旅猫リポート

著者 :
  • 文藝春秋
4.34
  • (1755)
  • (1133)
  • (430)
  • (65)
  • (10)
本棚登録 : 9312
感想 : 1486
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163817705

作品紹介・あらすじ

発売前からブクログ登録数400越えの期待の1冊!

子供の頃から引越しを繰り返してきたサトルの相棒は猫のナナ。しかしナナを手放さなければならなくなってしまったサトルは、ナナの引き取り手を探すため懐かしい人々を訪ねる旅にでます。それはサトルの生きてきた道を行く先々で再確認する旅でもあったのです。旅猫リポートは波乱万丈な過去の秘密を抱えたサトルと相棒のナナの最後の旅の物語です。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 野良猫だったナナを保護して5年間暮らした後に事情で手放すことになり貰い手を探し友人宅を訪ねる話なんですが猫好きならば、手放すって言葉聞いただけで号泣必須なのでもうこれは作者の確信犯的号泣作品だと感じてしまいました。
    ♪飾りじゃないのよ涙は フッフ~
    って中森明菜なら強がったかもしれない。
    1人暮らしの悟が愛猫を手放す理由など天地が裂ける程のことしか考えられないわけでしかも5年間も一緒にいたとなると猫時間では20年一緒に過ごしたことになるのだから耐え難い別けれのはず。
    小学校、中学校、高校時代に知り合った友たちを訪ね語られるエピソードはナナに聞かせてるようで益々離れずらくなる。悟の境遇は周りからみれば不幸の塊のようにみえるのですが本人は少しもそれを感じていないし感謝している。いるんですよねたまにこうゆう人、自分の痛みには鈍感で神経ないのかって思えるのに、人の痛みはビシバシ感じちゃう人って、どんなけんいい人なんだって思うとここでも涙が溢れる訳で作者のコズルさを感じてしまう。
    だから私は必死にこらえて読んだんです。できるだけたあいもないことに目を向けて。銀色のワゴンとか、海や山、初めて乗ったフェリーとか、雨の境にかかった虹とか、真っ赤なナナカマドの実とか...。
    後首を摘まんで持ち上げて、後ろ足をたたんでファイティングポーズをとる猫はネズミを捕る猫だって知らなかったけど、ナナがそういってるんだから信憑性ありそうですね。

  • 本をさっぱり読まない娘に、有川さんの『三匹のおっさんふたたび』と
    『空飛ぶ広報室』にリボンをかけてプレゼントされたのは、クリスマスのこと。
    思わず涙ぐんでしまうくらいうれしかったのだけれど
    どうしてこの2冊? と、心の中に盛大な疑問符を描いていたのです。

    ところが数日後、暮れも押し迫ったシネコンのロビーで、この『旅猫リポート』を
    「クリスマスに間に合わなかったけど、これもプレゼントに追加ね!」と渡されて。

    聞けば、どうしても3冊セットでプレゼントしたかったのに、行動範囲にある本屋さんを
    ことごとく回っても、『旅猫リポート』だけ軒並み売り切れだったのだそうです。
    その日、映画を見るために車で出かける、シネコンの入っているショッピングモールに
    大きな書店があるのを思い出し、こっそり電話をかけて訊ねたら
    奇跡的に1冊だけ置いてあるとのことで、今日必ずお金を持っていくので、と
    頼み込んで予約扱いにしてもらい、やっと手に入れたとのこと。

    「この3冊が揃えば、ママの大好きな有川さんのキャンペーンに応募できて
    劇のチケットか、特別カバー版が当たるかもだから、忘れないで応募してね」
    と言われ、よりによってシネコンのロビーで、映画を観る前から
    映画にはまったく関係のないことでぽろぽろ泣いている、
    挙動不審なおばさんと化してしまったのでした。

    そんなこんなで、手にした瞬間から泣かされたこの本に
    読んでいる間も、読み終わってからも、さらに泣かされるとは。。。

    猫のナナがこれからも幸せに暮らせるよう、手放すための旅に出る心やさしいサトル。
    とことん一緒にいることが、自分にとってもサトルにとっても幸せなのだと知っていて
    そのことにサトルが気づくまで、辛抱強くお見合いの不成立を画策しながら
    サトルの旅につきあう、賢いナナ。

