棺に跨がる

著者 :
  • 文藝春秋
3.38
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本棚登録 : 137
レビュー : 33
  • Amazon.co.jp ・本 (143ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163820705

作品紹介・あらすじ

私小説を再生させた著者による非道の連作集。貫多こそ人間の生の姿だ!哄笑、破裂する文学

感想・レビュー・書評

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  • 2019/2/1購入
    2019/2/3読了

  •  「秋恵もの」ばかりが4編並んだ最新短編集。

     今回はわりと正攻法で作られていて、4つの短編が時系列順に並んでいる。
     その4編を通して、秋恵の肋骨にヒビが入るほどのひどいDVで2人に決定的な亀裂が入り、ついに秋恵が貫多(西村の分身)のもとを去るまでが描かれている。

     西村作品の大きな柱となってきた「秋恵もの」も、いよいよクライマックスを迎えたわけだ。
     あとは、出て行った秋恵がほかの男のもとに走っていた(それでも西村に彼女を責める資格などないが)ことを知り、修羅場になる顛末が描かれる作品を残すのみか。

     別離に至る経緯が描かれた作品集だけに、本書のトーンはほかの「秋恵もの」より陰鬱だ。
     それでも、西村は相変わらずサービス精神旺盛で、笑いを誘うギャグ的フレーズが随所にちりばめてある。救いのない話なのに、私は読みながら何度も声を上げて笑った。

     あと、西村は相変わらずタイトルづけがバツグンにうまい。
     本書所収の4編はそれぞれ、「棺(かん)に跨がる」「脳中の冥路」「豚の鮮血」「破鏡前夜」というタイトルで、どれもイメージ豊かだし、古典的名作のような風格があり、強い印象を残す。

  • 同棲相手の秋恵と繰り広げる人間模様。人間存在の情なさと愛おしさに迫る。表題作をはじめ「脳中の冥路」「豚の鮮血」など、全4編からなる連作小説。

    全く共感できない情けない男が主人公なのは、約5年前に読んだ芥川賞作「苦役列車」と同じ。そしてそれなのにズルズル最後まで読まされてしまうのも同じ。「極」私小説の毒にやられるのだろうか。
    (C)

  • 「秋恵もの」。北町貫多に暴行を加えられ、秋恵が部屋を出て行くまでの話。
    これが主観だけで書かれていたら毒が溜まりそうなものだけれど、同じくらい客観的にしかもユーモラスに書かれているので、なんだか救いようのない内容でありながら、一度読み出したら止まらない。突然用いられる横文字にも笑ってしまう。

  • 苦役列車以来の2作目。最後バッドエンドだが少し安堵したのはお人よし過ぎるか。同棲相手の秋ちゃんではなく主人公に。
    前作では「主人公(敢えて、登場人物)は永遠に救われない」と思ったが、この作品では「これがすべてで救われるも救われないもない」に変わった。
    作者のインタビューとか見たけど、居酒屋でたまたま隣に座っただけで嫌悪感を抱いてしまうんじゃないかと思うが、悔しいかな表現は好きだ。

  • 「まるで、ブタみたいな食べっぷりね。」からのオワリノハジマリ。“秋恵もの”の枢軸となる1冊だけに内容は辛く重い。
    が、作品としてのデキは良い。ウラハラである。
    古典的な文体の中に当世風の外来語を組合せ、暗澹かつ陰鬱な内容に一服の涼を漂わせるスタイルも確立。

  • 全て“秋恵もの”の短編集である。「どうで死ぬ身の一踊り」の後日譚であり、同棲していた秋恵との破局に至るまでの話となっている。女にDVを振るい、その被害状況に驚き、ことさらに機嫌をとり、なんとかやり直せないかと画策し、その画策が成功したかのように楽しい一時を迎え、出張?から帰って来るとアパートは蛻の殻となっており、短い置手紙が残されていたという話を実に文学的に記してある。誠に日本の王道を行く純文学のあり方である。秋恵ものはまだ二編あるようだが、それも纏めて一冊にしてもらいたかった。

  • 彼以外の私小説作品を読んだことはおそらくないんですが、読んでいる自分にも主人公の機微が理屈として通じてしまうのが辛いところでして。しかし今の世の人はよくできているんで、主人公に対して反駁したくなる読者が割と多いんでしょうか。彼の作品は3~4冊目ですが、この主人公の名前しかり、各編に名付けられたタイトルの響きがとてもいいですね。おそらく造語なんでしょうが、漢字の並びも語感も妙に収まりがよく感じられます。

  • 【この傑作連作集こそが、私小説の究極の姿なのか】私小説の救世主として純文学界に躍り出た著者の連作小説。同棲相手の秋恵と繰り広げる人間模様。人間存在の情なさと愛おしさに迫る。

  • 心地の良いほどのクズのきわみ。

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著者プロフィール

1967(昭和42)年7月12日、東京都江戸川区生まれ。中卒。新潮文庫版『根津権現裏』『藤澤清造短篇集』角川文庫版『田中英光傑作選 オリンポスの果実/さようなら他』を編集、校訂、解題。著書に『どうで死ぬ身の一踊り』『暗渠の宿』『二度はゆけぬ町の地図』『小銭をかぞえる』『随筆集 一私小説書きの弁』『人もいない春』『寒灯・腐泥の果実』『西村賢太対話集』『一私小説書きの日乗』(既刊六冊)『棺に跨がる』『形影相弔・歪んだ忌日』『けがれなき酒のへど 西村賢太自薦短篇集』『薄明鬼語 西村賢太対談集』『随筆集 一私小説書きの独語』『やまいだれの歌』『下手に居丈高』『無銭横町』『夢魔去りぬ』『風来鬼語 西村賢太対談集3』『蠕動で渉れ、汚泥の川を』『芝公園六角堂跡』『夜更けの川に落葉は流れて』『藤澤清造追影』などがある。

「2019年 『狼の吐息/愛憎一念 藤澤清造 負の小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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