検察側の罪人

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  • 文藝春秋 (2013年9月11日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (512ページ) / ISBN・EAN: 9784163824505

作品紹介・あらすじ

検事は何を信じ、何を間違えたのか。



東京地検のベテラン検事・最上毅と同じ刑事部に、教官時代の教え子、沖野啓一郎が配属されてきた。ある日、大田区で老夫婦刺殺事件が起きる。捜査に立ち会った最上は、一人の容疑者の名前に気づいた。すでに時効となった殺人事件の重要参考人と当時目されていた人物だった。男が今回の事件の犯人であるならば、最上は今度こそ法の裁きを受けさせると決意するが、沖野が捜査に疑問を持ちはじめる――。



正義とはこんなにいびつで、こんなに訳の分からないものなのか。

雫井ミステリー、最高傑作、誕生!

みんなの感想まとめ

正義の複雑さと個々の信念が交錯する物語が展開されます。東京地検のベテラン検事とその教え子が、老夫婦刺殺事件を通じて直面するのは、法と倫理の狭間で揺れる「正義」の姿です。倒叙形式で描かれるこのミステリー...

感想・レビュー・書評

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  • ミステリの構成としては倒叙ものと言っていいと思う。前半が丸っと犯行までの序章となっており、後半はどうやって暴かれるのかという構成だ。

    元々司法試験に合格して検察官を選択する人は正義感の強い人だろうと思う。但しその「正義感」というのが厄介で、個々人の生い立ちや職業倫理などによって様々な上、正義を訴える人は我こそが正しいと思っているため妥協しない。他者の考えに対して譲らない。非常に面倒な感性だ。

    本作はミステリとして良く出来た作品ではあるが、私個人の「正義感」からすると納得出来るような結末ではないので☆4とした。
    正義感って難しい…。

  • 映画にもなった話題作を読了。
    自分なりの正義、信念を貫いて行動に移した2人。
    何が正しいのか。深く考えさせられる作品でした。
    時効、冤罪の中渦巻く今回の作品。
    一番救われなかったのは刺殺事件の残された遺族だと思いました。
    各々の結論も、自分で選んだ信念だったから彼らはまだ良かったのかなとも。

  • 映画化されることで、何かと話題なので読んでみた。
    前半は過去に強姦殺人事件を犯しながら、時効となり、立件出来なかった犯人が別件で容疑者となり、何とか有罪に持ち込み、過去の事件の復讐を企てようとするベテラン検事・最上の様子がメインで描かれる。個人的な感情で冤罪を企てる最上には全く同情出来ない。それは最上の元で容疑者に接していた沖野も同様で、彼は最上に反発するかのように検察庁を辞め、国選弁護士、雑誌の取材記者と共に事件の真相に迫っていく。
    立件されたら99.9%が有罪となる刑事事件に沖野の正義は勝てるのか?その様子を描く後半3分の1は読み応えがある。
    欲を言えば、最上の偽装工作よりも、沖野との対決部分にもう少しページを割いていると、もっと面白かったかもしれない。
    最上の動機にはあまり納得出来ないが、沖野の葛藤は同情出来る部分がたくさんあった。
    映画もそんな展開になると、さらに問題になりそうだけど…

  • とっても面白かったです。厚い本でしたが終盤は一気でした。多くの伏線を最後ここまでまとめるとはさすがです。正義とは何か、私も分からなくなりました。

  • 正義とは何か。
    検事沖野が背負ったものは秋霜烈日のバッジの重さと尊敬する先輩検事への疑念。
    バッジを外す決意をした沖野は事件の真相に迫る。

    冤罪はかくも容易く作られてしまうものなのか。
    これは読み応えあり。
    袴田事件の再審が決定した今リアルに迫る1冊。

    いろいろと考えるところは多い作品だったけれど
    最後は泣いた。
    正義とは? そして真実の意味とは?
    久しぶりに強く余韻が続く作品でした。

  • 読み応えのある、一級のリーガルサスペンスといってよいだろう。一時問題になった特捜部の恣意的捜査。冤罪問題。そして時効の課題が重く迫る。
    時効の壁に、まんまと逃げおおせる犯罪者。その時の被害者および関係者の心中如何やと。
    法律が改正され、時効の廃止された現在では、こういった問題は起こらないといえるだろうか。しかし、特捜部の体質、冤罪は、今後の課題としてまだ残っている。

