名もなき花の 紅雲町珈琲屋こよみ

著者 :
  • 文藝春秋
3.21
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本棚登録 : 308
感想 : 43
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163818603

作品紹介・あらすじ

ある小さな「事件」をきっかけに止まった人々の時間。お草さんは、時計の針を動かすことができるのか。

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ3
    65歳の時、長年の夢を叶えようと一念発起して小蔵屋を開店。もう75歳だったか77歳だったか
    通りを一人で逆に歩いているみたいな心細さを感じるお草さん
    ショーウインドウに映った自分と目が合い、まだ大丈夫
    元気!と自分を奮い立たせる

    こんな気持ちよく分かる
    鏡に映った顔を見てぞっとしていつのまにと驚き落胆する自分
    しかし、時として気力が湧いてきて、まだまだ頑張るぞと背筋を伸ばす自分

    このシリーズを追いかけているのも、共感できたり、元気をもらえたりする部分が多いからだろう

    無二の親友の由紀乃さんの言動にあれ?と感じる部分が増え、顔にこそ出さないが不安が押し寄せるお草さん
    そりゃそうだろう
    由紀乃さんとのふれあいは、この物語にとってなくてはならない大切な要素だ
    お互い一人暮らし同士、お重にチラシやお稲荷さん、五色そばを詰めて、時にはポトフのお鍋持参で、由紀乃さんの家で夕食を共にするシーンが私は好きだ
    心の底からほっこりし、羨ましくも思う

    夫に先立たれた時、こんな友達がそばにいてくれたらどんなに素晴らしいだろうと
    夫が先に逝くとは限らないのだが・・・

    不安を抱えていた由紀乃さんも入院し、体の隅々までチェックしてもらい、再び元気になって戻ってくる
    お草さんの喜びようと言ったら、かわいいぐらい

    アケビをあしらった秋、薄ピンクのショールを使った
    「春を待つ」のディスプレイ、なんてセンスがいいのだろう

    今回の事件は、源永寺から見つかった小蔵屋の袋に入ったゲンエイ円空像
    様々な人の愛憎・思惑が交錯し、頭がぐちゃぐちゃになりそうだったが、何とか一件落着

    ここまできたら全巻追いかけなくっちゃ

  • ミステリーとして読んでませんが、、、好きです。

    文藝春秋のPR
    「お草さんが珈琲を仕入れるミトモ珈琲商会が代替わり。2代目の女社長には小蔵屋の近くに出店する計画が……。人気シリーズ第3弾。

    担当編集者から一言
    『萩を揺らす雨』でブレイクした、珈琲豆と食器を商うおばあさん、お草さんが街の事件を解決する「お草さん」シリーズの第3弾『名もなき花の 紅雲町珈琲屋こよみ』がいよいよ刊行。お草さんに珈琲豆を卸す会社が代替わりという騒動の過程で知り合った、民俗学の研究をする勅使河原先生と美容師であるその娘ミナホにまつわる過去が今回の主なストーリーとなります。お草さんならではの方法で、彼らの気持ちと止まった時間をときほぐしていきます。今回もコーヒーのような大人の味わいをぜひ、お楽しみください。(IY)」

  • 観音様が見下ろす紅雲町で、コーヒー豆と和食器の店「小蔵屋」を営む杉浦草が、街で起きた小さな事件の謎を解き明かす「紅雲町珈琲屋こよみ」シリーズの第3弾。

     いわゆるコージーミステリと言えないこともないけれど、この紅雲町シリーズはこれこれと限定できない独特の世界観があって、なんとなく読み続けてしまうのは、主人公のお草さんの人柄なんだろう。
     年を重ねていくことへの不安、いつまでも消えない後悔を抱えながら、毅然としている、(つまり表紙の絵とは全く違うのだけど)その潔さ……登場人物が必ずしも善人とはいかないところも物語のおもしろさか。もちろん、季節感を取り入れた小蔵屋のレイアウトも楽しみなシリーズです。

  • 【収録作品】長月、ひと雨ごとに/霜月の虹/睦月に集う/弥生の燈/皐月の嵐に/文月、名もなき花の

  • (No.13-6) 紅雲町シリーズです。

    『最近の草の心配事。それはコーヒー豆を仕入れているミモト珈琲商会の社長交代の知らせ。前社長は会長に、その長女が新社長に就任したとの挨拶状が来たのだ。前社長は草を気に入って、小蔵屋がコーヒー豆と和食器の店に変わった当時からずっと特別に薄利で豆を卸してくれていた。社長が交代したからには、今までと同じとは行かないだろう。

    由紀乃のことも気になっていた。観劇や旅行が好きで、月に一度は美容院に行っていた由紀乃。今は美容院をやっている遠縁のミナホが時々来て髪を整えてくれているが、それにも遠慮がちだしほとんど家に閉じこもっている。外へ連れ出してあげたいが、草自身が年寄りなのに。

