夜の隅のアトリエ

  • 文藝春秋 (2012年12月14日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (208ページ) / ISBN・EAN: 9784163818801

作品紹介・あらすじ

純文学作家屈指の文章家が描ききる、女のがらんどうの心



女はどこか知らない町で何者でもなく生きようと、一人北国へと逃れる。がらんどうで妖しい実存的生を描き切るまったく新しい純文学。

みんなの感想まとめ

実存的な生を描いたこの作品は、女が自らの過去を捨て、北の町での放浪を通じて自分を見つめ直す物語です。主人公は、周囲の男たちに翻弄されながら、逃げることが生きることだと感じています。静謐で美しい言葉で紡...

感想・レビュー・書評

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  • う~ん、と唸らずにいられないほどの完成度の高さ。痺れるほどの文章力。
    明確に純文学とカテゴライズされるか微妙だが(帯に純文学と書いてあるので純文学なんだろう)、久々に純文学でここまで読ませる作品に出会った。

    東京で美容師として働く田辺真理子は、ある出来事をきっかけに今までの自分をすべて捨て去って北の街へと流れていく。
    ラブホテルの受付で働く一方で、裸婦モデルをするのだが・・・。
    間借りしている部屋の家主、ラブホテルの館主、彼女が放浪の旅に出るきっかけとなった元恋人。
    彼女の周りには陰をはらんだ男たちが次々をあらわれて彼女を翻弄していく。

    逃げることだけが彼女の生きること。
    でもいったい何から逃げているのか。
    彼女にとっての生とは何なのか。
    男たちの死によってのみ彼女は生かされているのか。
    きわめて静謐で美しい言葉で描かれる“生”の物語。

    純文学とはいえ、難しい言葉はほとんど出てこないしさらっと読める。
    しかしながら深い。
    木村紅美の作品に出会えたことに感謝。
    これからも追い続けたい。

  • 木村紅美さんは初めて読み、別のも読んでみたいと思った。

    とはいえ、感想となると難しい。
    何て言えばいいのだろう?

    いろんな要素がぐぐぐっと詰め込まれている感じがして、感想としてうまくまとめられない。

    ちょうど梅雨入りした、こういう曇天の日に読むといいと思う。快晴は似合わない。そういう感じ。
    夜の月を見上げて、何を考えるではなくぼんやりと見詰めているとき、心に何かを感じる、そういうような印象。


    帯には
    <実存的生を描き切った、静かに読者を襲うまったく新しい純文学>
    とある。
    確かにそういう感じでもある。こういうトーンの小説は好き。
    純文学とあるけれどこ難しい感じはなくあっというまに読めてしまう。


    じわじわと暗い気分になった。心に穴を開けられたような感じがした。
    でも暗い気分になったり心許ない感じになったのはただ実際の天気が悪いせいかも知れない。


    人々がリアルで良かった。人ってこんなもんだよなと思う。
    人は脆い。だから現実から逃げる。だから何か拠り所を求める。

    逃げないと生きていけなかったり、もう生きることさえ放棄したりする。

    簡単な事でこれまでが壊れてしまうこともある。後ろめたさや居心地の悪さは人を別の人にしたり別の場所に追いやったりする。

    人の優しさや親切、人と人はかかわり合ってしか生きていけないということ、そういうものを拒否して踏みにじる主人公。

    軽薄で自分勝手なこの主人公のことをダメな人はダメだろうと思う。そうなるとこの本を読むのはしんどいかもしれない。
    でも私は割と分かるところが多かった。それに、何となく、主人公は人物というより観念のような、人の心にある何かの形のような感じがした。うまく言えないけど何かというのは生への執着のようなもの。彼女が生そのものを体現しているのだろうか?

    考え過ぎてわけが分からなくなってきた。 

    私は結構好き。良かったと思う。


    それにしても、木村紅美さんは1976年生まれで私よりも若い。そういうのを知っちゃうとすごいなーと褒めたくなってしまう。

  • 前作の「春待ち海岸カルナヴァル」は勿論、「黒うさぎたちのソウル」も「見知らぬ人へ、おめでとう」も未だ読んでいない。。。早く読まなきゃ!

