泣き童子 三島屋変調百物語参之続

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 268
  • Amazon.co.jp ・本 (441ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163822402

作品紹介・あらすじ

不思議で切ない「三島屋」シリーズ、待望の第三巻江戸は神田。叔父の三島屋へ行儀見習いとして身を寄せるおちかは、叔父の提案で百物語を聞き集めるが。人気時代小説、待望の第三巻。

感想・レビュー・書評

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  • 「おそろし」、「あんじゅう」に続く三島屋変調百物語の3作目。
    楽しみにしていました。
    輪郭がくっきりした話が多い印象。

    神田の袋物屋、三島屋では、不可思議な話を集めている。
    黒白の間という座敷で、話すのは一度に一人だけ、くわしく聞くのは姪のおちかという娘一人。
    語って語り捨て、聞いて聞き捨て。それだけが約定。
    事情があって実家を離れ、叔父夫婦の三島屋で働いているおちかです。

    「魂取の池」
    神無月の炬燵開きの日、若い娘が訪れた。
    祖母の育った村に村にあった不思議な池とは。

    「くりから御殿」
    白粉問屋の夫婦が訪れる。
    病を得た主人は、漁師町の出。
    四十年前、子供の頃に、山津波で大勢の村人や友達が亡くなった。そのとき、不思議な夢を見るたびに‥
    心配して隣室に控えていた妻は、生き残ったことを悔いる夫の気持ちを知っていた‥
    震災で生き残った人に寄せる、作者の思いが感じられます。

    「泣き童子」
    霜月のねずみ祭りの日。商家にとっては大事な風習なのだ。
    やつれきった男性が訪れ、幼い子の話をする。
    なぜか言葉が遅く、泣き出したら泣きやまない。
    後ろ暗いことのある人に気づくと、泣き出すのだ‥

    「小雪舞う日の怪談語り」
    冬奉公といって農村から出稼ぎに来る女手が増える時期。幼いおえいという女の子も三島屋にやってきた。
    珍しく、おちかが振袖を着てお出かけする楽しい趣向。
    青野利一郎とも、このときに久しぶりに会うことに。
    札差の井筒屋の肝いりで、「年の瀬に心のすす払いをする」という怪談語りの会に誘われたのだ。「怪談を聞くと、人の心は神妙になる」と。
    この中に四つ話が入ってます。
    普請道楽の父が建てた家の怪異。橋から異界にさまよいこむ話。片目で病を見抜く母の話。岡っ引きの半吉が若い頃、看取った男のもとに夜ごと現れた怪異。
    おちかが両国橋で出会った微笑ましいことも。

    「まぐる笛」
    若い侍が話す故郷の話。
    いつ現れるかわからない怪物「まぐる」が村に現れた日。
    侍の母は、「まぐる」を抑える役をになう女性だったのだ。

    「節気顔」
    年あけて、おちかも18に。
    春分の日に聞いた話。
    放蕩者の長兄が改心して戻ってきた。
    離れに隠れ住むようにして、二十四節気の日には一日出かけている。
    姪が見てしまった秘密とは‥
    大人になった姪が、死んだ人に会いたいという気持ちを理解した様子に、どこか心揺り動かされます。

    三島屋の人々の暖かさ。
    女中のお勝は疱瘡の跡があり、<禍払い>という役目も持っていた。
    おちかが聞く話は、若い娘が一人で聞くには重すぎるような場合もあるけれど、尋常でない経験をした身には、そうでもしなければ救われないものがあるのでしょう。
    「お嬢さんはもう、去年(こぞ)のお嬢さんではありませんからね」というお勝の言葉が心強い。
    江戸情緒ゆたかに、静かに流れる日々。
    おちかが幸せになることを祈ります。

  • 三島屋の変わり百物語、まだまだ続きます。
    宮部みゆきの時代ものではいちばん好きかも。ぼんくらシリーズも捨てがたいが。
    今回がいちばん百物語らしい感じでした。

    噂を聞きつけ黒白の間を訪れた人々が、不思議で面妖な身の上話や打ち明け話をしていく。
    聞き手は、三島屋主人の姪おちか。
    彼女自身も幼馴染の許婚を別の幼馴染に殺されてしまうという不幸にあい
    そこから立ち直るために始めたのが、この変わり百物語。

    カップルで姿を映すと、男のほうが心変わりしてしまう魂取の池。
    亡くなった友達の声は聞こえるが姿は見えないからくりの力のある御殿。
    言葉を失い、後ろ暗い人の前で火のついたように泣く童子。
    選ばれた女性が受け継ぐ、人を食う獣であるまぐるを倒す笛を吹く力。
    二十四節季毎に死者に顔を貸す男。

