男ともだち

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163900667

作品紹介・あらすじ

関係のさめてきた恋人と同棲しながら、遊び人の医者と時々逢いびき。仕事は順調、でも何かが足りない――29歳、イラストレーター神名葵。八年ぶりの電話を掛けてきた大学の二歳上の先輩・ハセオはいつも馬鹿笑いしてばかりの、女の切れない男だったが、決して神名には手を出さなかった。男ともだち。そういう呼び名以外はあてはまらない。でも、誰よりも居心地のいい相手だった。同じ種族を本能的に求めるように神名は彼と一緒にいた。男ともだちは恋人ではない。彼には親密に付きあっている女性たちがいるだろう。でもひょっとすると、男ともだちは女たちにとって、恋人なんかよりずっとずっと大切な相手なのではないか。いつまでも変わらずに、ふとした拍子に現れては予想もつかない形で助けてくれる――。29歳、そして30歳。仕事と男と友情の、熱くてビターな日常を描いた傑作長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 彼氏、愛人、夫、知り合い、女友達、
    そして男ともだち。そういった様々な人間関係と、女性が仕事へ向き合う姿勢が詰まった一冊だったと思う。

    ●どんなに信頼が築けていると信じていようと、人間関係は不確実な気持ちの上に成り立っている。

    ホストのローランドさんが、男女の関係はグラスのようだと表現していた。最初はみんな楽しみたいと思っていて、グラスを割るつもりで乾杯する人はいない。しかし、乾杯してグラスが割れてしまうことがある。

    人間関係はいつ何が原因でヒビが入るかなんて分からない。ちょっとしたことで割れてしまうかもしれない危ういもの。

    大切な人をうっかり失ってしまわないように、神名とハセオみたいにどういう関係性でありたいかをしっかり自分の中で考えられるようになれたらいいなと思った。

    でも、美穂さんや露月さんは大切なものを失ってしまったからこそ、余裕のある美しい女性になったんだと思う。

    人間は、たぶん何かを手に入れて失って、それを繰り返しながら、その時々に自分に必要なものを理解できるようになるのかなと思った。

    また何が新しいものを得て、今よりもっと魅力ある女性になった時に、必ず読み返します。



    (それにしても、ハセオのような、どうしようもないけど甘く苦い雰囲気のある男性に女性は惹かれてしまいますよね、、、)

  • 151回(2014年上半期)直木賞候補作。
    前に「あとかた」という短編集を読んでいます。

    神名(かんな)葵は、29歳のイラストレーター。
    絵本作家を目指し、絵本で賞をとったこともあるので、仕事はまあ順調になってきた。
    だが本当に描きたいのは何だったか、やや見失いかけている。

    おだやかな性格の恋人の彰人とは同棲して5年。
    平等な関係を築いていると思っている。
    ただし、医師の真司とは不倫関係にあった。もともと奔放なカンナは、身体だけの関係も多かった。同棲相手には気づかれないように気をつかっているつもり。
    性格に問題ありの傲慢な医師とは、冷めかけてはいるが、強引な相手との方が合うのかもとふと思ったりもする。

    そんなとき、大学時代の2年先輩だったハセオとの間に、7年ぶりに連絡が復活。
    互いにいつも恋人は別にいたが、信頼できる男ともだちで、部屋に転がり込んで腕枕で眠ったことも何度もあるという間柄だったのだ。

    ‥おいおい?
    何を読まされているんだろうと、途中で一度やめました(笑)
    いやでもまあ~と読み進めると、やはり同棲相手とは破綻。向こうの気持ちも離れているのに気づかず、バッサリ切られるので、ああそういうことかと。
    カンナが自分のおろかさに気づかされる面もあります。

    カンナが困っているときに登場して助けてくれるハセオ。
    ハセオがやはり都合がよすぎるキャラですが、まあこういう人がもしいたら‥と、読んでいられないことはない。
    互いにモテまくりで、どっちも恋人にしたいタイプと違っていたら、肉体関係に及ばないということはあり得るでしょう。好意を抱いた相手全員と関係持つわけじゃないから。
    ただ、友達というよりも、この繋がりは兄妹的かな。
    心の奥に抱えた空洞(異性不信?)が、同類という意識を持たせていたという話のよう。

    30の女が一番悪いというのをいぜん持論にしていたことを思い出しました。
    大人しくしていてもダメだと考え始める年頃。
    恋愛も仕事もむちゃくちゃになっちゃうこと、あり得るんですよ‥
    タイプは違うけど、そりゃ若い頃はばかだったなーというか、予想と違うふうに転がっちゃうことってあります(苦笑)
    そういう意味では、読んであれこれ考えるのも、面白い作品かもしれません。

