四人組がいた。

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 504
感想 : 80
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163901022

作品紹介・あらすじ

「高村薫、ユーモア小説に挑む」この村では、何だって起きる――。元村長、元助役、郵便局長、そしてキクエ小母さん。古ダヌキのような四人の老人が関わると、村の小さな騒動も、AKB48から少子高齢化まで縦横無尽。儲け話と、食い物に目のない老人たちは、集会所に集まっては、日がな一日茶飲み話を。だがそこへ、事情を知ってか知らぬか、珍客がやって来る。テレビクルーに、タヌキのアイドルユニット、元アイドルの出家、はたまたキャベツは大行進。最後に、閻魔様まで!!「ニッポンの偉大な田舎」を舞台にした、ブラックユーモアに満ちた奇想天外の十二編。現代を、冷静かつ緻密に描写しつづけてきた著者が、今の日本を、地方からユーモアとシニカルを交えて軽妙に描き出す。

感想・レビュー・書評

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  •  高村薫作品を読むのは、さていつ以来だろう。代表作『マークスの山』こそ読んだものの、大作が多くなかなか手が出なかった。そんな中、本作は短編集なので読んでみる気になった。硬派な作風の高村薫さんが、ユーモア小説に挑む?

     村の集会所に集う老人たち、元村長、元助役、元郵便局長、そしてキクエ小母さん。四人組が茶飲み話をしていると、いつも珍客が迷い込む。四人組の視点から、田舎の過疎問題、高齢化問題を斬るっ!…というわけではないらしい。

     1編辺り20pちょっとの全12編を読み進むうちに、何の意味があるんだとか起承転結やオチがないとか言ってもしかたないことがわかるだろう。少子高齢化など四人組の知ったことではない。あまりにも村の日常がぶっ飛んでいるのだから。

     大体、珍客が人間とは限らないのである。四人組も普段からダチョウや狸など動物と言葉を交わしているのだから、いちいち驚かない。そもそも、この村は人間の村なのか? 四人組は人間なのか? という疑問さえ浮かんでくる。

     彼らはネットも嗜むし、時事の話題にも敏感である。何より、いくつになっても楽しむ心を忘れない。田舎出身者なら思わず頷く点も多いものの、本作に悲壮感などどこにもない。どの辺がブラックでシニカルなのか、正直よくわからなかったぞ。

     高村薫さんがどういう心境の変化で本作を書くに至ったのか、聞いてみたい。本作の意外性は、従来の重厚な作品を読んだ経験があってこそ際立つ。熱心な高村ファンにしれみれば、複雑かもしれない。しかし、僕が大作に手を出すことはあるまい。

     田舎の過疎化、高齢化はもう止めようがないだろう。都市部でも高齢化が進んだ地域がある。遠くない将来、我々も高齢者となる。そのときどこに住んでいるのだろうか。四人組のように日常を笑い飛ばせるだろうか。四人組最強だな。

  • 奇々怪々の作品である。高村薫の新作小説をずっと待ち続けているファンは多い。私もそうである。なのに、私は図書館の片隅にこの本を見つけるまでの4年間、その存在を知らなかった。何度か新作をチェックしたと思うのだが、何故かその時Webに載らなかったとしか思えない。世の中も話題にしていなかったので、私の情報収集が劣っているというわけでもなさそうだ。

    この作品は、何か秘術が使われて、あまり世間に出回らないようになっているのではないか。何故ならば、この12篇の連作短編集は、まるで存在そのものが「在るのに無い」という性格を持たされているからである。則ち、12編とも題名の上に「四人組」を冠していて一見典型的な農村の、元村長、元助役、郵便局長、キクエ小母さんという暇を持て余した四人組老人たちを主人公とした日常を描いているのかと思いきや、実はこの四人組がとんでもないものたちだったという構造があるのかと思いきや、実は農村自体がファンタジー構造に組み込まれていると分かる後半部分でだいたいこんなんだと思った途端、最後は筒井康隆の如く日本の地方問題が批判的に描かれハチャメチャになって絶望的カオスに進んで終わりと思いきや、なんと神仏含めて世界は凡そ事も無しと進み「正体」が一向に現れないのである。色即是空。空即無、無即空也。

    私はこの題名を見た時に「やった!レディ・ジョーカーの元作「日吉町クラブ」の単行本化か!」と密かに思ったのものである。が、紐解いて、あまりものギャップに、声が出なかった(読書中そもそも声は出さないが)。まあ、高村薫小説世界の王道たる「太陽を曳く馬」も「冷血」も「土の記」も、まだ未読の私に「何をか言われんや」とは思う。

  • 村の集会所に集まる元村長、元助役、郵便局長、そしてキクエ小母さんが繰り広げる、毒気とブラックユーモアに満ちた12の話。
    読み始めてすぐに、これ本当に高村さんの作品?と思ってしまった。ファンタジーなのかと思ったりもしたが、現代社会を皮肉る、風刺の効いた小説。