    くりから御殿はほろりと泣けた。
    泣き童子はぞっと怖い。

    そして小休止的に入る、青野先生とのデート話。
    といっても甘い感じは全くなく、怪談百物語を聞きに行くのですが。
    怪談語りが心の煤払いとは、言い得て妙ですな。

    深く沈んで固まっていたおちかちゃんの心が
    不可思議語りを聞くたびに、少しずつ動いて開いていって
    季節も冬を越して年が改まり、春を迎える。

    ほんとに100まで書いてくれるのかな。
    おちかちゃん、先はまだまだ長いけど時間をかけてゆっくり傷を癒していこう。

  • 三島屋シリーズの第三弾です。
    三島屋の白黒の間で不思議物語を聞く、娘・おちか。
    「語って語り捨て、聞いて聞き捨て」
    すべて、白黒の間だけの秘密語り。
    どんな不思議な話も、真摯に聞いてくれるおちかのもとに、今回も様々な話が寄せられます。

    いつも思うのですが、どんなおどろおどろしい妖がでようと、そのものは怖くないのです。
    その妖を作り出してしまうのが人であるということ。
    人の心に巣くう闇の部分が、浄化されず増幅されてしまう怖さ。

    特に、表題作の泣き童子は、切なくて苦しくなります。
    漱石の「夢十夜」を思い出しました。

    おちかが、少しずつ強くなっていくのも頼もしいです。

  • ようやく読んだ。ごちそうを目の前にお預けをくらっていたが、読み出したらやっぱり最後までページをめくる手が止まらなかった。

    宮部さんの語る怪談は、確かに怪しく恐ろしい出来事がおきて、その出来事にぞっとさせられるのだが、読み終わって残るのは、そういった怪異ではなく、人の心の恐ろしさなのだ。
    幽霊が出てきてゾッとするとか、化け物が出てきて怖い、というのが怪談のパターンなのだが、それだとつい、「なぜそんなことが起きるのか」という現象の解明の方に気持ちが行ってしまう。なんとか理屈で説明しようとしてしまうのだ。その結果、「思い込み」だとか「見間違い」「幻覚」「幻聴」という結論にたどりついてしまい、それならなぜ人はわざわざ「怖い話」を聞きたがるのだろうと疑問を持ってしまう。

    しかし、宮部さんの小説は、こういった怪談ものでなくても、時に振り返るのが心底恐ろしくなってしまうほどの恐怖を味わわせてくれる。
    それはたぶん、人という生き物の持つ複雑怪奇な心理が生み出す怪異なのだろう。
    「泣き童子」の、あのきっぱりとした泣きよう。そして、おもんが生んだ男の子の描写の恐ろしいこと。
    「この子は口をきかない。ずっときかない。時がくるまでは」(本文p158)
    このくだりを読んだときは背筋が凍るような思いがした。
    「まぐる笛」でも、まぐるという獣の様子も恐ろしいけれども、騒ぎの中でも子供同士の間である策略がめぐらされていることの方が恐ろしかった。
    人の恨みの根深さ、執念深さ。直接の血生臭さも恐ろしかったが、やはりいちばん恐ろしいのは人の心だ。
    実は宮部さんはすべての作品でそれを描いているのではないかと思う時がある。どんなにふんわり、ほんわかした結末に辿り着こうとも、その途中には必ず、どうすることもできないやるせない苦しさ、醜さ、辛さが描かれていて、私にはそれこそがこの世の真理なのではないかと思えてしまう。

    読み物としてこれほど面白く夢中になるものはないのだけれど、同時に読み終わると必ず、しんと心に沈むものがある。
    人の心にうごめく、暗くおぞましいもの。そういうものについて考えこんでしまう。そこが苦しい。でもそこが魅力なのである。

  • 三島屋の変調百物語シリーズの三作め。

    とても楽しみに待っていて、前二作&番外編まで復習読みした上で読んだという…。(#^.^#)

    う~~ん、いわゆる怪談の方はちょっと失速かな、と思われた前半。
    主人公のおちかや、三島屋の叔父さん夫婦、女中頭のお勝に新規の女中・おしま、また、寺子屋の青野先生など、お馴染みのキャラ同士のやりとりはとても楽しく、江戸の季節感やしきたり、矜持など気持ちよく読めるんだけどな・・と思いつつ、読み進んでいくと、徐々に油がのってくる百物語。

