泣き童子 三島屋変調百物語参之続

  • 文藝春秋 (2013年6月28日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784163822402

作品紹介・あらすじ

不思議で切ない「三島屋」シリーズ、待望の第三巻江戸は神田。叔父の三島屋へ行儀見習いとして身を寄せるおちかは、叔父の提案で百物語を聞き集めるが。人気時代小説、待望の第三巻。

みんなの感想まとめ

不思議で切ない物語が詰まったこの作品は、シリーズの第三弾として、さまざまな怪異譚が展開されます。短編6話から成る本作では、怖さや心温まるエピソードがバランスよく織り交ぜられ、読者の心を掴んで離しません...

感想・レビュー・書評

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  • 時代小説の宝石箱や〜(ありきたり)

    はいはい、最近なんだか時代小説づいています
    いや他にもたくさん読んでいるんでそうは見えないかもしれませんが、今来てます
    わいの中で来てます
    第三次池田内閣が違う第三次時代小説ブームが

    そこでここぞとばかりに三島屋さんです
    久しぶりの続之三です
    なんだか間が空いてしまいましたが、やっぱり面白い

    そしてこの取り揃えました感ね
    全部あります
    がっつり怖いのから、ホロリから、不思議系から、化け物からもう
    ポロリはなかったけど(いやーん♡)

    全部取り揃えて全部おもろいってちょっと引く(引くのかい)

    続之四はそんなに空けずに読もうと思うが、果たしてどうなる?!(興味ないわ!)

    • ひまわりめろんさん
      ともちん

      ええねん!覚えてなくたって
      そんなん普通や
      ともちん

      ええねん!覚えてなくたって
      そんなん普通や
      2025/10/06
    • bmakiさん
      宮部みゆきさん好きなのですが、時代ものは外して読んでいました。
      私も師匠のように時代小説ブームが自分に来た時読んでみます(笑)
      まだブー...
      宮部みゆきさん好きなのですが、時代ものは外して読んでいました。
      私も師匠のように時代小説ブームが自分に来た時読んでみます(笑)
      まだブーム来ず。。。
      2025/10/06
    • ひまわりめろんさん
      まきちゃ

      てんご〜〜くじゃなくても〜〜♪
      ら〜く〜え〜んじゃなくても〜〜♪
      あな〜たにあえたしあ〜〜わ〜せ♪
      かんじて〜〜かぜに〜〜なり〜...
      まきちゃ

      てんご〜〜くじゃなくても〜〜♪
      ら〜く〜え〜んじゃなくても〜〜♪
      あな〜たにあえたしあ〜〜わ〜せ♪
      かんじて〜〜かぜに〜〜なり〜〜たい〜〜♪

      それはTHE BOOM!( ゚д゚ )クワッ!!
      2025/10/06
  • シリーズの第三弾で短編が6話。
    なんといっても表題作の「泣き童子」が怖い。さらに謎の妖怪「まぐる笛」も恐ろしい話でした。
    後半、あの世とこの世の間で商いをするアノ男が出てきました。以前にも登場していた謎の男でしょうか。今後もお話に絡んでくるのか興味は尽きません。
    このシリーズを読んでいると、読書って楽しいな、としみじみ感じます。
    次巻も楽しみです。

  • 三島屋変調百物語の第三弾です。変わり百物語として、不思議な話を聞くことになったおちか。全部で6篇の話で、今回は、ほかの百物語に呼ばれて話を聞く会もあります。
    話の種類は、バラエティーにとんでいて、いろんな意味での怪異譚の集まりとなっている。怨恨もあれば、心温まるような話もある。こころがざわつくような話ばかりではないところはいいし、怖い話は、心がざわつくような嫌な感じをさせる話になっているのもすごい。
    「くりから御殿」は、初出が2011年7月であり、震災をイメージさせる話になっている。震災に遭い、被害を受けて生きていく人達へのメッセージが暖かい。
    「泣き童子」は、ゾワっとくる怖さで、1巻目の曼珠沙華の話をなんとなく思い出した。最後に、一気に畳み掛けるようにくる怖さと、最後の子供の一言に鳥肌のたつ思いがする。
    「まぐる笛」は、またこれまでとは、まったく違う怖い話。「荒神」を思わせると書いてしまうと概要がわかってしなうかもしれないが、こう言う話を怖く書けるのも宮部みゆきの凄いところかと思ってしまう。怪異の痕跡描写などは、スプラッター系かと言う感じもあり、改めて色々な引き出しがあると。
    「節気顔」は、後々に繋がりそうな話でもあり、独特な雰囲気の話。怖さと言うより不思議さがメインであるが、その中に身近な人を亡くした人の心模様がそれぞれに描かれているところが、よく、それを受け止めると言うことをしていく男の感情も切ないものがある。
    安定したストーリー展開で、どの話も楽しく読めるが、その中で、随所に現れる表現に、ハッとするものがあり、このシリーズを読みたいと思うところがある。話の最中での黒白の間の雰囲気を表す表現や語っている人の描写で、話の奥行きが出たりとホントにうまいなぁと思うことが多い。気になったのは、フレーズに書き留めるようにしているが、このシリーズは結構量が多くなるので、それも楽しみである。後、ホントは季節や風俗を表す言葉も全部理解していればとおもうのだけれど、こちらはなかなかいつかずと言う感じです。
    そして、今更ながらに奥付でびっくり。題字 京極夏彦。もちろん同じ事務所とかは知ってますが、改めてこんなこともできるのか、この人、とびっくりです。

