定本 百鬼夜行 陽

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (605ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163812304

作品紹介・あらすじ

「私には、きょうだいが居た――気がする」いるはずのないきょうだいの正体は? 「青行燈」ほか、「鬼童」「大首」「蛇帯」など10篇
『姑獲鳥の夏』に始まる百鬼夜行長篇シリーズのサイドストーリーでもある短編集、『百鬼夜行 陰』の続篇

感想・レビュー・書評

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  • まもなく読み始める予定の「鵼の碑」に備え、
    軽くリハビリしておかねば、と読んだこの短編集。
    何せ17年ぶりのシリーズ再開ですから。
    それでなくても分厚い京極堂の新作に挑むには
    ワンクッション必要だと思った。

    ページを開くと、ちっちゃな”ッ”の入る懐かしい文体。
    そして最後の「目競-めくらべ-」の、
    のらりくらりとした三人の語らいなど。
    ああ、これこれ。こうだったなぁー、とじんわり。

    久しぶりだけど大丈夫そうだ。

  • シリーズ本編がもう何年も出てないせいか、登場人物の関連性がすぐ出てこないのが、もどかしい。
    でも、やっぱり京極堂は面白い。
    早く続編が出て欲しい。

  • 文庫版も出ているが、単行本版も巻末の妖怪絵が大きく美麗で、かつそんなにサイズの大きな本でないので持ち出しやすいからそこまで苦にならない。
    もうすぐ『鵺の碑』が出る。本作はその予習として読んだ。陰摩羅鬼と邪魅の2作のサイドストーリーが中心だが、新作に直結する物語もあるので、新作への期待は高まるばかりだけれど、これ出たの10年以上前か……ネタが温められすぎなんだよなぁ

  • 「百鬼夜行」シリーズの登場人物たちのサイドストーリー。
    「百鬼夜行」の陰、の続き。

  • 京極堂シリーズを読み直したからこそ、楽しめた一冊でした。
    買ったけどたぶん、一度しか読んでないんじゃないかなあ。
    シリーズ復習の後に読むと、あー面白い!
    そして鵺が読みたい!日光!

    大鷹さんの印象が一番違ったかな。こんな一面もあるのね。
    (京極夏彦が濡れ場を書くとこうなるのね‥)
    どんな人にも妖怪的な側面があって怖い。
    こうなると最早、来るぞ来るぞ、の怪なんだけど、やっぱり怖い。
    最後の榎さんで救われました。可愛いお子様だったのね。幼少の砌から苦労されたのね。
    あー鵺が読みたい。

