頼みある仲の酒宴かな 縮尻鏡三郎

  • 文藝春秋 (2014年2月27日発売)
3.65
  • (1)
  • (11)
  • (8)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 52
感想 : 12
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (344ページ) / ISBN・EAN: 9784163900216

作品紹介・あらすじ

老婆の戯言が、大名家をゆるがす思わぬ騒動へ



日本橋の大店・白木屋の身代が、わが物だと鏡三郎に掛けあう老婆。そして同居する謎の腕利きの浪人の正体とは。人気シリーズ第八弾。





とある夏の夜、木挽町の医者・宮田玄庵のもとに、石州浪人矢吹栄五郎と名乗る浪人がやって来た。見れば、右腕に刀傷を負っている。本道(内科)の医者である玄庵は、面倒な依頼を断る口実にと、請人(保証人)がいなけば治療はせぬと申し渡すと、矢吹は「薄情な医者だ」と言い残し、矢吹は余所へと出て行った。ほどなく、玄庵も、矢吹のあげた請人も実在せず、矢吹の名も騙りであったことが明らかになる。翌朝、木挽町からほど近い采女が原で侍の殺しがあり、殺された侍は、正面から真っ二つ。相手は相当な使い手と知れたが、江戸に事件はつきもの。やがて事件は忘れられた。

それから一年。御家人としての出世街道をしくじり、大番屋元締となって市井の揉め事解決に奔走する拝郷鏡三郎のいる「大番屋」に、医師木村道庵の娘で、柴田帯刀という浪人と同居している「ため」という老婆が訪ねてきた。聞けば、江戸で一二を争う、呉服屋の大店、白木屋の土地は、我が家のものであるという。当然、白木屋は相手にしないのだが、木村家には、白木屋の土地が、江戸開府以来、木村家代々の持ち物である証拠となる、権現様(家康)より下賜されたゆかりの品々があるという。話半分に聞いていた鏡三郎だったが、やがて、どこからか白木屋の土地の一件を報じるかわら版がばらまかれ、騒ぎが起こる。だが、そのさなかに、ためが寿命でぽっくりいってしまった。同居していた柴田は、白木屋の本家がある上方へと向かったという。鏡三郎の元を出入りする北の臨時廻り梶川は、柴田の身上を洗い、一年前の采女が原の一件に、柴田が絡んでいると見当を付けるのだが……。そして、物語は、譜代大名三家の内情を巻き込んだ意外な方向へ。

みんなの感想まとめ

複雑に絡み合う人間関係と権力争いを描いた物語が展開され、特にお家の跡継ぎ問題や賄賂の裏話が興味を引きます。江戸時代の社会を背景に、医者や浪人、大名家の人々が織り成す騒動が、思わぬ方向へと進展していく様...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 今回は一つに話題から全編を通すという手法。
    お家の跡継ぎ問題に絡んで、出世のためのあれやこれや賄賂など。

    今回も、定番化したももんじ屋の親しい知人の仲間を中心に回る。

    政治の裏話満載の面白い回。

  • 縮尻鏡三郎シリーズ第8作目にして、2012年から13年に「別冊文藝春秋」に連載された8章の単行本化。今回も大番屋の鏡三郎は活躍しない。

    呉服商白木屋の土地は医者の木村家が家康から拝領したものなので返すように、という訴えが町奉行所に出されるが、白木屋は沽券状(民有地の権利証)があると主張する。訴人の背後にいるのが丹州浪人という不思議な人物で、奉行所にもないような古い記録を持っているかと思うと、かなりの剣術使いでたびたび命を狙われているが、本人には心当たりがない。

    鏡三郎や同心の梶川、道場主羽鳥らが彼に興味を持ち、にももんじ屋に集う飲み仲間になっ手がかりの欠片をつなぎ合わせると、大名家の跡継ぎ問題や、越後の修験道道場の暗躍がしだいに見えてくる。
    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