    車に轢かれ、とりあえず生き延びるためだけに声の限りに鳴いてサトルに救われ
    ナナという雄猫としては微妙な名前をもらい、サトルのために野良猫を廃業したのに
    一日にたった一度でもサトルに会うため、極寒の札幌で
    温かく不自由のない飼い猫の暮らしを捨て、
    吹雪の中をさまよう野良猫に戻るナナに、もう涙が止まりません。
    「ナナに会いたい」という、サトルの最後の願いをちゃんと察知して
    サトルに命を救われた日以来初めてあげる咆哮の切ないこと!

    でも、サトルとナナの出会いが、遠く離れた会うはずのない人たちを温かく繋げ
    人付き合いが極端に苦手な叔母さんに、
    人の輪に加わるきっかけと「自分の猫」を育てる喜びを与え
    そして何よりも、サトル自身、ナナ自身に、きらめくような喜びに満ちた
    5年間を与えてくれたことを、けっして忘れたくありません。

    こんな本に出会えるからこそ、まだまだがんばって生きて
    読めるだけ本を読むぞー!と思っているけれど
    「その時」がきたら、ママのお棺にはぜったいこの本を入れてね、と
    娘には頼んでおきました。

    そうすると、万が一、娘が本を読むようになった時、
    この本の感動が味わえなくなる惧れがあるので
    娘の分の『旅猫リポート』は、今度は私が買って、プレゼントするのです♪

    • kさん
      はじめましてkです。
      評価が高くて気になってフォローさせていただきました。
      まろんさんのレビューは、まるで物語のようで読んでいてとてもほ...
      はじめましてkです。
      評価が高くて気になってフォローさせていただきました。
      まろんさんのレビューは、まるで物語のようで読んでいてとてもほんわかした気持になります。今後読む本の参考にしたいと思ってお邪魔させていただきました。こちらこそよろしくお願いします。
      2013/02/13
    • まろんさん
      kさん☆

      コメントありがとうございます!
      本のレビューにかこつけて、ついつい身近にあったうれしいことや
      書いておかないと忘れてしまいそうな...
      kさん☆

      コメントありがとうございます!
      本のレビューにかこつけて、ついつい身近にあったうれしいことや
      書いておかないと忘れてしまいそうな、こどものころの話を
      心の広いブクログ仲間さんたちが温かく受け入れてくださるのをいいことに
      書いてしまっているのですが、
      そんなふうに言っていただけて、ありがたい限りです(*^_^*)
      私こそ、kさんの本棚には、未読のおもしろそうな本がいっぱいで
      読みたい本リストに張り切ってメモしているところです。
      これからもどうぞよろしくお願いします!
      2013/02/13
    • だいさん
      もう、1年くらい前に読み終えていた。
      ちょっと、感じたことを書くのには、温めすぎたかな?
      過ぎし日々を思い出しております。
      もう、1年くらい前に読み終えていた。
      ちょっと、感じたことを書くのには、温めすぎたかな?
      過ぎし日々を思い出しております。
      2014/09/01
  •  これはダメだ。心に刺さりすぎる。愛猫が亡くなって直ぐに読まなくてよかった。きっと余計に愛しくなって、悲しくなって立ち直れなくなっただろう。

     涙が滲むくらいの読書経験は、ドライな私にでもある。でも、これはボロボロと出た。そこに家族が来たから慌てて顔をこすって誤魔化した。

     ほっこりなお話が続いて幸せいっぱいの中、このお話だけは間違っても辛い方には行かないで欲しいと何度も思った。余裕で、「悟がいい人過ぎ。こんなにいい人いるわけないよな」なんて毒づいたりもした、
     でも、もう亡くなったけど、数年前までうちにいた猫のトトは、本当に、この悟レベルで優しかったな。と思い出していると、じゃあもしかして人間でもこれくらい、いい人いる可能性もあるのかな、なんて段々少しだけ思えてきた。良いお話マジックだ。