  • シリーズ三巻目。

    このシリーズは巻を追うごとにまた一つ好きになっていく、そんな気がするからたまらない。

    今作は怖さと哀しさと温かさが絶妙だった。どの語りも甲乙つけがたいぐらい良かったけれど、最近、何度も胸が痛んだ自然災害。
    それを絡めた「くりから御殿」が一番印象に残った。

    ずっと負い目を感じ生きることのつらさや哀しみ、その哀しみを一気に希望へと包み込む温かさに涙した。

    毎回、選びに選んだ言葉をかける おちかの姿も良かったな。
    お勝さんの存在感も良い意味で増してきた。

    シリーズ追いかけていこう。

    • あいさん
      こんにちは(^-^)/

      どんどんよくなっているんだ!
      私も次に進みたい…けど、なかなかねぇ。
      1で止まったままだよ(〃∀〃)ゞ
      ...
      こんにちは(^-^)/

      どんどんよくなっているんだ!
      私も次に進みたい…けど、なかなかねぇ。
      1で止まったままだよ(〃∀〃)ゞ
      お勝さんは奥さまだったっけ?
      2019/11/14
    • くるたんさん
      けいたん♪こんにちは♪そうそう、深みを増してきたよ♪

      また第六巻が来月出るから読み進めてるよ♪

      お勝さんは前回登場して、三島屋メンバーに...
      けいたん♪こんにちは♪そうそう、深みを増してきたよ♪

      また第六巻が来月出るから読み進めてるよ♪

      お勝さんは前回登場して、三島屋メンバーになった方なの♪
      良い人だわ♪

      シリーズものってタイミングが難しいよね。
      続けて読むと飽きるし(笑)
      2019/11/14
  • 三島屋変調百物語シリーズの3巻。
    おちかが、いつも通り黒白の間で面妖な話を聞くのですが、私が一番印象深かったのが、幽霊や妖怪ではなく人を喰う大きくて硬い鱗と尻尾を持つ生き物が村を襲った話。化け物を退治できるのは女の人だけ。しかも特殊な指笛を吹ける人のみ。人を襲う様や、いじめられる話し手の様子が目に見えるようでとても辛かった。
    あと、怪談の会に参加したおちかが聞いた話で、病が見える目をもつ母親の話。母のその目を利用してうまく立ち回ろうとしたものの失敗した父親は残念でしたが、病が見えるなんて便利だなぁ、と思いました。

  • 心が砕けてしまうような想いをしたおちか
    巷の不思議、人の業、とりどりな人の生き様を聞き知って、それらの話から糸をより出し、自分の魂を繕うことができるようになればと始められた変わり百物語
    だんだんおちかが元気になっていくのが嬉しい

    今回は.どんな変わり物語が聞けるだろうか

    10 / 100 「魂取の池」
    鏡池の猪の神様は悋気持ち
    恋仲の男女が鏡池の面に姿を映すと、必ず別れる羽目になるという
    それも意地悪く二人の仲を引き裂き、別名魂取の池と呼ばれる
    恋人や夫をむやみに疑わずに信じ、自分に繋がっている縁を大事に添い遂げなさいという教えかな

    おこた(炬燵)を囲んでのおちかさんと同年代のかわいいお文さんの語りは、幸せがこぼれ落ちそう
    こんな変わり百物語もいいものだ

    11 / 100 「くりから御殿医
    齢50になろうかという長治郎の語り
    東日本大震災を思い起こし、40年間彼を苦しめてきた思いにもらい泣き
    仲良しの幼馴染おせんちゃん、みいちゃん、はっちゃんを亡くし
    自分だけが生き残ってしまった苦しみ、孤児として生き延びてきた心細さ

    隣室で夫の語りを聞いていた妻のお陸
    一人だけ生き残ってすまないすまないという夫の40年間の苦しみをやっと共有できたと泣き伏し、夫を抱きしめる
    幼馴染の分まで夫婦仲睦まじく長生きしてほしいと心底願った
    明日は何が起こるか分からない
    一緒にいられる幸せを大切にしなければ

    12 / 100 「泣き童子」
    飛び込みで百物語をしたいと訪ねてきた男の異常にやつれた風体にただならぬ気配
    さらに、その男が語った話のおどろおどろしいこと
    普段全く口をきかない末吉が、泣いて知らせたかったこと。誰もそれに気づかず、耳を貸さなかったばかりに、次々と起こる不幸
    幽霊などというあの世ではなく、現実に起こる惨事
    今までの百物語で一番怖かった

    13 / 100 「小雪舞う日の怪談語り」
    井筒屋主催の百物語の会に招かれたおちかが体験した不思議体験
    駕籠で井筒屋に向かう道中の両国橋、おちかの耳に小さな声が呼びかけてきた

    「おえいは無事に、三島屋さんに入れたようでございますね。頑是無い子供ですが、きっとしっかり働きますので、可愛がってやってくださいまし」

    おえいというのは、母親のおこちと一緒に三島屋へ冬奉公にやってきた12歳の娘のこと
    まるでおえいの身内のような口ぶり
    声の主は誰なのか?

