光線

  • 文藝春秋 (2012年7月12日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784163815503

作品紹介・あらすじ

作家の村田喜代子さんは、東日本大震災の数日後に子宮体ガンが発覚。摘出手術を避け、鹿児島市で一か月間、強いX線のピンポイント照射を受けて、3か月後にガンは消滅しました。治療中、放射線宿酔でふらつく体で震災関連のニュース、福島原発の推移をテレビで見るうちに、ある不思議な気持ちが芽生えてきた、とおっしゃいます。

「文學界」でこの一年半の間に発表された連作6編のうち、「光線」「海のサイレン」「原子海岸」「ばあば神」の4編は、この村田さんの内なる震災体験から生まれました。原発からもれる放射線と、自分の下腹部にあてられる放射線が混ざり合うのを感じる、という村田さんならではの感覚、個人と社会の災厄が重なるという稀有な体験が、作品の随所で顔をだし、見事に文学に昇華されています。

「こうして6作の異なる短編の顔を見較べると、これも『地』というものの話だった。人間の生きる所は、すべて『地』によっている」(あとがきより)

本の最後に収められたのは、震災前に書かれた「楽園」。山口県のカルスト台地の地下800メートルに位置する鍾乳洞で行われる〈暗闇体験〉。一人の探検家が文中でこう言ってます。「洞窟に潜ることは、存在とか認識に関わる哲学体験であり、造物主に近づいていく創造的体験である。またその体験をしているとき、自分にとって地上は『楽園』である」。この足の下の場面が永遠に盤石であることを願い、この光あるタイトルの作品をラストにもってきました。

読売新聞、朝日新聞ですでにこの連作については取り上げられ、村田さんの新境地を示す、ターニングポイントとなる作品であることは間違いありません。

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

テーマは、震災と放射線治療を通じて描かれる人間の存在と社会の関係です。著者は、自身のがん治療を受けながら、震災の影響を受けた社会を見つめ、個人と社会の災厄が交錯する独自の視点を提供しています。特に、放...

感想・レビュー・書評

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  • 癌治療のお話

  • 村田喜代子 著「光線」2012.7発行、短編8話です。太陽は核融合する巨大な裸の原子炉、火山の噴火が示すように地球の深部は核分裂の火、地上では人間の手で造られた原発の炉(3.11で一大事に)また、がん細胞を自滅させる放射線治療・・・、最初の4話はこれらの関連作品です。「3.11」は国民全員に自然の驚異と放射線の脅威を見せつけ、そして多くの作家の創作活動に影響を与えましたね。

  • 後半飛ばし読み。
    癌の治療法、放射線、東日本大震災。

  • 原発事故と放射線治療

  • ガン患者だったら、もっと詳しい話を!と望むだろう。

  • 光線 / 村田 喜代子 / 2012.8.29(40/119)
     発電利用と医療利用、両方とも原子力の技術。3.11の最中、中性子がん治療を受ける人の話。技術があって、それをどう利用するか問われる。

  • 小説 
    ゲニウスロキとはまた少し趣の違う土地の力を感じる
    がんの治療と福島と 
    不安のちから

  • 村田喜代子『光線』文藝春秋、読了。とにかく読んで欲しいから外堀を埋める。連作の執筆中に著者は3.11を迎え、同時に癌を宣告された。放射能禍が人々を苦しめる中、放射線治療を受けるという矛盾。震災は多くの作家の「言葉」を奪うことになった。言葉を再び紡ぐ本書は一条の希望を照らす。

  • あとがきによると当初の構想は"土地の力、地の霊力をテーマとした短編連作"。それが311の震災と作者自身のガン放射能治療の経験を対比、通過することで、人間と世界をめぐるより深淵な物語となっています。自然に対する人間の無力と強さを感じさせます。

  • 3.11直後に自身ががんと診断され、放射線治療を受けることになった著者の体験が色濃く反映された作品がメインの短編集。
    がんも津波も、本人に選べない災難であり、「偶然」によって生死を分かたれる点で同じものだという、主人公の妻の述懐。生き延びたことを「バンザイ」と喜ぶことができないと。
    バンザイをしないでただ感謝して生きて行こうという主人公妻のがん友だち。刻苦を生き延びた人の優しさには、一瞬言葉を失います。
    日本という国にこの責め苦を課した「運命」に対し、すべてを奪わず、この人たちを残してくれてありがとうと言いたいです。

