エヴリシング・フロウズ

  • 文藝春秋 (2014年8月27日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784163901121

作品紹介・あらすじ

クラス替えは、新しい人間関係の始まり。絵の好きな中学3年生のヒロシは、背が高くいつも一人でいる矢澤、ソフトボール部の野末と大土居の女子2人組、決して顔を上げないが抜群に絵のうまい増田らと、少しずつ仲良くなっていく。母親に反発し、学校と塾を往復する毎日にうんざりしながら、将来の夢もおぼろげなままに迫りくる受験。そして、ある時ついに事件が…。

大阪を舞台に、人生の入り口に立った少年少女のたゆたい、揺れる心を、繊細な筆致で描いた青春群像小説。

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

青春の揺れ動く心情を丁寧に描いたこの小説は、中学3年生のヒロシと彼の仲間たちの成長を通じて、友情や悩み、そして日常の中での変化を浮き彫りにしています。登場人物たちの個性や抱える問題がリアルに描かれ、彼...

感想・レビュー・書評

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  • この本は良かった。
    読み終えて登場する中学生達にさよならするのが寂しくなってしまうほど良かった。

    中学生を描いた小説を読む機会も多く、あの頃の痛みを思い出さずにはいられないもの、爽やか過ぎるもの、リアリティを感じないもの、など本当に色々。
    同じ世代を描いているけれど作家によってその世界観が様々で実に面白い。

    その中でもこの小説は特別だった。
    もちろん自分の中学時代を振り返ったり共感する部分もあるのだけれど、むしろ純粋に物語を楽しむことができた。
    登場する中学生や、その家族、教師の描写が丁寧で淡々とした日常の中にいながらも彼らが生き生きと浮かび上がってくる。

    それぞれの中学生が抱えている大小色々の悩みや困難。
    それを仲間がいることによって共に乗り越えていく様は読んでいてすがすがしい。
    何よりも津村さんの文章力が素晴らしく友情が前面に押し出されずにあくまでも控えめな位置にある事で、すっと受け入れられる。

    きっと現実はそう簡単じゃないのだろうけれど、素直にああ、いいなこんな仲間がいたらと思った。
    それがたとえ永遠に続くものではないとしても。
    この小説の空気感、大好きです。

    ★4つにしたのは、中学生としたらやや大人びているかなと。
    高校生でも良いんじゃないのかなとも思うけれど、大人と子供のはざまを描くには微妙なのか。
    ちょっとこの辺が気になったので・・・。

    • 杜のうさこさん
      はじめまして。杜のうさこです。
      先日ははなまるとフォローありがとうございました。
      vilureefさんのレビューいつも楽しみにしています...
      はじめまして。杜のうさこです。
      先日ははなまるとフォローありがとうございました。
      vilureefさんのレビューいつも楽しみにしています。この本もレビューを読まなければたぶん手にしなかったと思います。
      とてもいいお話でした~。ありがとうございます!

      幼いころから本が好きで読書歴だけは長いのですが、ブクログは初心者です。
      こんな素敵な出会いができるのならもっと早く始めておけばよかったと思います。
      これからもどうぞよろしくお願いします!
      2015/03/26
    • vilureefさん
      杜のうさこさん、こんにちは♪
      フォロー&コメントありがとうございます。

      杜のうさこさんの本棚、拝見させていただきましたが私の未読の作...
      杜のうさこさん、こんにちは♪
      フォロー&コメントありがとうございます。

      杜のうさこさんの本棚、拝見させていただきましたが私の未読の作家さんもたくさんあって興味しんしんです!
      ブクログを始めてから読む本の幅も広がり世界も広がりました(*^_^*)

      最近ちょっとばかり読書熱が冷めてしまいボチボチ更新していますが、よかったら覗いてください。

      こちらこそよろしくお願いします(^_-)-☆
      2015/03/27
  • 「ウェストウイング」で塾通いの小学生だったヒロシが中学3年生になって登場!同年代の子どもたちと交わることのなかった小学生の頃とは異なり、同学年の中学生との関係を中心に展開。
    淡々としたヤザワ。元気でまっすぐな野末。ろくに喋らないがあまりに絵が上手く、ヒロシに絵を描くことに無力感を覚えさせた増田など。みんな個性的でそれぞれの事情を抱え持ち、進路の悩み方もそれぞれ。
    思いがけない事件に巻き込まれたり、他の家庭の問題に直面した時のヒロシの処し方がカッコいいヒーロー的とは違うのだけどイイ!
    ヒロシの周りのみんなにハッピーでいて欲しい と願ってしまう。登場人物の魅力が満載でした。

