かなたの子

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 798
レビュー : 172
  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163811000

作品紹介・あらすじ

生れるより先に死んでしまった子に名前などつけてはいけない。過去からの声があなたを異界へといざなう八つの物語。

感想・レビュー・書評

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  • 旅エッセイ「降り積もる光の粒」を読んで、山形の月山、即身仏をみてインパクトを受け、書いた作品があると書かれていたのですぐに調べて借りた。

    注・「降り積もる光の粒」の山形の即身仏の話「緑の旅、旅の緑」。

    まず装画がすごい。写真かな…?と思ったけど、よくよく見ると絵で皮膚のしわや髪の毛、うぶげの一本一本まで細かくって…じーーっと魅入ってしまう。(諏訪敦氏の「どうせなんにもみえない」)完璧に人だ。

    「おみちゆき」「同窓会」「闇の梯子」「道理」//「前世」「わたしとわたしではない女」「かなたの子」「巡る」の短編8話。

    最初はホラーかな…と身も凍り、いい大人が暗闇を怖く感じてしまいました。でもホラーではなくって、想像すると闇が迫ってくる、闇につかまった、追いつかれたというこわさ。

    「前世」あたりから急に母、娘、子の輪廻のような物語が多くって…「対岸の彼女」や「八日目の蝉」を、とてもダークにしたような…心理的に迫ってくるものを感じた。圧巻。「巡る」は様々な虐待事件の加害者となった母親を思い出してしまった。(更年期ではないよ→)血の道。満ちる潮や引く潮。終わりの表現も少し不穏。

    あぁ、角田さんってやっぱりすごい。気合を入れないと読めない。「前世」あたりなんて自分の身がちぎれるんじゃないか…って思ったし、つらくって泣いてしまった。子供から少女、大人、老婆まで…どれもこれも女のつらさというか…女性ならではのテーマばかり。すごいな…と思った。読んでいると息苦しくなるんだけど、ページ閉じられず一日で読んでしまった。話はどれも関連性はないのだけれど、一冊読むと女の一生ってこんな感じだよな…と思った。少し「パーマネント野ばら」してる。あと京極さんの「冥談」の「風の橋」も思い出した。

  • 8つの物語から成る、異界へと誘うちょっと怖い感じの短編集。角田光代さんの変化球作品。もしかしたら…と既存の価値観や道理をお話のクライマックス付近で覆す書き方が巧いです。本当にそうかもしれない…と思えてしまうから。どのお話にも共通して言えることは心の暗闇にスポットを当てていること。この世界は本当は1つでないかもしれないと思えてきます。表題『かなたの子』は切なかったです。

  • 生きるために棄てられる命があった…でもだからこそ生かされた者はひたすらに前を向き懸命に生きた、生きられなかった命に報いるために。
    口減らしや姥捨を肯定はしない、でも否定することもできない、なぜならそれは私たちが生まれるほんの少し前の日本での当たり前に行われてきた必然の闇だからである。
    これまでも人の業、言い換えれば誰もが背負いこむ深い闇をを描き続けてきた角田さんが今回はそんな日本の原風景に潜む闇に挑む。安っぽい作り物のホラーなどでなくノンフィクション然としているところに真の怖さがある八編の物語。
    平和ボケの隣に理解不能の倒錯的な闇を抱えた今日と比べてどちらが良き時代であったのか?真に考えさせられる佳作であろう

  • 生と死。
    子どもは必ず母親から生まれる。
    母は子、子は母を求めてる。
    生まれてこなかった子如月に会えると聞き電車に乗る、目的地に向かうのは女性ばかり、その場所で子を呼びさまよう女性達・・・
    間引き 母に殺されたのはわたしではなく、子を殺したのがわたし・・・前世から繰り返してるのか?
    冷たい川に入っても生まれてきたこれから手にかける子を見つめる、その瞳すべてを受け入れている。
    生まれて死ぬ意味は何だろう。意味があるんだろうか?

