調律師

著者 :
  • 文藝春秋
3.45
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  • / ISBN・EAN: 9784163821603

作品紹介・あらすじ

仙台在住の著者が、3.11を初めて描く現代小説ある出来事がきっかけでピアノの音を聴くと「香り」を感じるという「共感覚」を獲得した調律師、成瀬の喪失と再生を描く連作短編。ピアノ調律師の成瀬玲司は、音を聴くことによって香りを感じるという「共感覚」を獲得していた。心地よい音は、ワインのような香り、はずれた音は、生ごみのようなイヤな匂いを覚えるというものだ。その「共感覚」は、もともと色として見えていたものが、ある一件をきっかけに香りとして認識されるようになったのだ。玲司は、もともと国際コンクールで名を遺す名の知られたピアニストだったが、とある一件がきっかけで引退し、調律師として著名な妻の父が経営する事務所で、その能力をもってピアノの調律をすることで生計を立てていた。ある日、玲司は、小学生の少女の家にピアノの調律に赴くが、その音にある違和感を感じていた。その少女の弾くピアノに、濁りを感じたからだ。気になった玲司は母親のいない時に、そのことを訊ねると、少女もまた共感覚の持ち主であると明かした。玲司にとって共感覚の持ち主と出逢ったのは二人目だ。それは、10年前に死んだ妻だった。もともと調律師だった妻は、やはり、ピアノの音を聴くことで、香りを感じることができる共感覚の持ち主だったのだ……。妻の死をきっかけに、不思議な能力を獲得した元ピアニストが、妻の妹や友人の支え、そしてピアノの調律を通して最終的に何を獲得するのか……。愛しい人喪失と、人間性の回復を描いた大人のための連作短編小説です。執筆中に、東日本大震災に罹災し小説を執筆することに疑問を感じた著者が、再び小説を通してどのように震災に向き合ったのかという軌跡が見事に下敷きとなった力作です。実際に主人公も震災と遭遇するシーンは、体験者ならではの壮絶かつリアルな手触りが残ります。小説の中で引用される数々の美しい音楽の旋律と、その音に真摯に向き合う主人公の静謐な心が、だんだんと解きほぐされている様に、人という存在の強さを再確認できる小説です。

感想・レビュー・書評

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  • 有名なピアニストだった成瀬は交通事故で妻と自分のピアニストとしての将来を同時に失った。
    今はピアノ調律師をしている彼は「共感覚」の持ち主で、ピアノの音と同時に匂いを感じる特殊な能力を持っていた。
    物語では彼が徐々に喪失から再生して行く姿、また大震災を通じて変化して行く姿が丁寧に描かれる。

    ピアノ調律師にスポットライトをあてた作品を始めて読んだ。
    見たことも聞いたこともない道具やピアノの構造など想像するしかないのだが、不思議と違和感なくすっと馴染んだ。
    影の存在である調律師が果たしてこんなに重要であったとは。
    調律に半日がかりだなんて想像だにできなかった。

    調律師について知るだけでも十分に満足できるが、それに加えて共感覚の記述が面白い。
    共感覚とは音と一緒に色が浮かんだりする能力のようで、成瀬の場合は匂いを感じる。
    時には柑橘系だったり麦芽の匂いだったり。
    ピアノや弾き手に問題がある場合は異臭を感じたりと。
    オーラが見えると言われても疑り深い私は簡単には信じないが、共感覚ならばありえるな、むしろそれって素敵だなと素直に思えた。

    東日本大震災が物語を転換させる重要なポイントになっていて、多少の違和感も感じた。
    しかし作者のあとがきを読んで納得。
    仙台に思い入れのある作者ならこうするしかなかったと。

    マタギもので男臭い重厚な作品で知られる作者。
    その熊谷さんがここまで静謐で情熱を抑えた作品を書いたことに驚く。別人のようだ。
    ショパン、リスト、それからジャズの曲まで。
    作品のそこかしこに溢れ出す音楽が何よりも心地いい。
    美しく心にしみる作品だ。