    その上、草に珈琲の指導をしてくれたバクサンの店で以前アルバイトをしていた萩尾が難問を持ち込んできて・・・・。
    しかも萩尾とミナホの間にも何か緊張関係がある様子。』

    微妙な人間関係が絡まりあい、誰もがちょっと隠し事をしたり、悪意を持ったり、善意がすれ違ったりします。
    草はいろいろ気をもみながらも、知ったことを自分の中だけに収めておくことがほとんど。だけどやっぱりこれだけは、と思うことは自分の時間を削ってでも行動します。そういう草が好きです。

    芸者だった貴美路のことでは、草が調べて思いついたことで解決しました。草がしつこく調べなかったらどうなっていたか。
    貴美路もきっと感謝しているだろうと思います。

    連作短編の形をとりながら全体で流れる物語がある、というのは前二作と同じです。そしてやっぱりビターでしたが、何となくビター度が増えてる感じを受けました。静かだけどきつい。だけどそこが良かったです。

    お草さんにはこれからも達者で小蔵屋を経営して欲しいな。

  • お草さんシリーズ第3弾

    今回はそんなにハラハラする場面もなく、萩尾さんの話しが全てだったんだけど…

    なんかダラダラしちゃってどうもサクサク読み進めれなかったなぁ

    2017.7.21 読了

  • 前述のとおり、現在は通勤の途中で読むのでどうしても10分20分の細切れ読書になります。
    この本は細切れにぜんっぜん適してなかった・・・・・・・・・・! くうっ・・・・!

    面白かったのに、その面白さが全然わからんかった。
    ほんまにわからんかった。
    そもそも相関図から想像しにくかったのに、今回はお草さんや久実さんよりも勅使河原関係の人たちの話やったもんね・・・。

    (ちゅうかそもそも勅使河原って誰。今回初出よね? 違うんかな、由紀乃さん関係で今までサラッとでも登場してたっけ? いやいや、してへんはず・・・)

    過去にとらわれている、と、いう主軸やなということはわかるんやけど・・・。
    あと、それぞれがそれぞれに違った形で気遣っているということとか。

    客観的に見たら、いくら気遣っても過去のあやまちは取り戻せないのだし、ましてや当人たちが「なかったこと」に、できないのだったら、いつまでもこだわるより次の世界へ旅立つほうが建設的なのではないかと思うけど、

    なかなかそんなんできひんよねー! (しみじみと)

    そういう意味では、このシリーズ特有の
    「目に見えてわかりやすい解決はない」
    ちゅうのが今回は、わかりやすい解決を(ある部分は)してたかも・・・。

    いや、わかりやすい解決は和解か。
    結局和解はしてへんから、わかりやすい解決はしてへんのか(笑)。

    とにかくこのシリーズは、登場人物が
    「あのとき、ああしていればよかった」
    に、とらわれている本やと思う。

    ほんでさらに、「ああしていれば」を、取り戻すために努力し、かつそれが叶う筋書きでもない。
    ただ、むしょうにコーヒーが飲みたくなる本ではある。笑

    先日友人がとてもおいしいアイスコーヒーをいれてくれたのに感化されて、私もアイスコーヒーなんぞをいれてみようかな!
    ちなみに、インスタントで作ったっていうのよ。
    コーヒーにしろ紅茶にしろ、ほんまおいしい水っていうのが大事よねー。

    またじっくり読み返そう。

    (2015.07.25)

  • 三作目にして長編でした。草さんの思いやりや観察眼の鋭さが光る物語。萩尾はちょっと好きになれないキャラで、その萩尾が全編に渡って出てくるもんだから途中からやや苦痛にも感じ…。藤田の嫉妬心も恐ろしかったし、このシリーズはほのぼのした所が少なくて良いような悪いような笑 ややぼかされるオチもあるのでモヤモヤしますが、そこもまた味の1つなんでしょうね。

  • 小蔵屋に正義感が空回り?している新聞記者の登場
    彼の持つ過去が浮き彫りになり、現代につながるが、それは淀み腐った関係しかなかった
    ・・・草さん、なんとかして!

  •  ミトモ珈琲商会の会長と娘の新社長の話、某家具屋さんのことを思い浮かべてしまったが、会長も新社長もいい人だった。間に人を介さずに面と向かって話すのって大切!
     “ちょっとひねくれた柴犬みたいな顔”の萩尾くんが、霜月から文月の話に。

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著者プロフィール

1964年、埼玉県生まれ。群馬県立女子大学文学部美学美術史学科卒業。2004年、「紅雲町のお草」で第43回オール讀物推理小説新人賞を受賞。著書に「紅雲町珈琲屋こよみ」シリーズ『誘う森』『蒼い翅』『キッズ・タクシー』がある。

「2018年 『Fの記憶 ―中谷君と私― 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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