まほろ駅前狂騒曲

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 442
  • Amazon.co.jp ・本 (468ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163825809

作品紹介・あらすじ

2013年に瑛太、松田龍平のコンビでテレビドラマ、映画化された「まほろ駅前」シリーズの第三弾!
前二作に引き続き、今回もまほろ駅前周辺で事件が起きます。

感想・レビュー・書評

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  •  まほろシリーズ第三弾。

     行天が多田便利軒に転がり込んできて3年目の正月から物語は始まる。もう三年目・・・多田は行天に「そろそろ出てけよ」とことあるごとに言うが、まいにち「おやすみ」を言い合える、ゆるゆると繋がっている日常が続いている。いいな。

     そんな二人の日常を変えるのは、やっぱり女。

     特に、行天の遺伝子上の娘である、はるが多田と行天の日常に大いなる変化を与える。行天の過去も明らかになる。「高校に上がるころには部屋にいくつものカギをつけた。母親が部屋に入ってこられないように」
     これだけの描写で、何が起きたのか、容易に想像できてしまう。行天の過去がすさまじかったことを。、

     小さいものに暴力をふるってしまうことを極端なほど恐れる行天。そんな行天と、はるちゃんを一晩二人きりにしようとする多田がよかった。その多田の覚悟もよかった。
    「はるちゃんに何かあったら、俺は死ぬことにするよ」
     この殺し文句は、多田にしか言えないことだ。行天を信じる、多田にしか言えないことだ。

     はるのことを、「あれ」「あのガキ」と呼んでいた行天が、段々やわらかくなっていったのもよかった。行天がはるを「このひと」と呼んで、はるが差し出した手を握り返すのもよかった。

     人は、こうやって繋がっていくんだな。生きていれば、こうやって人と人とは関わっていけるんだな。心がじわっとなった作品。

     ぜひとも、まだまだ続編が出てほしい。

  • 三浦しをんの作り出す小説世界の住人たちは、とても魅力的だ。
    主人公である多田啓介と行天春彦はもちろん、彼らを取り巻く岡、ルル、ハイシー、凪子、はる、亜沙子から星や由良や裕弥まで。
    それぞれのキャラクタに深みがあり、絵に描いたようにくっきりとイメージできる。

    「まほろ駅前」シリーズ三作目となるこの最新刊では、多田と亜沙子の恋物語に胸ときめき、謎の農業団体との騒動にハラハラドキドキさせられ、時には大笑いしながら、物語は進んでいく。
    今回の様々な経験を経たことで、多田も行天もようやく自分たちの葛藤や悩みを乗り越えることができ、一回り大きくなっていく。

    終盤では、行天の失踪によってこのシリーズも今回が最後かと思わされるが、誰も想像しなかった展開によって、今後に含みを持たせる。

    ところどころに散りばめられた作者特有のユーモアセンスに頬を緩めながら、最後までとても面白く読まされる。
    まさに小説の醍醐味を十分に味わえる作品だ。

    多田が便利屋稼業を営む限り、どんな事件に関わっても違和感はない。
    これからも長期に渡って続編を期待したいシリーズだ。
    多田、行天のハチャメチャコンビは永遠に不滅なのである。

  • まほろシリーズ3作目。いつもの岡さんの横中バス間引き運転話、無農薬野菜を売る怪しげな団体…落ち着く事のないまほろで、一ヵ月半子供(はるちゃん)を預かる事になってしまった多田と行天。はるちゃんを交えてのドタバタな日々が始まる。
    色々な事が良い方向に進展し、驚きの連続だった。特に行天は最初の頃とイメージが一変。登場人物の意外な一面(多田が甲斐甲斐しくはるちゃんのお世話をしたり…)も見れて、このシリーズに対する見方がかなり変わった一冊になった。

  • 「まほろ駅前」シリーズ3冊目。

    新年を迎えた多田便利軒。
    相変わらず、多田と行天の男二人住まいです。
    しかし、この1年は曽根田のばあちゃんが予言したとおり、波乱に満ちた1年となるのです…。

    まほろのオールスター勢ぞろいで、読者にはうれしい限りです。
    特に岡老人の暴走っぷりに磨きがかかっていて、呆れつつも笑いがこぼれてしまいました。
    謎に包まれていた行天の過去も、少しずつ明らかになっていきます。

    しをんちゃんの小説を読んでいると、いつのまにか登場人物たちのファンになってしまっていることが多いです。
    多田にも行天にも、心に変化があった1年だった様子。
    このあと、彼らがどんな風に暮らしていくのか、ぜひこの先もまほろ町の面々を見守っていきたくなりました。

    • 円軌道の外さん

      明けましておめでとうございます!
      今年も変わらずよろしくお願いします(^o^)

      このシリーズもテレビドラマは見てたけど
      小説は...