    「おえいのことはご心配なく、三島屋でしっかりお引き受けいたします」
    と駕籠の中から応えるおちか

    村人の心の拠り所のおこぼさんがおえいの身を案じて、遥々江戸まで頼みにこられたのか
    かさこじぞうを思い出した

    心がほっこりと温かくなると同時に、嬉しくなった
    「信心」っていいな
    私の後ろか肩先にでも、私の身を案じ見守ってくれている神様がいるに違いない

    17/100 「まぐる笛」
    領主の圧政に苦しみ、飢え乾いて無惨に死んでいった山の者たちの怨念が産んだ『まぐる』
    寸詰まりの蛇ような身体に蝦蟇のような腹。尻尾と足は蜥蜴のよう・・・山の生き物には見向きもせず人間だけを食うまぐる
    唯一まぐるを退治できる技はおなごの間だけで受け継がれ、おなごしか使えないという
    信右衛門の母光恵とまぐるが対峙する場面は、怪獣映画を見ているようだった

    女性は神事には禁忌とされる昔話が多い中、住職や力自慢の男性をさしおき、女性が活躍するとは何だか嬉しい

    18/100 「節気顔」
    三途の川を境に彼岸と此岸を行き来する商売人から三両の手間賃で春一が請け負った仕事は、節気日になるとあの世に行った人の顔になるという何とも怪しげなもの
    それは果たして邪なのか善なのか
    もう一度会いたい、言い残した言葉を伝えたい
    双方の切ない思いが分かるだけに、邪とは言い切れない

    どれも宮部さんのこのシリーズにかける意気込みを感じる力作揃い

  • 「おそろし」、「あんじゅう」に続く三島屋変調百物語の3作目。
    楽しみにしていました。
    輪郭がくっきりした話が多い印象。

    神田の袋物屋、三島屋では、不可思議な話を集めている。
    黒白の間という座敷で、話すのは一度に一人だけ、くわしく聞くのは姪のおちかという娘一人。
    語って語り捨て、聞いて聞き捨て。それだけが約定。
    事情があって実家を離れ、叔父夫婦の三島屋で働いているおちかです。

    「魂取の池」
    神無月の炬燵開きの日、若い娘が訪れた。
    祖母の育った村に村にあった不思議な池とは。

    「くりから御殿」
    白粉問屋の夫婦が訪れる。
    病を得た主人は、漁師町の出。
    四十年前、子供の頃に、山津波で大勢の村人や友達が亡くなった。そのとき、不思議な夢を見るたびに‥
    心配して隣室に控えていた妻は、生き残ったことを悔いる夫の気持ちを知っていた‥
    震災で生き残った人に寄せる、作者の思いが感じられます。

    「泣き童子」
    霜月のねずみ祭りの日。商家にとっては大事な風習なのだ。
    やつれきった男性が訪れ、幼い子の話をする。
    なぜか言葉が遅く、泣き出したら泣きやまない。
    後ろ暗いことのある人に気づくと、泣き出すのだ‥

    「小雪舞う日の怪談語り」
    冬奉公といって農村から出稼ぎに来る女手が増える時期。幼いおえいという女の子も三島屋にやってきた。
    珍しく、おちかが振袖を着てお出かけする楽しい趣向。
    青野利一郎とも、このときに久しぶりに会うことに。
    札差の井筒屋の肝いりで、「年の瀬に心のすす払いをする」という怪談語りの会に誘われたのだ。「怪談を聞くと、人の心は神妙になる」と。
    この中に四つ話が入ってます。
    普請道楽の父が建てた家の怪異。橋から異界にさまよいこむ話。片目で病を見抜く母の話。岡っ引きの半吉が若い頃、看取った男のもとに夜ごと現れた怪異。
    おちかが両国橋で出会った微笑ましいことも。

    「まぐる笛」
    若い侍が話す故郷の話。
    いつ現れるかわからない怪物「まぐる」が村に現れた日。
    侍の母は、「まぐる」を抑える役をになう女性だったのだ。

    「節気顔」
    年あけて、おちかも18に。
    春分の日に聞いた話。
    放蕩者の長兄が改心して戻ってきた。
    離れに隠れ住むようにして、二十四節気の日には一日出かけている。
    姪が見てしまった秘密とは‥
    大人になった姪が、死んだ人に会いたいという気持ちを理解した様子に、どこか心揺り動かされます。

    三島屋の人々の暖かさ。
    女中のお勝は疱瘡の跡があり、<禍払い>という役目も持っていた。
    おちかが聞く話は、若い娘が一人で聞くには重すぎるような場合もあるけれど、尋常でない経験をした身には、そうでもしなければ救われないものがあるのでしょう。
    「お嬢さんはもう、去年(こぞ)のお嬢さんではありませんからね」というお勝の言葉が心強い。
    江戸情緒ゆたかに、静かに流れる日々。
    おちかが幸せになることを祈ります。

  • しみじみ〜このシリーズは一気読みに値する本です。

  • 恐すぎてときおりダメージ受けつつも変わらず怪談聞いてるおちか/ライバル再登場?//惚れたなら魂取の池避けるべし/流された幼馴染とかくれんぼ/あるだけで人を狂わす泣き童子/年の瀬の怪談語りは煤払い(逆柱皆が迷子になる屋敷/その橋でこけて手助け受けたなら/めしいたが病の影をみる瞳/悪党を夜ごとにさする影法師)/山の奥恐怖の権化まぐる来る《人は何かを恐れずには生きられない。》p.360/節気ごと顔すげかわる不思議かな。

