中まで抑えた文体だったのが、樹理恵が旅行先で携帯を見たあたりから、徐々にぶっとんでいってわくわく。
    マグマのようなドロドロを抑え、ずっと我慢に我慢を重ねた半年間(いや、実際よく半年も我慢したなぁと思います。)。
    隆大の部屋で、部屋干しされたアキヨの下着を発見し、樹理恵の中で、何かがはじけ飛ぶ。いや、何かが「つながる」。

    “どっせい、と言う言葉が遠くから聞こえてきて耳をすませた。おっさんが怒鳴り散らしているような声だったけれど、よく聞けば自分の声で、だんだん近づいてくる。
     どっせい、どっせい。
     どないせっちゅうねん。
    「どないせっちゅうねん!」”

    …爆笑!
    頭の中のおっさんの声、おっさんに冷静に対応している自分の声。
    あー、私の中にもいるわ、小さいおっさん、そして冷静な自分。
    読み終えてから、もう一回読み返してにやにやしちゃいました。

    同時に収録されている「亜美ちゃんは美人」も、美人の友人との、少し歪な友人関係が描かれていて、読み応えがあった。
    でも、綿矢さんの本領って、三人称より一人称のときに発揮される気がする。三人称だと、どっせい!みたいな勢いが出ないからかなぁ(笑)。

    • koshoujiさん
      マリモ様、こんにちは。
      レビューのとおり、綿矢りさ作品同感です。
      それまで淡々と進んでいた美しい文章が、突然のスイッチオンで大暴走、大爆...
      マリモ様、こんにちは。
      レビューのとおり、綿矢りさ作品同感です。
      それまで淡々と進んでいた美しい文章が、突然のスイッチオンで大暴走、大爆裂。
      どないせっちゅうねん!!
      読んでいて、ある種の快感さえ覚えます。
      まさに関西人ならではの抱腹絶倒お笑い表現。
      この面白さは、読み手にストレートに伝わる一人称でこそですね。
      2013/01/17
    • マリモさん
      takanatsuさん、こんにちは。

      コメントありがとうございます。こちらこそ、いつもレビュ拝見させていただいています!

      綿矢さんの本は...
      takanatsuさん、こんにちは。

      コメントありがとうございます。こちらこそ、いつもレビュ拝見させていただいています!

      綿矢さんの本は、ストーリー自体は単純なのですが、もやもやとしていて嫌な気持ち、そういう自分ではうまく表現できない心情の掴み方や描写の仕方がすごいなぁと思います。
      この本の爆発の瞬間は本当に必読です♪何度思い出しても笑ってしまいます。(俗にいう修羅場なんですけどねー。なぜかコメディのようでした。)
      もし読む機会がありましたら、レビュ書いてくださいね。
      これからも仲良くしていただけると嬉しいです^^
      2013/01/17
    • マリモさん
      koshoujiさん

      まさに抱腹絶倒!
      どろどろとした女同士の修羅場の場面で、こんなに笑ってしまったのは初めてです。どっせい、どっせい。
      ...
      koshoujiさん

      まさに抱腹絶倒!
      どろどろとした女同士の修羅場の場面で、こんなに笑ってしまったのは初めてです。どっせい、どっせい。
      前半はだいぶ抑えてましたからねぇ。この爆発のために抑えていたんだなぁと思いました(笑)。関西弁の切れがすごかったです。
      写真の、綿矢さんの美しく整ったお顔を拝見すると、この方がこの文章を生み出したとはなかなか信じがたいものが。でもそこが好きです。

      インストールに同時収録されていたものを読んだときも思ったのですが、三人称だと綿矢さんならではの捻りが薄れちゃいますよね。
      「亜美ちゃんは美人」も、さかきちゃんの一人称で読んでみたかった気がします。
      2013/01/17
  • 綿矢りささん、女性の複雑な内面をなんて素敵に、おもしろく表現してくれるんだろう。

    『かわいそうだね?』
    樹理恵の脳内独り言、理性と感情の葛藤を追いながら、「そうそう分かるよ」「ちがうでしょう、それ」「しょうがないよね~」とこちらも独り言。時には共感し、時には笑いながら読み、最後は爆笑、喝采。
    樹理恵の真剣さ、抜け加減、全てが可愛いと思えた。
    恋敵のアキヨの回りが見えない程の隆大への一途さもまた可愛い、仕方ないなぁと。
    男性の庇護欲は、動物の性なのか。
    それにしても…だが。

    『亜美ちゃんは美人』
    主人公さかきちゃんの親友、美人の亜美ちゃんに対する複雑な気持ちを見事に表現している。
    分かるよ、その気持ち。
    女性へエールを送る綿矢りささん、素敵な話をありがとう。