    • bokemaruさん
      vilureefさん、こんにちは。
      共感覚、とっても興味のあるテーマです!
      著者の今までとは違った感覚の作品でもあるとのこと。
      今度読んでみ...
      vilureefさん、こんにちは。
      共感覚、とっても興味のあるテーマです!
      著者の今までとは違った感覚の作品でもあるとのこと。
      今度読んでみます!
      2013/06/22
    • vilureefさん
      bokemaruさん、花丸&コメントありがとうございます。

      熊谷さんにしては意外なテーマでしたが、予想に反してしっくりきました。
      共感覚っ...
      bokemaruさん、花丸&コメントありがとうございます。

      熊谷さんにしては意外なテーマでしたが、予想に反してしっくりきました。
      共感覚って実在するんですね~、面白かったです。
      レビュー楽しみにしています(^_-)
      2013/06/24
  • ☆5つ

    なんと今頃東日本大震災について語った小説である。少し時機を逸していると感じた。でも作家さんには作品の順番というか、書き溜まっていく時期というものがあって、この小説はそういう時期を経て今の上梓につながっているのだな、ということが作者自身のあとがきを読むことによって分る。
    わたしはたいがい先にあとがきを読んでしまう。その方が本編の中身を呑みこみやすいから。中身が分かってしまってつまんなくなるので読まない、という方達のような読解力がわたしには無いので。

    あ、そうそう熊谷さんの音楽関連の小説にはかなり素晴らしいものがあって、わたしにとっては抜群に面白い作品となる。例え「調律師に大切なものは絶対音感とかではなくて強いて言うならリヅム感である」あ、目鱗とかね。すまぬ。

    • ryoukentさん
      ひやぁー「桜」マークが増えたんなぁ。6つやし。
      あ、おけえさんどもこんばんは、と、一気呵成に書く。火星がおっこってくると落花生という。
      あり...
      ひやぁー「桜」マークが増えたんなぁ。6つやし。
      あ、おけえさんどもこんばんは、と、一気呵成に書く。火星がおっこってくると落花生という。
      ありゃ火星ぢゃないのかい。

      クマが出ない熊谷さんも面白いとおもた。
      クマ以外ではやっぱ音楽かんけーだな。
      たしか『オヤジエイジロックンロール』って作品もあったな。
      どだ!長いな。すまぬ。。。と一気呵成に書く。
      そして火星がおっこってくると落花生と・・・あ、再びすまぬ。
      2013/07/17
    • ryoukentさん
      たわんさん、イイな♪ありがとね。いいなてことはなにかうらやまめしい事があるんでしょうか。
      まあともかく、火星がおっこってくると落花生というの...
      たわんさん、イイな♪ありがとね。いいなてことはなにかうらやまめしい事があるんでしょうか。
      まあともかく、火星がおっこってくると落花生というのですよ。あ、すまぬ。
      2013/07/17
    • ほんやだワンさん
      落花生・・・・・ラッカセイ・・・・・落っ火星、と。

      山田君~、座布団ぜんぶ持ってっちゃいな!
      落花生・・・・・ラッカセイ・・・・・落っ火星、と。

      山田君~、座布団ぜんぶ持ってっちゃいな!
      2013/07/18
  • 鳴瀬玲司は、20歳の若さでピアニストとしてデビューし、華々しい活躍をしていた経歴を持つ調律師。
    彼には、音を香りとして感じる『臭聴』とでも呼ぶべき能力があった。
    しかもそれは、亡き妻の持っていた能力。
    玲司自身は、『色聴』=音に色彩を感じる能力を持っていたのだが、不運な自動車事故で、同乗していた妻と演奏者としての未来を共に失ったとき、さらに『色聴』と引きかえるようにして『臭聴』の能力を得たのだった。

    亡き妻の父であり、元々玲司のコンサートのピアノの調律を請け負っていた調律師、鷹栖の事務所で調律師として働き、さまざまなピアノと演奏者と関わる日々の中で、妻の能力がなぜ自分に宿ったのか、これからの自分はどう生きていくべきかを模索していた玲司は、仙台のコンサートホールで東日本大震災を経験する。


