のろのろ歩け

  • 文藝春秋 (2012年9月27日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784163816302

作品紹介・あらすじ

北京、台湾、上海――刻々と変わりゆくアジアの街で、変わりゆくことを強いられる年頃の日本の女性たちは何を見つけるのか。時の流れに移ろうものとそうでないものを、主人公の心の機微に沿いながら丁寧に、どこかユーモア漂うタッチで描き出す三篇。

「北京の春の白い服」の舞台は、自由経済化が女性のおしゃれにも波及し、ついに中国国内でのファッション誌創刊が許された1999年の北京。日本でフリー編集者をしている夏美は中国の出版社からの招へいに応じて雑誌創刊準備のため働くことになる。アメリカ人の恋人ジェイソンは「君の価値観は受け入れられないだろう」と渋い顔だが、年齢的にも国内でのキャリア的にも微妙なところに差し掛かっている夏美には必要な変化に思えた。だが、いざ始まった北京での春物ファッション撮影は想像以上に過酷。大陸ならではの厳寒ロケ、流行の白い服はあっというまに黄砂で汚れ、現地スタッフとは一から十まで意見が食い違う。そこに追い打ちをかけるような「ほら、僕は正しかっただろう?」と上から目線の彼氏からのメール……。こんなはずじゃなかった。追い詰められた夏美の前に開けた道は? 実際に女性誌編集者として中国に赴いた著者の経験が活かされた一篇ほか、失恋したばかりの娘が、かつて台湾に留学していた母の恋の手がかりを追って現地の青年と旅をする「天燈幸福」、夫の転勤についてしぶしぶ上海に移った妻の異国の地での戸惑いと発見を描く「時間の向こうの一週間」。異国の風景の中を、不器用ながら飄々と明るく旅をするヒロインたちの姿が、静かな共感を呼ぶ中篇集です。

みんなの感想まとめ

多様な舞台で展開される女性たちの物語が描かれています。北京、上海、台湾のそれぞれで、主人公たちは異なる挑戦に直面しながらも、心の内を探る旅を続けます。特に、女性の視点から描かれる都市の風景や文化の違い...

感想・レビュー・書評

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  • 北京、上海、台湾が舞台となった三つの短編集。
    それぞれ、そこで仕事をする編集者、赴任先のマンションを下見する主婦、母の思いをたどって旅する娘が登場します。
    読んでいて感じられる街の空気感が中島京子さんらしい味わいだなぁと感じました。
    女性目線で書かれた都市の描写の妙がこの本の魅力かと思います。

    急速な発展をしている昨今、その変貌ぶりはこの小説にも興味深く書かれています。
    急速さのなかにも大陸的な悠長さが貫かれているようなところはやはり民族の違いを感じます。中国の働く女性にもどこか違いを感じました。

    個人的なことをいうと、私の初めて一人旅は1985年の中国でした。
    まだ人民服を着ている人が大多数で、自転車の人波が河のように流れていたりして、自由経済が始まるのかなぁ?という頃です。2ヶ月間ぐるり回ってとてもエキサイティングで楽しい旅でした。
    そんなせいで、当時の行動や思いが思い起こされたり記憶が呼び覚まされたりして、懐かしい気持ちをあたため直すような読書になりました。奥底にしまわれていた気持ちっていろいろ出てくるものですね(^ ^)。
    読んでいて、3つ目台湾の話で、亡き母が出した手紙の一文がじんわり心に残ったので引用します。

    「(略)…あのころが、無性に懐かしくなります。…(略)…まだ人生になんの責任もなくて、未来も夢もいっぱいあったころのことです。あのころに行けたらなあと、このごろそんなことばかり考えています。」

  • *『北京の春の白い服』―1999年、中国初のファッション誌創刊に向けて派遣され北京で奔走する夏美。『時間の向こうの一週間』―2012年の上海、赴任したばかりで多忙な夫の代わりに家探しを引き受けた亜矢子。『天燈幸福』―「台湾に三人おじさんがいるのよ」という亡き母の言葉を手がかりに旅に出た美雨。時間も、距離も越えて、新しい扉をひらく彼女たちの物語*

    特に派手な展開はないものの、異国の情景が手に取るようにわかって、一緒に旅をしたような気分になれます。忙しない中国にも「漫漫走(のろのろ歩け)」なんて挨拶があるのは不思議な感じ。でも、ちょっと愉快で、いつか自分も使ってみたくなりました。

