ミッドナイト・バス

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 146
  • Amazon.co.jp ・本 (445ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163900063

感想・レビュー・書評

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  • 職場の先輩に薦めてもらった本。
    男性か女性か、未婚か既婚かで感想が変わりそうだという先輩の言葉にいろいろ納得。
    そうかもしれない。
    未婚女性の一人としては、なんとなくずっと落ち着かなかった。
    志穂さんに感情移入しているつもりもなかったのに、利一さんのはっきりしない態度にやきもきして、心ない言葉に憤った。
    でも、言葉に出来ることと出来ないことの微妙な違いとかなんだかすごく分かるような気がしてしまった。
    こんなふうにうじうじするのが嫌なんだけど、どうしてもそうなってしまうことってあるんですよね。
    誰にも感情移入出来ない(しにくい)のは、あまりに皆が皆自分と似ているからなのかもしれない。そんな気さえしてきます。

    やりたいことがいつでも実行出来る自分とか、自分の言葉を伝えたい通りに受け取ってくれる他人とか、そんなのはありえなくて。
    だからこそもどかしいし、愛おしいんだろうなということをとても感じる。
    この物語の中で描かれる人のつながりや、愛情、儚い夢やら希望は、私を生かしているものと同じものだ。
    閉塞感があるように思えても、緩やかな日常の中では笑える時間も確かにあることを知っている。

    そんな物語のラストは驚くくらい綺麗。
    優しい人達が皆笑顔でいられる世界だったらいいなと心から願う。

  • 良い感じの本でした。
    家族がテーマですが、子供が大きくなった大人な私たちにぴったりのお話です。
    良い学校を出てもうまくいかない、優しさが裏目に出る、きつく当たっていた人たちにもそれぞれの・・・

    そんなことが分かる年頃の大人に 読んで欲しい一冊です。
    大人になりたかったあの頃・・・それもまた良い思い出ですね。

  • 倒置法なのか、比喩表現なのか、
    それとも技術的にアレなのか。
    時折、急に視点が変わったり
    「え、今の誰のセリフ?」と解らなくなる事が多々。
    数行戻る事で没頭から覚める事しばしば。
    『四十九日のレシピ』和久井映見さんのドラマ版が
    とても良かったので、
    そちらは贔屓目で読んでしまいましたが。

    今一つ、何かが足りなくて巧く出来ない、
    でもそれでも良いんだよ、
    家族だし色々有るさ。
    と云うモヤッとした落としどころが
    そのままこの作品の印象です。
    分厚く読み応えだけはあるのですが、
    それだけもう少し何か有っても良さそうと云うか。
    惜しい感じ。

  • 深夜バスは、様々な思い、様々な物語をもった人たちを乗せて、夜走る。
    鉄道や船も、多くの人を運ぶけど、一人ひとりの物語を感じるには、深夜バスぐらいの大きさがちょうど良い。
    乗客が乗るときに、運転士が切符を受け取る。そのときに、ひとりひとりの顔がわかる。
    そのくらいの大きさが、物語を運ぶにはちょうど良い。

    新潟から東京まで走る、深夜バスの運転士の物語。
    運転士とその家族の物語。
    そうか、物語を運ぶ運転士にも、家族があり、物語があるんだなと気づかせてくれた。

    50代、家族があり、子供がそろそろ自立しかかっている年代の運転士。
    妻とは別れた。
    だが、ひとは色々な路を通って歳をとっていく。
    そして、その路は、時々出会い、時々わかれ、時々交わる。
    彼と同じ年代にいる自分には、とてもリアルな物語だった。

    震災ボランティアに参加して、頻繁に乗るようになった深夜バス。
    その乗車場所に集まる、さまざまなひとの人生を、そしてそのバスを走らせてくれる運転士さんの姿を思い浮かべながら、本書を読んだ。
    本書はとてもリアルだった。

  • 直木賞候補になった作品。
    直木賞候補が発表されてすぐ、図書館にインターネットで予約。
    貸出可になっていたので、翌日すぐに借りることができましたが、借りる際にはカウンターで「予約の方がいらっしゃるのでよろしくお願いします」と言われました。
    タッチの差だったようです(笑)。
    高速バス運転手の利一。
    長男・怜司と長女・彩菜。
    16年ぶりに再会した別れた妻の美雪。そして、そのの父。
    利一の恋人の志穂。
    家族にとっての16年の時の流れと重さ。
    じんわりと染み入る本でした。
    伊吹さんの本は【風待ちの人】も【四十九日のレシピ】も☆4つをつけているのですが・・・