    ずいぶん前に新聞の書評で見て、たまたま出先の図書館で貸出。熊谷達也さん、初読。
    作家本人もあとがきでふれているように、連作短編集でありながら、途中からがらりと作品の方向が変わっているけれど、ご本人がこれでいいと言い切っている以上、そのまま読む。
    実際、アンバランスではあっても、文章が巧みなのか、全体としてそれほど悪くない、と感じた。

    震災前の、いかにも連作らしい、玲司の喪失したものとその後の変化を辿る物語。
    一転して、震災の後は、非現実感そのままに、物語の形はほとんどない。
    妻の遺品と『臭聴』を失くし、初めて“普通の感覚”しか持たなくなった玲司の心もとなさ、復興途上の町の子供たちに届けられたピアノ、玲司の演奏を通して伝わる音楽の力など、『喪失』『不安』『再起』『希望』をイメージさせる出来事を並べたような。

    これだけ色々盛り込んでくると、共感覚についての謎解きや、亡き妻との再会、妻に似た義妹とのことなどが、むしろ余分なくらいに思った。


    そして…さらにどうでもいい些末なことだけれど、章ごとのタイトル文字が、私には無神経すぎると思うほどに大きくて、落ち着かなかった。
    え、普通の大きさにしてよ…と毎回気持ち悪くて。
    共感覚なんてスゴイものではないけれど、装丁や書体に、意外に影響されていることを発見したのでした。

    そうそう、共感覚については何となく予備知識があったのは、『火星の人類学者』という本で読んでいたからだった。
    身近に、文字に色がついて見える知人もいる。
    自分の感じているこの世界のあり方を、全く違う感覚で感じている人がいる。足りなかったり、多かったり。それを伝える方法は…やっぱり言葉になってしまうのか…

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    「音」を「香り」として感じる身体。それが、彼女が私に残したものだった―。仙台在住の直木賞作家が、3.11の後に初めて描く現代小説。

    調律師という仕事は楽器の中でも結構レアなのでしょうか。ギターは自分でチューニングしますので、人にチューニングして貰うというのがあまりピンと来ていませんでしたが、調律のずれたピアノを聴いたときにこりゃ重要だわっと実感しました。ずれててもちょいちょいっと直せる楽器とは違って死活問題ですからね。時間も掛かるしお金も掛かる、やはりピアノというとお金持ちのものって感じしますね。貧乏性って奴でしょうか。
    先日「羊と鋼の森」を読んでひたむきに音に向かい合う青年の静かな情熱に打たれたのはまだ記憶に新しいです。あちらは、音楽に関連の無い男の子が出会った調律という仕事に惹かれて、亀の歩みのように地道に研鑽を積んでいく話で、宮下さんらしい地味だけれども滋味に溢れた小説でした。
    ずっと熊大好き作家として認識していた熊谷達也氏が、ピアノの調律師の事を書いていると知り、興味がむくむくと湧いて読ませて頂きました。こちらは事故で専属調律師の妻と自らのピアニストとしての道両方を失った主人公が、妻の道具を受け継ぎ調律師として生きていく連作集です。妻が持っていた音を匂いとしても感じる「共感覚」を事故後に何故か受け継ぐことになった彼は、調律に行く先々で様々な匂いに直面していくのでした。

    ピアニストの道と妻を失い、人生そのものを失ったような時間を、そのまま凍結させるように生きていく彼の生き方はさぞや辛いだろうと思います。どうしたって忘れられないし、忘れないように自分の心に常に痛みを与え続けるような日々でしょうから。でもわかるような気がします。忘れるのが怖いし、痛みを感じ続ける事で生きていける事ってあると思いますし。しかも東日本大震災がリアルで起こった事で、熊谷さんの心にも虚無が襲い本が書けなくなったそうです。なので途中から分のタッチが変わり、彼の物語に熊谷さんの存在や考えがうかがえるようになりました。儀式として仕方がなかったんでしょうね。表現者としてのけじめがそのあと進むために必要だったのだと思います。
    もしもう一冊見る事が出来るのであれば、純粋に調律と向き合う話を読みたかった気がしています。

