ミッドナイト・バス

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 145
  • Amazon.co.jp ・本 (445ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163900063

感想・レビュー・書評

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  • 新潟を起点に東京や大阪に行き、また戻ってくる
    夜行バスの運転士『リイチさん』とその周囲の人々の物語。

    ミッドナイト・ブルー。
    黒に近い紺色。

    夜行バスという設定だからか
    登場人物たちの現在から先がよく見えない感じだからなのか
    決して前が見えない程ではないのですが
    月のような明るさの周りに張り付く
    暗さを強調された紺色の夜空のような雰囲気が漂っています。

    地元で『ハクチョウさん』と呼ばれ親しまれている
    真っ白な白鳥交通の夜行バスは
    そんな夜空の中を淡々と人々を乗せて運んでいきます。

    白鳥って大きな群れではなく、
    心を寄せ合い小さな家族で海を渡るとか。

    この白鳥の名前のつくバスが誰かを誰かのもとへ
    静かに運んでいき、物語が動きます。

    1人だと、今をどうにかしたくとも
    何をしても全然上手くいかないことも
    誰かがそっと出した手にちょっと手を重ねてみただけで
    明日が始まる方へゆっくりと向きをかえることができていたりする。

    夜が長くとも朝はくる。そしてその朝は昨日とは違う朝なんだと
    やんわり包まれる一冊です。

    伊吹有喜さん、初めて読みました。
    別れた妻の義理の父とリイチさんの会話にじ~んときました。
    いいですね。他のものも読んでみたいと思います。

  • 深夜バスの運転手をしている男と家族をめぐる物語。
    何かとすれ違う気持ちが、少しずつ前へ。

    故郷の新潟に戻り、深夜高速バスを運転している利一。
    離婚後16年がたち、男手で育てた子供達もなんとか無事に成人した。
    10歳下の恋人・志穂を初めて家に呼び、一歩を踏み出そうとしたところ、急に仕事を辞めて帰ってきた息子と鉢合わせしてしまう。

    しかも、離婚した妻・美雪が、実父が入院したため、近くに通うようになっていた。
    美雪は再婚しているが、その夫の浮気に悩んでもいた。
    母親にずっと会っていなかった息子と娘のために、むげには出来ない利一。

    真面目で、普通といえばごく普通だけど、かなり不器用で少々身勝手ともいえる男。
    現実味がしっとりとやや重い中、娘がゴスロリファッションで、思わぬ成功をするところが今風で明るく、気分が変わってよかったです。

    志穂がかわいそうな成り行きなので、これどうなんだ‥って思っていると‥
    じわじわと問題は解決に向かい、すっきりさっぱりと未来へ踏み出す結末。
    案ずるより生むが易しというか~
    すぐは上手くいかなくでも努力しただけのことはあるもんだよね!という印象でした。

  • ところどころ目頭を熱くしながら読みました。
    とても心温まるお話です。

    主人公はきっと素敵な人なんだろうなと想像しながら,愛する人と幸せになってほしいと思いました。
    夜行バスを見るたびに優しい気持ちでこの小説と主人公を思い出しそうです。

    著者の作品は3作目ですが,どれも前向きな優しい気持ちになれる作品ばかりでした。
    他の作品も読んでみます。

  • 映画になりそうなお話。

    みんな淡々としてる。でも途中でつまらなくなる事もなく。

    美雪が今の利一が好きなわけじゃなくて、昔を懐かしんで、あの頃の思い出だしてるだけみたいな事を言っていたけど、違うんじゃないかと。

    旦那が浮気してて、父親の介護して、自分も体調不良で、そんな時に優しくされたらフラフラっとなるでしょねぇ。元旦那ならなおさら。

    利一は昔守れなかった責任みたいなもんかな最初は。
    で、やけぼっくいに火がついたと。

    千穂は可哀想だな。でもきっと利一が京都にきたらウエルカムしちゃうんだろな。

    伶司の肌の理由は意外だった。ただの仕事でダメになった子だとばかり思ってたので。

    彩菜は友達にはいいかな。家族だとめんどくさそう。

    家族以外の話しも邪魔にならずに読めました。

  • 最終章を読んで人前でウルウルしてしまい、みっともなかった。しっとりとした雨の中、疾走して行く夜行バスが目に浮かぶようでした。誰かの歌じゃないけれど、「男もつらいけれど、女もつらいのよ」って感じ。登場人物みんなが古傷を負っているが、時を経てお互いを理解できるようになり、労り合う。そして長い夜のトンネルを抜け、それぞれの道へ解き放たれて行く夜行バスの物語。ジ〜ンくる良い話しでした。

  • 第151回直木賞候補作。

    新潟の白鳥バスの運転手、利一とその子供達である怜司と彩菜、そして前妻の美雪そして今愛する人である志穂。

    「強いものがひとつ足りない」とは直木賞の北方謙三の評だか、確かに終始淡い色合いで描かれている。
    関越トンネルを境に華やかで何でもある東京と白い雪の新潟。陰と陽もハッキリしているし、強いテーマが無いことで雪の白さのイメージが壊されなくて逆に良いと思う。

    家族観がテーマの中心であるが、父権が弱くなっている今、父親の在り方を問うている感もある。

    新潟の美景が目に浮かぶような、風景描写はとても良かった。
    肩の力を抜いて読める作品。

  • 本当に素敵な本。相手のことを想っても、それがうまく伝わらない。だからお互い傷つけ合ってきた。そんな家族が再び会う。そして、いままで噛み合っていなかったピースが、一つずつはまっていく。
    とりあえず話そう、諦めずに。そう思える本。

    • besutti2bさん
      家族でも友達でも同僚でも、優しい気持ちになれた時はうれしいですね。
      家族でも友達でも同僚でも、優しい気持ちになれた時はうれしいですね。
      2014/03/26
  • 新潟にバスに乗って行きたくなる。

  • 東京⇔新潟間の深夜バスを運転するアラフィフの男。離婚歴あり、2人の子持ち、東京に一回り歳の違う恋人がいる。そんな男を主人公に、家族や仕事、様々な形の愛を描いた作品。淡々としていながら大事なことは譲らない男と作品が一体となっていて、読んでいて共感する箇所が多かった。結局最後は落ち着くところに落ち着いたというか、長男の行動以外は予想できてしまったのが残念だったが。

著者プロフィール

伊吹有喜(いぶき・ゆき)
1969年三重県生まれ。三重県立四日市高等学校、中央大学法学部法律学科卒業。四日市市観光大使。1991年に出版社に入社。雑誌主催のイベント関連業務、着物雑誌編集部、ファッション誌編集部を経て、フリーライターになる。2008年に永島順子(ながしま・じゅんこ)名義で応募した『風待ちのひと』(応募時のタイトルは「夏の終わりのトラヴィアータ」)で第3回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞。2009年に筆名とタイトルを改め同作で小説家デビュー。2014年『ミッドナイト・バス』で第27回山本周五郎賞候補、第151回直木賞候補。2017年『彼方の友へ』(実業之日本社)本作で第158回直木賞候補。

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