死命

著者 :
  • 文藝春秋
3.49
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本棚登録 : 657
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  • Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163813202

作品紹介・あらすじ

榊信一は大学時代に同郷の恋人を絞め殺しかけ、自分の中に眠る、すべての女に向けられた殺人願望に気づく。ある日、自分が病に冒され余命僅かと知り、欲望に忠実に生きることを決意する。それは連続殺人の始まりだった。榊の元恋人だけが榊の過去の秘密を知るなか、事件を追う刑事、蒼井凌にも病が襲いかかり、死へのカウントダウンが鳴り響く。そして事件は予想もしない方向へ-衝撃の展開、感涙の結末。

感想・レビュー・書評

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  • 薬丸岳さんは江戸川乱歩賞をとったここ数年の作家の中では一番好きです。とくに「悪党」はラストが良かった。一気読みでした。今度の作品「死命」も読みごたえのあるいい作品でした。 お互いに癌を宣告された刑事と犯人、余命いくばくもない中での執念、刑事の先立たれ妻とのなれそめを聞いた、娘の気持、ああなんといい心地にしてくれる終盤の話でした。いい余韻を残してラストへ、やっぱり薬丸岳はいいですね。

  • 余命幾ばくもない刑事と死期を宣告された連続殺人犯…これだけ聞いた時には安っぽい設定にしたな、とおもったのですが、さすがページターナー。追い追われる緊迫感とゆっくり蘇っていく殺人犯の記憶がうまく絡み合って、読み応えがありました。

    ただ、榊信一の身に起こったことは不遇と思いますが、気持ち悪い殺人衝動と澄乃への純粋な気持ちが1人の人間に同居しているのが感情的に理解できず、同情したらいいのか憎んだらいいのか気持ちが定まらなくて、読んでて落ち着かなかった。
    ほのかに思いを交わしていた少年と少女が醜い大人の性の餌食になり人生を狂わせていく、というところは少し白夜行を思い出してしまった。

    人に面白かったと手放しで勧めづらいけど、読んで良かったです。ドラマ化されるそうで、賀来賢人と吉田鋼太郎のイメージで読みました。

  • 死期が近い警察官VS死期が近い異常性犯罪者。主人公の犯人がどうして犯罪に走ったのか。失われた記憶を犯罪を犯すたびに少しづつ取り戻していく過程が面白かった。幼い頃を知る恋人が何をひた隠しにしているのかも最後まで分からず興味がそそられる。ただただ憎むべき性犯罪者だけで終わらない薬丸氏。はずれなし。

  • ぐいぐい引き込まれる筆力。
    抑えがたい殺人衝動を全て過去に起因させてしまうような描き方には少し疑問が残る。
    殺されてしまった女性の描き方がなんとなく桐野夏生の小説とかぶるが、男性作者の描き方と女性作者の描き方だと似ているようで決定的に何かが違う。そんな気がした。
    なんとなく消化不良。

    • 杜のうさこさん
      ortieortieさん、こちらでもこんばんは~♪

      うわっ、見事にはまっておられますね~。
      お仲間♪お仲間♪
      私の感想がきっかけで...
      ortieortieさん、こちらでもこんばんは~♪

      うわっ、見事にはまっておられますね~。
      お仲間♪お仲間♪
      私の感想がきっかけでなんて、本当に嬉しいです!

      この消化不良感、私もよくあります。
      なんかもやもや~っとするんですよね…。
      でもテーマがテーマだけに、それも仕方ないのかもしれないですよね。
      重く苦しい内容でも、どこか目線の温かさを感じられる所が好きで、
      デビュー作から、ずっと読んでいる作家さんです。

      今、ortieortieさんの本棚とレビューを拝見して、
      また昔の作品を読んでみたくなりました。
      こちらこそ参考にさせてくださいね。
      これからも素敵なレビューを楽しみにしています!
      2017/02/10
  • 死を宣告された連続殺人犯と、同じく死を宣告された捜査一課の刑事。
    死を目の前にした二人の心理描写が、何とも言えない。
    たまたま連続殺人犯と刑事だけれども、普通の人間が死を目の前にした時、これほどの執着心が生まれるものだろうか?
    ぐいぐいと引き込まれる作品だけど、読後は何か考えさせられる。