  • 「かわいそうだね?」は最後まで読んでほっと一息。
    あ~、良かった。

    主人公の恋人が出てきてすぐ(要するに最初から)彼が主張する「樹理恵への愛情とアキヨへの友情」に苛立ち、必死で彼の言葉を信じようとする樹理恵さんにまでだんだんムカつき始め、早くどうにかしてくれ状態になってしまっていた。
    樹理恵さんの憎しみは当然のようにアキヨさんに注がれるのだけど、私の憎しみは隆大に注がれていた。
    こういうケースは100%男性が悪いと思う。
    「優しい俺」に酔って、ややこしい状況を自分から作り出し、苦しんでるとかストレスがたまってるとか愚痴り、しかも全く誠実じゃない。

    こんな男性をちょっとでも美化したままで別れて、いつまでも「私の心が狭かったのかも」なんて悩むより見るもの全部見て、言いたいこと言えて良かったのかもしれない。
    かわいそうだからとか、育った文化の違いとか、いろいろ考えて自分を納得させようとする樹理恵さんの気持ちも分かる。
    アキヨさんをあつかましいと思う気持ちも分かる。
    でもあなたを1番蔑にしてるのは隆大では?
    ほとんど接点もない女性よりも、あなたのことを好きだと言い恋人でいることを望んでいる(らしき)男性に対してもっと行動を起こすべきではない?
    本当に私の気持ちを考えているのか、と。
    まぁ、隆大には何を言っても無駄でしょうが…。

    ムカムカ、グルグルしてた気持ちがラストですっきり。
    後悔する必要なし。

    樹理恵さん、むしろ別れられて良かったんですよ。
    「しゃーない。」なんてとんでもない。
    おめでとうございます。危なかったですね。

    「亜美ちゃんは美人」もラストが鮮やか。

    自分を好きだと言ってくれた人と結婚するさかきちゃん。
    自分を好きではない人と結婚する亜美ちゃん。

    どっちが幸せを感じて生きていくかなんて本当に分からない。
    何気ない一瞬を宝物に出来たものの勝ちなんだなぁ。

  • 住むところがないからと、7年付き合った元彼女のアキヨさんを住まわせる決断をした隆大。当然、現彼女の樹里絵は心中穏やかではない。

    綺麗売りとばかりに、アキヨさんと打ち解けてみたり隆大の寛大さを認めようとする樹里絵だが・・・。

    「同棲」じゃなく「同居」、とは言えアキヨさんはまだ隆大に未練たらたら。彼が愛してるのは自分だと分かっていても、そりゃなぁ~。。。

    同時収録の『亜美ちゃんは美人』
    スカウトがくるほど美しく、周りの人を虜にする亜美ちゃん。彼女の「親友」さかきは、常に彼女と比較され損ばかり。正直、亜美ちゃんのことも苦手だ。

    しかし、選りすぐりの恋人と付き合ってきた亜美ちゃんが最後に選んだのは、どう見てもろくでもない男で、、

    愛されすぎた亜美ちゃんの心の闇。

    両編とも、ガールズトークの毒っ気にあてられて育った女子校出身者には「あるある」と共感しきりなのでありました。

  • ──悶々、鬱々、そして突然ぶちキレる。
    そのぶち切れ方が、抱腹絶倒、前代未聞、暴走列車。
    そこまでに至る静かな語り口が一転して、罵詈雑言に。

    綿矢りさの書く主人公はそういう女性が多い。
    肥大した自意識で、悶々と悩み、鬱々として苦しむ。
    でも、そんな思いは心の内に押し込めて外には微塵も見せない。
    ひたすら悶々、鬱々が続く。
    そしてあるとき、その抑制した意識はプチン──と音を立てて切れる。
    いや、この作品の表現を借りれば、
    「今まで故意につなげずにおいた線が、遂につながって電流が行き渡り、充電完了」
    と言うべきか。

    元カノのアキヨと一緒に住むと言い出す隆大。
    愛しているが故に、それを許してしまう樹里恵。
    隆大もアキヨもアメリカナイズされているから、ルームシェア感覚でたいしたことじゃないんだ、と自分に言い聞かせる。
    でも疑心暗鬼はやはり捨てきれない。
    そこでふと見てしまったアキヨの本当の姿。
    ついに切れた。
    この切れっぷりの爽快さが綿矢りさの独壇場である。

    「さあ、なにか気分転換を。ていうか気分どころか、私の人生を変えるくらいの圧倒的にスカッとした電気ショック的転換を」
    「彼らをお焚き上げして煙を天へ返すことで私はいま抱えているすべての問題、災厄から解放されるのです」
    「突撃、開始。再始動だ」
    「アキヨのこわばった表情を見て、自分が一瞬借金取りにでもなった気がした」
    「どないせっちゅうねん!」
    「お客様もしかして関西のお生まれなんですか? 偶然、私もなんですと頭のなかで接客しているうちに、私はテーブルの湯呑みを手でなぎ倒していた」
    “「なにが冷静になれ、や。そんな言葉しか思い浮かばへんのか。アキヨ安心しろ。こんな男なんかくれてやる」ああ、くれてやるもなにも元から私のものではなったのに。”
    「しゃーない」