     悟とナナの世界がとても素敵で、羨ましい。だけど、私にもトトがいたんだな、ちゃんと…と思った。もういないけど、この二人と変わらないくらいしっかりとした絆と愛情で結ばれていた。久しぶりにトトを想って少し泣いた。

     悟とナナが好きな場所に咲いていた紫と黄色の組み合わせでお花を花壇に植えよう。そういえば昨日植えたヴィオラは紫と黄色(オレンジより)だったな。そして映画も見よう。また号泣するだろうけど。

  • はい、泣けました。とってもいいお話でした。
    ネタバレにもなりそうだし、みなさんが沢山素敵なレビューを書いているので今回は割愛。

    本当の猫好きとはなんぞやと考える。
    私の考える猫好きとは決してペットショップで愛猫に出会ったりしない。
    迷い込んで来たり、拾ったり、知り合いがもてあましているのを貰ったり。
    それはある種の偶然、運命みたいなもので猫は向こうからふらりと飼い主の元へやってくる。
    神様の贈り物のように。
    逆を言えば猫を飼いたいと思っていてもなかなか見つかるものでもない。

    猫好きは猫の種類を自慢したりしない。
    チンチラ?アメショー?スコティッシュ?それが何か?
    うちの猫、とっても綺麗な八割れなんだよ。
    うちの猫なんか両足ソックスだぜ。
    うちの猫の尻尾見て、変な形でしょ~。
    え、うちなんて三毛のオスだよ!!(←最強)
    愛猫家の猫自慢てこんな感じだろうか。

    この本に出てくる人々は私の考える猫好きさん達ばかりだ。
    私からまことに僭越ながら猫好き認定証を差し上げたい。

    さて、私が昔一緒に働いていたある女性の話。
    その彼女がある時猫を車でひいてしまったことがあった。
    命は助かったその猫を助けようと、とうに病院が閉まっている夜間、必死に病院を探した。
    やっと一軒の病院にたどりつき助けを求めると、獣医は怪我が治った後もこの猫に責任を持てるなら手術します、出来ないなら治療はお断りしますと。
    彼女は手術をお願いし、猫は助かった。
    退院後、彼女は事故現場近くに沢山の張り紙をして飼い主を探したが結局見つからなかった。
    足が不自由になったその猫は彼女の猫になった。

    この本を読んでふいに彼女の事を思い出した。
    きっと彼女とその猫は運命だったんだろうと。
    サトシとナナがそうだったように。
    私の運命の猫はどこにいるんだろう。
    おまえか?それともおまえか?と我が家の猫達をぐりぐりしてみてみる。
    手ごたえないな~(笑)

  • 猫好きな優しい青年悟と、元は野良の愛猫ナナ(オス)。ひとりと一匹の「最後の旅」の物語。
    猫は得意ではないから入り込めるかなと、その心配は無用だった。表紙の印象からほっこり癒されそうな、そんな心持ちで手に取った本だった。が、不意打ちに物凄い感動、心が締め付けられるようだった。
    なぜ最後なのか、近づきつつある後半にざわざわしながら。
    泣ける、切なくて、運命が惨くて、だけど最後は強さをもらえた。例え、大切な人の姿、形がなくなっても、ずっと心の中で生き続ける。綺麗ごとのように聞こえるかもしれないが、後に次ぐものと、魂はともにあるのだと。そこで強さをもらっていると。少しだけ歳を重ねたせいか、その意味が分かりつつある気がする。人はそういうふうに出来ているのだと。最近、ある人からその言葉をいただきふっと腑に落ちた。

