直木賞受賞エッセイ集成

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163900452

作品紹介・あらすじ

来たる平成二十六年一月の選考で第150回を迎える直木賞。二十一世紀初の受賞者は、第124回の重松清、山本文緒の両氏でした。本書は、この回から第150回までの三十四名の人気作家と新受賞者の受賞エッセイをまとめた一冊。『オール讀物』の直木賞掲載号のエッセイもしくはロングインタビューに加えて、奥田英朗氏のみ書きおろし随筆が入ります。それぞれのエッセイが多くの作家のキャリアの結節点を記している面白さはもとより、エンターテイメント小説界のひとつの大きな潮流をつぶさに感じとれる内容になっています。

感想・レビュー・書評

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  • 自分の好きな作家だけに思い入れが強いのか、井上荒野さんと山本文緒さんのエッセイが染みたなぁ。
    ああ、良かったね苦労した甲斐があったね。
    ファンとして何よりだよなんて思いつつ読む。

    逆に今更直木賞ってどうなのよって作家さんもちらほら。
    例えば江國香織さんなんて受賞した時は既に恋愛小説の名手として絶大な人気を誇っていた。
    北村薫さんなんて大御所の域に達してると思ってた。
    まだ取ってなかったのかと言うのが正直なところ。
    そんな人のインタビューなりエッセイなりはやはり余裕が感じられるな、気のせいでなければ。

    好印象だったのは朝井リョウと辻村深月のエッセイ。
    何と言ってもフレッシュ!
    作家になりたいというその思いがよーく伝わってきて。
    個人的にはキャリアを積んできた作家よりもある程度の所で直木賞取らせてやる方が良いよなと思う。
    この二人は若いけれどキャリア的にはベストかなとも。

    勝手な事をつらつらと言ってしまったけれど、やはり直木賞。
    それぞれの作家の感激が伝わってきて、ジーンとなる。
    素敵な作品をいつもいつも届けてくれてありがとう、そんな気持ち。
    この本の企画自体あざとい気がしなくもないけれど、それでも許せちゃうかな。
    これからも直木賞、楽しみにしてます。

  • 直木賞作家の伝記的エッセイ集。
    すごいの一言。
    人ってこんなにも違うんだ。そんな当たり前なことがこんなにも面白い。

    好きな作家さんも一度も作品を読んだことのない作家さんも関係なく、どの文章も興味深かった。
    全く違う人が違うモチベーションで違うものを目指して紡いでいく物語。
    同じになるわけがない。
    改めて言うのも馬鹿かと思うような当たり前なことだけど、もう不思議で仕方ない。
    なんて面白いんだろう。人の心って。人間て。

    小説もエッセイも好き嫌いはあるけれど、それは良し悪しとは違う。
    良いから好きで良くないから好きじゃないわけではない。
    今の私が求めているものかどうか、今の私に受け入れられるものかどうかということなんだろうと思う。
    それはただ単に「今」だけの話なんだ。きっと。
    簡単に合う合わないと決めてしまうことがどんなにつまらないことか。
    だって物語を読むことはその向こうにいる人と出会うことで、その行為を通して自分を知ることでもあり。
    私はいつも誰かを通して自分のことを知ってきたんだなぁ。
    他の人に憧れることでなんとか生きてこれたんだなぁ。
    そしてその機会を最も多く与えてくれたのが物語だったんだなぁ。

    自分とは違うことを考えて生きている人がいることを喜びたい。
    違う世界を見せてくれる人がいることに感謝したい。
    混沌を愛したい。その中で生きることが苦しくても。
    そう思った。

    • vilureefさん
      こんにちは。

      takanatsuさんのレビューに胸がいっぱいになりました。
      花丸1個だけじゃなくていっぱい差し上げたい気分です(*^...
      こんにちは。

      takanatsuさんのレビューに胸がいっぱいになりました。
      花丸1個だけじゃなくていっぱい差し上げたい気分です(*^_^*)
      読書に対する深い愛情が伝わってきましたよ~。

