寄生虫なき病

制作 : Moises Velasquez‐Manoff  赤根 洋子 
  • 文藝春秋
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レビュー : 39
  • Amazon.co.jp ・本 (507ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163900353

感想・レビュー・書評

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  • 本書の結論が間違っているとは思わない。
    体内の寄生生物の変化または減少によって生じると思われる疾患が多く見られるが、
    だからといって無理やり人体に寄生虫を植え付けてもロクなことにはならないので、これからの予防学の発展に期待するしかない。

    だが、アレルギーもガンもうつ病も肥満も糖尿病も多発性硬化症も自閉症も喘息も心臓疾患も皮膚病も。
    すべてが寄生虫の不足に原因があると看破されては、さすがに疑わしさの方が大きく印象に残ってしまう。
    本書の450ページのほとんどは、自説の補強のためのあやしげな推測や無根拠な判断にあふれている。

    『おそらく、これには遺伝子がある程度関わっているのだろう』
    『おそらく、寄生虫は、こうした細菌を培養する物質を分泌するか、あるいは局所の免疫反応を直接変化させているのだろう』
    『おそらく、人体には、生存を直接的に脅かす圧力が弱まると成長や生殖に回すエネルギーを増大させる仕組みが備わっているのだろう』
    といった、専門知識を欠いた自説への強引な誘引。

    『おそらく、高齢になってからの胃癌のリスクも前者のほうが低いものと思われる』
    『多発性硬化症の症例も19世紀に入ってから増加したように思われる』
    『欧米では過去百年間に成長の速度が着実に増してきているが、これはおそらく偶然の一致ではないだろう。』
    のように、調査を深掘りしない性急な結論。

    さらには、例えばアフリカゾウのヘルペスはアジアゾウにとっては致命的だとする事実に対して、『逆の場合も、多分結果は同じ』という、科学の原則を無視した無責任な意見まである。

    「おそらく」や「だろう」を多用し、推測であることを明らかにするだけ、人を騙すつもりのニセ科学よりはまだ良心的であるのかもしれないが、気をつけて読まないと誤解してしまう可能性は大いにある。

    この本は、多くの本と同様に、ただの一つの意見である。
    本を読んだだけで知った気になるのは間違いだということを知らない人が読むには危険な一冊。

  • 周りの菌や寄生虫との共存について考えさせられました。 この本を読んでからは、石鹸でゴシゴシと手を洗わなくなり、消毒液なんて怖くて使えなくなりました。

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