    【青野利一郎/あおの・りいちろう】直太郎が前に通っていた手習い所、深考塾(じんこうじゅく)の若先生。若い武士で元々は那須請林藩(なすじょうりんはん)に仕えていたが主家の門馬家がお取り潰しになった。直太郎のことが気になりちょいちょい様子を見に来る。剣の腕は立つらしい。おちかのお相手候補の一人か。
    【紫陽花屋敷】鯰髭様(仮称)の屋敷の隣の空き屋敷。そこから出火して直太郎の父の与平ほか二人が亡くなったらしい。空き家になって十五、六年は経っている。すでに廃屋と呼べる状態。紫陽花が異様な数咲く。
    【彩】石倉屋の美しい娘。
    【安藤坂の屋敷】謎の屋敷。
    【伊一郎/いいちろう】伊兵衛とお民の長男。今は他所の店で修行中。おちかにとっては従兄。
    【石倉屋】市太郎とお彩がいる。
    【いたずら三人組】深考塾に通う悪ガキ。性格はよい。金太、捨松、良介。良介の名に一瞬動揺したおちかだった。意外に役に立つので少年探偵団となるか?
    【市太郎】石倉屋の美しい息子。
    【井筒屋七郎右衛門】江戸に百八人ある札差の中でも特に財を持ち勢いのある「大通/だいつう」の一人。心の煤払いと称して師走の怪談語りを十五年ほど続けている。《怪談語りをすると、人は神妙になるもんだって、旦那はおっしゃいましてね》泣き童子p.172
    【伊兵衛★】三島屋の主人。おちかの叔父。変わり百物語を集めたいと言い出した。当初はたぶん、おちかのリハビリが当初の目的だった。
    【梅】三島屋の隣家、針問屋・住吉屋の娘。極端な箱入り娘だった。
    【えい】おこちの娘で出稼ぎについてきた。問題がなければ正式に雇う予定あり。
    【越後屋】堀江町の草履問屋。三島屋とタイアップしてデザイン鼻緒を売り出しヒットした。おたかや清太郎がいる。
    【縁】《語り手がここに来るにも縁が要るのだ。》泣き童子p.371
    【恐れ】《泣き虫でも意気地なしでもなくなっても、人が何かを恐れることはやまない。人は何かを恐れずには生きられない。》泣き童子p.360
    【お旱さん】または白子様(しろこさま)。平太の出身地、小野木の土地神。旱神で水を吸収する。『狼と香辛料』のホロ様のような状況で、いつの場合でも恩知らずの人間に困惑させられるのが善意の神。まあ、人間の寿命は短いから代替わりを繰り返すことになりそのうちに忘れられていくのは仕方ないとも言える。
    【覚念坊/かくねんぼう】館形(たてなり)というさびれた山村の合心寺という寺の和尚さん。人格者であり村のすべてを取り仕切っていた。
    【加登新左衛門/かど・しんざえもん】深考塾(じんこうじゅく)の主人。妻は初音。元小普請組の武士だったが長男の長一郎に家督を譲り隠居した。自分では人間嫌いだと思っているが妻に言わせると《あなたは人間嫌いなのではなくて、ただ人と交わるのに書物の仲立ちが要るだけなのではございませんか》第二巻p.392。『眉毛録/びもうろく』という身辺雑記を書いている。
    【勝★/かつ】住吉屋のお梅に付き添うようにしていた、疱瘡の痕がある女。疱瘡神の霊験があるそうだ。後に三島屋の女中となる。物腰などから武家の出かもしれないとおちかは類推している。
    【勝三郎】亀戸の梅屋敷の案内をしてくれた。その日は「梅勝」と呼んでくれとのこと。船頭上がりの物慣れた老人。
    【かね】鉄五郎の妻。
    【変わり百物語★】伊兵衛の発案で集めることになり、おちかが話を聞くことになった。おちかのリハビリ目的なのかもしれない。
    【喜一】おちかの兄。
    【キャラクタ】なんであれすぐストーリーにいかないのが宮部みゆきさん流。とんな人であるかが描かれ、なぜそういう人であるかの事情が描かれ、ストーリーに直接かかわらない人物でもそれも因果の一環であるというように厚みを持たせていく。だから、初登場で結局ちょい役であっても読者はけっこうその人となりを知ったりしている。他の作家なら、イヤなヤツとか包容力のある人物だくらいの描写しかしない場合でも。
    【行念坊/ぎょうねんぼう】偽坊主。青野の知人らしい。サイズが大きい。
    【くろすけ】暗獣というべきもの。加登新左衛門と妻の初音は「くろすけ」と名づけた。「まっくろくろすけ」ですな。ただ、大きい。十歳の子供くらいのサイズでわらじみたいな形の闇。《人を恋いながら人のそばでは生きることのできぬあの奇矯な命》あんじゅうp.502
    【黒白の間★/こくびゃくのま】伊兵衛が碁を打つための部屋。おちかが怪談を聞くための部屋となった。
    【こち】毎年冬季になると出稼ぎに来る近在の農家の女。おこちの娘おえいも来るようになった。
    【小普請組】無役の御家人、旗本の集団。幕政に参加できずなんもすることはないが「小普請金」という家禄をもらい、その中から役金を上納する形となっており基本飼い殺し。部分的なベーシック・インカムみたいな感じか? それだけでは生活が苦しいので役を得ようとするか、アルバイトをするかとなる。
    【様々】《人が生きる道も、亡くなって去ってゆく道も様々でございます》《残される者の想いもとりどりである。》泣き童子p.369
    【三人組】→いたずら三人組
    【静香/しずか】新太の通う手習い処「しずかどころ」の先生。老女。元武家。滅法厳しい。