      >自分とは違うことを考えて生きている人がいることを喜びたい。
      違う世界を見せてくれる人がいることに感謝したい。

      本当ですね。
      読書をすると違う世界が広がりますよね。
      自分ひとりの人生なんてたかが知れていますが、本を通じて様々な人生を知ることは可能ですものね。
      そのためにもジャンルにとらわれず色んな本を読んでいくぞー!と言う気になりました(笑)
      2014/08/26
    • takanatsuさん
      vilureefさん、コメントありがとうございます!
      つたないレビュには勿体ないお言葉の数々…、何と言ったらいいか、とても嬉しいです。
      ...
      vilureefさん、コメントありがとうございます!
      つたないレビュには勿体ないお言葉の数々…、何と言ったらいいか、とても嬉しいです。

      「そのためにもジャンルにとらわれず色んな本を読んでいくぞー!」
      そう!そうなんです!
      私もそう思っています。
      それがなかなか出来ていないところでもあるのですが…。
      でも知らなかったけとを知ることの楽しさとか、自分の興味が広がっていくことの嬉しさとか、ちょっとずつでも着実に喜びとして感じられるようになっているかなと思います。
      vilureefさんのレビュから知ることの出来た世界もありました。
      本当に感謝感謝です。

      …もしかして話の方向がずれてしまったでしょうか?

      と、とにかく、これからも新しい出会いに目を輝かせながら生きていける人間を目指そうと思います!(そんな話じゃなかったらすみません…)

      2014/08/29
  • 他人と親しくはなりたいが
    どうすればその仲は深まってゆくのだろう。

    毎日顔を合わす、毎日言葉を交わす、
    スキンシップもとって、冗談も言い合う…

    が、
    どれほど言葉を交し合ったとしても
    無難、を選んで差出し合ってたんじゃ
    永遠に分かり合えるワケがない。

    >こんな生き方をし、
    こんな人(本)に影響され、
    こんな風にものを考えるようになっていったんだ。

    それを、表現したくなったんだ。

    そうなんだ。

    いいテーマだなぁ、と思った。

    直木賞を受賞しての心情、エッセイ。

    こんな大きな賞を頂いた作家の方々には、
    これまでどんな軌跡があったのか。

    いろんな人がいて、
    いろんな人生を送ってきたんだなぁ。

    楽しく語ってくれた人も、しみじみ語ってくれた人も、
    見知らぬ人も見知った人も、たくさんいらっしゃったが、
    皆の根底に共通する
    どうしても表現したかった、書かずにはいられなかった、
    (そして本が好き。)
    その熱い気持ちがじんわり心地よく浸透し、
    受け取るだけの側なので、
    わかり合ったワケではないが、
    彼らの事を良く知れた気がして、なんかすごく嬉しかった。

  • 2001年1月の選考会で受賞された重松清さんと山本文緒さんから2014年の朝井まかてさんと姫野カオルコさんまで
    の直木賞作家の受賞エッセイ、ロングインタビュー

    奥田英朗の大ファンの私、エッセイや小説は、作家になる以前の文章も含めて全部読んだ(多分)
    もう他にはないかと検索していたら、これに行き着いた

    当初の掲載予定の文章は、受賞作「空中ブランコ」の主人公である精神科医 伊良部一郎の元に受診に訪れ、あれこれ精神分析してもらうという架空対談だったらしい

    しかし、本人曰く、あまりに小恥ずかしい内容で(読み返すのも赤面するそうな) 収録を断ってしまったらしい

    それ読みたかった! 絶対読みたかった!