    旧友を訪ねあるく場面では、やっぱり自分も懐かしくなった。友達との出会いは偶然だったなあって。例えば、出席番号が前と後ろとか。なかなか声を掛けられない私は、思い切って話しかけ友達になれた。そういうドキドキした瞬間とか。各場面で自分と重なり、思い出したり、悟とナナ、そして悟の友達やノリコの心情に移入したり、一緒に回想の旅をしているようだった。旅をするストーリーは良いなと思えた。
    悟の境遇が辛すぎて。だけど悟は言う、自分は幸せだったと。何をもって幸せと捉えるか。いまさらながら考えつつ読むことができた。

    特に、Report-3.5 最後の旅は良かったです。
    「浅い弧を描く虹の足はしっかりと丘を踏みしめている。その弧を追っていくと、もう一方の足も別の丘を踏みしめていた。虹の根元なんて僕は生まれて初めて見た。」虹の根元、なんて素敵な表現。私も見てみたい。

    ナナが脱走し、野良に戻って悟に会いにゆく場面はやるせなくてたまらなかったです。

    同じ景色を見ながら言葉を交わす喜び。
    僕らは本当に本当にたくさんのものを見たね。

    私はナナで。いつかは悟の気持ちにもなる。
    私のリポートは続く。

    ラスト数行、これがメッセージだと思う。
    しっかり、伝わりました。

    映画化されていたと知り、アマプラで探したらあった。
    が、さわりだけ見て、止めてしまった。自分の頭で描いたイメージのまま、閉じ込めておきたいなと思ったから

  • ずいぶん前に読んだのは『絵本 旅猫…』の方だったかな。登場人物&猫が皆、過去を背負いながらも懸命に今を生きてる、そして繋がってる。
    清々しい読後感!

  • 泣くのは分かってたんです。
    でも読むのを止められなかった。

    自分もワケあって
    5年間一緒に住んでいた黒猫(ヤミクロと言います)と
    今離れて暮らしています。

    そして5歳で死に別れた親父や
    自分を捨てたお袋と最後に行った家族旅行の地が
    物語終盤の舞台となる北海道だったことなど、
    あまりに自分の状況や生い立ちとシンクロして
    どうにも涙が止まらなかった。


    5年間一緒に暮らしてきた
    サトルとナナという野良猫。
    しかしある理由から
    サトルはナナを手放さなきゃならなくなり、
    引き取り手を探すために
    銀色のワゴンに乗り
    昔の旧友の元へと旅立つことになります。

    ナナは新しい引き取り手と出会う旅の中で
    海の碧さや怖さを知り、
    富士山に圧倒され、
    馬や鹿に驚き、

    サトルが見たナナカマドの実の赤や
    完璧に弧を描いた二重の虹を
    一生覚えておこうと心に誓うのです。


    狩りをできない茶トラの子猫に
    生きる術を教えるナナのシーン、

    ナナと甲斐犬のトラマルの
    主人を想うがゆえの
    一歩も引けない喧嘩のシーン、

    まるで「俺たちに明日はない」の
    ボニーとクライドの名場面を思わす
    詩情溢れるススキの海の中
    ナナとサトルが
    お互いの絆を確かめ合うシーン。

    物語の中の印象深いシーンの数々は
    そのまま自分とヤミクロの思い出と重なり
    どうしようもなく
    胸を焦がしていく。


    最後までサトルの猫で居続けるために
    暖かい場所を捨て、
    野良になることも辞さない
    ナナの誇り高き魂。


    犬も猫も動物はみな
    見返りを求めたりしない。

    ただただ一所懸命に
    愛するだけ。

    動物に触れて
    初めてそれが柔らかいことを知って、

    世界は自分が思っている以上に
    柔らかくて脆いことを知ったし、

    震えてるあったかい小さな体は
    日だまりの匂いがして、
    愛しいという気持ちを初めて覚えた。

    言葉を話すことのできない彼らに
    人間が教わることは
    たくさんあります。


    しかし有川さん
    箱型のテレビは猫の乗り心をそそるとか、
    猫はいくら飼い主であろうと
    己の信ずるところに従うなど
    猫のことをホンマよう分かってるなぁ(笑)


    ああ〜
    無性にヤミクロに
    会いたくなりました(>_<)

    • まろんさん
      円軌道の外さん、こんにちは!