  • 共感覚を持つ調律師の鳴瀬。一般的に、音に対する共感覚は、音を聴くと色が見える。それに対し、鳴瀬はピアノの音、それも生の音や演奏を聴く時のみ音に匂いを感じると言う。「色聴」に対し「嗅聴」と言う言葉が使われている。

    これは鳴瀬の過去と現在、調律を頼まれるたびに感じる「匂い」を核にしてピアノを調整して行く過程を書く連作短編集である。途中までは…。7章からなっているのだが、5章まではピアノの調律の細かい描写、ピアノの置かれている環境と音の影響、演奏者の心と音、脳科学と共感覚の研究、この感覚と切り離せない亡妻の思い出、など、ラストに向けて収束していくはずの一貫したテーマがあったようだが、6章で突然転調し、コンサートピアノの調律の為仙台出張に行った鳴瀬が東日本大震災に会い、後にその時の事故が原因で「嗅聴」を失う過程とその後が書かれる。読了後狐につままれたような感じで、「この話は、結局何だったの?」と思った。

    しかし、後書きを読むと、著者はあの震災後、震災以前の自分に戻って書き続ける事は出来ないと痛感し、それ以前の底辺のテーマも、大津波と言う自然の力が変更を余儀なくした。と語っている。そして、人間が紡ぎ出す言葉など、自然の前では全く無力で、それを承知で私達は言葉を探さなくてはならない。言葉に過剰な期待や幻想をいだいてはならない。そこから再出発したい、と書いている。

    作品としてはタブーであるとわかっていながら、テーマを変更した作品だが、あの日を境にそれまでの何かが徹底的に崩れ去り、大切にこだわっていたものがどうでも良くなり、むしろ別の次元へと転化していった、と捉えるなら一人の調律師の引きずっていた過去と、幻想だったかもしれない「嗅聴」が震災と同時に流れ去り、他者の為に今自分が出来ることを無心に続ける本当の調律師になった男の話とも言えるだろう。

  • 漢字一文字で感想を表すなら「揺」。匂いまで感じられそうな音の揺らぎ、人間には為す術もない、大地の揺らぎ、主人公・鳴瀬玲司の絵梨子に対する揺らぎなき想い、第6話目から大きく転調せざるを得なかった、著者さんの揺れる思い…魂を大きく揺さぶられる素晴らしい作品でした。
    数ページ読んでみて、その本と自分の相性がわかる時があります。これは書き出しから五感、六感を持って行かれました。ピアノの鍵盤から「かすかに、生ゴミの臭気が手元から立ち昇ってきた。」すわ、ピアノの中に…⁈ 期待はいい方に外れ、大好きな「共感覚」のモチーフ、1話目読了だけですでにうるっと(;_;)
    実は図書館で2度目の予約本★ 読み出すと一気読了でした。熊谷さん初読みですが、素晴らしい作家さんに出逢えました。
    小説のあり方には賛否両論あるでしょうが、私としては、作品と仕事と人生とご自身にとても誠実な作家さんだという印象を持ちました。
    被災地から帰るのではなく、逃げるような気がする…の文章に涙が出ました。

  • なんと美しい物語。
    ピアノの演奏というか、音の描写も素晴らしい。
    私は音符も読めないし音痴だけど、違和感なくイメージできた。
    この作者の他の作品も読んでみよう。

    ただ、最後の病室のシーンちょっと残念でした。
    あのオチはオブラートに包んでおいても良かったんじゃないかな。

  • 音が匂いとして知覚される共感覚をあるきっかけで得てしまった鳴瀬。 ピアノの調律師として生きる彼が出会う人々。 マタギものを始めとして厳しい自然の物語の印象が強い熊谷さんだけど音楽もお好きな方だったんですね。


    .
    文字や音に色を感じる、なんていう共感覚の概念は知っていたけど、
    そこをひとひねり、匂いにしてしまったところが面白かったです。

    もちろん、いい匂い、悪い臭いがあるわけで、
    それぞれのピアノのみならず、その持ち主が抱える問題に由来する、ということにまで発展すると、
    これはもう、謎解き小説ですよね。(#^.^#)

    元々は音を色として認知していた鳴瀬がなぜその能力(と言っていいのか?)を失い、その代わりに匂いという変わった共感覚をもってしまった経緯が、実は折々の調律エピソードの間に挟まれ、大事な縦軸となっている。