    伊良部一郎の診察を受けるという発想もふざけることが大好きな奥田さんらしいし、取り下げてしまったのもシャイな奥田さんらしい
    エッセイが載らないのは、奥田さんただ一人ということで何卒と懇願され、受賞から10年を経過して新規に書き改めたエッセイが掲載されたということらしい

    そして、このエッセイの最後の6行に、またまた笑ってしまった 私が奥田英朗を好きなところはこういうところかもしれない

    その他にもそうそうたる35人の作家のエッセイは、なかなか読み応えがあった
    生い立ちやら、本との関わり、作家を志すようになった経緯など各人各様

    しかし、共通しているのは、書く作業というのはとても孤独な作業で、皆さん血の滲むような努力で文章を紡いでいらっしゃるということ、そして我々読者の元に届くには驚くほど多くの人々の力が必要であるということ

    そして、何よりこんな人々のおかげで、今の私は本のある豊かな人生を送れているということは、間違いない



  • 2001年1月~20014年1月までに受賞した36人の直木賞受賞エッセイを収録。 直樹賞をもらうと自伝エッセイを収録するらしいのだが、奥田氏は空中ブランコの伊良部一郎医師のもとに奥田氏自身が訪れあれこれ精神分析してもらう、というものだった。が今読み返すと赤面もので、この本が出るにあたり書き直します、と奥田氏のみ書き直したものが収録。

    もう受賞後10年も経っているので、すっかり業界のベテランになっているので、創作技法などを紹介します、とある。プロットは立てない、内容的には、裁かない、テーマを持たせない、説明しない、自分で酔わない、この4点がセオリーだという。世の中には完全な悪も善も無く、テーマは浮かび上がらせるもので描くものではない。テーマを描くなディティールを描けというロシアの戯曲家の言葉を箴言にしている。・・こうなると雑誌掲載の文を読んでみたくなる。

    奥田氏以外では、東野圭吾、池井戸潤、姫野カオルコなど。確かに皆真面目に硬く書いていた。


    2014.4.10第1刷 図書館

  • これは良かった! さほど期待もせず何の気なしに読み出したのだが、最初の山本文緒さんでガツンときて、重松清さん、藤田宜永さんと読み進めるうちにどんどん胸が熱くなり、もう夢中で読んでしまった。

    考えてみれば、なんだかんだ言っても直木賞である。目標とするにせよ、そうでないにせよ、小説家にとって大きな意味を持つ賞であり、その受賞後に注目を浴びる中発表されるエッセイなわけだから、力や心がこもっていないはずがない。旬の勢いや長年の苦労、晴れがましい高揚や、しみじみした感慨、照れ、人それぞれにもういろんなものが詰まっていて、読みごたえたっぷりだ。

    正直に言って、さして面白くないのもあるのだけれど、心うたれて何回も読み返したものがいくつもある。重松さんの「早稲田文学」をめぐる回想は、青春小説を読んだような味わいがある。奥田英朗さんは、ちょっとひねくれたポーズがほほえましく、最後の感謝の言葉が効いている(「(ここは仏頂面で)」と括弧書きがついているのだ)。男性作家では他に、藤田宜永さんや京極夏彦さん(エッセイではなくインタビューだったが)、山本一力さんなどが心に残った。

    しかし今回胸に迫る思いで読んだのは、なんといっても女性作家のものだった。山本文緒さんは渾身の一篇。半生の歩みを振り返り、思いのこもった一文で忘れられない。松井今朝子さんの歌舞伎を中心とする演劇との関わりを初めて知り、なるほどと腑に落ちた。封建的なものへの抵抗が常に芯にあるという言葉にも納得。

    山本さんは子供の頃にあまり本を読まなかったそうだが、それは例外的で、当たり前だろうがずっと本の虫だったという人が多い。私はこの、本を愛し、本があったから生きてこられたと語る人たちの言葉を、泣きたくなる思いで読んだ。だって、それはまるで自分のことのように思えたから。

    桜庭一樹さん、三浦しをんさん、木内昇さん、辻村深月さん。こういう方たちをつかまえて「自分と同じ」なぞと言うことの不遜はひとまず棚に上げよう。私にとっても、本を読むことは人生と切り離せないものであり、本の向こうの世界があったから現実を生きてこられたと思う。才能と努力によって、本を生み出す側となったこの方たちも、心の中にはずっと、夢中で本にかじりついていた子供がいるのだ。その子供のことなら私も知っている。

