- Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163826103
作品紹介・あらすじ
大江戸スイーツ切り貼り屏風小さな菓子所藍千堂を切り回す兄弟に訪れる様々な難問奇問。季節季節の菓子に見立てて見事解決。時代人情話のお披露目でござい!
感想・レビュー・書評
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シリーズ第一作。
上菓子屋〈藍千堂〉は、店主で菓子職人・晴太郎(兄)、接客と経理担当の幸次郎(弟)、二人を『坊ちゃま』と立てる職人・茂市の三人で切り盛りしている。
そもそも父の死後、実家である上菓子屋〈百瀬屋〉から兄弟が追い出された理由はなんだったのかということを知りたくて第一作を読み返してみたのだが、その理由はなかなか出てこないまま話が進む。
田牧さんの作品は匂わせが多いので仕方ないのだが、もっときちんと掘り下げて描いて欲しかったという印象が残る。私の読解力の問題かも知れないが。
先に読んだ第二作では恋する晴太郎の暴走に違和感を感じたのだが、この第一作では幸次郎もまた恋の暴走をしている。お相手はこれまた厄介な人。こうして読みかえすと、よく似た兄弟なのだなと分かる。
第二作同様、幸次郎が突っ走ればお店のピンチになりかねないのだが、晴太郎は寧ろ後押ししている。第二話では伊勢屋総左衛門が後押ししていたのに似ている。
肝心の〈百瀬屋〉の現店主で兄弟の叔父がなぜ兄弟を追い出したのか、その後も何かと〈藍千堂〉に嫌がらせをしてくるのは何故なのかという部分については納得できる部分と出来ない部分があった。
上菓子屋なのになぜ砂糖の品質を落とすのか、自身の腕が兄弟の父には及ばないというのなら、腕利きの職人を雇うなり育てるなりできなかったのか。卑怯な手を使ってまで兄弟を追いつめるという展開ではなくて堂々と菓子作りで勝負するという設定には出来なかったのか。
叶うはずのない幸次郎への恋をしているお糸にしてもいつまでも引っ張るのではなくてサバサバ振り切る展開にはならなかっただろうか。
…などとアラばかり見てしまってなかなか物語の世界に入り込むことが出来なかったのだが、第二話の「氷柱姫」の話は良かった。思いあう不器用な二人の真意とは裏腹に周囲が勝手に事を大きくしていく。旗本という地位であるゆえの窮屈さを乗り越えて、二人が自分達らしい道を行く姿はホッとした。
第二作では彼らのその後が描いてある。だが晴太郎が恋してしまう相手との出会いのきっかけになるのも彼らだった。
年齢的にどうしても彼らの親目線…茂市や総左衛門、少し若い世代だと同心の岡やおろく一家の視点で読んでしまうのだが、彼らにとって晴太郎・幸次郎兄弟は可愛くて厄介で、黙って見守りたいけれど口を出したくてという存在なのだろう。
ただどうにも肝心の兄弟に感情移入出来ないのが厄介で、シリーズ最新作を読むかどうかは微妙。また苛々しそうな気もする。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
何度読んでも心温まるものがある。
これで読むのは2回目になる。
第3話の「あなたのためなら」を読んで、第1話からもう一度読み直す気になった。
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甘いもんでもおひとつ 藍千堂菓子噺シリーズ1作目
2013.10発行。字の大きさは…小。2019.04.23読了。★★★★★
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2023.01.14レイアウトを修正。 -
ふふふ、和菓子屋さんが舞台の物語。
それだけでわくわくします。
菓子作りにひたむきな、おっとりした兄、晴太郎。
商売上手で、しっかり者の弟、幸次郎。
父が晴太郎と幸次郎の誕生祝いにこしらえた吉野饅頭。
「晴太郎饅頭」はふんわり柔らかく。
「幸次郎饅頭」はしっかりした餡。
父の願いの通りに立派に育った兄弟。
もともと両親と暮していた「百瀬屋」を
両親亡き後、店を継いだ叔父から追い出され和菓子屋「藍千堂」を開く。
そして、その二人を温かく見守る職人の茂一。
叔父からの理不尽な嫌がらせにも負けずに、
お互いを補い支え合いながら生きている。
そしておしまいは、めでたしめでたし。
登場する季節感あふれる美味しそうな和菓子はもちろんですが、
カバーと章ごとの扉絵がとっても素敵です。
榮太樓さんのお菓子と、伊勢辰さんの千代紙なんですね~。
どんなにイライラしている人でも、
「まあ、甘いもんでもおひとつ」
な~んて言われて差し出されたら、頬を緩ませてしまうのでは?