  • 北京と上海と台湾を舞台にしたアラフォー女性の物語です。

    ☆北京の春の白い服
    ザイチェンはシー・ユー・アゲイン。「マンマン・ゾウはのろのろ歩け。」という挨拶が心に残りました。中国の人はいい加減、北京はダサい・・・というイメージがあり、そう見ていたファッション雑誌担当のキャリアウーマン夏美。次第に北京が本質が見れるようになっていきます。読みながら、これってエッセイ?って何度も惑わされました。

    ☆時間の向こうの一週間
    多忙を極める駐在員を旦那に持つ妻が上海で家さがしを奮闘しながら、満更でもない上海生活を送っていきます。順応性高っ^^;。天国の様だという雲南省の地が気になります。

    ☆天燈幸福
    台湾で亡き母がお世話になった3人のおじさんを訪ねる美雨。北京から郊外へのローカル線の旅。優しい台湾人にまた触れ合いたくなりました。

    予想通り、旅立ちたくなる中編集でした。

  • 北京、上海、台湾を舞台にした、3編の物語。
    中国女性の働き方に対するステレオタイプを崩す一話目、なかなか気持ちのよい話でした。
    一話目・二話目の登場人物が重なったので、連作かと思いきや、三話目は全く重ならず、少し残念な気分。

  • 北京、上海、台湾。3つの場所で繰り広げられる『彼女』達の物語。
    人種や国籍、風土、文化の違いはあるけれど、人を思う気持ち、優しい気持ち、愛は人類皆一緒です。
    ちょっぴりドキッと、
    そしてふんわりと優しい恋心に
    『彼女』達のこれからの人生を想像してしまう…そんな後味のお話でした♡

    「慢慢走」直訳すると「のろのろ歩け」
    のんびり行けや〜と北京の屋台のおっちゃんが『彼女』に声をかけます。

    あぁ、旅にでたいな〜♫

  • いつもはつるつる読める著者の作品なのになぜか読みづらかった
    時間を置いて読み直そう
    北京、上海、台湾を訪ねる日本女性

  • 北京、上海、台湾を舞台にした3編

    新しいファッション誌を創刊するために。
    赴任した夫の元へ向かうために。
    急逝した母の想い出に出会うために。

    中国へと旅にでた日本の女性たちが出会った現地の暖かさ

    なんだか自分も旅をしてる気分になれる1冊
    アジアもいいなぁ

  • 「小さいおうち」が好印象だったのと、緩いタイトルに誘われて読んだ。アジアもいいんじゃない、って思った。西洋かぶれのオイラだが、三編のなかのアジアはなんかいい感じ、そう『ブレード・ランナー』みたい。古がいものと新しいものが無秩序に並んでる。タイトルは「北京の春の白い服」のなかで露店のおじさんの科白として出てくる。慢慢走(マンマン・ゾウ)。のんびり行けや──。走り続ける北京で、全力疾走する夏美だからこそ印象的な言葉になった。オイラ的には「天燈幸福」が好き。母親が離婚した原因と探る美雨の台湾の旅。娘としては、知りたいけど知ったところで愉快ではない話だけど、美雨の母親は美雨の期待を大きく裏切ってくれる。きっと素敵な女性だったんだと思う。美雨とトニーもそんな関係になるのかな。トニーが追いかけてきそうだけど。

  • 北京、上海、台湾を舞台にした小説。女性が旅先で出会ったひとは。旅に出たくなるようなお話。

  • 北京 上海 台湾を舞台にした短編3つ。どれも面白かったけど「北京の春の白い服」は仕事でおこるジレンマとか達成感、コミュニケーション問題を軽やかに描いていて好感。「さよなら」「お元気で」と同じ意味で「慢慢走(マンマンゾウ)」~ゆっくり行きな、という言葉を使うという描写のある部分が印象的。

  • 北京、上海、香港が舞台の3つの短編集。

    1990年代に中国でファッション雑誌を創刊することになった夏美。
    上海に来てすぐに、急な仕事が入った夫から、夫婦で住むためのアパートメントを見てくるよう言われた、駐在員の妻亜矢子。
    亡くなった母のゆかりの地香港に、3人のおじさんを訪ねた美雨。

    私には縁遠かった中国が舞台の話。
    どれも、舞台の情景が目に浮かぶような興味深い話でした。

    サブタイトルの漫漫走は素敵な言葉。
    離婚理由になる「感情破裂 婚姻法32条」には苦笑い。

    ずーっと昔、台湾に旅行した時に見たコアラのマーチが楽天小熊餅乾だったのを思い出しました(笑)

