色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

著者 :
  • 文藝春秋 (2013年4月12日発売)
3.63
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本棚登録 : 14098
レビュー : 2269
  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163821108

感想・レビュー・書評

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  • 村上作品はリアルタイムでほとんど読んでいて、村上さん自身も好きなのでファンといえるんじゃないかと思うけれども、ええと、うーん、この作品はわりに「ふつう」だったかな。嫌いじゃないけれども、すごく好きだったとか感動したとかはない。「1Q84」みたいに引き込まれたり圧倒されたりする感じもなかった。正直に言って、なんでみんなそんなに騒ぐの?っていう感じ。(まあみんな読まないうちから騒ぐわけでしかたないけど)。

    村上さんぽい作品だったかなとは思う。美しい言葉と巧みな比喩とアフォリズムと、哲学と純粋さがみっちりつまっているというか。密度が高い。濃い。
    そして本当にピュアな感じ。昔の作品みたいかも。失礼かもしれないけど、60代で書いたとは思えないというか。若い人の作品みたいだなとか思う。

    村上さんの描く孤独感みたいなものが好き。
    でも、もうわたしには村上作品に対峙するというかすみずみまで味わう気力体力がない気がする……。

  • 事前に周りから聞こえてきたあれこれ。
    だからこそ、丁寧に静かに読み終えた一冊。
    イヤホンをかけて、ところどころに表現されたBGMまで聞きながら。

    以前の小説には感じられなかった老成した観が窺えた気がする。
    これをもって「わからない」「ストーリー性が?」「孤独」「放置された」などの
    レビューを拾えば数限りなくある疑問点は、多崎つくる氏にとっては(著者にとっては)故意につくられた読者の感覚の中に残る残像なのではないか。放り出されたイメージを持ったとしたらそれが彼の意図するところ?
    穿った見方をしたなら私たち読者はまんまと手のひらで転がされただけ。

    それでも以前に比べれば、ずっと私は好きです。

  • 読後感から言えば比較的あっさりしてるけど、

    読み進めながら主人公つくるの影が自分に段々重なってきて、

    最終的に本の中に頭を突っ込みながら読み貪りました。

    ---------------ネタバレ------------------


    喪失って言葉が似合うのかもしれないけど、
    主人公つくるが対面したこの喪失に似た経験を自分も
    学生時代に経験したことがあり、

    多感な時期の苦しい経験が重なって
    感情移入しながら
    最終的に"つくるは俺だ"
    なんて思いながら読んでた。

    でもこういうことって誰でも通る道なのかな、
    そりゃいい年になれば語りたくない出来事の一つや二つ経験する人の方が少なくないから。

  • 村上春樹を夢中になって読んでいた青春時代を思い出しました。今思えば『海辺のカフカ』を最後に、私の中では村上春樹に対して気持ちが遠のいていた様に感じます。
    あれだけ世間が騒ぎに騒いだ『1Q84』も私の心にはあまり響かず…。まあでもBOOK2までしか読まなかったので、読み直すのもいいかも。それくらい村上春樹熱が再燃しそうです。

    読書なんてほとんどしない夫からよく「村上春樹ってそんなおもしろいの?」と聞かれるんですが、私はうまく言葉にできないんですよね。何を言っても陳腐な表現になりそうで、「う~ん、世界観がね、いいんよ…。まさに村上ワールド♡」
    なんて語彙力が無いんだー(ToT)

    そんな少ない語彙で表現した“村上ワールド”、今作品はまさにぴったりの様な気がします。
    大切なものを失った喪失感、またそれを乗り越えようとする表現が素晴らしいです。テーマがストレートで分かりやすいというのもまた良かったです。

    しかしいつもながら登場人物が魅力的だったなー。なぜ平凡で地味な生活があんなにも素敵に見えるのだろう、ほんと不思議…。

  • アカ、アオ、シロ、クロ、灰田。
    カラフルな友人と、色彩をもたない多崎つくる。
    乱れなく調和する親密な場所でぴったりと5本指のように
    均衡を保ち過ごしていた高校時代。
    そして突然やってきた破綻。

    葬ったはずの心の奥に沈んだ暗闇を解放して
    真実の自分を明らかにするための巡礼の旅。
    Le Mal du pays。時間の概念を持たず、肉体の檻を出て、
    純粋に理論を飛翔させ、心と心で抱きあう邂逅。

    その先に交わる未来はなくても、傷つきやすく傲慢な季節が終わり、
    過去を受け入れ、真っ直ぐに進む先は光があると。
    許し、許され、愛し、愛され。人生の仄暗い部分こそ蓋をせず
    向き合ってこそ、どんなに夜は長くとも朝の光は美しく差し込む。

    フィンランドの森に浄化されていく想いが美しかった。

    • vilureefさん
      こんにちは。

      素敵なレビューですね。
      この本の世界観を的確に表していて読んでいてとても心地いいです。
      そうですよね、やっぱり☆5つ...
      こんにちは。

      素敵なレビューですね。
      この本の世界観を的確に表していて読んでいてとても心地いいです。
      そうですよね、やっぱり☆5つですよね!!