少なくとも私には、これ以上ない魔法の言葉です♪ -
和菓子の魅力がたっぷり詰まった本。
季節の折々の風物、花鳥風月を感じ、心の機敏を汲んで創られる和菓子。
視覚で楽しみ、味覚で感じる季節を凝縮させたちいさな世界。想像しては、その美しさ、美味しさにうっとりする。
『藍千堂』の和菓子をおひとつ頂けば、幸せな気持ちになるのでしょう。あ~頂きたい。
章扉のいせ辰の紋様も美しく、次章の導入に話に引き込まれていく。
江戸の情緒、人情、生活を垣間見られ、甘い和菓子を戴いたような、ほっこりするお話でした。
江戸時代、今よりもっと生活の中に季節を感じられたのでしょう。
せめて和菓子を戴いて季節を感じたい。-
koringoさん
こんばんは。
いいね!有難う御座います。
私は、「藍千堂菓子噺」の3冊が大好きです。
koringoさんのレビュ...koringoさん
こんばんは。
いいね!有難う御座います。
私は、「藍千堂菓子噺」の3冊が大好きです。
koringoさんのレビューは、いいですね。
今後ともよろしくお願いいたします。
やま
2020/02/20 -
やまさん
コメントありがとうございます。
『甘いものでもおひとつ』は、やまさんのお気に入りベスト1とあり読んでみました。
皆さんのレビ...やまさん
コメントありがとうございます。
『甘いものでもおひとつ』は、やまさんのお気に入りベスト1とあり読んでみました。
皆さんのレビューで、これ迄知らずにいた良い本に出会えて嬉しいです。
これからもよろしくお願いいたします。
Koringo
2020/02/21
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菓子職人の兄、晴太郎と商い担当の弟、幸次郎が営む菓子屋「藍千堂」。晴太郎の菓子作りの腕と、幸次郎の商才のおかげで店の評判は上々だったが、兄弟の叔父が営む菓子屋「百瀬屋」から目の敵とされていた。叔父が仕掛ける、様々な嫌がらせを、機転と心を込めて作ったお菓子で乗り越えていく、痛快、それでいて心の温まる、連続短編時代小説。
ブクログでフォロワーさんが紹介されていたのをみて、読むことにしました。普段は時代小説を読まないので、この本に巡り合わせてくれたブクログとフォロワーさんに感謝しています。
まず、キャラクターたちがとても魅力的でした。気弱だけど優しくて思いやりに溢れた主人公の晴太郎、百瀬屋を憎んでいるが、店に残してきた従姉妹のお糸のこととなると非情になりきれない幸次郎、百瀬屋の一人娘という立場に苦しみながらも真っ直ぐに幸次郎を慕うお糸など、どの登場人物達も思わず愛おしく思うような人達でした。彼らのおかげで、物語が温かみのあるものになっていると思います。
また、お話に出てくる菓子も、物語に彩りを添えていました。作者は菓子つくりの経験があるのかと思うほど、細かな描写がされていて、見たことのない菓子でも、簡単に想像することができました。そして、頭の中に浮かぶ菓子は、とても美味しそうで、思わず、和菓子を買いに行きたくなってしまいました。
物語も、一つ一つの話のテンポが良く、ストレスなく読むことができました。また、主軸となる藍千堂と百瀬屋の対立も、お糸と幸次郎の恋の行方が絡んできたりして、続きが気になり、どんどん読み進めたくなりました。