      なんと、愛するヤミクロちゃんと今は離れ離れの生活なんですね。。。
      先だってのお引越しと関係しているのでしょう...
      円軌道の外さん、こんにちは!

      なんと、愛するヤミクロちゃんと今は離れ離れの生活なんですね。。。
      先だってのお引越しと関係しているのでしょうか。
      猫好きなら涙なしには読めないこの本ですが
      そんな状態で読んだら、なおさら涙が止まりませんよね。

      サトルの気負いのない優しさ、ナナの愛と覚悟に胸打たれる物語でした。
      人と猫が一緒にいられるのは、長くても十数年。
      私も、交通事故のせいでたった3年しか一緒に過ごせなかった子もいました。
      でも、長かろうと短かろうと、巡り会って共に過ごせた幸せは消えることはありませんよね。
      ヤミクロちゃんにも、円軌道の外さんの気持ちはしっかり伝わっていると思います!
      2013/05/29
    • 円軌道の外さん

      まろんさん、
      コメントありがとうございます!

      そうなんですよ〜(>_<)
      今会社の寮に入ってるので
      猫飼えなくて
      泣く...

      まろんさん、
      コメントありがとうございます!

      そうなんですよ〜(>_<)
      今会社の寮に入ってるので
      猫飼えなくて
      泣く泣く預かってもらってる状態なんです…

      あのワガママ坊主が
      何度となく
      預け先を逃げ出そうとした話を聞くと
      いても立ってもいられなくなるし、
      1日でも早く迎えに行ってやらなきゃって思います(T_T)


      まろんさんもツラい別れをされてるんですよね。

      動物は、特に猫や犬は
      ちゃんと記憶があるらしいですよ。

      優しくしてもらったことは
      忘れないんです。

      猫は臆病やから
      人間の笑顔が一番好きやし。

      だから辛いことがあったとしても
      最後の最後まで
      笑顔見せてあげて
      楽しい記憶を小さな心に
      残してあげたらって思います。

      それが人間ができる
      一番の恩返しになると思うし。

      例え別れても
      共に過ごした思い出は消えてなくなるわけじゃないですよね。

      2013/06/12
  • 昔、高校生の時に真っ白くてちょっとふっくらしている子供の猫が庭に遊びに来ていた。まだ、成長仕切れてない子供体型と、まん丸で瞳孔が最大限に開かれた黒目の愛くるしさに、思わず私はかがみ込んで「おいで」と手のヒラを上にしてその猫に差し出した。おそらくは飼い猫あるいは飼い猫だったのであろうその子は、何の躊躇なく私に近づき、すり寄ってきた。それがまた、可愛くて、しばらく私はその子と遊んでいた。そこに母が加わりしばらく一緒に頭を撫でていたのだが、「早く、お家にお帰り。またね。」と、母は私を連れて家に入った。猫は不定期にふらふらと同じくらいの時間にやって来るので、しばらく遊んで帰らせた。
    初めて会った時は真っ白だった毛並みがだんだん薄茶に変わっていくその猫に母が「野良ちゃんになったの?」と聞いていた。
    猫は答えることもなく、ただ自分が来たい時にきて遊んで帰った。

    それからしばらくて、柴犬を飼い始めて、猫は全くこなくなったし、私も不定期に来ていた猫のことは忘れてしまった。

    そして、この本を読んだ時に「やっぱり俺さまで、書かれている」と、昔遊んだ猫のことを思い出した。

    物語は、元野良猫・ナナは、サトルの銀色のワゴンのボンネットがお気に入り。ある日、交通事故で怪我をした時、サトルに保護されてから「サトルの猫」となる。サトルはある理由で、ナナを手放さなければいけなくなり、彼の昔の友人たちのところにナナを連れてお見合いに行く。小学校の同級生・コースケ。中学校の同級生・ヨシミネ。そして高校の同級生・スギとチカコ夫婦。しかし、お見合いは失敗に終わり、サトルとナナの旅も終わりを迎える。