  • 余命僅かと宣告された2人。

    一人は残りの人生を女性を襲い殺害するという自分の欲望を満たすため生きていく。
    もう一人は残りの人生を警察という自分の職務を全うするために生きていく。

    自分のために生きた男と、
    誰かのために生きた男。
    それぞれ死の間際に見たものは…。

  • 沢山の命。映画の様だった。後半のまとめ方が本当に上手い。涙が出る話とは思えなかったのに、涙が出た。本当にページターナーだ。全作読みたい。

  • 共に余命を宣告された2人の男。1人はかねてより欲望を抑えていた快楽殺人を決行していく。もうひとりは1人は刑事の使命としてそれを追う。

    まず、偶然多すぎ。人物設定がちょっと軽くて勿体無い。寺泊での出来事、引っ張りすぎてがっかりしちゃうから、もう少し早めに描くか、もう少し重めにしっかり描くかしてほしかった。

    まぁでも一気に読ませる作家さんではある。
    もう一冊読んでみようかな。

  • まさしくタイトルどおり。
    犯人と刑事の死命。

    最初は榊に捕まって欲しくないなーって思ってたけど、読んでいくうち蒼井刑事の凄まじい執念に心打たれました。
    ラストも良かった。

    薬丸サンの作品はハズレない。

  • ★3.5

    自分の余命を知った時、ひとりは秘めた欲望を解放し殺人を犯す。
    ひとりは刑事としての使命を果たす。
    死を恐れぬ罪人に報いを与えられるのかーー。

    大学時代に恋人・澄乃を絞め殺しかけ、自分の中に眠る。
    全ての女性に向けられた殺人願望に気付く。
    若くしてデイトレードで成功しながら、殺人衝動に悩む榊信一。
    ある日、余命僅かと宣告され、欲望に忠実に生きる事を決意する。
    それは、連続殺人事件の始まりだった。
    その頃、元恋人の澄乃との再会。
    信一と澄乃は、小学5年生の時新潟の寺泊という港町で、出会った。
    お互いに初恋だったが、一年後に信一は寺泊から出て行ったが、大学で再会した二人。
    付き合っていた二人だったが澄乃は卒業後故郷に帰って結婚し離婚して東京に戻って来ていた。

    都内で起こった連続殺人事件の、犯人逮捕に執念を燃やす刑事・蒼井。
    しかし蒼井にも同じ病が襲い掛かり、余命数ヶ月と宣告される。

    殺人犯・信一と、恋人の澄乃と、刑事蒼井の視点で物語は進んでゆきます。
    序盤は、澄乃が何度も信一を見捨ててしまったと悔いているのはどうして?
    信一は、どうして事故で記憶を失い、耳が聞こえなくなった事故って何?
    あの光景を思い出してしまうようなことになれば、絶望の中で死んでいくことになるって何?
    澄乃が抱えてる、後悔や後ろめたさってなに?
    信一は、どうして女性に対して殺人衝動を抱いているの…?
    沢山の謎が頭の中で渦巻いて、先が気になって仕方無かった。

    自分の余命を知った事で、人を殺したいという昔からの願望を実行した信一と、
    命が尽きるまでに、その犯人を逮捕しようとする刑事・蒼井。
    残り少ない命を対照的に使うふたりが印象的でした。
    そして、死を怖れない殺人鬼・信一。
    死にたくない、死を怖れている刑事・蒼井。

    信一と蒼井の心理描写は凄まじく、
    信一がどうして殺人願望を抱くかわかっても、哀れだとは思いましたが、
    理解も出来ないし、共感も出来なかった。
    蒼井の最後か安らかなものだったのは、救いでした。

    この様な主人公を描いた、著者が凄いとは思いましたが、
    うーん、気持ち悪かった(´⌒`。)
    一気に読ませる筆力は、流石でしたが…うーん。
    生きる事や生き方について、考えさせられました。

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著者プロフィール

1969年兵庫県生まれ。2005年『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2016年、『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に刑事・夏目信人シリーズ『刑事のまなざし』『その鏡は嘘をつく』『刑事の約束』、『悪党』『友罪』『神の子』『ラスト・ナイト』など。

「2023年 『最後の祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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