往古来今

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 65
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163821306

作品紹介・あらすじ

綿々と続く時間の流れのなかで人は何を感じ、受け入れ、進むべき道を選ぶのか――「過去」と「いま」が交錯する比類なき五つの物語。自分のなかの「小説の力」を信じて新境地に挑んだ、芥川賞作家の意欲作!

感想・レビュー・書評

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  • 何人もの人生が入り乱れて書かれていて、ストーリーを追う読書が楽しい私にはあまり合わなかった。
    流れの中でいつの間にか主体が代わっていて、ぼーっとは読めない本だった。
    じっくり読んだらもっと味わえる作品なのかも。

  • 磯崎憲一郎はなんとなく好きなんだけど、保坂和志色というか話がどこに進んでいくのか全くわからなくて最後まで?なんだけど、読み進められるという不思議な本。

  • 例によって読みながら本当に不思議な気分にさせられる。これはひとえに、日本語の特性、つまり文末に至るまで言いたいことがわからないという特性を利用したマジックだ。長い一文の中で、時を越えることもできるし、別の人物に変身することもできる。あるいは断言を疑問に変えることも、賛成を否定に変えることもできる。そうした特性を存分に試した作品。

  • 【芥川賞作家が新境地に挑んだ意欲作!】綿々と続く時間の流れのなかで人は何を感じ、受け入れ、進むべき道を選ぶのか――「過去」と「いま」が交錯する比類なき五つの物語。

  • 日系ハワイ移民の歴史的史実からヒントを得た『恩寵』や山下清の放浪生活を描いた『裸の大将放浪記』をもとにした『脱走』などの5編の歴史的史実をもとにしたフィクションの短編集から構成されている。特に面白いわけでも、興味深い作品というわけではないけれど、磯﨑憲一郎という作家の原点のようなものを感じさせる。

  • 著者の作品はこれが初めて。ぶつ切りの時間とエピソードがランダムに繋がり取り留め無い。ところが表層を作為的に重ねてくるので流れが生じる。ふと立ち止まり振り返る。そんなことを繰り返しながら読んでいるうちに世界が狭まった。時間と場所を飛び越えジグザグ往来しながらどんどん個に収斂する反比例はちょっとめずらしくて面白かった。人は居場所を求めて彷徨い続ける。ここではないどこかは過去の記憶に既出する。元力士の郵便配達員、山下清、ハワイ移民のエピソードがとてもいい。

  • ぐるぐるする小説は、好きだ。視点はいつの間にか移り変わり、時も場所も一足飛びに、改行もしないで時には読点による区切りだけで、言葉が連なっていく。螺旋階段をのぼるように、あるいは降りるように。しかし、人の思考とは得てしてそういうものではないだろうか。自身の過去を振り返っていたつもりが、その中のある事物を契機に別の事柄が連想されて、始まりが何であったのかも思い出せなくなる。何物をも意図しない、言い換えればオートマティックな思考においては、それはよくあることだ。これはシュルレアリスムの系譜に連なる小説なのかもしれない。
    そして、小説の可能性について。実験小説として、面白い試みだったと思う。

  • 主人公が誰なのか?今どんな話をしてるのか?時代ははいつなのか?
    と、???ばかりが浮かぶ本だった。
    段落が少なく延々と語られる文章がとても読みにくかった。
    作者はなぜこのような難解な作品を書こうと思ったのか?

  • タイトルが示しているとおり、現在・過去が混在した記憶の発露が連続したイメージで書き込まれているせいか難解。

    著者の分身と思われる50代の男性が過去を回想する物語かと思っていると、突然に誰かが乗り移ったかのように第三者の話が展開しだすという不思議、、、

    このスタイルは、どの作品にも多かれ少なかれ踏襲され、フラッシュバックのように脳裏に浮かぶイメージによって、時と場所を越えた他の人物の物語となっていく。

    こうした飛躍するストーリーやイメージの連続をナンセンスと思わずについていければ、面白さも生まれるというもの。とはいえ、著者もあとがきで言っているように「大いなる失敗作」と受け取ってもおかしくない。

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著者プロフィール

1965年生まれ。商社勤務の傍ら40歳を前に小説を書き始め、2007年に「肝心の子供」で第44回文藝賞受賞。2008年の「眼と太陽」(第139回芥川賞候補)、「世紀の発見」などを経て、2009年、「終の住処」で第141回芥川賞受賞。その他の著書に『赤の他人の瓜二つ』(講談社)がある。

「2011年 『小説家の饒舌 12のトーク・セッション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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