  • 中学生の頃は心も体も大きな変化を経験し、まったく違った人間に生まれ変わるくらいの時期ではないかと思うのです。自分の存在がふらふらと不安定で、妙にイライラしたり周囲とぶつかっていた。

    主人公のヒロシも同じように、目立たない、目立ちたくない存在ながら、自分って何というモヤモヤした気分に包まれています。中学3年という特別な時期で、進学という否応ない現実に直面しつつも、寡黙なヤザワ、旧友のフジワラと一緒に悩むことの方が重大事。

    異性の増田、野末、大土居、古野との係りもまた、ありがちな展開。それまで直接会話も無かった関係から、物語の最後には全員含んだ係りに変化していた。

    中学生時代というほんの短い時間の中で、それぞれに抱えた問題に彼らの考え、行動で対応していく。正解のない問いに悩みながら時間を過ごしていく彼ら、まさにエヴリシング・フロウズ。

    ぎっしりと書き込まれた300ページ以上のお話しは、読みごたえがありました。

  • 中学三年生という、10代ど真ん中で揺れ動く多感な年頃を、ユーモアとナイーブさを織り交ぜて描かれた傑作長編。
    主人公のヒロシは、「ウエストウイング」の登場人物。当時小5だった彼との再会が嬉しかった!さり気ないリンクがファンには嬉しいけど、当然単体でも面白く読めます。
    席替え。受験。文化祭。気になる異性。中三の日常に、クラスメイトや別の中学に通う小学校時代の塾仲間が絡み、ヒロシを中心にしてゆるくつながっていく過程が絶妙に巧い。
    出だしこそ淡白で、人によっては退屈さを感じるかもしれないけれど、その後の二つの大きな盛り上がりにぐぐっと引きつけられる。一つはクラスの友人・ヤザワを巡る事件。二つ目は文化祭きっかけであぶり出されたある事実。ところどころで津村さんお得意の小ネタで笑わせる部分もありつつも、理不尽な仕打ちに言葉を失う。いつもはまったりしたペースで読む津村作品だが、今回は途中からページを繰る手を止められなかった。
    ちょっと「君は永遠にそいつらより若い」「八番筋カウンシル」を彷彿とさせる展開で、かつてのインタビューで津村さんが話していた「意地悪なものを越える話を描きたかった」という言葉を今回改めて思い出した。津村さんの描く、「意地悪」に立ち向かう登場人物たちの行いは、時に褒められるものではないかもしれないけど…勇ましくてかっこいいなと思うのだ。勿論今回も。
    深刻で胸の痛くなる場面もあるけれど、文化祭に向けて皆で作品を仕上げていく過程は読んでいて楽しかった。自分、ヒロシ母より年上なのに…めっちゃ中学生目線で読んでました(笑)当初は自分の子供に読ませたいと思ってたけど、大人の方が大いに共感できるだろうな。塾仲間だったフジワラとフルノは学校が違うということもあり、ちょうどいい距離でヒロシらと接していて(彼らが登場すると何だか安心する)相変わらず「つかず離れず」感の描写が見事だよ津村さん!他愛のない会話にこんなにもホッとさせられるのかといつも思うのだ。
    エンディングは、号泣。ど直球な泣かせシーンなんて皆無なのに、繊細でさり気ないやさしさに溢れた描写に、涙腺決壊しました。
    15歳はまだまだ無力かもしれない。身勝手な大人にはそう簡単に立ち向かえないかもしれない。きっとこれからも、様々な壁が立ちはだかるだろう。それでも、持てる力で、乗り越えていけ。そんな言葉をかけたくなってしまう。
    またいつかどこかで、彼らに会えたらいいな。そんなことをひっそり願いたくなる、大好きな一冊。