  • [青行燈 (あおあんどう)]
     由良奉賛会の平田は、陰摩羅鬼の瑕の後に遺産整理をしている。妹がいるのではと思う過去。胤篤との問答。過去とは何だろうかという話。
     怪談話のように終わるラストが寒さを与えてくれる。
     京極堂の語る、記憶は記録ではないという話が面白い。
    [大首 (おおくび)]
     陰摩羅鬼の疵、邪魅の雫に出てきた大鷹の経歴。大鷹というのは奇妙な人間だった。この回では、彼が抱いている性的なものへの不快感が語られている。性に対する倒錯と言ってよいのか分からないが、短編なので理由が解決するわけでもない。
     大鷹は薫子の死体を辱めた時に崩壊したとある。邪魅の雫の大鷹は壊れていたのだろうか。そういう事なら、あの怖さも分かる。
    [屏風闚 (びょうぶのぞき)]
     絡新婦の理の多田マキの生涯。子供の頃に大きい屏風を見ていて、その上から覗いていた黒い影。歳をとって、またマキが見た影は目潰し魔だったろう。
    [鬼童(きどう)]
     邪魅の雫の江藤徹也の過去。母が死んでも何も感じない。自分は人でなしだと思っている。江藤は、何に対しての言い訳じみた話をしているのだろうか。自分が周りと同じように考えられないことを恥じているのか。本当の人でなしなら考えることもしない気もする。
     邪魅の雫は江藤も、大鷹も中身のないような怖いキャラが多い。平山夢明作品にでも出てきそうな雰囲気だ。
     大鷹が母を殺していたと分かるラストは恐ろしい。
    [青鷺火 (あおさぎのひ)]
     狂骨の夢の宇田川がのちの妻に会う前の話。
     宇田川は東京から逃れてきて本を読む生活をしている。そこで自給自足をしている老人と話していると、その老人は人が死ぬと鳥になると言う。
     信じて救われるのなら迷信も良い。マイナスにならなければ良いのだと思う。
    [墓の火 (はかのひ)]
     鵺の碑に出てくる寒川秀己が父の死を知ろうとする話。
     まだ出ていない作品の短編なので、よくは分からない。日光で事故死した博物学者の父の死を知りたい。父の死んだ山奥に行くと、それが鵺の碑の事件に関係する石碑らしい。
     案内人の老人の信仰の話が面白い。神仏が作られたものだという。畏れるものも、敬うものも山であり作られた神ではない。
     宗教を題材にしていることが多いが、いつも遠回しにいまの宗教を批判している。ブラッシュアップと言っても良いだろう。過去に戻るべきか、新しい風を吹かすべきか、どういう行方が相応しいと著者は思っているのだろうか。
    [青女房 (あおにょうぼう)]
     魍魎の匣の寺田兵衛は、戦地で敗戦を知り、上司に家族の話をする。
     単純に聞くと、人付き合いが苦手で、妻は精神を病み、箱を作ることだけを重要視して家庭を省みなかった。そういうことを続けて戦争に行き、帰ると全て壊れてしまっていたという話。
    [雨女 (あめおんな)]
     邪魅の雫の赤城大輔の話。
     赤城は女が困っているところを見ると、水が溜まったところに女の顔が浮かんできて、自分を意気地なしと批判する。そして赤城は女を助ける。それが子供の頃から続いてきたが、それで良い思いをするわけでもなくて、逆に悪い展開に陥ることが多い。運が悪い男なのだ。
     邪魅の雫が薄いのは、赤城や江藤や大鷹が何を考えているのか分からないからだ。分かっても理解できないし、理解できたとしてもどうしようもない。本当に何も出来ない感覚があり、読んでいる自分が入る余地がなくて、ただ傍観者として見ているしかない。感情がないと読者は入れないのだ。なので、この短編で書かれているような人物を書いてくれてば良かったかもしれない。
    [蛇帯 (じゃたい)]
     鵺の碑の桜田の話。桜田は紐が怖い。なので和服が着れない。その話を同僚のセツにすると、セツは過去に何かあったのではないかと言う。
     実際、過去に母が和服の帯で父を殺していたので恐怖を覚えていたということだった。
     いつになったら、鵺の碑は発売するのだろうか。
    [目競 (めくらべ)]
     姑獲鳥の夏の前の榎木津の話。
     榎木津は生まれた時から他人の記憶が見えた。父に連れられて魚を見に行って、その美しさに魅了された。
     京極堂の家で関口も交えて話しているときに、榎木津はビルを建てて探偵をやることに決めた。

  • なるほど、確かに紛う事無く妖怪小説だわ

  • 読みそこなってた!「百鬼夜行 陰」は買ってたのに。
    書下ろしが榎木津だったのがとてもうれしい。そのために読んだと言っても過言ではない。
    百鬼夜行の陰陽は基本的に、本編に登場した脇キャラ(ほんとにモブ)のサイドストーリーなのでレギュラー陣以外特に興味のない方は最後の書下ろしだけ読めばいいと思います。
    読んでなくてもなにも困らないし、基本的に脇キャラたちは生活・人生が崩壊するような話なので。

    書下ろしの榎木津礼二郎の話は、彼の眼について幼少の頃から探偵事務所を開くと決めるところまでを榎木津視点で語られています。
    鵺、まだ出てないですよね? はやく出ないかなぁ。

  • 妖怪シリーズファンとしては避けて通れないという義務感のみで読んだ。最後の榎木津のエピソード以外のサブキャラのサイドストーリーなんか正直どうでも良い。同じ様な暗い感情の吐露をひたすら読まされるだけ。

  • 京極堂の長編シリーズのスピンオフ的短編集。
    単独で楽しめる話も少しはあったけれど、基本的には京極堂シリーズを読んでいないと
    「……で?!」ってカタチで終わるお話が多いと思いました。

    かと言って、京極堂シリーズの各長編はめっちゃ長いし、全部読んでいる自分でも
    「この人どんな役割だったかな?!」って感じで掴めずに終わっちゃったお話もありました。

    京極夏彦さんの世界はその世界の住人であることが楽しむことの前提的な感じなので、いきなりこのお話を読んで、京極さんダメだ…って思っちゃう人もいるかも。

    この本はスピンオフ的な本ですよ~!
    『青鷺火』とかは、単独でも面白かったけどね。

    しかし…。
    日光を舞台にしたお話って何だったっけ?
    自分もいろいろ再読しないとダメかぁ~。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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