    • hs19501112さん
      「これ本当に高村さんの作品?」

      に、同感です。
      ま、楽しく読めましたが。
      「これ本当に高村さんの作品?」

      に、同感です。
      ま、楽しく読めましたが。
      2017/01/21
  • あの高村薫が、ユーモア小説に挑戦!
    その話題性だけで、手に取ったが、作者の意図はどこに?
    シリアスな作風から一転、現代への風刺、あるいは警告?と捉えればいいのだろうか。

  • +++
    元村長、元助役、郵便局長、そしてキクエ小母さん。儲け話と、食い物に目のない老人四人組は、集会所に集まっては、日がな一日茶飲み話を。だがそこへ、事情を知ってか知らぬか、珍客がやって来て―。タヌキのアイドルに、はたまたキャベツの大行進。最後には、閻魔様まで!!現代を、冷静かつ緻密に描写しつづけてきた著者が、今の日本を、地方からユーモアを交えて軽妙かつシニカルに描き出す。奇想天外、ブラックユーモアに満ちた十二編。
    +++

    思いっきり通俗なのに、何ともファンタジックな物語である。元村長、元助役、郵便局長、キクエ小母さんの四人組は、郵便局兼集会所で日がな一日、あーでもないこーでもないとどーでもいい話に花を咲かせているのだが、時折訪れる珍客を巻き込んで、豚でもないことごとを引き起こすのである。だがそれさえも、ほんとうのことなのか四つ足たちに化かされたのか、ときにあやふやになったりもする。ともかく、何もなくて退屈な村のはずなのだが、何でもありでめまぐるしい日々のように見えるのは、四人組のパワフルさと関係があるのかもしれない。地獄ツアーでも天国ツアーでも、儲け話を拾ってひと波乱起こしてほしいと思わせられる一冊である。

  • あの高村薫さんがユーモア小説を書いたというので、ついつい読んでみた。

    市町村合併でお役御免となった元村長以下、元助役、郵便局長、キクエ小母さんのジジババ4人組が、山あいの寒村にある集会所でヒマをかこちつつ、悪だくみを巡らせ、さまざまな事件を引き起こしたり巻き込まれたりする。

    高齢社会や限界集落といった日本の地方が抱える問題や、ネット、メディアやアイドル、宗教や金儲けといった現代社会の文化がいかにも著者らしい筆致(特にチョイ役の刑事や僧侶のせりふ回しが堂に入っていたりする)で描かれるのだが、ほどなく超常現象や妖怪のたぐい、毛ものなどが入り乱れて来て、どったんばったん、ぎっちょんがっちゃんといった大騒ぎになってくる。

    しかし騒ぎの割にはみんな目は笑っていない感じで、またオチも難解で、なんとも不思議で居心地のよくない小説であった。ユーモア小説? 笑えねえよ! みたいな。

    8つの短編にわかれていて(オール讀物に順に発表された)、「危うし!」という一編は気に入った。

  • 合田シリーズしか知らない状態でこの本を読み始めたので本当に高村さん?と大変驚きました。山村で郵便局兼集会所に毎日集まって茶飲み話をする元村長、元助役、郵便局長、そしてキクエ小母さんの4人。彼らを軸にお話は進みますが裏の山にいる狸のような四足たちと普通にお話をしたりどこか浮世離れしています。でも彼らは実は自在にインターネットを操ったり決して時代に遅れていることはなく、むしろ強烈に現代社会を皮肉ります。高村ファンがこれを受け入れられるかどうか不安なほどですが、私はこのユーモアファンタジーを十分楽しみました。

  • 高村先生、ちょっと息抜きですか?笑

    という感じのもの。他の作家だったらちゃんとは読まなかったかもしれないが、この作家がこの手の本を書くとどういう感じなんだろう?と興味津々で読んでみた。時々先生の暴走?悪ノリ?が見られたのは面白かったです笑。

    でも、文体は健在。いつもはこの文体、リズムに乗ってどっぷりと暗く重苦しく厭世的な世界に連れ込んでもらっているんだよなー、と思いながら、四人が暴走し始めるシーンでは、趣きは違えども間違いなく高村作品であると文体から実感させてもらいました。

    ちなみにシニカルさとハチャメチャぶりに時々笑えた内容の作品。

  • これ高村薫だよね?篠田節子か有村浩じゃないよね?何が原因で、こんなコメディ書いてんの?
    村上春樹と違って高村先生には気分転換は不要なのかと勝手に思っていたのだが、そうでもなかったということなのかな~。

  • これは田舎で暇を持て余しているジジババの妄想?(・・;)と思うほど破天荒なお話の数々(--;)四つ足がたくさん登場する「四人組、危うし!」と「四人組、伝説になる」は楽しく読めた(^^)♪大笑いするほど面白くないけれど、この雰囲気は好きかも(^^;)

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著者プロフィール

●高村薫……1953年、大阪に生まれ。国際基督教大学を卒業。商社勤務をへて、1990年『黄金を抱いて翔べ』で第3回日本推理サスペンス大賞を受賞。93年『リヴィエラを撃て』(新潮文庫)で日本推理作家協会賞、『マークスの山』(講談社文庫)で直木賞を受賞。著書に『レディ・ジョーカー』『神の火』『照柿』(以上、新潮文庫)などがある。

「2014年 『日本人の度量 3・11で「生まれ直す」ための覚悟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

高村薫の作品

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