  • 8ヶ月乃至8章で一冊になるように計算されている。最終回は随分と詰めちゃったけどね~木挽町四丁目で本道医に金瘡を縫って欲しくて石州浪人・矢吹栄五郎と名乗り,赤羽橋有馬上総介家の馬廻り役が請人だと云ったが真っ赤な嘘,消えた翌日の采女ヶ原で額を割られた武士が発見された。身元は不明,左肩に大怪我を負っている者も何処へ消えたか分からない。1年後,大番屋元締・排郷鏡三郎の処に呉服商・白木屋の地所は,自分のものだという医師・木村道庵の娘・ためが相談に来た。もともとは拝領地で,貸していたものだが,600両をまとまって受け取ってからは地代が入ってこなくなったという。取り合わなかったが,同居している丹州浪人・柴田帯刀が,逃げた侍ではないかと興味を持った。5万7千石の丹波西岡松平淡路守で千石を貰っていたのに,同輩の娘を無礼打ちにして馘首になったのだという。被害者の刀は,拵え屋弥太郎のものだと聞いて売った相手を訪ねると,越後長山表の二人連れだったという。排郷・梶川・羽鳥は,越後長山牧田備前守は,35年前に5万両の持参金付き養子を迎え,当歳の嫡男は聾唖の廃人だとしたが,今の大名は次の寺社奉行を狙っており,同じ奏者番でライバルの備前守が弱みを握るために柴田帯刀を使ったことを知って刺客を送ったが,返り討ちにあったと推測した。ためは死去したが,帯刀はための養子だという童子を伴って北町奉行所に現れ,拝領地面の書留御帳面を調べろと,家伝である家康の親筆などを預けていった。弥太郎は博打打ちだった頃の知り合い・三次が北町奉行所前で帯刀を襲おうとして,首を真一文字に斬られたの目撃しただけでなく,刀を求めた客の連れ合いがその場にいたことを皆に告げる。剣術指南の羽鳥は帯刀の訪問を受け,太刀筋を正すだけでなく,何故その場に居たかも正直に話した。返り血を拭う帯刀の身体に刀傷がなかったからだ。道具屋の闕所騒ぎで北が預かった銘なしの名刀が正宗であることが告げられ,それは自らが所有していた刀と判断した帯刀は,翌日奉行所に赴き,特徴を述べて勝手な処分に待ったを掛け,旧主を訪問して,700両で買うと云って踏み倒され掛けている事に釘を刺し,自ら所有の神泉苑に手を出すことを禁じた。旧主・淡路守は借りた刀を牧田家に貸し,実の兄から金を借りるために播磨姫沢柏原遠江守に渡し,遠江守の頭の黒い鼠が300両で質屋へ,質屋の手代が道具屋へ持ち込んでいたのだった。播磨の柏原家は越後の牧田家養子の実家。その越後に縁の羽黒修験の道場が帯刀の命を狙っているらしい。帯刀は白木屋の土地の所有権で揉めているためが死んだ養子の在所から出てくるのに合わせて,京の郊外から上州へ行ったが,剣の師匠縁の道場に出向き,話を聞いても歓迎されず,長山城下の剣術道場で道場主の木刀を叩き落として恨みを買いながら江戸へ走って逃げたことしか覚えがない。命を狙われていると悟ったその夜に帯刀は自宅で待ち伏せしている刺客を撃退したが,逃げていく刺客の一人が大学と呼ぶのを聞いて,陰陽師触役・山村左京が配下の占い師が勝手に本を出板しようとしたことで揉め事を起こし,辞めた用心棒は越後から出てきた修験者・山岡大学,中川弾正・矢吹雲海が犯人だったらしい。山村左京が当代流行の芝居から着想を得た屋根の瓦を破る押し込みにあって700両を超える金銭を奪われた。肩に刀疵のある男は大学に違いないが,土左衛門で発見された。揚士の金蔵も一味だったらしいが,これも殺された。蔵前の修験道本所では関係者は既にいないと云われる。帯刀は名刀の筋から遠江守と面談し,自分の推定した筋書きを話す。牧田家の養子と嫡子は途中で入れ替わり,養子が城から修験道場の主となって,長山城を狙っているというものだ。実際には,牧田家の事情から養子を女狂いに仕立てて,国許に幽閉し,嫡子が当主の振りをし続けていたが,竜鬼院という修験者に拾われ,生い立ちを探られ,牧田家を脅し,2万両を強請り取り,次に養子の実家である柏原も強請ろうとして,先に戻った養子によって犯意を明らかにされ,獄門に送られたのだった~排郷さんやら羽鳥さんを播州やら越後まで連れ出す必要があったのだろうか。まあ,排郷さんやら羽鳥さんが何かあれば旅したいという気持ちを持っていたことは分かるけど。ああ面白かった。良からぬ想像を巡らして悪人と踏んでいた男と友達になって旅しちゃうんだものね。京辺りでは金貸しを土倉と云ったらしい。それが柴田家! もうなくなっちゃった白木屋もあくどい手で日本橋に土地を得ていたと!!