    • koshoujiさん
      追記:これが20世紀時代の昔に作ったものです。
      今あらためて見ると、このサイトを一人で作っていたとは、自分でも信じられません。
      ラグビー...
      追記:これが20世紀時代の昔に作ったものです。
      今あらためて見ると、このサイトを一人で作っていたとは、自分でも信じられません。
      ラグビー傍目八目
      http://www.mars.dti.ne.jp/~byr01204/rugby.html
      ラグビーワールドカップ1999
      http://www.mars.dti.ne.jp/~byr01204/worldcup/toppage.htm
      2015/09/18
    • メイプルマフィンさん
      koshoujiさん:津村さんの新刊は小説っぽいです。
      私はhontoから情報をもらったのですが、さっき何気なくこのブクログで検索してみた...
      koshoujiさん:津村さんの新刊は小説っぽいです。
      私はhontoから情報をもらったのですが、さっき何気なくこのブクログで検索してみたら、ひっかかりました。
      アマゾンに、内容とか発売予定日(16日)とか出てました。ちょっとびっくりした。
      2015/09/18
    • koshoujiさん
      小説ですか。来月16日ですね。即、当日に予約を入れるつもりです。
      情報ありがとうございました。
      メイプルマフィンさんもご存知でしょうが、...
      小説ですか。来月16日ですね。即、当日に予約を入れるつもりです。
      情報ありがとうございました。
      メイプルマフィンさんもご存知でしょうが、本日、ついに嵐がやって来ました。
      駅に、その様子を取材に行ってきましたので是非ご覧ください。
      下記です。
      https://kacco.kahoku.co.jp/blog/daichu48/60707
      2015/09/19
  • 冒頭───
    クラス替えの表は、下駄箱と玄関ホールの間に設置されている掲示板に貼り出されてあった。こっちの脳みそがスライスされてしまいそうなほどのキーキー声を上げて手を取り合ったりしている女たちと、新しいクラスなどどうでもよいという態で余裕ぶって、まったく関係のない話をしながら、しかし掲示板の前から離れようとしない体育会系の男たちの後ろで、背の低いヒロシは根気強く表の確認を待っていた。
    自分の名前を見つけたい、というよりはむしろ、名前がないほうが良いかもしれない、とヒロシは思う。名前がないんで帰りました! と誰だか知らないけど担任から電話がかかってきたら言えるし。
    もう面倒なのだった。誰と中学三年の一年をつるめるかについて、意外と出たとこ勝負のくせして、この場ではどちらが派手に喜べるかを競っているような女たちや、興味のなさそうな顔つきで名前の表をずるずると眺めながら、こいつにならおれは勝ってるとか、腕力では敵わないけど顔では上とか、想像力をたくましくしている男たちが周りにうろうろしていると、ヒロシはときどき窒息しそうになる。
    ───

    中学の時、ぼくはごく普通の中学生だった。
    ごく普通のというのは、周りにいじめたり、いじめられたりする生徒もいなかったし、児童虐待で悩んでいる知り合いもいなかったし、自転車で全国レベルのスピードを持つ友人もいなかったということだ。
    サラリーマンの家庭で、両親とも仲が良く、姉も優しく、友達も特に問題を抱えているという人間などいなくて、平凡で毎日のんびりとした中学生活を送っていた。
    さすがに、三年生になった時には(それでも夏休み以降だが)受験勉強に追い込まれ、多少は悪戦苦闘したけれど。
    薔薇色の未来が待ち構えていると信じていた。
    それは、まさかの受験失敗で一気に崩壊することになるのだが。
    それでも、この作品の主人公ヒロシのように、小説のネタになるような色々な事件や出来事は殆ど何もなかった。
    そのことが今の凡庸な自分を形成するにあたって、良かったのか悪かったのかは、今でも分からないけれど。

    ヒロシの周りには多くの個性的な人間が集まる。
    私立の女子中学に進学しながら、女友達と馴染めず、学校がつまらなくて辞めたいと思っているフルノ。
    背が高く、大人びた感じなのに、反応が鈍く、周りから疎んじられているヤザワ。
    女子にしては、細かいことを気にせず、真っ直ぐな性格で、ヒロシが密かに憧れているソフトボール部のキャプテン野末。
    その野末と同じソフトボール部で、試合になるといつもホームランを打つ大土居。
    ヒロシ以上に絵がうまく、目立たない存在ながらも一目置いている増田。
    小学校の時は一緒の塾に通っていたが、今は別の中学に通うフジワラ。
    ヒロシは、これら多くの知人友人との距離感を漠然と意識しながら、付き合いを続けていく。
    常に何が正しいのか分からず悩んでいる、自意識過剰で優柔不断なヒロシ。
    それでも、いざという時は他人のために何とかしようと行動を起こす。
    淡々としたさりげない描き方ながら、ヒロシの周りには次から次へと問題が発生してくる。
    どんなに考えても、どれが正解なのか分からない。
    葛藤するヒロシだが、悩みながらも事件に向き合うことで、少しずつ成長していく。
    この細部に至るまでの描写や心象風景の描き方が見事だ。
    全てのキャラもしっかりと明確化され、魅力的だ。
    現代の中学生は、いつもこんなに問題を抱えて悩んでいるのかと思うと、可哀想に思えてくる。