    このヒロイン、イラストレーターとしては、学生時代から作品が溜まると何かと展示をしていたというのだから、かなり真面目で果敢なところもあるじゃないですか。
    やむにやまれぬものが内面にあるのなら、男はこやし?的なところも‥
    成長過程の、けっこう華やかな時期だったということかも。

  • 女性だったらハセオのような男性がいてくれるのがとっても理想なのでは。
    人によってやっぱり違うかもしれないけど、私はそうだな。
    神名が羨ましい。
    いつも見守ってくれてる。何かあったら何も言わずに支えてくれる。
    くぅ~羨まし過ぎる~~

  • 二十九歳、神名葵は器用だ。
    何年も同棲している彼には内緒で、妻子持ちの医者と浮気をして股を開いている。さらに大学時代のサークルの男ともだち、ハセオには彼以上に心を開いている(股は開いていない)。
    三人の男を使い分ける神名は、イラストを描く仕事も器用にこなす。相手のニーズを読み、自分が描きたいイラストではなく、相手が必要としているイラストを納品する。

    給料をもらうために毎日同じ職場に出社して、同じような毎日を過ごす会社員からすれば、クリエイティブで刺激的で羨ましがられることも多いが、神名は暴力的な焦燥感に襲われることもある。
    何もしていない、何もできていない、何も遺せていない。こなすだけの仕事もいつまでくるのか、保証はない。

    同棲していた彼とは衝突して別れ、不倫を楽しむ医者と過ごそうとしたら、偶然居合わせたハセオが神名を連れ出した。ハセオは都合のいい奴で、身体を求めてくることもない。同じ部屋に泊まっても、神名とハセオは男女の関係にはならない。

    好きなことを好きにできるようになるために生きている、自分の武器は自分だけ、と思い出した神名は新たな環境で自分のやりたい表現を続ける。
    大学時代の友人、美穂は神名のことを不器用だと言った。神名も美穂も口に出して言わないことはある。
    ハセオと神名もわかり合ってるからお互い言わない。秘すれば花、だ。

    ---------------------------------------

    同棲していた彰人も、浮気相手の真司さんも、都合のいい男ともだちのハセオも、みんな言ってしまえば神名のための存在で、必要がなくなればいなくなっても構わないのだ。
    好きなことを好きようにやりたい。
    浮気相手とのどうでもいいようなセックス、衣食住を保証してくれる保険としての同棲相手、話を聞いてくれる男ともだち。
    彼らだって同意しているようなものだし、許しているし、許容している。神名が自分勝手なわけじゃない。
    そうやって彼らの犠牲の上で、神名の表現活動が充実するのだ。
    倫理的には問題アリでも、バランスが取れている関係性で同意の上なら問題ナシ、ということかな。

    言いたいことは山ほどある。神名の行動にもハセオの態度にも、それちょっとおかしくないか、と言いたい。
    でも、ここには書かないで心のなかに留めておく。だって、秘すれば花だから。

  • 私も学生時代に「男ともだち」がいた。
    話も合って気のおけない友人でたまたま性別が「男」だっただけ、という感覚で付き合ってきた。

    本作品の主人公・神名葵の言う「男ともだち」はちょっと違う。
    自らを縛られることを嫌い執着もしない、と言う神名は、同棲相手と愛人(妻子持ち)の間を器用に渡り歩き、その上恋愛感情が一切ないと言いきる「男ともだち」ハセオもいる。
    ハセオも女癖が悪く二股三股も当たり前、なのに神名だけには手を出さない。
    添い寝して腕枕されても平気で寝ていられる関係で、唯一素の自分をさらけ出し甘えさせてくれるハセオ。
    それは一見羨ましい理想的な関係に思えるけれど、私にとっては面倒くさい関係に思えてならない。
    二人の曖昧な関係が受け入れがたいのは年齢的なものもあるのかもしれないけれど…。
    神名もハセオとの距離感に悩んだ時期もあったけれど、やっぱり二人には「ともだち」としての距離感が一番しっくりするようだ。

    男と女の間には友情が成立するのか?…昔から映画や歌にもよく出てくるこの問いに対する答えは、永遠に解けない謎なのかもしれない。

  • 全ページ泣きながら読んだといっても過言ではない。まるで自分を見ているようで(こんなにクールで素敵じゃないけど)つらすぎて消化しきれない。なので前半は主人公といっしょに辛くなりながら読んだけど、後半でいっしょに救ってもらったかんじがした。
    ハセオについて他の感想ブログでは「こんなやつはいない」「ファンタジー」と言われているけど、確かにこれは完璧すぎる王子だけど、ハセオ的な関係はあると思うし、恋人やセフレでは果たすことのできない役割は確実にこの世に存在しているし、私もずっと「男ともだち(性が介在しない関係)」に助けられてきたと思うので…。
    っていうと必ず「いや男はみんな下心があるんだよ」って言ってくる人が必ずいるので、そういう人には「知ってる!死ぬほど知ってる!」と答えたいです。同性間の友情に比べて脆くあやういというのはわかるけど、だから意味がない、ニセモノだという結論にはならない。
    乱暴ですが、自分がこうありたいと思うような自分でいさせてくれる存在なら恋人(夫婦)でも愛人でもセフレでも男ともだちでも、何でもいいんじゃないのかな。そこにおいての価値は等しい。

