のろのろ歩け

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 321
感想 : 59
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163816302

作品紹介・あらすじ

『北京の春の白い服』-1999年、中国初のファッション誌創刊に向けて派遣され北京で奔走する夏美。『時間の向こうの一週間』-2012年の上海、赴任したばかりで多忙な夫の代わりに家探しを引き受けた亜矢子。『天燈幸福』-「台湾に三人おじさんがいるのよ」という亡き母の言葉を手がかりに旅に出た美雨。時間も、距離も越えて、新しい扉をひらく彼女たちの物語。

感想・レビュー・書評

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  • 北京、上海、台湾が舞台となった三つの短編集。
    それぞれ、そこで仕事をする編集者、赴任先のマンションを下見する主婦、母の思いをたどって旅する娘が登場します。
    読んでいて感じられる街の空気感が中島京子さんらしい味わいだなぁと感じました。
    女性目線で書かれた都市の描写の妙がこの本の魅力かと思います。

    急速な発展をしている昨今、その変貌ぶりはこの小説にも興味深く書かれています。
    急速さのなかにも大陸的な悠長さが貫かれているようなところはやはり民族の違いを感じます。中国の働く女性にもどこか違いを感じました。

    個人的なことをいうと、私の初めて一人旅は1985年の中国でした。
    まだ人民服を着ている人が大多数で、自転車の人波が河のように流れていたりして、自由経済が始まるのかなぁ?という頃です。2ヶ月間ぐるり回ってとてもエキサイティングで楽しい旅でした。
    そんなせいで、当時の行動や思いが思い起こされたり記憶が呼び覚まされたりして、懐かしい気持ちをあたため直すような読書になりました。奥底にしまわれていた気持ちっていろいろ出てくるものですね(^ ^)。
    読んでいて、3つ目台湾の話で、亡き母が出した手紙の一文がじんわり心に残ったので引用します。

    「(略)…あのころが、無性に懐かしくなります。…(略)…まだ人生になんの責任もなくて、未来も夢もいっぱいあったころのことです。あのころに行けたらなあと、このごろそんなことばかり考えています。」

  • *『北京の春の白い服』―1999年、中国初のファッション誌創刊に向けて派遣され北京で奔走する夏美。『時間の向こうの一週間』―2012年の上海、赴任したばかりで多忙な夫の代わりに家探しを引き受けた亜矢子。『天燈幸福』―「台湾に三人おじさんがいるのよ」という亡き母の言葉を手がかりに旅に出た美雨。時間も、距離も越えて、新しい扉をひらく彼女たちの物語*

    特に派手な展開はないものの、異国の情景が手に取るようにわかって、一緒に旅をしたような気分になれます。忙しない中国にも「漫漫走(のろのろ歩け)」なんて挨拶があるのは不思議な感じ。でも、ちょっと愉快で、いつか自分も使ってみたくなりました。

  • 北京と上海と台湾を舞台にしたアラフォー女性の物語です。

    ☆北京の春の白い服
    ザイチェンはシー・ユー・アゲイン。「マンマン・ゾウはのろのろ歩け。」という挨拶が心に残りました。中国の人はいい加減、北京はダサい・・・というイメージがあり、そう見ていたファッション雑誌担当のキャリアウーマン夏美。次第に北京が本質が見れるようになっていきます。読みながら、これってエッセイ?って何度も惑わされました。

    ☆時間の向こうの一週間
    多忙を極める駐在員を旦那に持つ妻が上海で家さがしを奮闘しながら、満更でもない上海生活を送っていきます。順応性高っ^^;。天国の様だという雲南省の地が気になります。

    ☆天燈幸福
    台湾で亡き母がお世話になった3人のおじさんを訪ねる美雨。北京から郊外へのローカル線の旅。優しい台湾人にまた触れ合いたくなりました。

    予想通り、旅立ちたくなる中編集でした。

  • 北京、上海、台湾を舞台にした、3編の物語。
    中国女性の働き方に対するステレオタイプを崩す一話目、なかなか気持ちのよい話でした。
    一話目・二話目の登場人物が重なったので、連作かと思いきや、三話目は全く重ならず、少し残念な気分。

  • 北京、上海、台湾。3つの場所で繰り広げられる『彼女』達の物語。
    人種や国籍、風土、文化の違いはあるけれど、人を思う気持ち、優しい気持ち、愛は人類皆一緒です。
    ちょっぴりドキッと、
    そしてふんわりと優しい恋心に
    『彼女』達のこれからの人生を想像してしまう…そんな後味のお話でした♡

    「慢慢走」直訳すると「のろのろ歩け」
    のんびり行けや〜と北京の屋台のおっちゃんが『彼女』に声をかけます。

    あぁ、旅にでたいな〜♫

  • いつもはつるつる読める著者の作品なのになぜか読みづらかった
    時間を置いて読み直そう
    北京、上海、台湾を訪ねる日本女性

  • 北京、上海、台湾を舞台にした3編

    新しいファッション誌を創刊するために。
    赴任した夫の元へ向かうために。
    急逝した母の想い出に出会うために。

    中国へと旅にでた日本の女性たちが出会った現地の暖かさ

    なんだか自分も旅をしてる気分になれる1冊
    アジアもいいなぁ

  • 「小さいおうち」が好印象だったのと、緩いタイトルに誘われて読んだ。アジアもいいんじゃない、って思った。西洋かぶれのオイラだが、三編のなかのアジアはなんかいい感じ、そう『ブレード・ランナー』みたい。古がいものと新しいものが無秩序に並んでる。タイトルは「北京の春の白い服」のなかで露店のおじさんの科白として出てくる。慢慢走(マンマン・ゾウ)。のんびり行けや──。走り続ける北京で、全力疾走する夏美だからこそ印象的な言葉になった。オイラ的には「天燈幸福」が好き。母親が離婚した原因と探る美雨の台湾の旅。娘としては、知りたいけど知ったところで愉快ではない話だけど、美雨の母親は美雨の期待を大きく裏切ってくれる。きっと素敵な女性だったんだと思う。美雨とトニーもそんな関係になるのかな。トニーが追いかけてきそうだけど。

  • 北京、上海、台湾を舞台にした小説。女性が旅先で出会ったひとは。旅に出たくなるようなお話。

  • 北京 上海 台湾を舞台にした短編3つ。どれも面白かったけど「北京の春の白い服」は仕事でおこるジレンマとか達成感、コミュニケーション問題を軽やかに描いていて好感。「さよなら」「お元気で」と同じ意味で「慢慢走(マンマンゾウ)」~ゆっくり行きな、という言葉を使うという描写のある部分が印象的。

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著者プロフィール

1964 年東京都杉並生まれ。小説家、エッセイスト。出版社勤務、フリーライターを経て、2003 年『FUTON』でデビュー。2010 年『小さいおうち』で第143 回直木三十五賞受賞。同作品は山田洋次監督により映画化。『かたづの!』で第3 回河合隼雄物語賞・第4 回歴史時代作家クラブ作品賞・第28 回柴田錬三郎賞を、『長いお別れ』で第10 回中央公論文芸賞・第5 回日本医療小説大賞を、『夢見る帝国図書館』で第30 回紫式部文学賞を受賞。

「2022年 『手塚マンガで学ぶ 憲法・環境・共生 全3巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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