      普段は顔文字いっぱいハートマークいっぱいのあやさんのレビューが時おり真面目(!?)になるそのギャップがとっても面白い(*^_^*)
      どちらのあやさんのレビューも好きです!
      これからも楽しませてくださいね(^_-)-☆
      2013/07/03
    • 山本 あやさん
      [♥óܫò]∠♡vilureefさん

      vilureefさん、こんにちはー♡

      村上春樹さん、毎度のことながら
      日本人が伏線と驚きのある本に...
      [♥óܫò]∠♡vilureefさん

      vilureefさん、こんにちはー♡

      村上春樹さん、毎度のことながら
      日本人が伏線と驚きのある本に慣れているせいか
      リアリティからの回収なしとか想像の余地のある本は
      酷評されがちですよね[´ー`;]
      フランスだとすごくすんなりと受け入れられそうだけど
      日本ではやっぱり純文学は難しいのかもですよね。
      でも、ほんとステキな世界で☆5ですよねー[*Ü*]

      レビュー!
      自分では意識せずに読んだままのテンションで
      思ったままを書いてるので、感想も雑多な感じに
      なってしまうのかもっ[笑]

      どっちも好きなんて言ってくださってありがとうございますー[´iωi`]♡
      これからもこのまま、丸だし状態だと思いますが
      改めてよろしくオネガイします…[笑]
      2013/07/04
  • 「多かれ少なかれ、人は何らかの点において深く損なわれている。」

    繰り返し彼の作品で提示されるこのテーマ。これを読むといつも元気がでます。そうか、欠陥があっても駄目でもいいのだなと。

    今回は主人公がけっこう頑張って行動してくれてそれによるカタルシスのようなものもありました。まさに巡礼です。

    そしてタイトルの素晴らしさといったら特筆すべきものがあります。

    予約したときは、この意味不明なタイトルから、実験的作品ではないかと危惧を覚えたくらいなのですが、
    読み終えた今、タイトルを眺めているだけで、良いワインを味わったような気分です。

    何ひとつ文句がないので★5つ。

  • 集大成なんじゃないか。

    ムキムキの筋肉で戦った時期は終え、
    不必要なものは削ぎ落ち、
    強靭な骨格が浮かび上がったような。

    簡単に言えば
    主人公自身が喪失者だという事。
    そこにつきる。

    ノルウェーで自殺した親友、鼠、ミュウ、ねじまき鳥で妻が、その役割を負うことで、『他者』という壁でボヤけさせていた
    「書き切れない」が通用した
    真の喪失者の役割。


    今回はその役割を「主人公=多崎つくる」が担い、喪失を真正面から書き切ることに挑戦した。
    本を書いて、本を書いて、やっとそれが出来たんだろう。
    すごいなぁ。



    次はなんだろう。
    同じ物語を
    <僕>を使って書いたら、もう筆を置くんだろうな。

  • 「自分は色彩を持たない」——それは、高校時代の自分が自身について思っていたことだったから(それについての詩まで書いた)、ちょっとびっくりして思わず買ってしまった。誰にでも、そういう時期があるのだろうか。あの頃の私だったら、これだけ突き放して冷静に読んだだろうか。
    流れが素直で読みやすく、いつもの昏さが効いていないような気がするのは、前作とのバランスを取ったのか、多くの読み手に届けたかったのか何なのか、ちょっと勘ぐってしまう。心の中の何かに蓋をしているひとを見たら、この作品をエンデの『鏡の中の鏡』第20章と一緒にオススメしようと思う。

    • 猫野朗さん
      Mrグレイは「モモ」ですし。
      Mrグレイは「モモ」ですし。
      2013/04/13
  • 元々は<無い>ものが、
    人に与える影響の大きさをしみじみ思った。

    例えば…幽霊とか?
    すでにこの世に亡き人達なのに、生きてる者に対するその圧倒的な存在感と言ったら。
    空もそう。
    雲も虹も欲しくてたまらなくて追いかけて行ったのに
    まさか絵に描いた<色>の様な存在だったとは!
    それと、心。
    結局人ひとりを支配しかねない、まるで<核>の様な存在。
    これさえ好きな様に扱えたら、一生楽に生きられそうなのに…。

    物語の主人公「多崎つくる」は大学生の頃、それまで仲の良かったグループから突然の絶交宣言されて以来、死ぬ事ばかりを考える日々を送っていたが、そうされた理由をはっきりさせるべきだという、ある女性の助言によりに、意を決して巡礼の旅に出ることに。
    大人になった他の4(?)人を訪ねる旅は、過去へ戻るのを嫌がる心の震えが伝わってくる様で、嫌な汗が何度も出た。でも支配されているはずの心を、生きようとする<体>のほうが、捻じ伏せていく様は読んでいて爽快感があった。