ほっこり出来る時代小説を読みたい人には、おすすめの一作です。 -
おもしろそうだな、と思ってたところに、書評で紹介されたのを見て。
舞台は江戸の和菓子屋「藍千堂」。
お菓子作りが大好きでおっとりした和菓子職人の兄・晴太郎と店を一手に切り盛りする勝ち気でしっかり者の弟・幸次郎。
父の代からの付き合いである職人・茂市。
藍千堂は三人で営む小さな菓子屋だ。
元々は二人は江戸でも指折りの和菓子屋・百瀬屋の跡取り息子だったのだが、両親が相次いで亡くなり、叔父が跡を継いでから、追い出された。
それ以来、何かと争うことが多い。
しかし、叔父にも何か訳があるようで…。
出てくるお菓子の美味しそうな描写、晴太郎・幸次郎兄弟の掛け合い、叔父の嫌がらせやピンチを切り抜ける痛快さが楽しい。
そして、はからずも百瀬屋の跡取り娘になってしまった従姉妹・お糸。
何かと兄弟を気にかけてくれる彼女が、今後どうなるのかも楽しみの一つ。
読むと和菓子が食べたくなってしかたない。
装丁に関して一つ。
各短編の表題紙(?)に話や季節に合わせたカラー絵があるのがまたステキ。
文庫化の際にはなくなってしまうのかな。もったいない。
収録作品:四文の柏餅 氷柱姫 弥生のかの女 父の名と祝い菓子 迷子騒動 百代桜 -
舞台は江戸時代なのだけれど、なんとなく現代っぽく感じるのはなんでだろう。
でもその分、今まで時代小説を読んだことがないひとや学生さんにもオススメしやすい本です。
キレッキレな幸次郎が、脳内でどうしても、青の祓魔師の奥村幸男クンとして動くからなのかな。あの時代に黒ぶちメガネなんてないと思うのに。(あっても丸メガネでそれは幸次郎のキャラとしてはナイ)
なんなんだろうね、長男や長女はしっかり者といわれる半面、おっとりしていると言われるならまだしも、ぼんやりしてるだの天然でぼけ~っとしていて危なっかしいだのと……(身に覚えがありすぎる)
閑話休題。
晴太郎のおっとりした立ち居振る舞いは、読んでいて癒されます。
実家「百瀬屋」を(叔父夫婦に)追い出された兄弟が、亡き父の味を守り小さな和菓子屋「藍千堂」を営む物語。ケチくさい嫌がらせにも、正々堂々と和菓子で勝負しはねのける様は胸がすく想い。最終話「百代桜」では、なぜ叔父がそんな嫌がらせをするようになったのかの経緯も明らかに。
寝る前に1話ずつ読んでいました。
どれも心がほかっとして、いい感じ。和菓子が美味しそうで、ちょっと飯テロな気もしますがキニシナイ!
各話の扉の装丁も和柄でいい雰囲気。ちょっとこの辺は手元に置いておきたくなるポイントです。(今回は図書館で借りました)
いつかきっと、藍千堂は大店に成長することでしょう。そんな未来を予感させる明るい仕舞い方もまた、よかった。
続編も出ている模様。さっそく図書館で予約しました! -
洋菓子もおいしいですが、
和菓子の繊細さにはやっぱり格別ですよね。
そんな素敵なお菓子を作り出す天才の兄。
そんな兄を叱咤激励する商才豊かな弟。
この二人がタッグを組めば、売れないはずないですよね。
従妹との関係も含め、まだまだ気になる要素たっぷり。
続編が出ることを期待します。 -
季節折々の和菓子が物語を彩る。
江戸で小さな菓子屋を営む兄弟とそれを巡る人々のお話。
結末がちょっとすっきりしなかったのが残念だけれども
和菓子にはひとつひとつに物語があっていいね。
特に百代桜は食べてみたい。