    【しま★】女中頭。おちかが女中働きをしているときは「おちかさん」と呼び、来客用の着物に着替えると「お嬢さん」と呼ぶ。
    【深考塾/じんこうじゅく】直太郎が前に通っていた手習い所。主は加登新左衛門という武家。中風で右手が利かなくなったので青野利一郎を雇った。三人組のいたずら者、金太、捨松、良介がいる。
    【新太/しんた】三島屋の丁稚。第二巻時点で十一歳。おしまはちょっと新太に過保護ぎみ。
    【住吉屋】三島屋の隣の針問屋。主人は仙右衛門、おかみはお路(おみち)。娘はお梅。本家は他所にあり長男の多右衛門が継いでいる。仙右衛門は次男。本家のおかみは、お累。
    【清太郎】草履問屋、越後屋の跡取り。おちかとの縁談話が出ているようだがおちかのほうはなんとなく乗り気でない感じ。
    【清六】錠前職人。
    【宗助】石倉屋の奉公人。
    【たか】越後屋の縁者。安藤坂の屋敷について語った。
    【館形/たてなり】若い頃、怪我をした行念坊が救ってもらった山間のさびれた村。ただ、生活は意外に豊か。元は「館無/たてなし」という地名でお館様もいなかった。合心寺の和尚、覚念坊がすべてを取り仕切っていた。
    【民★】伊兵衛の妻。
    【ちか★】主人公。丸千の娘だが事情があって三島屋にやってきた。他者と接したくないが身体を動かさないではいられないタチなのか女中と同じ仕事をしたがる。伊兵衛の変わり百物語収集で話を持ち込んできた人物から話を聞く役目をおおせつかった。
    【ちかのお相手候補は?】まず、越後屋の清太郎(人柄も良さそうだし商売も順調そうなので特に問題はない)。次は浪人の青野利一郎(苦労しそう)。その次は第二巻では未登場の三島屋の長男と次男である伊一郎と富次郎(内紛につながるかも)。
    【長次郎】白粉問屋「大坂屋」のご隠居夫婦の夫の方。妻はお陸。最近病気で死にかけた。鯉のぼりに似ている。
    【灯庵★/とうあん】三島屋出入りの口入屋。神田明神下に店を持つ坊主頭の脂ぎった蝦蟇のような老人。
    【富次郎/とみじろう】伊兵衛とお民の次男。今は他所の店で修行中。おちかにとっては従兄。
    【直太郎/なおたろう】新太の通う静香先生の手習い処の新入生。父親は武家屋敷の用人だったが最近の火事で亡くなった。
    【那須請林藩/なすじょうりんはん】青野利一郎が仕えていた藩。主家門馬家の最後の当主は領民たちから悪鬼とか死神とか呼ばれ暴虐の限りを尽くしそのせいで滅びたそうだ。いずれ話がきっちり出てきそう?
    【謎の男】メフィストのようなキャラ(おちかのライバル?)。《ふたつの場所をつなぐ道筋でお客の相手をする》商人だと自称する。互いに敵対しているわけではないがそうなる可能性もある?
    【ねずみ鳴き】三島屋では霜月最初の子の日(ねずみ祭り)にお店の一同がねずみに扮しちゅうちゅうと鳴きまねをして大黒天にお祈りする習わしがある。だんだん評判になり最近では見物客も出るほど。
    【初音/はつね】加登新左衛門の妻。おおらかというか豪胆と言うか、青野に言わせると《いくつになっても小娘のような人》第二巻p.404
    【春吉】おたかの弟。
    【半吉/はんきち】通称「紅半纏の半吉」。四十がらみの岡っ引き。鼻の脇の大きな黒子がチャームポイントで「黒子の親分」とも呼ばれる。
    【房五郎】質屋、金井屋の番頭。
    【平太】金井屋の丁稚。旱神が憑いているらしく行く先々で水が消失する。
    【豊国先生】隠居した武士。井筒屋七郎右衛門の友人のようで師走の怪談語りに参加していた。
    【まだら蝦蟇】小石川界隈でブイブイいわせてる岡っ引きの脂じみたじいさん。嫌われてるようだ。
    【松太郎★】丸千に引き取られおちかと兄妹のように育ったという微妙な位置づけ。良助を殺したのち自殺。
    【松田屋藤兵衛】伊兵衛の碁のライバル。曼珠沙華が怖い。変わり百物語を集める契機となった人物。
    【丸千/まるせん】おちかの実家。川崎宿の旅籠。
    【三島屋★】袋物屋でそこそこ大きくなってきた。ふたつの名店、越川(えちかわ)、丸角(まるかく)に次ぐくらいの位置づけ。主人は伊兵衛。
    【路/みち】住吉屋のおかみ。
    【諸星主税/もろぼし・ちから】加登新左衛門の知人。二本差しの軍学者だが新左衛門は怪しいと思っている。軍記語りの能力は見事で、主な生業としている。とりわけ『太平記』を得意としている。新左衛門の隠居後の住居として紫陽花屋敷を紹介した。
    【文/もん】おちかと同年輩。父は地主の岡崎一宇衛門の用人。魂取の池の話をした。
    【八百濃/やおのう】近所の八百屋。価格も品質も高く、大きな料理屋などを得意先にしている。三島屋出入りではない。主人は、直太郎の父の従弟で父親を亡くした直太郎を養子にした。主人とおかみは、商売人としてはともかく、人格的にはあまりデキてないようだ。
    【八十助】三島屋の忠義一筋の番頭。あまり風格はない。
    【用人】武家屋敷の用人は《禄として賜る米を金に換え、その家の経理(やりくり)万端を仕切る》p.358。その性能差によって暮らし向きがずいぶん違ってくるのだとか。直太郎の父、与平は能力が高かったらしい。
    【良介★/よしすけ】おちかの婚約者だったが死亡。
    【陸】白粉問屋「大坂屋」のご隠居夫婦の妻の方。夫の長次郎の怪談ばなしの立会人となる。