    きれいはきたない、きたないはきれい。って、どこで聞いた言葉だったか忘れてしまったが、
    無いものはある、あるものは無い。
    生きて考える力がある限り、幽霊を怖れぬ力、空を手中にする方法、心を楽なほうへ導いてやる事、
    全てが可能な気がしてきた。
    いい読書時間だった。

  • 久々に読んだ村上春樹の長編。
    読み終えたあと何だか変な感じ(違和感のような)が残ったから少し検索してみたら、この小説は解決されないままのミステリーだからもやもやが残るのは当然で、推理&解釈を載せているブログもいくつか見当たったから読んでみたら、何となく納得できたような気がする。(その解釈が正しいとは限らないけれど)

    36歳の多崎つくるは鉄道の駅を作る仕事をしている。
    名古屋での高校時代、4人の男女の親友と完璧な調和を成す関係を結んでいたが、大学時代のある日突然、4人から絶縁を申し渡された。理由も告げられずに。
    死の淵を一時さ迷い、漂うように生きてきたつくるは、新しい年上の恋人・沙羅に促され、あの時何が起きたのか探り始める。

    つくるの高校時代の4人の親友たちは、苗字に“赤、青、白、黒”が入っていて、つくるだけが色彩を持っていないことにどことなく疎外感のようなものを抱えていた。
    高校卒業後つくるは東京の大学に進んだが、4人は名古屋に留まったままで、数年後のある時理由も分からないまま4人に縁を切られ、心のどこかでそのことを引きずったまま大人になった。
    大きな不自由があるわけではない。だけど消えない傷として残っている。
    36歳になったつくるに、2歳上の沙羅という恋人が出来る。そして彼女に導かれるようにして、過去の傷の理由を探る旅(巡礼の旅)に出る。
    その中で、過去の殺人事件のことを知る。未解決の事件が結局解明されないまま終わるところにもやもやとしたものが残るのだけど、その事件に対して立てた読者の仮説を読んで、もし本当にそうだったらと考えるとぞっとするとともに、この物語のラストに深みが増す。

    私は村上春樹ファンでもないしアンチでもないのだけど、支持者・不支持者が大きく分かれる理由は、物語的に意味があるのか無いのか不明なままの哲学とか、何となく“お洒落っぽい感じ”の影響なのだろうかと考えたりした。
    哲学については深く読まなくても物語は理解できるけれど、この小説みたいに、もしかしたら表現されているものの先に真実が隠されているのかもしれないものに関しては、その辺もきちんと読み解いた方が良いのかもしれない。
    すべてが違和感に繋がる。計算しつくされたものなのだとしたら、天才が書く小説だと思う。
    読者の仮説は真実ではないから、結局真実は分からないままで、予測しながらもう1度読んでみるというのも面白いかもしれない。

    青春時代に負ったまま消せないままでいる記憶と傷。誰しもが1つくらいは持っているもの。
    巡礼の旅に出てつくるは初めて解放され、そして本当に欲しいものを確認するに至った。
    結局彼の望みはどうなったのだろう。
    知りたいような、知るのが怖いような。

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著者プロフィール

村上春樹(むらかみ はるき)
1949年、京都府京都市伏見区生まれ、兵庫県西宮市芦屋市育ち。早稲田大学第一文学部映画演劇科卒。大学在学中にジャズ喫茶「ピーター・キャット」を国分寺・千駄ヶ谷に開店していた(1981年、店を人に譲渡)。1979年にデビュー作の「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞。谷崎潤一郎賞、読売文学賞、朝日賞など数々の受賞歴がある。2006年にフランツ・カフカ賞、2009年にイスラエルのエルサレム賞受賞。ノーベル文学賞に最も近い作家の一人と言われており、毎年発表時期に日本国内でニュースになる。事実、村上春樹作品は全世界で翻訳されており、アメリカ・アジアでの評価がとりわけ高い。フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーなどの作品の翻訳も手がけ、翻訳家としての仕事も高い評価を受ける。翻訳と創作活動を交互に行うことで、作風を変化させ、作家としての成長を続けている。新作が発表されるたび大きな話題となるが、近年は特別番組「村上RADIO」にてラジオDJも務め(不定期放映)、数々の名言も注目を集める。代表作に『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』。2019年7月31日に『神の子どもたちはみな踊る』が舞台化。アメリカのサックス奏者スタン・ゲッツの伝記翻訳を2019年8月刊行。2019年9月10日発売の『文藝春秋』10月号で「至るところにある妄想 バイロイト日記」を寄稿。

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