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    「女はどこか知らない町で何者でもなく生きようと、一人北国へと逃れる。がらんどうで妖しい実存的生を描き切るまったく新しい純文学。 」

  • 裏寂しい雪国の様子が胸にささる。名前を変えてまで、寂しい町を選んで渡り歩くのは何故なのか。できるだけ自分で考えないでよい仕事を選ぶ。その方が楽だからだろう。しかし、そこから抜け出さずに老いていく主人公に、希望が全く見いだせない。
    その暗さが寂れた雪国の町の描写とマッチしていた。

  • 美容師を辞め、住んでいた部屋からも引っ越して
    真理子という名前すらも変えて
    北へ北へとやってきた先での生活。

    新たな名前を得て、理容室の2階で生活するようになり
    たまたま紹介してもらった近所のホテルの受付と、自分で見つけたヌードモデルの仕事。

    ホテルの主人に頼まれて、病気の奥さんの目を盗んでヌードモデルのアルバイトをしていること。
    雪に閉ざされた貧しい町で、人の情を自ら断ち切って生活していく姿。

    かつて住んでいた街で、恋人が自殺してしまったことに責任を感じ
    何もかもを捨てて移り住んだ先で
    好意的に接してくれたホテルの主人すらも、亡くなってしまった。

    何者でもなく淡々と流れるままに土地や仕事を変えて生きていく様。
    桜木紫乃さんみたいな雰囲気。

  • 次から次へと住む場所を移して行動力はあるんだろうけど、何に対してもすごく無気力な感じのする主人公を好きになれない。それに他人を傷つける可能性のある嘘を平気でつく人は不快だ。

  • ひたすらに薄暗い。
    北のさびれた町で、先の見えない生活を送る人たち。

  • 15/09/16
    表紙の美しさに惹かれて手に取った。
    美しい文章を淡々と読み進めて虚しさが残った。
    最後の文章も美しくて絶望的で良い。
    “雪灯りに照らされうたたねをし、揺られながら、朝が訪れるまえに、自然とそのまま目ざめなくなる日がくることを夢見る。上手くいくだろうか。くちびるがほころぶ。帰る場所はどこにもない。”(P200)

  • 新しいお好み作家さん探しで手に取った。

  • 読み終えて、これほどまでに空虚感を感じた作品って無いな。全体的に暗い雰囲気の中、北国という地で更には無し全般に暗さが増す、更に更に主人公の流れゆく様が追い打ちをかける。ただここまで暗い流れの中、最後に堕ちるのかと思いきや、流れを続けていく。不思議な作品だった。冬の読書には不向きだったな。

  • 今までの関係を捨て、新しい環境で生活する主人公。寂しさを感じるも羨ましい。

  • まったくよくわからなかった。

  • 全体に、死の雰囲気が漂ってる。共感できる部分が何もなかった。タイトルに惹かれて借りたけど完全に失敗した

  • 保険証を盗んでは名前を変えて生きていく女性。流れてきた街でラブホテルの受付をしながらヌードモデルも体験。何なんだろうな。主人公の気持ちがわからない。でも作品は面白く読めた。

  • 保険証を盗んで、
    他人として、人に触れないようにそっと
    渡り生きていく。


    エロティシズム。

  • 美容師だった田辺真理子は店を止めて、阿部ゆり子となって雪深い町に移り住む.理容室の2階に住み、旅館の受付のアルバイトをする.小林百合子の名でヌードモデルの仕事もしたが、旅館の主人がたまたま描く側にいて、個人的なモデルを依頼される.その後神保綾、中村貴恵と名前を変え、最初に住んだ町で自分がモデルになった絵を見つける.ここで書名の意味が分かった.何か寂しい物語だが、主人公の女性の心理状態が分かるような気がした.

  • どういう生い立ちをしたらこんな流転の人生を送れるのだろうかと思う一方、たまにすべてを投げ捨てたい自分もいるので、ちょっと羨ましかったり、得も言われぬ感覚で読んだ。
    ただ、「幸福な人生って何だろう?」の疑問が終始付きまとっていたのは事実だ。
    しかし、今の自分は主人公と違って人とつながっている方が心地よい。この気持ちに忠実に生きる方が今は良い。

  • むなしい感じ。

  • 今まで色々な小説を読んできたのだが、本書ほど空虚に覚えてしまうような本は存在しない。
    ある女性が都会で夢破れ、北国へ。その北国で理髪店に住みながらホテルで働く日々、その中で様々な人間と出会い、自分の生き方にさまよう日々。さまよいながら己の空虚さに気づき、それでもなお活路を見いだすことができず、結局いつもの毎日に元通り、「絶望」をすることなく、「堕落」でもなく、あくまで「空虚」という言葉しか出てこなかった一冊である。

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著者プロフィール

1976年生まれ。2006年、『風化する女』で第102回文學界新人賞を受賞しデビュー。2022年、『あなたに安全な人』で第32回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞。他の著書に、『月食の日』『夜の隅のアトリエ』『まっぷたつの先生』『雪子さんの足音』などがある。


「2023年 『夜のだれかの岸辺』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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