    みんなが新しい高校生活に向かって、それぞれの想いを抱きながら見ためがね橋の上からの景色は、どのように映ったことだろう。
    離れ離れになる切なさか、新しい生活への希望か?

    P346
    “ヤザワの自転車が海に落とされたように、出会った連中は好き勝手に、ヒロシの中にいろんなものを投げ込んで離れていった。ヒロシ自身も、彼らにそうした。”
    “たぶんまた誰かが自分を見つけて、自分も誰かを見つける。すべては漂っている。”
    他人との関係に、自分がどう関わっていけば良いのか悩み続けてきたヒロシの答えがこの文章にある。
    それは、高校時代のみならず、これからの人生の中で永遠に続いていくものであり、ヒロシはこの中学生活の中で初めてそれに出会って学んだのだ。

    この作品は、文章に一点の曇りもなく、大阪弁ならではの味わいもあり、余分な表現も一切ない。
    久々に非の打ちどころのない完璧な小説を読んだ気がする。

    津村記久子さん、初めて読んだが只者ではない。
    すでに芥川賞を受賞しているようだが、自らも“自信作”と呼ぶこの作品は何かの賞を取るのではないか?
    他の作品も是非読まねばと思った。
    また、好きな作家が増えた。
    是非是非皆さんもお読みください。
    心の奥に響く、優しくて素晴らしい作品です。

  • すごくよかった。もうずっと津村さんははずれがない!

    はみだし者的なさえない中三男子の話なのだけど、いい中年のわたしが、あああのころはそういうこともあった、とか思い出すのではなく、今まさに共感する、わかるわかるーと思ってしまい、われながら精神年齢がおかしいのではないかと思うくらい。
    他人に自分がどう思われているか、こう言ったらこう思われるんじゃないか、こうしたほうがいいんじゃないか、などなどの自意識と、あと、他人のことをものすごく観察してしまって、こう思ってるんじゃないか、こういう人なんじゃないかとか思って、でも実際にはなにも言わないところとか。それで緊張して疲れるとことか。今現在、ものすごくわかる、と。
    津村さんはそういう自意識とか観察をつぶさに書くのがいつもすごくうまい。ほんのひとことにも、こういう意味かもしれない、こういう気持ちかもしれない、っていうのを書く。わかる、と思うのと同時に、他人もみな同じようにそんなに他人を観察しているのかもと思うと少しこわくなったりもするくらい。

    関西が舞台ってこともあるのかな、不器用なようでもみんな会話が達者と思った。わたしが中学生のころは先生とあんなふうににしゃべれなかった気が。会話や、口に出さないツッコミとかがさすがにものすごくおもしろい。
    つながりが強くて信頼し合って、とかいかにも「仲間」って感じではなくて、「一応」つるむ、みたいなレベルでも、友達とのやりとりとか、だれかと友達になっていく過程とかが楽しくて。「ミュージック・ブレス・ユー」に似てるかも。
    受験の話もけっこう書かれていたし。津村さん、受験に思い入れがあるのかしら。

    中学生ならではの不器用さはあっても、みんなそれぞれのやり方で誠実に人と対していくところが、こっちはいい中年なのに、見習わなくては、と思ったり。なんだかすごく励まされる気がした。

    津村さんの作品だと、描かれる人たちが子どもだろうと大人だろうと同じなのかも、と。どっちの立場でもそれぞれに不自由さや理不尽さはあり、なんというか手持ちのカードでやっていくしかない、ってのは同じで。

    ただまあちょっと、やっぱり中学生だったら「未来」があっていいなあーとかも思った。
    漂っていけば、また自分がだれかを見つける、だれかが自分を見つける、というふうに思えるのは若いからかなあとかも思ったり。