  • 矛盾したような意味深長な題名だが、題名の意味も含めてとても面白かった。 つい名作の「弁護側の証人」を思い浮かべた。
    ※ネタバレ注意! 以下の文には結末や犯人など重要な内容が含まれている場合があります。

    司法修習生の研修会場で最上は検事の卵たちの指導教官だった。そこで沖野という修習生が、検事になる決意を最上に告げる。未来に希望を持ち瞳を輝かした若者だった。

    沖野は修習を終えると5年間の地方勤務から東京地検に異動して、その後一年を経て刑事部に配属された。そこの上司が最上だった。

    沖野は「法という剣を究めて世の中の悪を一刀両断にする・・・」彼は最上のはなむけの言葉を繰り返し、なお、法律は叡智の結晶でも、その剣は生かすものの力量に匹敵するのではないかと言う。
    だが最上はそれを肯定する姿勢を見せなかった。

    その時点で、凶悪犯罪の公訴の時効は10年から25年に改正されていた。
    「俺は少なくとも、凶悪犯罪に時効はいらないと思っている。時効が存在する理由は法解釈でいろいろ挙げられたりしているが、結局そんなものはただの慰みだ。個々の事件で判断すればいいことであって、一律に線引きする理由にはならない。人間の能力として犯罪者を捕まえられないと言うのなら、それは仕方がない、しかし、法律が限界を区切るのは法律の負けだ」
    「時効が撤廃されたとしても、それまでに時効が成立した事件は、やはりそのままということになるだろう。俺はいいとき人を殺したとほくそ笑むわけだ。
    自分が手にした剣も万能ではない・・・そういいたくもなるってもんだ」

    飲み屋でするような話をしてしまったと最上は思ったが、沖野は畏まって聞きいり、話の通じるやつだと言われ嬉しそうだった。


    鎌田で老夫婦二人の刺殺事件が起きた。夫の趣味だった競馬仲間に小額の金を貸していたが、現場からは、犯人の決め手になるような証拠は見つからなかった。
    借用書は残っていたが、抜かれている可能性もある。とりあえず出入りしていた競馬仲間を調べることになる。そこで最上は、昔殺人事件の容疑者になった松倉という名前を見つける。かつての事件で彼は少女殺しの重要容疑者と見られていたが、最後まで罪を否認して迷宮入りになり、時効が成立していた。

    過去の松倉の事件というのは、会社の寮を管理していた夫婦の六年生の一人娘が、犯されその数日後に管理人の留守を狙って、また犯されて殺されていた。最上は学生時代この寮に下宿していた。
    他の部屋には会社員や現場作業員などが住んでいた。

    当時、最上達は司法試験を目指し勉強中だった。仲間は4人いたが、現在は弁護士、政治家、記者、などと道が分かれている。

    政治家になったひとりは、義父の罪をかぶって自殺した。彼は重要な地位にある義父の生き方を清濁あわせて信頼し、将来の政治に必要な人物だと最上にいった。そして自分が盾になって死んでいった。

    最上は、自分の検事という仕事を考える。

    松倉を別件で逮捕し、事件について取調べを始める。
    沖野は最上からまかされて、松浦を取り調べるが、決定的な証拠がなく、松倉は否認し続ける。
    かつて起こした事件はすらすらと認めた。時効が成立してしまっている事件で、これを認めるのは簡単だった。

    沖野の尋問は苛烈を極め、口汚くののしり、ついには逆上した様子までも見せて追い詰めていく。法という基準がなければ、彼のこういった取調べは、振り返ると、逆に自己崩壊を招きかねない心理状態を自覚するほどだった。

    しかし、最上は、決して松倉の否認を認めず、取調べの手も緩めなかった。

    沖野は、追い詰める側にも究極の苦しみをがあることを知る。そして、ここまで確信を持って責めろと言う最上に、何か割り切れないものを感じ始める。

    決め手の証拠と容疑者の自白を求め、捜査官と検察官が粘り続けるうち、居酒屋でやはり容疑者として浮かんでいた弓岡という競馬仲間が、事件に触れて話していたというニュースが入る。

