定本 百鬼夜行 陰

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・本 (605ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163812403

感想・レビュー・書評

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  • 個人的な百鬼夜行シリーズ再読キャンペーン8冊目。
    シリーズ各作品に登場した人物たちのサイドストーリー集。
    不穏で不気味なお話が淡々と続く感じ。
    むかし読んだはずだけど全く記憶に残ってない。さもありなん。

  • 京極堂シリーズのスピンオフ短編集
    簡単に言えば、要らぬもの
    それでも楽しめたから、さすがと思うべきなのかな。

  • 京極夏彦作品の白眉ともいえる百鬼夜行シリーズ、いわゆる京極堂シリーズに登場した人物のスピンオフ作品を集めた短編集である。京極氏の作品が備える怪異性は本作でも十分に発揮されている。しかし、裏返せばそれだけのようにも感じる。

    京極堂シリーズを読了してからずいぶん時間が経ってしまい、そもそも登場人物を忘却してしまっている部分もある。いくつかの作品については、元のストーリーを想起させ、「あぁそうだったか」と思わせてくれるものもあるが、京極堂シリーズがとても素晴らしいものであることから比べると平凡な作品が多かったように感じる。

    妖怪を借りて、登場人物の心に巣喰うわだかまりに人物そのものが追い詰められていく緊迫感は、本作品でも健在である。また語られる蘊蓄も楽しい。特に「鬼」の章は、他の「鬼」を扱った作品にも通底するが、非常に造形が深い。鬼という存在が、いささか特殊であると同時に、意外なほど我々の日常に入り込んでいることも窺える。妖怪というものが日常と非日常のあわいに存在するものだとすれば、妖怪の形を借りて、曖昧かつ不安定な人の心を操ってみせる京極氏のストーリーテラーぶりは称賛されよう。

    この作品群に対する称賛を躊躇うのは、ひとえに元の京極堂シリーズがあまりにも素晴らしかったことの証左であろう。これらの作品が白眉であるがために、そのスピンオフとして登場した本作品は否応なく京極堂シリーズの一部としての相対的な見方しかできなくなってしまう。

    京極堂シリーズというすばらしい作品がすでに世に出ている以上、これらを下敷きにしたスピンオフ作品は作りやすいであろうし、それを望む読者も一定数いるのだろう。だがしかし、どうしてもこのスピンオフ作品が必要である理由を見つけることはできなかった。あえて望むならば、新たな京極堂シリーズを読んでみたい。それは作者にとって大変な仕事だと思うし、かなり長い間このシリーズが世に出ていないことを考えればなおのこと大仕事になることは想像できる。

    それでもなお、やはり、今一度新たな京極堂シリーズを求めたい。その思いが強いがゆえに、スピンオフ作品ではおのが気持ちに対して、お茶を濁せない――それが偽らざる読後の印象なのである。

  • 不条理な恐怖、常軌を逸した執着、あるはずもない記憶。日常の狭間にふと立ち現れる怪異『姑獲鳥の夏』に始まる百鬼夜行シリーズの粋。京極夏彦・画、書下ろし特別附録「百鬼図」収録。

  • 怪異譚。小袖の手、文車妖妃、目目連、鬼一口、煙煙羅、倩兮女、火間虫入道、襟立衣、毛倡妓、川赤子。どれも不気味なお話である。

  • H28/11/7

  • 読み進めているうちに以前読んだ京極堂シリーズの断片なのだなと気付いた。

    人の心に巣食う鬼と幽玄な者たちの境目が混じりあい、今自分がどこに位置しているのかわからなくなる。
    感じようによっては幽霊の正体見たり枯れ尾花のような話もあるような。

    オムニバスとはいえ、本自体は厚みがあるので読むのに時間がかかるだろうと思っていたけれどスラスラと読めることができた。

  •  気付かないだけで、怪異は常に、私達のすぐそばにいる。
     私達が怪異を感じる時。それは、心中に良からぬモノが湧いた時。

     不安、焦燥、困惑、緊張、欲望、恐怖、後悔、不満、無念、嫌悪、恥、軽蔑、嫉妬、罪悪感、殺意、劣等感、怨み、苦しみ、悲しみ、怒り、絶望、憎悪、空虚――。

     湧いたモノはやがて心中を満たす。するとそれは怪異と変じる。漏れ、溢れ零れた怪異は、時にその姿を本人の目に晒す。

     袖口から伸びる白い手――。
     気付けばいる小さな女――。
     誰もいない場所から感じる視線――。
     街で見かけた鬼――。
     煙の中に浮かぶ顔――。

     それは、夢か現か幻か。
     日常の狭間でナニカに憑かれた人々を書き綴った、読み終えれば心中に、なんとも言えぬ厭な余韻が残る怪異小説。

     心の理を解せねば、人は良からぬモノを持て余す。放置すればそれは心中を満たし、溢れ零れて自他を害すことになる。次に怪異に遭うのは、あなたか身内か隣人か――。

  • 2013/7/27-
    京極堂シリーズのスピンオフ
    小袖の手
    柚木陽子の病んだ部分が…。加菜子の首を絞めたのはどういう意味だろう。
    加菜子の口調が本編の男言葉ではなく、普通の少女のそれなのは、加菜子も頼子達の前では演じていたという事なのか。
    文車妖妃
    本編では心情の読み取れなかった凉子の、苦悩や嫉妬などの人間らしさ。
    内藤とのやり取りに思わず涙。
    私は人間ではないのです…だから、放っておいてください。
    目目連
    目潰し魔がとりつかれるに至った訳。
    鬼一口
    未読
    煙々羅
    和田ハツは和田慈行の母であろうけど、何故自殺したのか、慈行を生んでから棚橋家に来たのか、母ではなく叔母なのか…
    何もわからず、鉄鼠を探してみたけれど慈行の母について書かれているところを探せなかった。(後で再読しようと思う)
    結局慈行については謎だらけ。血縁者であろうハツまで謎だらけ。
    美しい見た目、美しい所作。心は見えない。

  • 百鬼夜行シリーズのサイドストーリーということで、
    とっても期待大だったのですが、正直いまいち。
    なんかオカルト的な部分ばかり目立って、いつもの深みがなかったような。
    京極さんは長編なんですね~、やっぱり。
    詳しい感想はこちら→
    http://monogatarigatari.blog.fc2.com/blog-entry-131.html

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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