    もう、大笑いです。大爆笑。この弾けっぷり。綿矢節満開宣言。
    ほんとに、あんな可愛い顔して、どうしてこここまで書けるのだろう。すごいなあ。
    とにかく面白いです。比喩や表現はいつものように彼女ならではのものだし。
    ほかの誰にも真似のできない綿矢りさオリジナルがここにあります。
    是非、ご一読を。といっても、ストーリーを楽しむような小説ではありませんが。
    あくまでも、日本語、言葉、表現を楽しむ小説です。
    あらためて第6回「大江健三郎賞受賞」おめでとうございます

    二作目の「亜美ちゃんは美人」のレビューは「文學界」のほうに書いたのでそちらをご覧ください。
    http://booklog.jp/users/koshouji/archives/1/B0051P5G9E

  • これを読んだ直後から始まったドラマが、表題作品と設定が似ており、未だに設定をごっちゃにしてしまう弊害(笑)
    だが、表題作品ももう一本の作品も、清々しいハッピーエンドだ。
    初めてこの方の作品を読んだが、とても好みだった。
    読み終わったあと、表装の様なさわやかな青空が心の中に広がる様な二作品です。
    自分の両足で立ちたい、と思ったタイミングで出会えたので本当に良かった!

  • 『かわいそうだね?』読了。
    「インストール」「蹴りたい背中」をぶっ飛ばして初めて綿矢りさ作品を読みました。表紙が花で溢れていてきれいだったからどんなに美しい内容なのかと想像したら…これはまた不器用な女性の物語であったのだ…よ。
    表題作と「亜美ちゃんは美人」に出てくる女性たちはどこか正当な考えがありつつもそれを妥協したりすることが難しいのか貫こうとする姿はカッコよくもあり不器用な感じでよかった。多分、人はそれが当たり前なのかなと思えるような内容でした。

  • 「かわいそうだね?」
    やれやれ…って頭かかえたくなる。
    そうだよね、小説の地の文のような考え方する女の子ってかわいげないですよね。あっぱらぴい。
    樹理絵がわからない設定で わかって書かれている英会話部分(樹里絵の直訳=誤訳つき)と、上記の"かわいげない小説女子の思考"の中に現代メール文面そのままぶちこんでいるのはおもしろかった。

    「亜美ちゃんは美人」
    "春に咲くすべての花は、亜美ちゃんの形容詞だ。"
    さかきちゃんももはやそのひとつとなったということかしら。
    なんというか、ものすごく古典的な話。

  • 東日本大震災をはさんで、「週刊文春」に連載された
    『かわいそうだね?』…と、『文学界』に発表された小品、
    『亜美ちゃんは美人』の2編。どちらも軽く読める作品…
    でも…さすが綿矢りさタンだなァ~ ツボを押さえてる!

    ま、どちらも痴話ごと…なんだけど、そんなこと云ったら、
    小説なんて、どれもありふれたつまんないものに
    なっちゃうだろう…要は、そうした話に、何が盛り込んで
    あるかが肝心…まずは…地震のエピソードからはじまる…

    幼い頃に阪神淡路大震災を経験したときのことを、
    東京にいて思い出してる…そして、こんなふうに語る。

    ―困っている人はいても、かわいそうな人なんて
     一人もいない。

    このフレーズは重い。小説の話をはなれ、あれこれと
    思いを馳せさせられた…著者のことを、ボクは、
    田辺聖子さんにつながるたいへんな才能だと思ってる。
    今これを読み、次の一節は、心に刻んでおきたいと思った。

    ―私たち日本人が重んじる“和”は、実は深い親切心の
     もとで成り立っているのではない。人でなしとは思われない
     程度の親切と、身内以外の人に迷惑をかけるくらいなら
     切腹できるくらいの遠慮をもってして、かろうじて機能している
     繊細な絆だ。言わずに察する文化で支えあっている私たちは、
     そのルールを無視する人間に接すると、著しく憤慨して
     疎外する。憤慨は動揺の裏返し、疎外は怯えの裏返しだ。

    このあと物語は…主人公がアメリカ人とディスカッションし、
    行動する女へと変容する。まさに、徹底した議論、行動は、
    カタルシスにつながる…とでも云っているようだ。どちらも、
    おめでたくはないけれど、ストンと腑に落ちる話だった。

  • 相変わらず、恋愛小説の振りをして人間のえぐい部分を見事に書き出すそのいじわるさに、またもやられました。
    文体の切れ味も相変わらず良い!

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著者プロフィール

1984年京都府生まれ。2001年『インストール』で文藝賞を受賞して作家デビュー。04年『蹴りたい背中』で芥川賞、12年『かわいそうだね?』で大江健三郎賞を受賞。ほかの作品に『夢を与える』『勝手にふるえてろ』『ひらいて』『しょうがの味は熱い』『憤死』『大地のゲーム』『手のひらの京』などがある。

「2018年 『100万分の1回のねこ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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