    そして、弓岡に接触してみると、今までの矛盾点が明らかになるような話をする。

    松倉に固執する最上は、一つの解決法を思いつく。

    面白かった。やはりミステリはレビューに書けない部分がある。面白かったので少し前に読んだものをリライトしてみたが、やはり今回も最上について書きたいこともあるが、流れに沿って終章まで作者とともに行き考えるのが、読書の楽しみかもしれない。

    沖野は辞職し、迷った末弁護士登録をする。
    「正義」と言う言葉が何度か出てくる。法の正義の刃は使う人の正義によっては切れ味も違ってくると考える沖野の正義は、人権派という看板によりかかった弁護士とも相容れないところにあり、読者に明るい未来を見せてくれる。

  • 東京地検の検事・最上とその教え子の沖野。かつて最上が関わった女子中学生殺人事件で松倉は時効となる。しかし、最上は別事件の老夫婦刺殺事件で松倉を犯人に仕立て上げる暴挙にでる。そこで沖野が検察を辞め弁護士となり最上と決別し、対決する。最上は松倉を殺すという殺人、沖野は検察時代に得た情報を国選弁護人に漏洩するという罪を犯す。両者はお互い正義のために戦い、正義を勝ち取ることに執着する。両者の立場になると解釈は難しいが、人を殺してはOUT。沖野の絶叫には最上に対する敬愛を含んでいたと信じている。一読必至です。

  • 久しぶりの長編。また長編になるだけの読み応えがあった。
    検事についての仕事などが詳細に描かれてあって、勉強になった。逮捕、起訴、裁判などのシステマティックな流れも理解できた。ただ中盤までは話の展開が遅く忍耐強く読み進めなければならない。その後後半は怒涛の展開となり一気に読み進めた。作家の筆力に圧倒される。
    この本を読んだ後に、司法に携わろうと言う夢を抱く人はいないのではないか?現実の凄まじさを思い知った小説だ。

  • 最後の松倉見てたら冤罪で死刑になっても
    やむなしだったかも。
    検事でも裁判官でも弁護士でもだろうけど権力をもってて
    上に立つ人間ほど私情に踊らされてはいけない。
    映画版、松重さんの諏訪部役は見てみたいなあ。

  • 読み始めたは良いものの、序盤なかなか進まなく、図書館から借りては返しを五回くらい続け、やっと読み終わった感想はというと。めちゃくちゃ面白かった。中盤から特に。終盤は大層泣けた。犯罪動機としてはちょっと安易じゃない?拙速に過ぎやしまいか?という気持ちも無きにしも非ずだけど、終盤の最上の周囲への優しさや、沖野の煩悶や、さらには現実ってきっとこうなんだろうなと思える、気持ちをどこに持っていったら良いか昇華しようがないやるせない終わり方。その辺が特に良かった。
    最上の家族がわりと納得しているようだが、そこに至るまでの過程をもっと書いてほしかった。

  • 検察も人間 憎しむ心は皆同じ
    その先を行動に起こすかどうかが分かれ道

  • 2016/11/24 500ページの単行本でしたが、後半からは一気に進みました。何か昔読んだような筋はあったけど傑作。★5

  • なかなか読み進められず、でも最後まで頑張って呼んだ甲斐があったと思う。

    検事のお話。
    新人検事が担当する事件の容疑者が、先輩最上検事の因縁の相手だった。
    最上がいた寮の一人娘が以前殺され、逃げ延びた犯人が今回別の容疑者になる。

    最上筆頭に今回の事件に関しては犯人じゃないそいつを、なんとか犯人に仕立てあげるお話。

    それを疑問に思い検察を辞めてまで容疑者を助ける新人。

    結果的に先輩検事の最上さんを逮捕することが出来たけど、その犯人は結局クソやろーだし正義って何?
    新人くんがしたかったことって何?
    最後はスッキリ!!じゃなく、彼のもやもやと自問自答で終わるところが良い。

    正義とは、正しいとは、人が人を裁くとは。
    感情を持った人間が、他の人の罪に関して制裁を決めるっていったいその制度なんなの。

  • 正義っていうのは
    痛みを伴わずに振りかざすことが可能な凶器。
    権力者の大義名分。
    だけど、爛れた欲望から生まれる悪意に立ち向かえる折れないつっかえ棒にもなるんだよな。

