歌川国芳猫づくし

  • 文藝春秋 (2014年3月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784163900377

作品紹介・あらすじ

反骨の浮世絵師、国芳が猫にまつわる謎に挑む。



江戸後期を代表する浮世絵師、歌川国芳。閉塞した社会状況を打破すべく、お上への批判や、滑稽な戯画、そして力強い武者絵を描き、同じ時代を生きた広重や国貞とは、また異なる持ち味で、多くの江戸っ子を魅了した稀代の浮世絵師が、一番愛した動物が猫でした。

そして、国芳は、その人柄を慕い、浮世絵師以外にも、特に、三遊亭円朝、月岡芳年、河鍋暁斎といった、後世著名となる多彩な人物たちをはじめとして、大勢の弟子を抱えたことでも知られています。

本作は、NHKドラマ化された『妻はくの一』シリーズや、そして江戸の怪事件を解決する『耳袋秘帖』シリーズなどの時代小説で、好評を博す著者が、老境に差し掛かった国芳を主人公に据え、老若男女さまざまな一癖も二癖もある愉快な弟子たちと、身の回りに起きた「猫」にまつわる事件を解決する、愉快で、ほろりとくる謎解き時代小説です。



普段は気風がよく威勢のいい国芳も老いが忍び寄り、ふと垣間見せる気弱な一面を見せ、そして、死を前に最後の恋への淡い憧れをいだくようになります。そんな絵師ならではの繊細な一面も描きつつ、そこから国芳の絵にこめられた想いを、風野真知雄ならでは、温かく、そしてユーモアあふれる筆でお楽しみください。

感想・レビュー・書評

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  • 江戸時代も末期の画家・歌川国芳。
    初老の日々を描きつつ、猫好きの画家が猫にまつわる謎を解く連作です。

    日本橋で家族と5人の弟子、8匹の猫たちと暮らす歌川国芳。
    根っからの江戸っ子で、火事となれば見物に駆けつける。
    天保の改革で贅沢が禁止になり、美人画などが発禁になったことに憤慨し、絵に風刺を紛れ込ませて庶民の喝采を浴びる反骨精神の持ち主だった。

    「猫飼好五十三疋」という、東海道五十三次に見立てた猫の絵を発表しているほどの猫好き。
    行方知れずの猫を心配したり、元気がない猫を評判の良い人間の医者に連れて行ったり。
    北斎の後は国芳か広重かと言われていたそうで、広重とは同年。
    広重と絵で張り合うのかと思ったら、事件に巻き込まれて推理合戦になり、その後に広重の挑戦を受けて猫好きの証明をすることになったりと、微笑ましいですね。

    葛飾北斎の娘・応為が北斎亡き後に寄るべのない身になって、ふらりと訪ねてくるというほろ苦い話も、どこかユーモラス。
    応為が好きなのでこれが事実としたならちょっと哀しいけど、ひょうひょうとした描き方や北斎を尊敬する画家同士の共感、何気なく行末を考えてあげる心のあたたかさに、読後感はよいものでした。

    晩年はペリーが来航した頃とまでは思わず、今の大河ドラマと同じ頃なのねとびっくり。
    身近で起きる奇妙な出来事、これがいろいろあるんです!(笑)
    それぞれを太っ腹に受け止め、驚きつつも淡々とさばいていく様子が、ざっくばらんな性格と年齢らしい余裕を感じさせて、よかったです☆

  • もともと浮世絵が大好きで、春に歌川国芳展を見て感動していた。その後、国芳が主人公の小説があったので、読んでみたら大変面白かった。小説の中に出てくる彼の浮世絵作品と話の内容がリンクして、面白さが倍増した。
    読みおわった後、改めて彼の浮世絵を観に行きたくなった。絶対行ってみようと思う。

  • おもしろかったー
    幽霊がらみのお話が好き。

    国芳の日常、いつまでも読んでいられる感じで心地よかった。
    猫も好きなので、すり寄ってくるとか可愛すぎる!

    読み終わった日に、団十郎の襲名ニュースがあったので、特に関係ないけど、お!っと思ってしまった。

  • 江戸時代末期を代表する浮世絵師の一人であり、画想の豊かさ、斬新なデザイン力、奇想天外なアイデア、確実なデッサン力を持ち、浮世絵の枠にとどまらない広範な魅力を持つ作品を多数生み出した歌川国芳。
    大の猫好きとしても知られた国芳が、個性豊かな弟子達とともに、身の回りに起きた「猫」にまつわる事件を解決する全7話からなる連作短編集です。

    作者は、時代小説を多数手掛けているため、大変読みやすく、浮世絵に詳しくない方でも、時代小説として軽く読めるものとなっていると思います。

    タイトルが猫づくしとなっていることもあり、国芳の猫に対する愛情が随所に描かれています。
    「猫がいなくなった時の寂しさは、愛猫家でなければわかりはしない。猫といっしょに自分の膝までなくなってしまったような心持ちがするのだ。猫がいなくなると、猫に置いていかれた気持ちになるのだ。」
    との言葉に溢れる猫愛を感じました。