  • メチャクチャよかった。
    そう思えるのは、わたしにもずっもハセオが居たから。

    小学生の頃から、ずっと仲良くて。
    30歳になってもお互い一人なら結婚しようと約束していた人。

    泊まっても何もなく、手を繋いでもそこから何も発展しない。

    ただ仲良くて。
    お互い恋人ができてもたまに会う。

    けど次の約束は全くしない。
    いつも向こうから電話があって、突然誘われて出て行く。

    私からは誘わない。
    なんでだろ?同じくそこに甘えちゃいけない気がしてたからかな?

    私が30になる前に結婚し、そこから数年会わず。
    けど、ふとしたきっかけでまた連絡が来るようになったけど、私のハセオも本当に好きな子を見つけ、今では一児のパパ。

    もう二度と会うことも話すことも無いと思う。

    きっと私のことも日常で思い出すこともないだろう。
    そういう私もこの本を読まなければ、思い出すこともなかった。

    恋愛感情に似ているんだけど、むしろそれ以上の繋がりのように感じる。

    元カレなんかよりずっと思い出すと切なくなる存在。一度も傷付け合った事が無いからだと思う。
    秘すれば花。

    私のハセオも私に言ってたな。
    『一生会えなくても、どこかで元気に生きててくれればいい。』って。

    私も今の旦那と出会った時言ったな。
    どんな人?と聞かれて
    『ハセオに似てるよ。』って。


    作中最後に『いつもハセオに頼ってばかりで、今度は助けたい』と文章であったけど、ハセオは一緒に過ごす事で、きっと助けられていたと思う。

    映画の『あと1センチの恋』とか好きな人は好みだと思う。 

  • 読み終わった瞬間に鳥肌が立った。
    私にも”男ともだち”がいるが、読んでて神名が羨ましくなった。
    また読み返したくなる1冊。

  • ずっと前から気になっていたお話。
    まぁ本当にシンプルに言うと「男女の友情は成立するのか」っていうさんざっぱら議論されてきた命題について書き尽くしたストーリーです。
    ハセオ、めちゃくちゃ格好いい。格好いいけど、こんな男いない!!えっ、いるの?いないよね?いない!!!
    大好きな文体でストーリーも面白くてぐんぐん読めるんだけど、ただもう「こんな男いねええええ」とやさぐれる気持ちが止まらなくて、物語にほとんど入り込む余地がなくてモヤモヤした。
    少女漫画よりありえないのでは?なんでセックスしないの?こういう関係って本当に現実でもあるの?
    というか、セックスに重きを置きすぎのように感じる。男友達と一回寝たぐらいで何かがそんなに劇的に変わるかな?そこで果たして何かが失われるのかな?ただ守ってくれる、見ててくれることって、別に男友達に求めたいものじゃないし。
    でもハセオの存在が羨ましい……彼氏でも家族でもなくこんな存在が自分をいつでも受け入れてくれるって分かってたらどこへでも行けちゃうよね。失敗しても落ち込んでも、癒して回復させてくれる。ポケモンセンターかよ。それが"男ともだち"だもんなぁ、ずるすぎるよ。
    この小説が悪いわけじゃないけど、何か読んでて気が滅入った。男女の友情とかいう都市伝説について、とにかく一人で勝手にいろいろ煩悶した。

  • なんだろう、精一杯"創作"しているのはわかる、著者の好みもよくわかる...でも...と、ほとんど呻吟しながらも結局最後まで読み終えた後、直木賞候補だったと知る。そこで読んだ選考委員高村薫さんの評が、私自身が持った感想をとても的確に表してくれてあった。曰く「評者はもとより本作を女性の妄想――こんな男がいたらいいのに――の物語として読んだが、妄想を抱く身体のリアリティが、いかにもというステレオタイプに留まっており、登場する男たちに小説的な魅力がない。」

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著者プロフィール

1979年北海道生まれ。2008年『魚神』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。09年に同作で泉鏡花文学賞を、13年『あとかた』で島清恋愛文学賞、21年『透明な夜の香り』で渡辺淳一賞を受賞。他の著書に『からまる』『眠りの庭』『男ともだち』『クローゼット』『正しい女たち』『犬も食わない』(尾崎世界観と共著)『鳥籠の小娘』(絵・宇野亞喜良)、エッセイに『わるい食べもの』などがある。

「2021年 『ひきなみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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