    それにしても、短い文章でもそれぞれの個性というのはくっきりと出るものだなあと思う。その人ならではの語り口がある。私は三浦しをんさんのエッセイが大好きなのだが、ここでも畏まらずにいつもの調子で書かれていて、たいそう面白かった。珍しいことに執筆方法について明かされていて、これはしをんちゃんファンは必読では。

  • そういえばこういう本もあったな、と年末年始の読書タイムにと図書館で借りた一冊。

    作家それぞれの文章の癖や味わいがあって面白かったですね。
    生い立ちや作家を志したきっかけなどを書いて欲しいというお題のせいか、やはりそういう内容がメインでしたが面白いのは、はっきりと作家になりたいと思って目指してきた人はわりと幼い頃から自覚を持っていたのだなということ、違うものを目指していて作家になるつもりではなかったのにうっかり?なってしまった人も数人。
    そして幼い頃からものすごく本を読み込んで育ちあがってきた人と全然本を読む生活とは縁のなかった人とくっきり分かれています。

    この一冊を読んで思うのは、作家になるというのはもちろん才能も素養も必要だと思うのですが、何となく運めいたものというか人との出逢いとか関わり方とか仕事の仕方とか社会との向き合い方(自分のスタンス)みたいなものが大事なのではないか、ということです。

    物書きの人って、昔よく言われていたイメージでは人嫌いで社会と関わるのが苦手でおうち大好きで偏屈で頑固で…というのが多かったように思いますが、そういうイメージとはむしろ真逆の人たちなのではないかと、本書を読むと思われました。

    作家になりたい人、というか物書きしたい人には「こんな風に自分は作家になった」と教えてもらえる面白い一冊なのではないかな、と感じました。

  • とても興味深く読んだ。
    直木賞に至るまでの道のり。
    作家として思うこと。
    作品への想いなど。

    やはり好きな作家さんのエッセイは
    驚きと共に、さらに作品を読むときの
    味わいが増すような気がする。

  • ノスタルジー満載。

  • オススメを受けて手にとった一冊。真っ先に読んだのは、ずっと個人的にファンでサイン会やトークイベントにも行ったことのある三浦しをん。◆一番笑ったのは、桜庭一樹。高校時代の女子更衣室で、クラスメイトが、先日秘宝館で買っちゃったけど家に置いとくのこわくてもってきちゃった、というのがリアルすぎるくらいにリアルな男性器型の薄荷味の飴で大騒ぎ、やっちまえーの掛け声とともに、みんなでハンマーで打ちこわし粉々にし、その破片をみんなでがりがり食べて、薄荷の味がするよ!とげらげら笑いあったというシーンに。◆いやいや、そっちのほうが読みたいよ、と思ったのは奥田英朗。あるシリーズの登場人物伊良部と作者が、一緒に精神科に診療を受けに行くという架空対談を、再録したくないからと別のエッセイに差し替え。差し替えられたほうも十分おもしろかったけど。わたしの小説のセオリーは「裁かない」「テーマを持たせない」「説明しない」「自分で酔わない」なんだとか◆ぶっとんでるなと思ったのは、山本文緒。自伝的エッセイのはずが、直木賞候補になった日の買い物日記になり。◆読み返したくなったのは、江國香織。「号泣する準備はできていた」「泳ぐのに安全でも適切でもありません」はまた手に取りたい。「絶対はない。でも、主観的には絶対というものは確かにあるし、永遠も確かにあります。永遠の恋も、主観的にはあると思う(略)だから私は「個人的な絶対」が好きだし、主観的な登場人物が好きですね。」◆そして、森絵都の"自らの信念や価値観を守って黙々と生きている人々を描く"「風に舞いあがるビニールシート」も読み返したく◆

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