    また、葛飾北斎とその娘のお栄(応為)、月岡芳年、歌川広重、初代三遊亭円朝などなど、登場人物がとにかく豪華!!
    私は、応為がものすごく好きなのですが、本作ではめちゃくちゃトリッキーなキャラクターで登場し、また、それも一つの考察として楽しいものとなっています。

    同じ絵師でも、北斎は、見る者の気持ちより、自分の描きたいものを優先させ、国芳は、見る者に喜ばれる絵を描きたい、見る者を笑わせたい、驚かせたいと、常に見る者を意識して絵を描いたという、北斎と国芳の違いについての考察も興味深いです。

    江戸っ子気質でお上を恐れぬ威勢の良さで知られた国芳ですが、老境に入り、老いへの戸惑いから死神を描きたいという思いに、しだいに囚われるようになります。
    国芳は、歌舞伎役者の団十郎の幽霊に、絵師の仕事はいつまでも残るものだが、役者の仕事は、客が帰ったら消えてしまう寂しいものだと言われます。
    しかし、国芳は、絵師も役者と同じく寂しいものだと感じます。
    絵も文も時代の上に立っていて、時代が動けば、絵や文も置き去りにされ、やがては忘れられる。
    自分のやっている仕事に虚しさを感じた国芳ですが、だからと言って、仕事の手をぬくつもりなどはさらさらなく、いま、ともにこの時代を生きる人たちに面白がってもらえる絵をこれからも描き続けたいと、より決意を固めます。
    そして、“自分のため”に描くつもりだった死神の絵への執着を、「そんなもの描く必要はねえ」と切り捨てるのでした。
    「わっちは町絵師なんだ。面白がらせて、満足させて、おあしをいただくのが稼業なんだ。」
    という言葉には、国芳の“見る人を喜ばせたい!”という確固たる信念が表れ、その信念は、色褪せることなく、時代を越え、現在でもたくさんの人々を魅了し続けています。
    根強い国芳人気の理由がわかる一冊です。

  • 国芳が好きで手に取ってみたけど、エピソードも人物の描写もよくてとてもいい本。ずっと読んでいたい。

  • 読みやすく面白かったのですが、色事や女性の描写がクドいと思ったら…いつも読まない雑誌の連載小説でした。国芳と猫の話が読みたければ良い本かと。

  • 江戸っ子国芳の気風の良さが気持ちいい。
    国芳の作品の根底にある性格が生き生きと描かれていて、国芳の絵をより深く見られそう。

  • 北斎を爺い呼ばわりして悪口雑言のクセに死後4年経っても立ち直れない、北斎の娘・お栄が絡む「高い塔の女」が切ない。『東都三ツ股の図』の井戸掘り櫓、確かにスカイツリーみたいだ。「(北斎の次は)広重か国芳か」と言われた時代に、高所恐怖症の国芳を「ものを見る目が平べったい」と看破した北斎、さすが。

    「病人だらけ」は幼馴染で義母のおやすが良い味を出してます。「湖雲堂」の蘭方医・千代もなかなか。しかし、春画の文って不思議な色気がありますな。うひゃ〜なんかくすぐったい。

    ミステリとして白眉なのが「からんころん」。
    二人が何度も師匠の家へ行き違っているうちに、前の家の近所で白骨が発見される。二人に聞こえる下駄の音。猫の死。師匠の推理と甘酸っぱい少年たちの思い出がギュッと詰まった、珠玉の小品…だけど、敢えて芳年と圓朝を出す必要はないと思うが(圓朝が国芳の弟子で、芳年と同い年の仲良しだったとは〜)。

    広重vs国芳の「江ノ島比べ」も捨て難い。
    「相州江之嶋岩屋之図」と「相州江之嶋之図(コレ、チョコレートケーキに見えるw)」を並べて飾る旦那は趣味悪いが、二人の知恵比べは和やか。最後にチラッと出て来る「浅草田甫酉の町詣」、これは名所江戸百景中でも秀品だと思う。うん。
    最後は「団十郎の幽霊」。きゃあ、8代目〜!

    そして冒頭から登場し、段々嫌な下っ引きに成長した松吉が、いい岡っ引きになりそうで良かった。

  • 読んでて楽しい。猫好きな絵師国芳の周りで、猫をきっかけに出てくる人間関係のあれこれ。嫉妬あり競争あり幽霊騒ぎあり、そこに何気なく絡んでくるおかっぴき(の下働きの若者)あり、北斎の娘あり、弟子に月岡芳年あり、ライバルに広重あり、と浮世絵を少し見たことのある人ならあ~聞いたことはある、という名前がぞろぞろと脇役として出てくる。それがみんな個性的に人間味があって、うまい。(フィクションですが)
    次に浮世絵を美術館で見る前に、この本読み返しておこうかな。作者のイメージが(フィクションですが)あると、絵画って断然面白い気がします。