    ちょうど夜が更けていくあたりで、幸か不幸か(#^.^#) 主人が飲み会だったものだから、つい周りを見まわしてみたりするじゅんさんでした。

    怪異よりも生身の人間の心が恐ろしい、というスタンスは一貫していてそこがこの連作物語の一番好きなところかな。

    前作でホントに恐ろしかった、人を吸い寄せる屋敷の“番頭さん”らしき人物がまた現れたりもして、これは4作目以降につながるんでしょうね。

    生家での辛い思いからようやく前進できたように思えるおちかさん。
    青野先生へのほのかな恋心はどうなるのか。
    若旦那からの縁談は中途半端なまま、この巻では触れられなかったけどそれが罪作りにならないといいのだけど。

    そもそもの生家での惨劇が、かなり無理のあるもののように思えるだけに
    わかりきったことを後悔する、という苦い展開にはなりませんように、とも。

  • シリーズ3作目。
    以前、宮部みゆき氏のインタビューで、
    このシリーズはおぞましい話と可愛くて切ない話と
    偶数巻と奇数巻の雰囲気を変えようと思っている。
    とおっしゃていた。
    なので、やはりこの3作目は、
    語るも聞くも恐くて嫌な話が多かった。
    表題作の『泣き童子』は夏目漱石の「夢十夜」の
    三夜目の話を思い起こし、ぞっとする。
    『小雪舞う日の怪談語り』は、
    また違う趣向で主人公のおちかが
    怪談語りの会へ聞く側として出かけていくともので、
    古い表現ですが(笑)
    一粒で2度も3度も美味しいという贅沢な短編。
    心温まる1番好きなお話。

  • …なんでいちばん怖い話を表題作にするかなぁ…(泣)。

    『おそろし』は連作短編でありつつも1冊でひとつの話、という感じだったのが
    『あんじゅう』から語られる百物語にヴァリエーションがついてきて
    今作の『泣き童子』はさらにヴァリエーションの振り幅が大きいというか
    怖いのとほっこりの落差がとんでもないことになってきた。
    『魂取りの池』と『くりから御殿』は
    物悲しい中にもホッとするような温かさがあるのに対して
    『泣き童子』と『まぐる笛』は怖い以外の何者でもない。
    何が怖いってやっぱり人間の性が怖いのであった。
    『小雪舞う日の怪談語り』は正直スカッとした(笑)。
    『節句顔』は、怖いような悲しいような切ない話だった。
    昔読んだ話で
    ある男が神様(?)みたいな人に寿命の蝋燭を見せられたら
    自分の蝋燭が消えかけていたので
    咄嗟に隣にあった長い蝋燭を折って自分のに継ぎ足したら
    その長いのは実は息子の寿命の蝋燭で
    帰宅したら息子が死にかけていたので慌てて蝋燭を元に戻して
    その場で男は息絶える、
    というのを思い出した。
    どこのだれが書いたのか、日本の話かどうかも思い出せないんだけど。

    今回はとうとう清太郎さんは影も形もなかった(爆)。
    青野先生、もうちっと頑張らんと(笑)。

  • 胸の内に秘めておくことのできない、一風変わった話を語る、百物語シリーズ三作目。
    心の闇や悲しみ、恐怖など、あふれ出る思いが、江戸の人情味豊かに語られる。語って語り捨て、聞いて聞き捨てを信条に、主人公は様々な人の心に触れていく。

    一編だけやや毛色が異なるものがあり、初出の雑誌がその話だけ別の媒体とのこと。最初は少し違和感もあったが、通して読むとちょうどいいアクセントになっているのかもしれない。

  • 三島屋の黒白の間には心に重荷を抱えた人々がおちかに話を聞いてもらいにやってくる。

    三巻目の今作も変わらぬ面白さである。

    ただ怖い話というだけではなく、その裏には不可思議さ不条理さなど、簡単には消化しきれないものがたくさん潜んでいる。

    そのようなものに対面させられるおちかもなかなか大変だが、心に傷を持つ彼女への荒療治となっているのが救いか。

  • 今回もなかなかぞくぞくさせてくれますね。
    ホラーではないのですが、
    一人で静かな部屋で読んでいると、
    ふっと不安になってしまいます。

    さまざまな怪異もそこで暮らす人間があってのもの。
    怪異の存在が、自分の生き方を省みる機会を与えてくれていた時代が確かにあったのですね。

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著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ みゆき)
1960年、東京都生まれ。1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。
1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、1999年には『理由』で直木賞、2002年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞。
大沢オフィス所属。日本推理作家協会会員。日本SF作家クラブ会員。直木賞、日本SF大賞、小説すばる新人賞、河合隼雄物語賞など多くの文学賞で選考委員を務める。
『模倣犯』や『ブレイブ・ストーリー』など、多くの作品がドラマ化や映画化などメディア・ミックスされており、日本を代表するエンターテインメント作家として人気を博している。2018年10月、『宮部みゆき 全一冊』を刊行。

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