- Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163811000
作品紹介・あらすじ
生れるより先に死んでしまった子に名前などつけてはいけない。過去からの声があなたを異界へといざなう八つの物語。
感想・レビュー・書評
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8つの物語から成る、異界へと誘うちょっと怖い感じの短編集。角田光代さんの変化球作品。もしかしたら…と既存の価値観や道理をお話のクライマックス付近で覆す書き方が巧いです。本当にそうかもしれない…と思えてしまうから。どのお話にも共通して言えることは心の暗闇にスポットを当てていること。この世界は本当は1つでないかもしれないと思えてきます。表題『かなたの子』は切なかったです。
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短編集。昭和初期?を舞台に土着の習わしや言い伝えを題材として薄ら寒い物語にしてます。夜中に読まないように。なかでも「前世」が印象深く。そうだったんだろうなと。運命とか定めとかあの人は見えないことが見えるから相談しようと言っている友人が身近にいるが、私は「占いとか、神さまとか、そういった、(自分の人生を他のせいにして預けてしまう)目に見えないもの」が嫌いです。
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生きるために棄てられる命があった…でもだからこそ生かされた者はひたすらに前を向き懸命に生きた、生きられなかった命に報いるために。
口減らしや姥捨を肯定はしない、でも否定することもできない、なぜならそれは私たちが生まれるほんの少し前の日本での当たり前に行われてきた必然の闇だからである。
これまでも人の業、言い換えれば誰もが背負いこむ深い闇をを描き続けてきた角田さんが今回はそんな日本の原風景に潜む闇に挑む。安っぽい作り物のホラーなどでなくノンフィクション然としているところに真の怖さがある八編の物語。
平和ボケの隣に理解不能の倒錯的な闇を抱えた今日と比べてどちらが良き時代であったのか?真に考えさせられる佳作であろう -
生と死。
子どもは必ず母親から生まれる。
母は子、子は母を求めてる。
生まれてこなかった子如月に会えると聞き電車に乗る、目的地に向かうのは女性ばかり、その場所で子を呼びさまよう女性達・・・
間引き 母に殺されたのはわたしではなく、子を殺したのがわたし・・・前世から繰り返してるのか?
冷たい川に入っても生まれてきたこれから手にかける子を見つめる、その瞳すべてを受け入れている。
生まれて死ぬ意味は何だろう。意味があるんだろうか? -
八日目の蝉で号泣して以来の角田作品。
現世とあちらの世界の境目の、グレイゾーンのお話だと感じた。
誰しもが持つ闇の部分をあぶりだしているよう。じわじわっと、おそろしい。おそろしいし、決してさわやかな読後感はないけれど、好きな一冊。 -
夜に読んだら、眠れなくなりそうな…もしくは夢に出てきそうな、なかなかに「ホラー」な作品であった。「心の闇」「異界」がテーマ、そして作品の半分の舞台は昭和か戦前か…いずれにしても現代ではない。それも地方の。また角田さんが新境地開拓だと驚いた。
本来自分はビビリなので、この手の作品は苦手である。それにもかかわらず、ページを繰る手を止められず、眠れなくなるのを覚悟で夜に読んだ。
不気味だけれど、どこかに哀しさと切なさを宿したストーリー。
「命」とは、「生きる」とは、何だろうと考えさせられる。
闇を真正面から見据える角田さんの真摯さに、ほのかに優しさを感じた。 -
「世にも奇妙な物語」的な短編集。どれもとても引き込まれるのだけど、と思ったら終わってしまうのが惜しいー。やはり私は長編向きなよう。
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他人には話さない(話せない)ような、人間の薄暗い根っこの部分に焦点を当てた8篇の短編集。
「とりかえしのつかないこと」を背負って生きていく。
どれも、薄気味悪くて気持ちのいい話ではない。
でも、人に説明し辛い、心の中のあやふやなものや、自分でも確信を持てないような不確かなものや、動揺といった感情が、便乗感溢れる文章でリアルに再現されてて、角田光代さんただただ凄い。
ただの言い伝えだったり、占いだったり、思想だったり、それがまやかしだと頭のどこかで判っていても、本当にその通りなのではないかと錯覚してしまう。
何が真実なのか、事実なのか、ただの思い込みなのか、分からなくなる感覚。
読んでて理由の分からない涙がこぼれてしまうのは、私も前世のどこかで母親に「殺められた子」なのだろうか。なんて思ってしまうほどだった。
「道理」とか「前世」とか「輪廻」とか、きっと一生答えの出ない世界。 -
「おみちゆき」「闇の梯子」「道理」「かなたの子」など8編の短編。
なんだろう。
なんか、なかなか読み進められなかった。
どの話も少し宗教ちっくで精神世界的で。
一番心に残ったのは「わたしとわたしではない女」。
「わたし」は認知症なのか。
頭がはっきりしたり、ぼうっとしたり。
いつも「あの女」が見える。
それは母のお腹の中で死んだ双子の妹。
自分を生かすために死んだ妹。
きっと心に重く沈んでいたのか。
そして孫が子供を産む。
その孫が若いころ堕胎したことがあるという。
子供が産まれるのと同時に「あの女」は消え、悟る。
「今母親に抱かれている命、これを真に産んだのは生きることのかなわなかった多くのいのちではないか。
いつも他者に生をゆずってきた、無数の誰か。
その先に、今、この赤ん坊はいるのではないか。」
深い、深いです。
女性なら、子供をお腹に宿したことのある
女性なら理解できるのではないかと思う。