  • 絵師のことはよく知らなかったけど作品は見たことあった。史実はわからないけど国芳さんはこんな風に猫好きだったのかなあと興味は持てました。

  • はんなり面白かった。さっぱりしていて好き。装丁が素敵だったから借りてみたけど古めかしくなく読みやすかった。猫、というよりかは国芳って感じだった。春画の言葉の下りはへぇぇそんな感じなんだ…という具合。程よく男女の機微とかも書かれてて、でも嫌らしくなくて良い。町の名前や所の様子が書かれてる作品はその土地の感じやその時吹いてるだろう風とかそういう自分の中にある思い出と紐付いたりして良いなと思う。

  • 文学

  • H29/3/20

  •  自分が面白いと思うことを描くのである。しかも、その絵のことをすっかり忘れていて、新鮮な目で見れば、面白いに決まっている。
    (P.58)

     わっちは町絵師なんだ。面白がらせて、満足させて、おあしいただくのが稼業なんだ。
    (P.282)

  • 連作短編集。さくさく読めて面白かった。歌川国芳の周りで起こる殺人事件や賽銭泥棒、幽霊騒ぎなどなど。やっぱり国芳は魅力的!

  •  大阪出身の父母を持ち、大阪で生まれ育ったわたしにとって、江戸文化は馴染みが薄い。江戸文化を創ったその人、「徳川家康」は憎き人物であり、「豊臣秀吉」こそ初めて天下を統一した尊敬すべき人物、という認識がある。これは、読売ジャイアンツくたばりやがれ、阪神タイガースこそ優勝にふさわしいんじゃボケ、という、DNAレベルに刻み込まれている精神に通ずる。

     歌川国芳というのは、実在する今から150年ほど前に江戸で活躍した浮世絵師である。前述のとおり江戸文化に対する興味がなく、日本史の勉強も怠っていたわたしにとって、初耳の名前だ。
     当時、天保の改革による質素倹約、風紀粛正の号令で、役者絵や美人画が禁止になるなど、浮世絵師も大打撃を受けた。そんな中、彼は理不尽な弾圧に対する皮肉を、ひたすら絵にしたという(Wikipedia先生によると)。
     ふむ。なかなか興味深い人物だ。国家権力に対し、ユーモアを交えて楯突くような姿勢は嫌いじゃない。
     さらに、彼に対する好感がさらに増した情報はこれだ。
    「歌川国芳、猫めっちゃ好きやねん」
     握手。
     そんな時代に猫をきちんと埋葬する姿なんかは、尊敬の念すら覚える。江戸に国芳がいてよかった。絵にもよく猫を登場させるなど、相当な愛猫家であったことは周知の事実だったそう。

     本書には、老いさらばえて死を意識し始めた国芳の、恐怖・葛藤が描かれている。まだまだ西洋医学が隆盛していない時代の話である。病や死は、科学的なものではなかったに違いない。だからこそ、日本古来の怪談ってあんなに怖いのかもしれない。

  • 連作短編7編
    中年の終わりから老年にさしかかった国芳。猫が顔出すミステリー。江戸っ子の国芳の姿を生き生き描いて楽しく、ちょっぴり哀しい。

  • くにくにをみる前にと思い。
    少しでもこういった基礎知識いれてからだと一層おもしろいだろう。猫、鯉、死神あたりが楽しみだ。

  •  江戸末期の浮世絵師・歌川国芳は、その浮世絵の内容からお上に目を付けられ、いよいよお縄になるかもしれない…などと思いつつ、弟子と八匹の猫に囲まれながら、今日も浮世絵描きにいそしんでいる。
     そんな国芳が、猫にまつわる奇妙な事件に巻き込まれ……そんな短編集。

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     国芳さん、威勢はいいけれど、老いが気になって気弱になったり、高いところが怖かったり、憎めないキャラです。

     1つ1つのお話はおもしろいし、何となく連作っぽい感じで最後まで進んでいくんだけど、伏線かと思ってたことが殆ど回収されないまま終わりました。
     ただの思わせぶり、ていうね。
     それぞれの話の中では、事件は解決しているんだけど、最終的に伏線かなと思っていたことは何も解決しないまま終わるという。
     それが何かモヤモヤ。
     松吉の成長だけが、この1冊の中で話が動いた、て感じのことかな。

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著者プロフィール

かぜの・まちお
1951年生まれ。’93年「黒牛と妖怪」で第17回歴史文学賞を受賞してデビュー。主な著書には『わるじい慈剣帖』(双葉文庫)、『姫は、三十一』(角川文庫)『大名やくざ』(幻冬舎時代小説文庫)、『占い同心 鬼堂民斎』(祥伝社文庫)などの文庫書下ろしシリーズのほか、単行本に『卜伝飄々』などがある。『妻は、くノ一』は市川染五郎の主演でテレビドラマ化され人気を博した。2015年、『耳袋秘帖』シリーズ(文春文庫)で第4回歴史時代作家クラブシリーズ賞を、『沙羅沙羅越え』(KADOKAWA)で第21回中山義秀文学賞を受賞した。「この時代小説がすごい! 2016年版」(宝島社)では文庫書下ろし部門作家別ランキング1位。絶大な実力と人気の時代小説家。本作は「潜入 味見方同心」シリーズの完結作。



「2023年 『潜入 味見方同心(六) 肉欲もりもり不精進料理』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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