  • 三島屋変調百物語の第三弾。
     
    六篇の短編。表題作の泣き童子が怖いです。

  • 《三島屋変調百物語》シリーズ第三作。
    久しぶりの再読。
    これまでに比べると短め、アッサリとした作品が多かった。
    表題作の「泣き童子」、一体何のために生まれたのか、何のために生きているのか。
    終盤の「まぐる笛」に出てくる『まぐる』の方がまだ解る気がする。
    かつて「凶宅」でおちかを散々翻弄した『商人』が最終話の「節気顔」に出てくる。彼もまた何のために現れるのか。
    この話の場合はそう悪い話でもなさそうだが、こうやって人々を翻弄することが目的なのか。

    シリーズとしては、この時点ではまだおちかと青野先生は縁がありそうな描き方をされている。ということは次の第四作で動きがあるのか。

  • 2020/08/13
    読了

    2023/10/15
    読了

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    心が砕けてしまうような想いをした年若い姪に、ただの慰めや励ましは効かない。それよりむしろこんな形で、巷の不思議、人の業、とりどりな人の生き様を聞き知って、それらの話から糸をより出し、おちかが自分の魂を繕うことができるよう計らってやった方がいいのではないかと、彼は考えた。
    p15

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     諫められて逆に取りのぼせ、意地になった父は、手前の目にも、ただ怒りに我を忘れているだけでなく、一種異様に映りました。日頃は表に出ることはなく、何か事があると浮かび上がってくる父のこのような気質――それは、裕福な商家に生まれ育ち、幼いころから人を使うことに慣れ、また自身も商才に恵まれて利を集め、その結果、およそ暮らしのなかで己を矯める機会のなかった男の「思いどおりにならぬことがあると我慢ができない」という傲慢短気でございましょう。
    p213
    ────────────────────
    ただ父の葬儀の折に、切れ切れながら、生前の父の行状にまつわる悪い評判を、いくつか耳にいたしました。死人の悪口を言うものではないと申しますし、それは礼儀でございましょうが、当の本人が死んでからでなくては口にのぼせることができぬ憤懣や非難というものも確かにあると、この歳になった手前にはわかります。
    p214

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  • 三島屋変調百物語3巻目。

    読んだ後にほっこりとなる話や、あんた、来るところ間違えてるよ!と言いたくなる話がありました。

    そして、要所要所でお勝さんの存在がいい感じです。

  • 神田三島町の袋物屋三島屋に身を寄せているおちかが『黒白の間』で変わり百物語の聞き役になってお客から聞くシリーズもの第三弾。第二弾が図書館になかったのでこの巻を先に読んだ。
    以下ネタバレバレ。
















    魂取の池

    主人公は語り手お文の祖母。故郷岩槻に魂取りの池という猪の女神が住む池があり、若い男と女が一緒にその池に行くと、必ず男が他の女を作って別れてしまうという言い伝えがあった。祖母は試しに許婚と池に行ったら、相手は駆け落ちして逃げてしまった。親はものを言うのは金だからと次に金持ちの男と縁組させる。再度池に行ったら、今度は家と店がみんな家事で焼けてしまった。
    と言う話。目先のことにおろおろせず、繋がっている縁を大事にしろ、ということか。

    くりから御殿

    語り手は白粉問屋「大坂屋」の主長次郎。子供の時、大雨で山津波が起き、家々が皆流されてしまい、両親を失う。網元の別宅に孤児は送られたが、夢に仲良しだった3人の友達が一人づつ出て来てかくれんぼうすると、必ず翌朝その子の遺体が発見される。
    自分だけ残されて40年、目の前が真っ暗になって今度は亡くなった子たちが自分を探している。早く見つけて欲しいと大声を出しても、こんなん急や、おかみさんが気の毒や、いっぺんお帰り、といって結局息を吹き返してしまう。一緒に連れて行って欲しいと思ったことを妻に話せなくて、おちかのところに話に来たという話。