  • 夜に読んだら、眠れなくなりそうな…もしくは夢に出てきそうな、なかなかに「ホラー」な作品であった。「心の闇」「異界」がテーマ、そして作品の半分の舞台は昭和か戦前か…いずれにしても現代ではない。それも地方の。また角田さんが新境地開拓だと驚いた。
    本来自分はビビリなので、この手の作品は苦手である。それにもかかわらず、ページを繰る手を止められず、眠れなくなるのを覚悟で夜に読んだ。
    不気味だけれど、どこかに哀しさと切なさを宿したストーリー。
    「命」とは、「生きる」とは、何だろうと考えさせられる。
    闇を真正面から見据える角田さんの真摯さに、ほのかに優しさを感じた。

  • 「おみちゆき」「闇の梯子」「道理」「かなたの子」など8編の短編。
    なんだろう。
    なんか、なかなか読み進められなかった。
    どの話も少し宗教ちっくで精神世界的で。
    一番心に残ったのは「わたしとわたしではない女」。
    「わたし」は認知症なのか。
    頭がはっきりしたり、ぼうっとしたり。
    いつも「あの女」が見える。
    それは母のお腹の中で死んだ双子の妹。
    自分を生かすために死んだ妹。
    きっと心に重く沈んでいたのか。
    そして孫が子供を産む。
    その孫が若いころ堕胎したことがあるという。
    子供が産まれるのと同時に「あの女」は消え、悟る。
    「今母親に抱かれている命、これを真に産んだのは生きることのかなわなかった多くのいのちではないか。
    いつも他者に生をゆずってきた、無数の誰か。
    その先に、今、この赤ん坊はいるのではないか。」

    深い、深いです。
    女性なら、子供をお腹に宿したことのある
    女性なら理解できるのではないかと思う。

  • 暗闇があるからこそ、どこに光があるのかがわかる。
    恐ろしさを感じるからこそ、安らぐ時とはいかなるものかがわかる。
    死の足音を聞くからこそ、今生きているのだと感じる。
    そもそも何が明るくて、何が暗いなんて誰が決めるのだろう。
    …そんな感じの本でした。

  • ん…なんとも不思議なお話で…。
    すっきりとはいかなかったです…。

  • 闇がテーマ(?)の短編集。「世にも奇妙な物語」みたいだなと思った。
    最初のうちは気味が悪くて、1つ読み終わるごとに不快感が残っていったけど、
    後半“子ども”の話が出てきてからは、“今”とは違う場所には、こういう世界もあるのかもしれないと感じるようになった。

    角田光代の作品は、見て見ぬふりをしている自分の中の「闇」に気付かされて、嫌な思いをすることが多いけれど、心地よいものも、気持ち悪いものも、情景が鮮明に浮かぶ表現が好きで、ついつい手に取ってしまう。

  • 恒川光太郎の世界を彷彿とさせる作品。
    力量としては恒川さん以上だろうけど。
    角田さん、ジャンルも広がってどんどんうまくなってる。

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プロフィール

角田 光代(かくた みつよ)。
1967年、神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。
1990年、「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。受賞歴として、1996年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞を皮切りに、2005年『対岸の彼女』で第132回直木三十五賞、2007年『八日目の蝉』で中央公論文芸賞、2011年『ツリーハウス』で第22回伊藤整文学賞、2012年『紙の月』で第25回柴田錬三郎賞、同年『かなたの子』で第40回泉鏡花文学賞、2014年『私のなかの彼女』で第2回河合隼雄物語賞をそれぞれ受賞している。
現在、小説現代長編新人賞、すばる文学賞、山本周五郎賞、川端康成文学賞、松本清張賞の選考委員を務める。
代表作に『キッドナップ・ツアー』、『対岸の彼女』、『八日目の蝉』、『紙の月』がある。メディア化作も数多い。

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