    空前の「猫ブーム」で、『猫好きの方この本を読んだら、ナナがどこにも貰われることがないので、ひょっとして保健所なぁ?』とか『サトルの過去? でも、涙腺崩壊のように書いているけどなぁ?』など考えていたが、サトルがナナを手離す理由が出てこない…私のひょっとしての予想が、本作の後半で的中した。思った通りの展開だったし、作者の「ここで泣かせよう」というのが明らかにわかったものの、やっぱり私も崩壊までいかなかったものの、横にいた主人に「鼻がシュルシュルいってるよ。風邪ひいた?」と、言われてしまった。

    猫って、本当にわがままな生き物だなぁと思っていた、いや、今も思っている。本作でも、野良猫としての誇りを持ち、上から目線で物申す。見直したのは、最後のナナの脱走劇だ。本作で猫はわがままではなく、信念を貫いているような記載があったが、ナナのこの行動の裏づけのように思えた。

    作者の意図(泣かせることが意図ではないとは思うが)ハマってしまった。

  • とても良かった!
    有川さんの作品は、有川さんらしいなあとか、こういうところ上手いんだよなと思いながら読むことが多いんですけど、この作品は作者が誰か途中で忘れていました。

    別れを経験したすべての人に。
    別れを心配しているすべての人に。
    心温まる物語です。

    ある事情で猫が飼えなくなり、宮脇悟は猫のナナを連れ、銀色のワゴンに乗って、旅に出ます。
    飼ってもいいという幼馴染の友人たちを訪ねて。
    ナナは牡猫で、しっぽが数字の7のように曲がっているのです。
    ナナの視点からの話が自然で、サトルとの出会い、5年間の暮らしが楽しげに、そして秘密を抱えたサトルの気持ちもお見通しだったり。
    何とも猫らしくて、賢くて、いきいきしています。

    サトルが小学生のとき、スイミングスクールの友達だったコースケ。
    一緒に拾った猫を飼うのを親に反対されて、大騒動になった経験がありました。

    中学のときの友達の吉峯。
    高校のときの友達のスギとチカコ。
    そして叔母のノリコのもとへの最後の旅。
    転校が多かったサトルには、各地に大事な友達がいました。
    どこかすっきりしない感情を抱えていた友達にも、再会でまた心動くものが。
    サトルはあまりにもいい子なんだけど‥

    叔母のノリコが口下手なのも、何だかそれらしい。
    北海道でのナナの思いがけない行動に、もう‥
    生い茂る草葉が波打つように、雪原にも日差しは降り注ぐように。
    愛溢れる結びつきは、ある限界をも超えていくのですね‥
    猫とのつながりを実感している人には、もちろんのこと。
    哀しみがとけていくように暖かく広がる感覚は、多くの人に読んでもらいたい。
    何かあったときにはもう一度、読みたいと思わせます。

  • 有川浩という作家は、女心をよく分かってる人なんだ。
    “女性が選ぶ、好きな女性作家第1位”に選ばれた人だけに、女性のハートを鷲掴みするなんてのは、けっこう簡単なことなのかな。
    世の中、あまねく男は犬派が多いと思うのだけれど、女性は圧倒的に猫派が多い。
    ぼくのまわりの女性も、猫を見ると「わあ、かわいい」と無闇にはしゃぎたがる。
    ぼくに言わせれば、猫のあの警戒心満々の鋭い眼差しは、なにを考えてるのか想像できなくて、怖いところがありありなのだけど、女性はそんなことお構いなしらしい。
    猫に比べると、犬ってやつは正直すぎるほどの眼差しを向けてご主人様になついてくる。
    それも、嬉しいときは尻尾をぶるんぶるん振ったりして、なんとも単純なのだ。
    「女心は複雑なのよ」とノタマウ女性たちがミステリアスな部分を秘めた猫に魅かれ、単細胞だらけの男どもは馬鹿がつくほど真正直な犬に魅力を感じるという図式なのかな。
    かと言って、ぼくが猫を嫌いかと訊かれればそういうわけでもない。
    あの、触った時のふさふさとした毛触りは、何物にも代えがたい気持ちよさがあるし、ミャーオという鳴き声もかなり男心をくすぐるところがあるのは否定しないよ。
    でも、やっぱり男のぼくとしては単純な犬の方が好きなんだ。