  • 北京、上海、そして台湾を舞台に、3人の女性の物語が語られる。最後に北京に行った時、やはりちょうど古い街がどんどん新しくなっていくのを見たので、懐かしい気がした。もう10年以上も前だから、もはや全然昔の街並みなどなくなっているかも知れないなと思う。上海は、なぜか機会がなく行ったことがないので、描かれている古さと新しさが共存するような街の様子に、いつか訪れてみたいなとまた思った。台湾は何度も訪れていて、風景の描写が意外に少なかったのがちょっぴり残念な気もするが、登場する台湾のおじさんたち(老人たち)の雰囲気は、そんな人たちが確かにいそうな気がした。

  • 2016.01.31

  • 1999年の北京、2012年の上海と台北が舞台の3篇。変化が目まぐるしいのに、「漫漫走=のろのろ歩け」ってしれっと言えてしまう国なのね。ノスタルジー?の一言では表し難い。やっぱり悠久の歴史を持つ隣国は面白い。中島さんの書く女性像はこの国にぴったりだな、と思いました。
    台湾の田舎に行きたい!

  • 北京、上海、台湾それぞれの街の3人の女性のお話。その街だからこその空気感に惹きつけられた。その中でも上海に惹かれたかなぁ。

  • 確かに旅行に行きたくなるし、ベトベトしてないのがいい!
    働く女のキリキリ感も良かった!

  • 台湾、北京、上海での女性の物語3編が収録。「北京の春の白い服」がいちばん印象的でよかった。服務員のくれた「赤いカーディガン」そして彼女の何気ない、けれど主人公の心を突くようなメッセージ。みんながせわしなく動いているなかでの「マンマンゾウ」のろのろ歩け。あー、私もがんばろうって思った。

  • 中国と女性というテーマはとても興味深いし、人物描写もとても良かったんだけど、どの話も恋愛の部分はいらないんだけどな。

  • 女性が主人公の短編が3つ。それぞれ1999年の北京、2012年の上海、2012年の台北が舞台。それぞれの主人公が旅の途中で知り合う人たちとのコミュニケーションが面白い。街の描写がうまく、騒音や匂いまで想像できる。

  • 急速に成長していく中国。短編。

    ファッション雑誌を中国へ浸透させるべくむかった北京での夏美の奮闘。

    春でもまだまだ寒い日が続く北京で古くから言い伝えられている言葉、「冬の服を着て春に備える」という常識を覆そうとしている自分と、10年前の北京の姿にとらわれる恋人との葛藤。

    夫の上海赴任について行った亜矢子を現地で案内してくれたウー・イーミンとの交流、まだ懐かしき時代の残る上海の面影、仕事で多忙な夫。イーミンの本当の正体。

    亡くなった母が生前やりとりをしていたおじさんたちに会うために一人で行った台湾で出会った温かな人たち。
    銀行員兼小説家のおじさん1、仙人術師で中国語の先生のおじさん2、母が離婚を決意する前に泊まったおじさん3は、戦争時代に日本語を覚えさせられたという皮肉な時代と国を経験した人だった。


    時間の向こうの一週間と天燈幸福が面白かった。
    イーミンの正体がわかったときは予想外の展開に興奮したし、おじさん1の運転が荒くて、めんぎゃっ!(危なくない的な意味)を連呼したり、電車で知り合ったトニーのキャラも好感が持てた。

    時代とともに町は変わっていくんだね。
    中国の目覚ましい急成長ぶりは海外人ですら追いつけない。異国の話はおもしろいね)^o^(

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著者プロフィール

1964 年東京都杉並生まれ。小説家、エッセイスト。出版社勤務、フリーライターを経て、2003 年『FUTON』でデビュー。2010 年『小さいおうち』で第143 回直木三十五賞受賞。同作品は山田洋次監督により映画化。『かたづの!』で第3 回河合隼雄物語賞・第4 回歴史時代作家クラブ作品賞・第28 回柴田錬三郎賞を、『長いお別れ』で第10 回中央公論文芸賞・第5 回日本医療小説大賞を、『夢見る帝国図書館』で第30 回紫式部文学賞を受賞。

「2022年 『手塚マンガで学ぶ 憲法・環境・共生 全3巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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