    泣き童子

    瀕死の状態で店先で倒れた家守の老人甚兵衛が語り手。捨て子の末吉を看板屋に預けたら、2年経っても言葉を喋らず、ところがどんなに宥めても泣き止まない時がある。原因を探ると、住込みの職人の一人と一緒になると泣き出すことがわかる。一晩末吉を預かるが、その間に看板屋に押し込み強盗が入り一家皆殺し、口利きをしたのがその職人だったことがわかる。その後、引き取り手のない中、娘のおもんが遅くまで外出して帰った途端末吉が泣き出す。おもんには片恋の相手、紙問屋の若旦那がいたがその男は遊び人で、その日池之端の茶屋の一室で手切れを言い出され、思わず火箸で首を突き刺したのだ。そして泣き止まない末吉をおもんは階段から突き落として殺す。殺しの下手人は上がらなかった。6年後、おもんは嫁ぐが、生まれてきた孫は末吉のように口をきかない。おとといの晩、紙問屋の若旦那を殺した同じ日に孫は突然泣き出し、おもんは二階から飛び降りて死んだ。甚兵衛に孫は「じじい、おれがこわいか」という。甚兵衛は孫の首を絞めて殺す。そのまま死のうとするが死に切れず、おちかのところに打ち明けにきた、という話。おどろおどろしく怖い話だった。

    小雪舞う日の怪談話

    珍しく舞台を黒白の場から井筒屋七郎右衛門の怪談語りの会に移し、おちかが好きな青野利一郎、半吉親分らと出かける話。建て増しの家の騒動、橋で転んではいけない、転んだ時誰かの腕にすがったらいけないと言われながらすがってしまった女の話、人の病を見破る千里眼を持った母が、二人の郡奉行のどちらにつけば出世するか予想するが外れ、人の病は見えても人の運命や心の向きまでは見えないと抗弁した話、半吉が深川十万坪の先の小原村に、危篤の病人を看取りに行くが、その相手は極悪非道の十手持ち、与之助であったという話。一話に4つ話が入っていて得した気分。

    まぐる笛

    第三シリーズで一番怖かったのはまぐる笛。語り手は方言丸出しの侍赤城信右衛門(一郎太)。国許の尼木村は檜の産地。ある日一郎太はいじめに苦しみ家出を試みるが道に迷い、まぐるという獣が人を喰べた跡を見つける。人を喰う獣、まぐるの怖さ!それを退治できるのは男ではなく、村に代々伝承されるまぐる笛を吹くことのできるたった一人の女性、一郎太の母だった。笛の音に乗せられ、まぐるは自身で自分を食べることで初めて退治されたのであった。

    節気顔

    小間物屋、丸天のお末が語り手。三男坊の父の長兄春一は飲む打つ買うの放蕩もので勘当されたが、ある日戻ってきて一年だけ置いてくれと裏の物置に住みだす。24節気の日だけは朝から一日何処かに出かけていく。それ以外は奉公人のように働いた。ある日節気の日にお末が物置に行くと春一とは違う顔をした男が血だらけに怪我をしていた。
    実は春一は運気が落ち博打への執着も薄れ、死に場所を探すうちに見知らぬ商人を名乗る男に3両渡され、その日以来、節気の日一日、顔が死者の顔に変わり、その顔を知る人を訪ねる仕事をしていた。怪我をしたのもその顔の男を殺した蕎麦屋の包丁人を訪ねたからだった。春一は肺病にかかっており、一年間仕事をするうちにだんだん影が薄くなり、ついには顔も変わらなくなり、年季が明けたと商人に言われ、息を引き取った。
    この商人は第一シリーズで登場したあの世とこの世をつなぐ仲介屋だと直ぐ分かった。

    三島屋変調百物語はまだまだ続く。この先が楽しみだ。

  • 三島屋の変わり百物語、まだまだ続きます。
    宮部みゆきの時代ものではいちばん好きかも。ぼんくらシリーズも捨てがたいが。
    今回がいちばん百物語らしい感じでした。

    噂を聞きつけ黒白の間を訪れた人々が、不思議で面妖な身の上話や打ち明け話をしていく。
    聞き手は、三島屋主人の姪おちか。
    彼女自身も幼馴染の許婚を別の幼馴染に殺されてしまうという不幸にあい
    そこから立ち直るために始めたのが、この変わり百物語。

    カップルで姿を映すと、男のほうが心変わりしてしまう魂取の池。
    亡くなった友達の声は聞こえるが姿は見えないからくりの力のある御殿。
    言葉を失い、後ろ暗い人の前で火のついたように泣く童子。
    選ばれた女性が受け継ぐ、人を食う獣であるまぐるを倒す笛を吹く力。
    二十四節季毎に死者に顔を貸す男。

    くりから御殿はほろりと泣けた。
    泣き童子はぞっと怖い。

    そして小休止的に入る、青野先生とのデート話。
    といっても甘い感じは全くなく、怪談百物語を聞きに行くのですが。
    怪談語りが心の煤払いとは、言い得て妙ですな。