  • 冤罪は決して起こしてはいけないこと。最上の正義がズレてしまったのは悲しい。そこで沖野が立ち上がり、かつての尊敬する最上と対立関係になるが、最後で結局正義とは何なのか自問自答してしまう。

  • ストーリー自体はさすが雫井さんで、
    読み始めはスローだったけど後半はぐいぐい読めた。

    ただ、どうにもこうにも理解できないところもあった。
    最上の家族の心情とか。
    松倉の今後をどう考えるべきか、とか。

    沖野はどんな人生を送るのかな。

  • 警察が犯人と目星を付けたら、そこからその容疑者を犯人にするべくストーリーが組み立てられ、それに沿って証拠集めをしてく。
    こういうふうにして冤罪は作られていくんだなーという思い。

    それに対して、まっすぐに正義を貫こうとする若手検事沖野。

    すっかり沖野に肩入れして読んでいたけど、沖野の正義は貫かれたはずだけど、どうなの。

    晴れて釈放された松倉の態度と白川弁護士の言葉。
    もう、これ、わたしの中ではどんでん返しとも言える衝撃だった。

    沖野がすべてを投げ打って貫いた正義は正しかったのか・・・なんてしみじみ考えさせられてしまった。
    もちろん、冤罪は絶対あってはいけないことだけど。

    この作品で泣くとは思わなかったけど、沖野と一緒に泣いてしまったわ。

    • xxnenexxさん
      奥野ってだれですか?読みました?
      奥野ってだれですか?読みました?
      2018/05/06
    • 高原あおいさん
      あ、沖野でしたね。失礼しました。訂正しておきます。
      あ、沖野でしたね。失礼しました。訂正しておきます。
      2018/05/06
  • 東京地検のベテラン検事・最上毅と同じ刑事部に、教官時代の教え子、沖野啓一郎が配属されてきた。ある日、大田区で老夫婦刺殺事件が起きる。捜査に立ち会った最上は、一人の容疑者の名前に気づいた。すでに時効となった殺人事件の重要参考人と当時目されていた人物だった。男が今回の事件の犯人であるならば、最上は今度こそ法の裁きを受けさせると決意するが、沖野が捜査に疑問を持ちはじめる―。 (「BOOK」データベースより)

    冤罪はこうして作り上げられるのか・・という本。実際こんなことまで起こるのか本当のところはわからないけど、時々ニュースで見る冤罪、こういうこともあるのかも。怖いなぁ。前科とか、日ごろの生活とか、そういうことで狙われるんですね。でもこの物語の中では、時効になったひどい事件の犯人なので、いいぞ、やっちゃえとも思う自分がいました。

  • 新刊として発売された直後に図書館で予約。待つこと半年。気長に待った甲斐があったと思える作品。
    正義とは何か?なんて考えさせられると言えばそうだが、タイトルからして内容が類推できる。とはいえ、ストーリー展開としては非常に面白く、現実問題として「こんな検事おるか?」「そんな奴おらんやろ!」って突っ込みを入れながらも後半部分はグイグイと引き込まれた。
    検察も組織だから縦割りになっているのも分かるが、なんかしっくりいかないものが残った。さらに。時効が成立した殺人事件の犯人。自分勝手な行動が発端となるが、最後の最後まで自分勝手な人物として描かれている部分をみるとちょっと後味悪い作品でもあるが、500ページ以上かつ図書館に返却する時間も気にしながらも珍しく集中して一気に読めた。

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著者プロフィール

1968年愛知県生まれ。専修大学文学部卒。2000年、第4回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作『栄光一途』で小説家デビュー。04年に刊行した『犯人に告ぐ』で第7回大藪春彦賞を受賞。他の作品に、『火の粉』『クローズド・ノート』『ビター・ブラッド』『殺気!』『つばさものがたり』『銀色の絆』『途中の一歩』『仮面同窓会』『検察側の罪人』『引き抜き屋1 鹿子小穂の冒険』『引き抜き屋2 鹿子小穂の帰還』『犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼』『犯人に告ぐ3 紅の影』『望み』などがある。

「2021年 『霧をはらう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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