ターミナルタウン

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 374
感想 : 59
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  • Amazon.co.jp ・本 (453ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163900032

作品紹介・あらすじ

まったく新しい「町興し」小説、ここに誕生。ターミナルタウンとして鉄道とともに発展してきた町、静原町。しかしあるとき、乗り換え路線の廃止により、ほとんどすべての列車が、この町を通過することになった――。鉄道に忠誠を誓った町が、鉄道を失ったとき。そこには何が残るのか。凋落したこの町に、人を呼び戻すことはできるのか。さまざまな人の思惑が交錯する、誰も見たことのない「町興し」小説。

感想・レビュー・書評

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  • 隧道士の奥さんの、最後の言葉に深い愛と覚悟を感じて涙が溢れた。
    絶望や希望や優しさが心に染みた。

  • 最初はちょっと単調かな?
    …と思ったんですが。
    途中から引き込まれました。
    さすがは三崎さん。
    やっぱりこの人の書く長編は大好きです。

  • かつては鉄道のターミナル駅として栄えていたものの、特急が停まらなくなり、さびれていった町。さまざまな人たちの思惑が飛び交うなか、町は再興に向けて動き出す。
    とは言っても、そこにあるのは作者の作り出した特異な架空の世界。かつての作品にも登場した、あり得ないような職業やそれにまつわる人たちが出てきて、特別な説明もなくそれが当然のこととして話は進んでいく。

    以前は、無機質で淡々と語られていく架空の世界が珍しいこともあり、興味深かったのだけれど…。
    長編となるとストーリーに大きな起伏は必要だし、そうなると本作のように血の通った普通の人たちが登場してきて、結果的に作者ならではの硬質な不思議な味わいは薄れてしまう。
    やはり、無機的な架空の世界は、想像の余地をたっぷり残したままに、短編できりりとまとめあげてこそのもの、と最近思う次第で。

  •  小説家は世界を新たに構築する。その世界について綿々と小説を書くことができれば、小説家として成功していると言える。

     隣町との見えない戦争、
     突然に人が消失した街、
     街を襲う鼓笛隊災害、
     ひたすら玉を磨き続ける職人、
     廃墟を造る建築士、
     箒を使った国技の仕舞

     三崎亜記が構築してきた世界は、日本のようだが日本ではない世界。
     筆者の小説は、すべてその国で起こった出来事について一貫している。

     次の作品では何が描かれるのか。発売されれば読んでしまう。今回は駅を中心にした町が描かれる。


     ターミナルタウン、それは鉄道とともに発展した町である。
     しかし、ただの鉄道駅ではない。その町に入るには鉄道以外の手段はなく、町から他の町へは道路がつながっていない。

     ここ静原町は、そんなターミナルタウンの一つである。狭軌在来線、広軌弾丸鉄道、北端線、ニューシャトルの乗換駅としてターミナルタウンとして発達した静原町だった。
     しかし、北端線の廃線を皮切りに弾丸鉄道の通過駅となり、いまは一時間に一本の狭軌在来線と、影を失った者一人の通勤のためだけに運行されるニューシャトルしか駅として機能していない。
     町は寂れ、人口の流出が止まらず、いまでは隣の開南市の一地区に成り下がっている。

     そんな街に1人の若者が旧都から80kmのプラットホームを歩いて、この街にやってきた。彼には何かの決意があるようだ。

     
     駅前の存在しないタワー、
     バリケードに閉ざされ町を二分する自由通路、

     そして筆者の短編で話に出てきた、下り451列車消失事件について謎が明らかになる。

      
     都会に翻弄される地方都市、そして消えていく職人たちの技術。
     あり得ないことが描かれているのに、現実の裏返しとして読んでしまう。

     大切なものは、なんなのか。

  • かつて鉄道路線のハブとして栄えた”ターミナルタウン”静原町の再生物語。
    町に関わる7人の視点で綴っていくという形式。

    冒頭は”影を失った者”として静原町に赴任し、存在しないタワーの管理会社で働く響一が主人公である。
    彼のパートは現実と空想がうまく交じり合い、かつ不条理感溢れる三崎亜記の世界の色が存分に出ていて引き込まれたのだが、その後は一転して物語が軽くなる。

    ある目的をもって町に住み着いた牧人、父が倒れ町に呼び戻された理沙の章はライトノベルのように薄くて軽い展開である。
    たぶん20代なかばの年齢設定だと思うが高校生かと思うくらい幼い。

    展開も軽く都合がよすぎて、なんだか上滑りしている感。
    一般的にはバッドエンドなんだけどそれもひとつの選択だ、という重さがあったのにこの話にはなかった。
    その割に長い。
    話の中枢にはトンネルのように鉄道の管となる隧道という仕組みがあるが、その説明がかなり冗長でまどろっこしかった。
    過去の作品は現実にない設定のよくわからないものを、ややこしい説明なしにわからせる押しの強さのようなものがあったのに、これは説明しすぎ。なのにわかりにくい。

    なんだか期待値より下回ってしまった感が強い。
    最近の著作は軒並みそうだ。残念。
    どうしようもない大きな力に流される人間の切なさや不条理さが味だったけれどどうも大衆的な雰囲気になってきてしまった。


    歩行技師、象の滑り台、消えた列車など、ふんだんにつめ込まれていて過去の作品を読み返したくなった。

  • 久々の三崎作品、面白かったです。
    最初はあまり引き込まれなかったけれど後半から面白くなって来ました。
    現実と非現実の境があいまいな話だけれど、町興しや地域間闘争はかなりリアルでありそうな話でした。
    後半は神童丸川のシナリオですべて進んでいくのが安心なような単純すぎるような‥でした。

  • 現実と非現実の織混ざった物語。

  • 20161112読了
    #鉄道

  • 三崎亜記作品、長編、久しぶり。
    相変わらず、現実世界とつかず離れずの非現実世界。読み応えありました。
    こういうの、好きなひとはたまらないでしょうね。
    2016/8/15読了

  • 乗り換え路線の廃止により、ターミナル駅から通過駅に成り下がった「静ケ原」駅。荒廃した町に、人を呼び戻す方法はあるのか? さまざまな人の思惑が交錯する、新しい「町興し」小説。『別册文藝春秋』連載を単行本化。

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著者プロフィール

1970年福岡県生まれ。熊本大学文学部史学科卒業。2004年『となり町戦争』で第17回小説すばる新人賞を受賞しビュー。同作は18万部のヒットとなり直木賞にもノミネートされた。著書に『廃墟建築士』『刻まれない明日』『コロヨシ!!』『決起! コロヨシ!!2』など。

「2021年 『博多さっぱそうらん記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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