    深く沈んで固まっていたおちかちゃんの心が
    不可思議語りを聞くたびに、少しずつ動いて開いていって
    季節も冬を越して年が改まり、春を迎える。

    ほんとに100まで書いてくれるのかな。
    おちかちゃん、先はまだまだ長いけど時間をかけてゆっくり傷を癒していこう。

  • 三島屋シリーズの第三弾です。
    三島屋の白黒の間で不思議物語を聞く、娘・おちか。
    「語って語り捨て、聞いて聞き捨て」
    すべて、白黒の間だけの秘密語り。
    どんな不思議な話も、真摯に聞いてくれるおちかのもとに、今回も様々な話が寄せられます。

    いつも思うのですが、どんなおどろおどろしい妖がでようと、そのものは怖くないのです。
    その妖を作り出してしまうのが人であるということ。
    人の心に巣くう闇の部分が、浄化されず増幅されてしまう怖さ。

    特に、表題作の泣き童子は、切なくて苦しくなります。
    漱石の「夢十夜」を思い出しました。

    おちかが、少しずつ強くなっていくのも頼もしいです。

  • ようやく読んだ。ごちそうを目の前にお預けをくらっていたが、読み出したらやっぱり最後までページをめくる手が止まらなかった。

    宮部さんの語る怪談は、確かに怪しく恐ろしい出来事がおきて、その出来事にぞっとさせられるのだが、読み終わって残るのは、そういった怪異ではなく、人の心の恐ろしさなのだ。
    幽霊が出てきてゾッとするとか、化け物が出てきて怖い、というのが怪談のパターンなのだが、それだとつい、「なぜそんなことが起きるのか」という現象の解明の方に気持ちが行ってしまう。なんとか理屈で説明しようとしてしまうのだ。その結果、「思い込み」だとか「見間違い」「幻覚」「幻聴」という結論にたどりついてしまい、それならなぜ人はわざわざ「怖い話」を聞きたがるのだろうと疑問を持ってしまう。

    しかし、宮部さんの小説は、こういった怪談ものでなくても、時に振り返るのが心底恐ろしくなってしまうほどの恐怖を味わわせてくれる。
    それはたぶん、人という生き物の持つ複雑怪奇な心理が生み出す怪異なのだろう。
    「泣き童子」の、あのきっぱりとした泣きよう。そして、おもんが生んだ男の子の描写の恐ろしいこと。
    「この子は口をきかない。ずっときかない。時がくるまでは」(本文p158)
    このくだりを読んだときは背筋が凍るような思いがした。
    「まぐる笛」でも、まぐるという獣の様子も恐ろしいけれども、騒ぎの中でも子供同士の間である策略がめぐらされていることの方が恐ろしかった。
    人の恨みの根深さ、執念深さ。直接の血生臭さも恐ろしかったが、やはりいちばん恐ろしいのは人の心だ。
    実は宮部さんはすべての作品でそれを描いているのではないかと思う時がある。どんなにふんわり、ほんわかした結末に辿り着こうとも、その途中には必ず、どうすることもできないやるせない苦しさ、醜さ、辛さが描かれていて、私にはそれこそがこの世の真理なのではないかと思えてしまう。

    読み物としてこれほど面白く夢中になるものはないのだけれど、同時に読み終わると必ず、しんと心に沈むものがある。
    人の心にうごめく、暗くおぞましいもの。そういうものについて考えこんでしまう。そこが苦しい。でもそこが魅力なのである。

  • 三島屋の変調百物語シリーズの三作め。

    とても楽しみに待っていて、前二作&番外編まで復習読みした上で読んだという…。(#^.^#)

    う~~ん、いわゆる怪談の方はちょっと失速かな、と思われた前半。
    主人公のおちかや、三島屋の叔父さん夫婦、女中頭のお勝に新規の女中・おしま、また、寺子屋の青野先生など、お馴染みのキャラ同士のやりとりはとても楽しく、江戸の季節感やしきたり、矜持など気持ちよく読めるんだけどな・・と思いつつ、読み進んでいくと、徐々に油がのってくる百物語。

    ちょうど夜が更けていくあたりで、幸か不幸か(#^.^#) 主人が飲み会だったものだから、つい周りを見まわしてみたりするじゅんさんでした。

    怪異よりも生身の人間の心が恐ろしい、というスタンスは一貫していてそこがこの連作物語の一番好きなところかな。

    前作でホントに恐ろしかった、人を吸い寄せる屋敷の“番頭さん”らしき人物がまた現れたりもして、これは4作目以降につながるんでしょうね。

    生家での辛い思いからようやく前進できたように思えるおちかさん。
    青野先生へのほのかな恋心はどうなるのか。
    若旦那からの縁談は中途半端なまま、この巻では触れられなかったけどそれが罪作りにならないといいのだけど。

    そもそもの生家での惨劇が、かなり無理のあるもののように思えるだけに
    わかりきったことを後悔する、という苦い展開にはなりませんように、とも。

  • 再読。三島屋シリーズに短編があったことは忘れていた。商人が出てきたときはゾクッとした。まぐる笛が一番怖かった。

  • ちょっと何でもあり感強くなってきた。謎の商人?との今後の絡みに期待。

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著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ・みゆき):一九六〇年東京都生まれ。八七年「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。『火車』で山本周五郎賞、『理由』で直木三十五賞、『名もなき毒』で吉川英治文学賞、ほか多数の文学賞を受賞。『霊験お初捕物控』『ぼんくら』『三島屋変調百物語』シリーズ、『きたきた捕物帖』シリーズなど著書多数。


「2025年 『東海道綺譚 時代小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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