ミッドナイト・バス

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 146
  • Amazon.co.jp ・本 (445ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163900063

作品紹介・あらすじ

東京での過酷な仕事を辞め、故郷の新潟で深夜バスの運転手をしている利一。ある夜、彼が運転するバスに乗ってきたのは、十六年前に別れた妻だった――。父親と同じく、東京での仕事を辞めて実家に戻ってきた長男の怜司。実現しそうな夢と、結婚の間で揺れる長女の彩菜。そして、再婚した夫の浮気と身体の不調に悩む元妻、美雪。突然の離婚で一度ばらばらになった家族は、今、それぞれが問題を抱えて故郷に集まってくる。全員がもう一度前に進むために、利一はどうすればいいのか。家族の再生と再出発をおだやかな筆致で描く、伊吹有喜の新たな代表作!

感想・レビュー・書評

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  • 新潟を起点に東京や大阪に行き、また戻ってくる
    夜行バスの運転士『リイチさん』とその周囲の人々の物語。

    ミッドナイト・ブルー。
    黒に近い紺色。

    夜行バスという設定だからか
    登場人物たちの現在から先がよく見えない感じだからなのか
    決して前が見えない程ではないのですが
    月のような明るさの周りに張り付く
    暗さを強調された紺色の夜空のような雰囲気が漂っています。

    地元で『ハクチョウさん』と呼ばれ親しまれている
    真っ白な白鳥交通の夜行バスは
    そんな夜空の中を淡々と人々を乗せて運んでいきます。

    白鳥って大きな群れではなく、
    心を寄せ合い小さな家族で海を渡るとか。

    この白鳥の名前のつくバスが誰かを誰かのもとへ
    静かに運んでいき、物語が動きます。

    1人だと、今をどうにかしたくとも
    何をしても全然上手くいかないことも
    誰かがそっと出した手にちょっと手を重ねてみただけで
    明日が始まる方へゆっくりと向きをかえることができていたりする。

    夜が長くとも朝はくる。そしてその朝は昨日とは違う朝なんだと
    やんわり包まれる一冊です。

    伊吹有喜さん、初めて読みました。
    別れた妻の義理の父とリイチさんの会話にじ~んときました。
    いいですね。他のものも読んでみたいと思います。

  • 深夜バスの運転手をしている男と家族をめぐる物語。
    何かとすれ違う気持ちが、少しずつ前へ。

    故郷の新潟に戻り、深夜高速バスを運転している利一。
    離婚後16年がたち、男手で育てた子供達もなんとか無事に成人した。
    10歳下の恋人・志穂を初めて家に呼び、一歩を踏み出そうとしたところ、急に仕事を辞めて帰ってきた息子と鉢合わせしてしまう。

    しかも、離婚した妻・美雪が、実父が入院したため、近くに通うようになっていた。
    美雪は再婚しているが、その夫の浮気に悩んでもいた。
    母親にずっと会っていなかった息子と娘のために、むげには出来ない利一。

    真面目で、普通といえばごく普通だけど、かなり不器用で少々身勝手ともいえる男。
    現実味がしっとりとやや重い中、娘がゴスロリファッションで、思わぬ成功をするところが今風で明るく、気分が変わってよかったです。

    志穂がかわいそうな成り行きなので、これどうなんだ‥って思っていると‥
    じわじわと問題は解決に向かい、すっきりさっぱりと未来へ踏み出す結末。
    案ずるより生むが易しというか~
    すぐは上手くいかなくでも努力しただけのことはあるもんだよね!という印象でした。

  • 職場の先輩に薦めてもらった本。
    男性か女性か、未婚か既婚かで感想が変わりそうだという先輩の言葉にいろいろ納得。
    そうかもしれない。
    未婚女性の一人としては、なんとなくずっと落ち着かなかった。
    志穂さんに感情移入しているつもりもなかったのに、利一さんのはっきりしない態度にやきもきして、心ない言葉に憤った。
    でも、言葉に出来ることと出来ないことの微妙な違いとかなんだかすごく分かるような気がしてしまった。
    こんなふうにうじうじするのが嫌なんだけど、どうしてもそうなってしまうことってあるんですよね。
    誰にも感情移入出来ない(しにくい)のは、あまりに皆が皆自分と似ているからなのかもしれない。そんな気さえしてきます。

    やりたいことがいつでも実行出来る自分とか、自分の言葉を伝えたい通りに受け取ってくれる他人とか、そんなのはありえなくて。
    だからこそもどかしいし、愛おしいんだろうなということをとても感じる。
    この物語の中で描かれる人のつながりや、愛情、儚い夢やら希望は、私を生かしているものと同じものだ。
    閉塞感があるように思えても、緩やかな日常の中では笑える時間も確かにあることを知っている。