  • 本当にこの登場人物たちがどこかにいるような気がしてきました。「そういえば、あの人は今頃どうしているかなぁ」なんて後々思い出すことがありそうな作品です。
    穏やかなストーリー展開の中で、マジカルワンダー娘のアヤニャンがほどよいスパイスになっていました。
    怜司と彩菜がすごく素敵な兄妹でうらやましいです。
    伊吹さんの作品は年長の人が若者から勇気をもらう話が多くて、読後感が爽やかで元気になれます。

  • 彼方の友へ、がよかったんで、借りてみる。
    ミッドナイトバス、夜行バス、なかなかつかれるけれど、
    お財布には優しく、乗ってたら目的地まで連れてってくれる、便利な交通手段だ。
    それに乗る人たちの人間模様かな?っと思ったら、
    それを運転してる人の諸々家族小説でした。
    過去に守れなかった人、選べなかった未来、
    先の見えない未来への不安、それでも掴みたい未来。
    家族でも、家族だから言えないこと。
    そんな諸々がごった煮でちょっと疲れた。
    やっぱ、夜行バスより新幹線がいいー。先立つものあれば。笑
    いやいや、好きって言ってるじゃん、そばにいてっていってるじゃん、昔の女、抱きしめてんじゃねーよ、っとちょっと毒づいてみたりしちゃった。
    でもまあ、それぞれに朝が来て、それぞれの目的地に向かってまたみんなが進みだしてるんで、読後感はよい。
    怜司くんの過去話は少々突然で、そっちかあ、重いーーっとまたぐったりした。

  • 根は優しいけれど優柔不断で不器用な40代後半のバツイチ男(利一)の物語。父親同様東京の仕事を辞めて故郷に帰ってきた息子(怜司)の人生。夢に向かって歩む娘(彩菜)の人生。別れた元妻(美雪)との再会。そして徐々に心を通い始める二人。付き合っている歳下の女性(志穂)との別れ。メインのストーリーに並行して長距離バスの乗客たちの人生が優しいタッチで描かれる。最後にようやく自分の人生を歩き始めようと決意する。「走り続けたこの先にはいつだって、きれいな朝が待っている。」

  • 一度バラバラになった家族の話。

    どうして妻は子どもをおいて行ったのだろうと思っていたが、
    読み進めるとそれなりの理由があった。

    出ていく母を見送ったことは、
    子ども達が寂しかったろうと思うとたまりません。

    でも、どうしても、
    この物語に出てくる主人公と元妻は好きになれなかったなぁ。

    責任を取ることを恐れている男は
    決定的なことをしないで、
    責任を回避しているようにしか思えなかった。

    16年前も今も。

    今の恋人にさえ、
    自分から別れておいて、
    今更、追いすがるような生き方が腹立たしい。

    でも、こういう人、モテるんだよなぁ、
    あー、ムカつく。

    「愛情ではなく愛惜」という言葉は、
    さすがくぐさりと刺さった。

    それは私も中年だから。
    そして、そんな私も責任回避が上手なのかも。
    モテないけどね。

  • 白鳥は家族で飛ぶ
    大きな群れではなく小さな家族が
    心を合わせて海を渡ってくる
    どうして人は、うまくやれないのだろう

    どんな大きな橋もビルも
    1人では作れない。
    ましてや生きている人間の人生
    ツライ時に時に助けを求めるのは
    きっと恥ずかしいことじゃない
    (本文より)

著者プロフィール

伊吹有喜(いぶき・ゆき)
1969年三重県生まれ。三重県立四日市高等学校、中央大学法学部法律学科卒業。四日市市観光大使。1991年に出版社に入社。雑誌主催のイベント関連業務、着物雑誌編集部、ファッション誌編集部を経て、フリーライターになる。2008年に永島順子(ながしま・じゅんこ)名義で応募した『風待ちのひと』(応募時のタイトルは「夏の終わりのトラヴィアータ」)で第3回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞。2009年に筆名とタイトルを改め同作で小説家デビュー。2014年『ミッドナイト・バス』で第27回山本周五郎賞候補、第151回直木賞候補。2017年『彼方の友へ』(実業之日本社)本作で第158回直木賞候補。

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