  • 佐藤雅美氏の作品は沢山読んでいるのに、ふと、作者紹介で、雅美を、ず~と、まさみと、読んでいた事に気付いた。
    女性と、勘違いを何十年していたんだろうと、笑ってしまった。
    雅美(まさよし)氏ごめんなさい!。

    縮尻鏡三郎シリーズ。
    今回の日本橋の大店に、先祖代々からの拝領地に、枯券に関わる騒動から、凄腕で、素姓の解らない柴田帯刀の行動が、巻き起こす物語。
    其の中でも、殿様の後継ぎに、養子縁組で、実子を、聾啞の廃人と為さざるを得なかった事と、その家の者達は、養子を排除しようとする動きなど、この時代では、ありえたことかも知れないと、怖くなった。。。
    しかし、最後は、酒宴で、終わる所は、上手い終わり方であった。

  • 数奇な運命辿ったお大名になるべき人が、家臣の謀で違う方向に。

  • 【老婆の戯言が、大名家をゆるがす思わぬ騒動へ】日本橋の大店・白木屋の身代が、わが物だと鏡三郎に掛けあう老婆。そして同居する謎の腕利きの浪人の正体とは。人気シリーズ第八弾。

  • ブログに掲載しました。
    http://boketen.seesaa.net/article/401051147.html
    無尽蔵の薀蓄(うんちく)、疲れをしらないストーリーテリング。
    縮尻鏡三郎シリーズ第8作。今回はシリーズの主役縮尻鏡三郎は完全な脇にまわっている。柴田帯刀という謎めいた男が全編の主役。日本橋の大店白木屋の地面はわが先祖の拝領地といいたてる老婆、その軍師として糸をひいているらしい怪しげな男として登場。
    鏡三郎や、友人の飲み仲間梶川三郎兵衛(北町奉行所臨時廻り)、羽鳥誠十郎(道場主・剣客)たちに「豪商をゆする詐欺師、1年前にあった路上の殺傷沙汰の犯人」として疑われる完全な敵役。

  • 外れがない作者なので安心

  • 別冊文藝春秋2012年9月301号~2013年11月308号連載の8編を収録。いつにも増して驚くような事件の話と顛末が展開し、目が離せないまま、一気に読み切ってしまいました。新登場の柴田帯刀が主人公になり、鏡三郎が脇役になってしまっていますが、興味深く、面白いお話でした。佐藤さんの語りのうまさに堪能してしまいました。お終いを小謡の羅生門で締めくくるのも素敵です。

  • 胡散臭い人たちが次々と出てくる。特に怪しいのが柴田帯刀。どうなることやらと思いきや意外や意外…,最後はいつもの通り収まるところに収まって。。。
    今回の鏡三郎はほとんど野次馬。

    「夢に見た娑婆」の新三郎がちらりと,しかし重要な情報をもたらす役で出てきて,にんまり。元気そうでなによりです。「老いらくの恋」の九郎右衛門夫婦の名前も。おりんの生出演のないのがちょっと不満。

全10件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

佐藤 雅美(さとう・まさよし)
1941年兵庫県生まれ。早稲田大学法学部卒。デビュー作『大君の通貨』で第四回新田次郎文学賞を受賞。1994年『恵比寿屋喜兵衛手控え』で第110回直木賞を受賞する。著作に『御奉行の頭の火照り 物書同心居眠り紋蔵』『頼みある仲の酒宴かな 縮尻鏡三郎』『関所破り定次郎目籠のお練り 八州廻り桑山十兵衛』『知の巨人 荻生徂徠伝』などがある。2019年7月逝去。

「2021年 『恵比寿屋喜兵衛手控え 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

佐藤雅美の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×