    さてさて、このお話は、女性から支持されるナンバーワン作家有川浩の面目躍如という作品だ。
    悲劇的な生い立ちの男の子サトルと彼に拾われた野良猫ナナとの物語。
    一人と一匹の間には熱い友情が芽生えるのだけど、理由あって手放すことを余儀なくされ、新しい飼い主を探してサトルとナナは日本中を旅することになる。
    その理由とは何かって? これがまたとっても悲しい理由なんだ。
    かわいらしい猫と悲しい運命を持った少年のストーリー。
    それを猫のナナの目線でもって、愛するご主人サトルとの旅についてリポートするんだ。
    出てくるサトルの友人たちもみんな本当にいい奴ばかり。
    コースケも、ヨシミネも、スギとチカコも、それぞれ違う年代で友達になった奴らなんだけど、誰もが優しい。
    サトルとだけ接点を持っていた彼らが、最後に集まってみんなが友達になるとこなんて身体が震えたよ。
    猫と少年と友情、こう来たら、もうお涙頂戴の鉄板作品でしょう、女性にとっては。
    男のぼくだって、ところどころで涙と鼻水が零れ落ちてきて困ってしまったのだから。
    女性が読んだら、もうティッシュペーパーなしには最後まで読みきれないんじゃないかな?

    内容についてはネタバレになっちゃうから詳しくは書かないけれど、猫好き女性にはたまらない感動作品であること間違いなし。太鼓判押してもいいぐらい。
    有川浩さんが女性に人気がある理由をまざまざと教えられた気がしたな。

    有川ファン、猫好きの女性に一刻も早く読むのをお薦めしたい本だよ。
    図書館の予約待ちもすごいだろうなと思って調べたら、ぼくの街の図書館では10冊在荷で217人待ちだ。
    11月15日の発刊日から約一ヶ月経ったからそんなものかな。まだまだ増えそうだけど。
    ちなみに駅前の本屋さんに、何故かサイン本が山積みしてあった。有川さん、こっちに来たのだろうか?
    1470円のサイン本、いっそのこと保存版として買っちゃおうかと、犬好きのぼくでも悩むぐらい、良い本だ。

    • miyabijudiceさん
      長文レビューお疲れ様でした(*゚▽゚)ノ。
      そして花丸&フォローありがとうございました。

      ブクログって個人的にメッセ送れる機能がないのでこ...
      長文レビューお疲れ様でした(*゚▽゚)ノ。
      そして花丸&フォローありがとうございました。

      ブクログって個人的にメッセ送れる機能がないのでここに書かせていただきます。

      大人になって花丸もらうことって、なかなかありませんよね。だから単純に嬉しいです。
      ヤタ━━━━━━ヽ(゚`∀´゚)ノウヒョ ━━━━━━!!!っとテンションが上がります。

      そしてこの「猫旅レポート」も私の読みたい本リストに入ってまして…。
      しかも、ナニナニ有川ファン、猫好きの女性に読んでもらいたいって!私のことじゃないですか!
      リア猫3匹かっておりますので。しかも全部♀。
      猫の魅力を語り出すと、こんな狭い欄ではとても足りませんので省きますが、とても魅力的です。

      ティッシュを用意して読ませていただきます。

      どうぞこれからもよろしくお願いいたします。
      よろしく(^ー゚)ノ
      2012/12/13
全1486件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

高知県生まれ。2004年『塩の街』で「電撃小説大賞」大賞を受賞し、デビュー。同作と『空の中』『海の底』の「自衛隊』3部作、その他、「図書館戦争」シリーズをはじめ、『阪急電車』『旅猫リポート』『明日の子供たち』『アンマーとぼくら』等がある。

有川浩の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三浦 しをん
伊坂 幸太郎
有川 浩
三浦 しをん
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×