  • 子宮癌治療の放射線(「光線」)から3・11の原発事故の放射能につながる「原子海岸」。東日本大震災のときの幼い子どもをかかえた女性の一人称で語られる「ばあば神」や日暮れ時道に迷っていく「夕暮れの菜の花の真ん中」などどれも今を生きる人々を描く。
    著者の体験に基づいた放射線治療を読むと、癌になることを考えて貯金しとかないととてもこの治療は受けられない、と現実的なことを考えてしまった。
    鍾乳洞の洞窟に入る「楽園」の洞窟潜水には震えたが、希望の残る結末がよかった。

  • 初めて読んだ村田さんは『真夜中の自転車』だったと思う。
    十年ぶりくらいで読んで、あのとき感じた癖のようなものが、わりと薄まっている気がした。
    でもまぁ、受け付けない人は居るだろうな。
    放射能の、見えない光『光線』で始まり。ああ、それが何となくどこかお仕舞いの『楽園』の『闇』の概念に繋がっていくのかな。構成深いわ。

  • 「光線」
    <自分の妻が乳がんや子宮ガンに罹ったら、男はどういう気持ちになるだろうかと秋山は思う。>
    実は私の妻が5年前に乳がんを発見し、手術した。そういう男の気持ちで読んだ。

    「原子海岸」
    <日曜祭日なしで連続30日間の四次元ピンポイント照射で、ガンの焚き火は鎮火したのだ。秋山は焚き火の燃えた後の灰を見るような気がした。>
    オンコロジー。300万円かかる自費治療である。鹿児島の僻地にある。
    患者同窓会の旅行の話である。

    「ばあば神」
    3・11の際の母子家庭での話である。13階のマンション。母子家庭仲間。
    空襲下での自分の生誕。
    高祖母。曾祖母。祖母。

    「関門」
    関門橋のたもとにマンションを借りる話。

    「夕暮れの菜の花の真ん中」
    田舎の法事で、酒盛りで、夫と2人で外に出た。

    「楽園」
    鍾乳洞の奥深く潜る人。

  • 衝撃的な内容で、所々読むのがきつかったです。正直どの短編も私には重く感じられました。
    東大震災の直後に妻のガンが判明。そんな夫の目から描く作品で、治療に関する生々しさ。身近にガンで亡くなった人達がいただけに辛かった。
    そして東大震災時の東京での被災の様子も生々しく、辛かった。けれど今はまだ記憶が生々しいから辛いだけで、こういう小説と言う形で震災を伝えると言う事もあっていいのかもしれない・・・
    放射能と言う恐ろしい物質、それを生み出す原発。早くこの世から失くした方がいいと思う反面、がん治療で多くの人達を救う手だけとなる放射線。
    命を介してその両極面を突きつけられとても考えさせられる。
    最後の「楽園」もまた意表を突く内容に驚かされた。震災の直後誰もが思った普通であることの幸せ。結局平凡な毎日が遅れるのが究極の幸せなのかも。

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著者プロフィール

1945(昭和20)年、福岡県北九州市八幡生まれ。1987年「鍋の中」で芥川賞を受賞。1990年『白い山』で女流文学賞、1992年『真夜中の自転車』で平林たい子文学賞、1997年『蟹女』で紫式部文学賞、1998年「望潮」で川端康成文学賞、1999年『龍秘御天歌』で芸術選奨文部大臣賞、2010年『故郷のわが家』で野間文芸賞、2014年『ゆうじょこう』で読売文学賞、2019年『飛族』で谷崎潤一郎賞、2021年『姉の島』で泉鏡花文学賞をそれぞれ受賞。ほかに『蕨野行』『光線』『八幡炎炎記』『屋根屋』『火環』『エリザベスの友達』『偏愛ムラタ美術館 発掘篇』など著書多数。

「2022年 『耳の叔母』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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