無縁旅人

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163900384

作品紹介・あらすじ

家族や地域の絆を失った無縁社会に警鐘を鳴らす問題作養護施設から逃げ出した十六歳の少女・舞子は、なぜ死なねばならなかったのか? 若者たちが抱える孤独と痛みを描く警察小説の白眉。

感想・レビュー・書評

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  • 捜査一課強行班七係 小林班
    最後まで一気に読めた。
    刑事が必死に事件を追う様子がリアルで読み応えあり。

  • 著者の作品は初めて読みました。

  • 捜査一課シリーズ2作目。
    16歳の少女が遺体で発見された。
    彼女が発見されたのは、ネットで知り合ったさほど親しくもない男の部屋だった。
    部屋主は少女から逃げるように部屋を出て、着替えを取りに戻る以外は部屋に近づいてもいなかったという。
    大河内刑事たちは、施設を逃げ出してからの少女の足取りを追う。

    「ネット難民」。
    この言葉を初めて聞いたのはどれくらい前だろう。
    帰る場所もなく、頼れる人もいない。
    億をこえる人間が日本には住んでいるのに、舞子はひとりぼっちだった。
    だからこそ、細い糸のようにか細く頼りないものにでもすがりつこうとした。
    弱さと強さ。
    孤独な魂は強く生きようとしていた・・・。
    ただ、寄る辺ない少女は優しくあたたかいものを身近に感じていたかった。
    人は誰でも自分が大切だ。
    傷つけられまいと、自分自身を守ろうとする。
    やがて自分よりも大切な存在が出来ることもある。
    そんな存在に出会えることはきっと幸せなことなのだろう。
    どこまでいっても、自分だけが大事で、自分を傷つける者は許せなくて、悪いのはいつも自分ではない他の誰か。
    自分の思い通りにならなければ満足しない。
    周囲のすべてが、自分が思い描くように動かなければ気がすまない。
    なんて可哀想な人なんだろう。
    本当の幸せに気づくこともなく、一生を終えていくなんて哀れだ。

    たった16年で終わってしまった少女の人生。
    彼女は何のために生まれ、何のために生きてきたのか。
    唯一の光だった者は無情にも命を落とし、少女自身も理不尽に命を奪われていた。
    痛いほどに哀しい人たちが織りなす物語。
    社会に切り捨てられた人たちの物語である。

  • 死後4〜5日経過した少女の死体がアパートの一室から発見されます
    死体は後頭部に出血がありコートを着たまま倒れていた事から
    部屋まで逃げてきてこと切れてしまったと考えられる


    大家への聞き込みで少女はこの部屋の住人ではない事が分かる。


    被害者の財布には7万円の現金、ネットカフェの会員証が5枚に
    ラブホ・ファッションホテルのサービスカードが何枚も
    そして、NPO団体の「ネットカフェで暮らす人々を支援する会」の
    辻原の名刺と、身元を確認できるものを所持していなかった。


    警視庁捜査一課強行班七係のデカ長の大河内とベテラン刑事の
    渡辺はこの部屋の住人、萩本への聞き込みに向かう


    萩本はSNSで少女と知り合い3週間も居座られていた
    その間、萩本はネットカフェで寝泊まりをしていたという
    時を同じく少女の身元が判明する。


    片桐舞子、16歳。静岡の養護施設を逃げ出し
    1年近く行方知れずになっていた。


    養護施設の責任者、須賀典子から舞子が養護施設に来た理由や
    逃げ出したと思われる理由が語られる


    舞子は母親の弟、叔父に当たる男、藤堂を探すために
    上京したと思われるが、その藤堂も不信な行動をとって
    行方不明になっていた。藤堂の行方不明と舞子の死は
    何かしら繋がりがあるとみて捜査は動いていきます。
    藤堂の行方を追えば、舞子が静岡に居た頃に
    付き合っていた男性とその仲間達が絡んでき
    事件は複雑な模様となっていく。


    長年の刑事生活で培われた信念と感が
    大河内と相棒の渡辺の間でブレる事がなく確実に
    真相に近づいている感じがひしひしと伝わってきます。


    NPO法人の辻原との間で交わされていた会話で
    舞子が妊娠していた事も分かってきます。
    16歳の彼女がお腹の子をどうしようとしていたのか
    免許も保険証もなく銀行口座を持たない16歳の少女が
    ネットカフェや男性の家を泊まり歩く生活は
    友達の家を泊まり歩く感覚に近いのだろうか


    若者の貧困問題、ネットカフェ難民と
    負のスパイラルに陥った人達がいきつく先と
    社会の闇を垣間見る作品になっています


    自分が地域とどれだけ関わっているか?と
    聞かれれば、全く関わっていないしお隣さんとさえ
    顔を合わさない生活をしている
    私も無縁社会の住人なんだな〜。

  • なんとも....無縁というか無音というか。派手さは無いのにズシンと重い。女性の扱い気になるけど、これって絶対的真実かもw

  • 3月-1。3.5点。
    贄の夜会の刑事、再び。ていうかシリーズだったのか。
    メンバーが同じだけで、関連は無い。
    ネットカフェ難民の少女が、ある男の部屋で変死。
    男は部屋を貸しただけという。
    寂しい話。最後に話が二転三転、結構面白い。
    重いテーマの話。

  • 16歳の少女はなぜ死んだのか?
    家族や地域の絆を失った無縁社会で若者たちが抱える孤独と痛みを描く警察小説

  • 悲しい話。
    面白かったです。

  • 【家族や地域の絆を失った無縁社会に警鐘を鳴らす問題作】養護施設から逃げ出した十六歳の少女・舞子は、なぜ死なねばならなかったのか? 若者たちが抱える孤独と痛みを描く警察小説の白眉。

  • 「贄の夜会」の大河内刑事が再登場。とは言うものの、ほとんど前作に触れることはなく、充分、単独で読める。むしろ、続編として期待して読むと肩透かしを喰らうかも。
    今作は前作のようなサイコ感やハードボイルド感はほとんどないが、ネットカフェ難民の実態を絡め、骨太な社会派ミステリとして興味深く読めた。事件の初端は至って地味だけれど、スルスルとページを捲らせる文章力はさすが。最後の二転三転も、本当の真相を知りたくて、捲る手が止まらなかった。ハードボイルド感たっぷりの警察小説も良いけど、こういうのも好き。

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著者プロフィール

1963年、横浜市出身。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。91年「ハミングで二番まで」で第13回小説推理新人賞を受賞。翌年『時よ夜の海に瞑れ』(祥伝社)で長篇デビュー。99年『幻の女』(角川書店)で第52回日本推理作家協会賞を受賞。主にハードボイルド、ミステリー、警察小説のジャンルで旺盛な執筆活動をおこない、その実力を高く評価される。

「2023年 『孤独なき地 K・S・P 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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