    そんな物語のラストは驚くくらい綺麗。
    優しい人達が皆笑顔でいられる世界だったらいいなと心から願う。

  • 各々悩みを抱える乗客達を乗せた深夜バスは今宵も静かにひた走る。
    真っ暗闇の夜を通り越したら、みんなに等しく朝はやって来る。
    見て見ぬ振りをする煮え切らない父にも、都会に馴染めずストレスを抱え爆発寸前の兄にも、仕事と結婚の板挟みに悩む妹にも、夫の浮気と体の不調に悩む元妻にも。
    バラバラに散らばっていた不器用な家族は、やがて自分達のペースで人生を進み始める。
    ゆっくりと穏やかに。

    本編も良かったけれど、時折付けられるアナザーストーリーがとても好き。
    しんみり泣きそうになる話が多く、とても良かった。

    今、先の見えない暗がりの中でもがいていたとしても、明けない夜は決してない。
    その先には輝かしい朝日が待っている。
    じわりじわり元気をもらえた。

  • ところどころ目頭を熱くしながら読みました。
    とても心温まるお話です。

    主人公はきっと素敵な人なんだろうなと想像しながら,愛する人と幸せになってほしいと思いました。
    夜行バスを見るたびに優しい気持ちでこの小説と主人公を思い出しそうです。

    著者の作品は3作目ですが,どれも前向きな優しい気持ちになれる作品ばかりでした。
    他の作品も読んでみます。

  • 映画になりそうなお話。

    みんな淡々としてる。でも途中でつまらなくなる事もなく。

    美雪が今の利一が好きなわけじゃなくて、昔を懐かしんで、あの頃の思い出だしてるだけみたいな事を言っていたけど、違うんじゃないかと。

    旦那が浮気してて、父親の介護して、自分も体調不良で、そんな時に優しくされたらフラフラっとなるでしょねぇ。元旦那ならなおさら。

    利一は昔守れなかった責任みたいなもんかな最初は。
    で、やけぼっくいに火がついたと。

    千穂は可哀想だな。でもきっと利一が京都にきたらウエルカムしちゃうんだろな。

    伶司の肌の理由は意外だった。ただの仕事でダメになった子だとばかり思ってたので。

    彩菜は友達にはいいかな。家族だとめんどくさそう。

    家族以外の話しも邪魔にならずに読めました。

  • 素晴らしく良かったです!読みごたえある1冊でした。家族と、その周辺の人々の、近いがためにうまく思いを伝えられなかったり、モヤモヤや、葛藤や、相手を思うあまりのすれ違いや、そういう優しさやもどかしさが、ホントに上手く(というのもヘンですが)、書かれていて、ぐいぐいと引き込まれて、一気に読んでしまいました。
    弱さや、強がりや、それを超えた強さや・・・親って、子供のためなら、いくらでも強くなれるんですよねー。
    でも、子供って、親だって弱いひとりの人間、って知ってるんですよねw 子供の方が、強いのかもしれません。
    ある程度の歳を経て、それなりの経験をしてこそ共鳴でいる小説というのはあるもので・・・出会えると、嬉しいですよね。歳を取ってしまったことも、よかったと思えるというかw

  • 良い感じの本でした。
    家族がテーマですが、子供が大きくなった大人な私たちにぴったりのお話です。
    良い学校を出てもうまくいかない、優しさが裏目に出る、きつく当たっていた人たちにもそれぞれの・・・

    そんなことが分かる年頃の大人に 読んで欲しい一冊です。
    大人になりたかったあの頃・・・それもまた良い思い出ですね。

  • 最終章を読んで人前でウルウルしてしまい、みっともなかった。しっとりとした雨の中、疾走して行く夜行バスが目に浮かぶようでした。誰かの歌じゃないけれど、「男もつらいけれど、女もつらいのよ」って感じ。登場人物みんなが古傷を負っているが、時を経てお互いを理解できるようになり、労り合う。そして長い夜のトンネルを抜け、それぞれの道へ解き放たれて行く夜行バスの物語。ジ〜ンくる良い話しでした。

  • 深夜バスの運転手、利一。
    離婚した妻との関わり、その父、義父との付き合い、息子、娘、一緒に生活してもいいと思える女性とのつながり。
    女性との関係を除けば、どの関係も今ひとつうまくいっていないという状態。
    相手のことを考えていないわけではないのに、それをうまく表現できない不器用な人もいれば、器用すぎて悟らせない人もいる。
    言わなくてもわかる。
    いえいえ、言わなきゃ他人が考えてることなんてわかるわけないよ。伝えたいことはきちんと伝えていきたい。
    次に何か良い方向に動きそうな終わり方が良かった。

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著者プロフィール

伊吹有喜(いぶき・ゆき)
1969年三重県生まれ。三重県立四日市高等学校、中央大学法学部法律学科卒業。四日市市観光大使。1991年に出版社に入社。雑誌主催のイベント関連業務、着物雑誌編集部、ファッション誌編集部を経て、フリーライターになる。2008年に永島順子(ながしま・じゅんこ)名義で応募した『風待ちのひと』(応募時のタイトルは「夏の終わりのトラヴィアータ」)で第3回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞。2009年に筆名とタイトルを改め同作で小説家デビュー。2014年『ミッドナイト・バス』で第27回山本周五郎賞候補、第151回直木賞候補。2017年『彼方の友へ』(実業之日本社)本作で第158回直木賞候補。

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