地層捜査

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 407
レビュー : 65
  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163811505

感想・レビュー・書評

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  •  佐々木譲は、警察小説に活路を見出し、今や、次々と個性的な警察官を世に送り出している。『うたう警官(文庫化時なぜかスウェーデンの名作シリーズの雄編と同じ『笑う警官』に改題)』では、道警裏金問題を内部から抉る正義の警察官たちの一団を描き、『制服捜査』では道警裏金不祥事の煽りを食って十勝の駐在警察官になった元刑事の活躍を描く。『廃墟に乞う』では心的外傷後ストレス障害を煩っている休職中の刑事の活躍を。そして本書ではまた新たなアイディアへの取り組みを見せるのである。

     本書は、今流行りと言っていいだろう、コールドケースを扱う特別捜査官の活躍を描く。殺人の時効が廃止されたこと、科学捜査の進歩による再捜査の意味が認められていることから、過去の未解決犯罪を掘り起こして再捜査するチームがここに出現する。正直なところもう少し主人公の境遇にパンチが欲しかったのだが、とりあえず上司に逆らって謹慎中であるという反骨の刑事・水戸部を主人公に据えているところが佐々木譲らしい。

     こちらの舞台は、四谷荒木町。かつての花街に起こった古い事件を調査するのは、謹慎から復帰させられた水戸部刑事と、かつてその事件を捜査した加納という退職刑事との二人だけ。警察という組織が形だけとりつくろったような捜査部門作りである。そうした組織に対して、個が意地を見せるというのも、何となく佐々木譲の構図である。西部劇スタイルの蝦夷荒野節を唸るこの作家の正義感の面目躍如たる設定で物語は走り出す。

     過去の事件を掘り起こす捜査をどう描くかというところが小説の要となる部分であると思うが、毎日の水戸部と加納のやりとり、業務分担してゆきながら、お互いの性格や度量を測ってゆく様子などが、男の世界という空気で、なかなかに人間臭く、興味深い。荒木町に生きる人々の精一杯の様子が、街の歴史を掘り起こすことによって描かれるあたりも実にいい。

     加納の動きが最後にはこの物語の肝になるのだが、最後までこの加納という老刑事と若い水戸部との人間臭い交流や距離感が本書の読ませどころとなって、なかなかに渋く、そして哀感溢れる情緒的な作品となっている。『地層捜査』という不思議なタイトルがいつの間にかこの捜査にしっくり合って見えてくるのも、この小説の視点、切口など、個性的で新鮮であるところに結局は落ち着いてゆくのか。

     シリーズとしてどう定着させるかは、難しいところだと思うが、北海道警察小説の雄と見られる傍ら、この作家は警官三部作で東京を背景に傑作を書いてもいる。是非とも期待したいところである。

  • 四ツ谷荒木町を舞台とした、推理もの。
    町の様子が浮かんでくるような、細かい描写。
    すっかり、荒木町を訪ねているかのような気分でした。

  • 時効撤廃を受けて設立された「特命捜査対策室」。
    たった一人の捜査員・水戸部は退職刑事を相棒に未解決事件の深層へ切り込んでゆく。

  • 佐々木譲氏の得意とする警察もの。
    時効が無くなり、いつまでも犯人を追い続けることが出来るようになったが、
    流石に効率性の問題もあり、いつまでも捜査本部を設置し続けることは出来ない。
    そんな中ふとしたきっかけで再捜査をすることとなり、
    たまたま干されていた刑事に白羽の矢が。
    定年を迎え相談役という立場の元刑事とともに事件解決に取り組む。
    地主であった元置屋の女主人が殺された事件であるが、
    戦後の混乱の時代、バブル時代、地上げが横行した時代と
    歴史を掘り下げて、解決へと繋げる。
    アンテナを張っておかないと気づかない繋がりが事件解決の糸口に。
    なかなか興味深いお話でした。

  • 捕物帖は、江戸情緒を描く季の文学というが、警察ものは東京風俗を描く地理の文学。荒木町を訪れてみたくなった。

  • 地層のように表層から過去へと事件を探る終始淡々と地味な展開が好かった。
    最後はちょっとバタバタ忙しなかったが。
    http://blogs.yahoo.co.jp/rrqnn187/11689445.html

  • 佐々木譲の作品にしては、読みやすいと感じた一冊。ある程度、先のストーリが予測できるが、それでも、次の展開が気になるし、あっさりと裏切ってくれることも。
    じっくりと読み返してみたい一冊。

  • 佐々木譲にしては地味すぎる、お宮さんものでしたが、じっくりと読めました。

  • 2013.5.18
    久しぶりに読んだ佐々木譲は、相変わらず理解するまで時間がかかった。
    地層捜査というから、埋め立て地とかビルを建てようとしたら死体が出てきたとかかと思った。全然違ったけど。
    15年前の事件でバブルの頃なんて自分は、学生だったから世の中の事もよくわからないし、ましてや舞台は花街だし。時効がなくなったからこその事件だけど、時効ってあった方がいいのかな?どうなんだろう。
    北海道警も面白かったから、この本もシリーズになるといいな。

  • 警察小説の名手による『入魂の新シリーズ第一弾』と云う帯と舞台が地理的によく知る荒木町である理由で購入。公訴時効の廃止により15年前の殺人事件を再捜査して解決する物語。古い殺人事件を再捜査するシリーズって事なのか⁉内容は面白かったけど主人公の水戸部刑事に魅力を感じる事が出来なかった。

著者プロフィール

一九五〇年三月、北海道生まれ。七九年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞。九〇年『エトロフ発緊急電』で日本推理作家協会賞、山本周五郎賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。二〇〇二年『武揚伝』で新田次郎文学賞を、一〇年『廃墟に乞う』で直木賞を受賞する。他に『ベルリン飛行指令』『疾駆する夢』『昭南島に蘭ありや』『警官の血』『代官山コールドケース』『獅子の城塞』『犬の掟』など著書多数。

「2017年 『武揚伝 決定版(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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