      明けましておめでとうございます!
      今年も変わらずよろしくお願いします(^o^)

      このシリーズもテレビドラマは見てたけど
      小説はご無沙汰でした。

      けどすずめさんの愛情溢れるレビューを読んで、
      また多田や行天たちに無性に会いたくなってきました(。>A<。)

      喪失を抱え逃げずに過去と向き合おうと
      変わってゆくふたりを見ていると、
      なんだか勇気が貰えるような気がしてくるし(笑)

      今年は映画の第二弾も公開されるとのことなので、
      そちらも楽しみですよね(^o^)

      素敵なレビュー今年も期待してます!

      2014/01/02
  • まさに「狂騒曲」。
    皆が皆思い思いに生きていて、それぞれのパワーがぶつかってあちこちで騒動が勃発して、傷ついたり、愛し合ったり、もう何が何だかなのがこの世界。
    そんな混沌とした世界の中で出会った多田さんと行天さんと、友人達。
    これが幸せってことなんだなと思えた。

    「大事なのはさ、正気でいるってことだ。おかしいと思ったら引きずられず、期待しすぎず、常に自分の正気を疑うってことだ」

    行天さんのこの言葉がぐさっと刺さった。
    「正気でいる」
    「自分の正気を疑う」
    その通りだなと思う。
    でもこれが難しい。
    どうしても思いつめてしまう。「こうしなきゃ」と。
    それが狂気の最初の一歩のような気がする。
    でもこの一歩は頑張っている時に踏み出してしまう一歩だし、前向きでいたいと思っている時に踏み出してしまう一歩なんだ。
    日々を生きていくにはそういう気持ちも必要だと思う。
    だから「常に疑う」ってことなんだろうな。
    頑張ってしまっている(と言うのもなんだかな…だけど)時、「今私が見ているものは何か?」「今目指しているものは何か?」と問いかける。
    それが自分にとって大切なことなのか。
    その行いを心から肯定できるのか。
    余裕を失っていないか。
    利害ではないところで笑っていられているか。

    うぅむ…問いかけ方が難しい…。
    その辺はもう少し考えます。

  • え?まほろってこんなに切なく哀しい話だった?
    多田も行天も重すぎる過去を背負っているけど、ダラダラ脱力系のちょっとミステリーみたいなかんじじゃなかったっけ?
    と思うくらい、多田と行天の関係と行天の過去が直球で描かれている。
    うわー、前の2作読み直したい。

    思わず何度も読みなおしてしまうくらい、ぐっとくる語りが何箇所もあり、ふいに涙がにじむ。
    その倍くらい吹き出してしまうところがあるんですが。

    信じること、覚えていること、正しいと感じることをすること、正しいと感じる自分が正しいのかいつも疑うこと、厄介ごとを抱え込み人々の暮らしの中で生きていく。

    行天の元パートナー・凪子から突然娘のはるを1か月半預かってほしいと頼まれ、微妙な3人のひと夏の生活がはじまります。
    HHFAなる無農薬野菜を作り売る団体やら、横中バスの間引き運転に断固として糾弾する岡さんたち老人御一行やら、ルル&ハイシーに星に由良公たちおなじみメンバーも絡んできて、なかなかの騒動になるも、切なく苦しい彼らの想いが絶えず付き纏います。
    「キッチンまほろ」の美人女社長・亜沙子との関係も、傷のなめあいではなくお互いを思い遣っているところがいいですな。

    いやー、最後はもしやシリーズ完結?と心配になったけど、よかったよかった。
    多田と行天の同居生活も丸3年となり、4年目を新たな年と共に迎えました。
    次のハッピーな展開を思うと楽しみで仕方ない。

  • いつもの奴らがなぜか集結―?まほろ駅前は大騒ぎさ!四歳の女の子「はる」を預かることになった多田と行天。その後なんとバスジャック(?)に巻き込まれることに―。
    「Bookデータベース」より

    今回は大きな騒動が起こった(笑. (笑とつくところがしをんさんだから?ヤクザが出てくるのに深刻にならずカラッとしていて、行天の指が再びふっとんだのに、これまたあまり深刻にならず…多田サン、指冷静に拾っている場合では…と思いつつも、これまでのハチャメチャを見ていたら、そうなるわな、という納得.おもしろかったです.