    ただ・・・・ひとつひとつの調律のまつわる話がちょっと底が浅い(すみません、偉そうですね。汗)気がして少々物足りないです。

    後半、東日本大震災の話が大きく関わるのは、仙台在住の筆者を思えば当然なのだろうけど、ちょっと物語の色が変わってしまったような。いや、でも、現場にいた人ならではの筆写には胸が痛く、そこはやはり書かずにはいられなかった、ということなのでしょう。

    • katatumuruさん
      じゅんさん、はじめまして。
      私のレビューをいくつも読んでいただき、花丸もありがとうございます(^^)
      お礼を言いたかったのですが、ここはメッ...
      じゅんさん、はじめまして。
      私のレビューをいくつも読んでいただき、花丸もありがとうございます(^^)
      お礼を言いたかったのですが、ここはメッセージを送る機能がないようなのでこちらで・・・。

      じゅんさんは他のサイトからこちらに移られたんですね。
      私もそうなんです。
      一週間くらい前にこちらにうつってきて、今前の所で書いた感想をうつしている最中です。
      これが結構大変で・・・^^;

      この本はいつも図書館にある本で、いつもあるという事は人気がないのかな?と気になってました。
      じゅんさんのレビュー、参考になりました(^^)
      2013/07/12
    • じゅんさん
      katatumuruさん、コメントありがとうございます。
      こちhらこそ花丸をいただき恐縮しておりましたところ、お部屋にお邪魔してレビューを読...
      katatumuruさん、コメントありがとうございます。
      こちhらこそ花丸をいただき恐縮しておりましたところ、お部屋にお邪魔してレビューを読ませていただき、うんうん!そうだよね!と嬉しくなったものですから。

      katatumuruさんはこちらに来られたばかりなのですね。最中ということはまだまだたくさんストックがあるということでしょうか。(#^.^#)

      私は気まぐれでせっせと書き込んだり、休んだり、を繰り返しておりますけど、基本的に本と本の話が大好きです。どうぞよろしくお願いします。
      2013/07/13
  • ピアノの調律師がその技術と共感覚の能力から、依頼者の抱える問題にせまるという趣向の変わった作品。
    連作風に進んでいくのだが、執筆中に東日本大震災が起こり、宮城出身の著書はどうしてもそれを書かずにいられなかったということで、途中で作品の方向が少し変化している。

    共感覚に関する本はいままでにもいくつか読み興味のある分野なので、それを駆使した問題解決があったり、共感覚を解明するような記述もあったりするのかと若干期待もしていたのだが、物語のエッセンスとして使われただけであまり重きが置かれているポイントではなかったようで、ちょっと残念。
    大震災にかかわる内容に変化したことも一因かも。

    著者がこんな作品も書くんだ!という驚きはあった。
    引き出し豊富なんだなあ。

  • えっ!? これホントに熊谷達也? 中山七里じゃないの???
    ってのが読み始めの感想。
    「邂逅の森」で衝撃を受けてからの熊谷作品ファンなんだけど
    よもやピアノ調律師が主人公の作品を読む日が来るとは。

    作家本人があとがきで書いているように
    前半と後半の作風がガラリと変わってる。
    宮城県出身の方なのでこれを書かずにはいられなかった気持ちは少しだけわかります。
    小説としてはとてもおもしろかったので
    あれから2年半が経過した今
    この主人公の作品を新たに書いていただけたらなーと思います。

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著者プロフィール

1958年仙台市生まれ。東京電機大学理工学部卒業。97年「ウエンカムイの爪」で第10回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2000年に『漂泊の牙』で第19回新田次郎文学賞、04年に『邂逅の森』で第17回山本周五郎賞、第131回直木賞を受賞。宮城県気仙沼市がモデルの架空の町を舞台とする「仙河海サーガ」シリーズのほか、青春小説から歴史小説まで、幅広い作品に挑戦し続けている。近著に『我は景祐』『無刑人 芦東山』、エッセイ集『いつもの明日』などがある。

「2022年 『孤立宇宙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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