  • まほろシリーズ3作目。
    今作を読む前に前2作を読み返していたのと、文庫版の帯に「大円団」とあったので安心して読めました。

    個人的に多田は自分と重なるところがあって、なので彼がまた人を愛すことができたこと、そんな自分を肯定できたことが嬉しかった。大人の恋愛のもだもだも微笑ましかった笑
    そして行天。行天は臆病で愛すべき人ですね!子どもを傷つけるのではなく、守ることができたときに「幸せだ」と感じることができる、本当に優しい人だと思いました。

    誰とも交わらず、誰の記憶にも残らず、一人きりで生きていきたい。そんな風に考えてしまうことが、誰しもあるものだと思う。
    でもなんどでもやり直していいし、なんどでも幸せを求めていい。過去を切り捨てるのではなく、まるっと抱えて一緒に生きていける。
    なんど切り離されてもしぶとくくっつく行天の指が教えてくれました。

    2人の関係性がとてもいいですね。
    人と人とのつながりはあたたかい。
    生きていくことは、つながっていくことなんだなぁ。としみじみ感じました。

    • aida0723さん
      なるほど‼️行天の小指はそれを教えてくれていたんですね、納得です。
      なるほど‼️行天の小指はそれを教えてくれていたんですね、納得です。
      2018/04/24
    • tsukitamaさん
      動かない指も、辛い過去も、捨てずに一緒に生きて行けるっていうメッセージかなと個人的には思いました^^
      動かない指も、辛い過去も、捨てずに一緒に生きて行けるっていうメッセージかなと個人的には思いました^^
      2018/04/25
  • まほろ駅前シリーズってこんなに面白かったかしらん。
    調べてみると「多田便利軒」を2009年「番外地」は2012年に読んでます。この「狂騒曲」の存在は知っていましたが、さほど積極的に手を出すことなく5年が経過。改めて見てみると、このシリーズ、みなさんの評価の星の数が後になるほど増えて行ってます。最初は行天の奇天烈ぶりに振り回されただけのイメージしかなかったものが、その背景が明らかになるにつれ、納得できる様になって来たのが好印象の理由かもしれません。
    まずはとにかく登場人物が可笑しい。健康オタクのヤクザ(本人は否定)の星、面倒見が良い売春婦のルルとハイシー、バスの間引き運行を妄信する老人・岡。何となく浅田次郎さんのユーモア小説の登場人物の様です。そして何と言っても行天の行動の奇妙奇天烈さと、それに付き合う多田のボヤキ。そこに適度な泣かせ・人情を差し込んで見事な出来栄えです。
    これに今回は多田の純情な恋愛もおり込んで、ちょっとやり過ぎなエンディングも許せてしまいます。
    一気読みでした。

  • まったりと過ごすお正月にルルとハイシーが乱入し、岡老人からまたもや横中の間引き運転調査の依頼。
    行天は相変わらず「口と鼻から白い煙を出して、妙な声で笑って、自分の腹をカブトムシの腹みたいにしようと運動」している。
    いつもの幕開けと思いきや「ハイブリッド車なみに音のしないブルドーザー」三峯凪子からとんでもない依頼が舞い込む。
    戸惑う暇もなく星さんから無農薬が売りの怪しい野菜団体の畑の監視に駆り出される多田。
    曽根田のおばあちゃんのお見舞いにも行きたいし、「キッチンまほろ」の亜沙子も気になる。
    多田の多忙さ絶好調。

    それにしても、もうン十年も横中のお世話になってますが、実家の近くも、今のとこも単線なだけに値上げも本数減らすのも一方的で、岡老人に内心エールを送ってしまった。
    「横中の横暴許すまじ」

    子どもの親への気持ちが今回も切ない。
    「正しいと感じることをしろ、だけど、正しいと感じる自分が正しいのか、いつも疑え」
    薄暗いものはつきまとうものの、今回は全体を通して明るくて、噴き出す箇所満載。電車で読むのは要注意!
    多田の幸せにカンパーイ!行天の未来にカンパーイ!
    ちょっとえ?っとも思うけど、華やかなグランドフィナーレだった。

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プロフィール

三浦 しをん(みうら しをん)。
1976年、東京生まれの小説家。出版社の就職活動中、早川書房入社試験の作文を読んだ担当面接者の編集者・村上達朗が執筆の才を見出し、それが執筆活動のきっかけになった。小説家の専業になるまで、外資系出版社の事務、町田駅前の古書店高原書店でアルバイトを経験。
2006年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞受賞。2012年『舟を編む』が本屋大賞に選ばれ、翌年映画化された。2015年『あの家に暮らす四人の女』が織田作之助賞受賞。また、『風が強く吹いている』が第一回ブクログ大賞の文庫部門大賞を、2018年『ののはな通信』が第8回新井賞を受賞している。
Cobalt短編小説賞、太宰治賞、手塚治虫文化賞、R-18文学賞の選考委員を務める。

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