  • *クラス替えは、新しい人間関係の始まり。絵の好きな中学3年生のヒロシは、背が高くいつも一人でいる矢澤、ソフトボール部の野末と大土居の女子2人組、決して顔を上げないが抜群に絵のうまい増田らと、少しずつ仲良くなっていく。母親に反発し、学校と塾を往復する毎日にうんざりしながら、将来の夢もおぼろげなままに迫りくる受験。そして、ある時ついに事件が…。大阪を舞台に、人生の入り口に立った少年少女のたゆたい、揺れる心を、繊細な筆致で描いた青春群像小説*

    「あの頃」の何ともいえない不安、もどかしさ、気恥ずかしさ、鬱屈さ、理不尽さ・・・などなど、まさに青春時代の影の部分を浮き彫りにした秀作。深刻かつ残酷なところもあるのに、淡々と書かれているところが妙にリアル。懐かしさだけではない余韻もいい。特に支障はないものの、やはりウエストウイングを読んでからがお勧め。情の入り方が違います。

  • 40歳の私が、中学3年生の青春群像小説にどっぷりのめり込んで読みふけてしまった。津村さんの描く小説は、働く女性が主人公だろうと中学生だろうと地に足ついて浮ついてないところがホントにいい。描写が丁寧だから地味な人物や華のない舞台にも愛着を持ってしまう。今回は舞台が大阪大正区、めがね橋界隈。よく通ったことがあるので殊更感慨深い。
    淡々と生きている人物を熱く読ませる作品。ひとりひとりの関係が点から線、線から面へ広がっていく感じがとても良かった。

  • とてもていねいに読みたくなる本だった。戻りたくないなと総括してしまっている中学時代だけど、私のもそんな悪くなかったかなと思えたり。朝井リョウよりこっちだと思うのだけど、甘いのかな。リアルタイムで読んだらどう思うか興味あり。
    高校編に期待。

  • 大人が書き大人が読む中学生の話として、なかなか良かった。
    入試担当の国語の先生が問題文として取り上げたくなるだろうなという感じ。

    ヤザワの台詞だけ「」で表されていないことの効果とか考えてしまった。

    大阪の地理が全くわからないのだけれど、地図ですぐに見つけられた。
    この辺に住んでいたら、思わずヒロシを探してしまいそうだ。

  • 中高一貫私立女子校に通って男兄弟もいない私にとって、男子中学生の生態は最もわからないもののひとつなので、リアルなのかどうかは判断できない。共学の公立中学校の雰囲気もいまいちわからないから、比較的地味というポジションの人物が同じクラスの異性に話しかけることが、どれくらい勇気のいることなのかも、ぼんやりとしか想像できない。
    その延長で、友達が標的にされている嫌がらせや友達がさらされている家庭の問題に対して、こんなに正義感を持って行動を起こせるかな、という点も、なんかファンタジーに思える(それは単に私の性格の問題な気もするけど)。
    でも別になんでもかんでもリアルであればいいと思っているわけではないし、いくつかの、主人公が勇気を持って立ち向かっていくシーンは、とても気持ちよく好ましかったです。
    本作に限らず津村さんの小説は、こういう主人公(やサブキャラ)みたいな人がいると思うと、世の中捨てたもんじゃないなと思えるところが好きです。華はないけど押さえるべきところは押さえているけど抜けてるところもあるけどかわいい人?

    海と川に囲まれた大阪市大正区が舞台ですが、主人公の住んでいるところから川を越える手段として、「渡し船」か「メガネ橋(下を通る船のために高さを出す必要上、橋の端をループ状に昇る/降りる必要がある)」か「ちょっと遠い普通の橋」という3つの選択肢しかないらしい。この説明のせいで大正区がすごくメルヘンチックな世界であるかのようにちょっと思えた。

  • 中学3年生の男の子の1年間。
    教室、部活、塾、家…いろんな場所で自分の場所を探したり、友だちってなんだろうと考えたり、ゆらぐ時期だよな…と思いながら読んだ。大抵の子は初めての受験生でもあるだろうし…
    しんどい時期だろうなぁと思った。
    そんな時期に起きたのは、母の恋愛、友達が被害に遭ういじめ、友達の家庭で起きている児童虐待、両親の離婚後長く会っていなかった父の死。
    もがきながら向き合っていく姿にリアリティを感じ、大人への一歩を踏み出し始めた中学3年生の成長に心がじんわり温かくなった。

  • 良かった、、、うん。良かった。津村さんの小説は、うむ。良い。良いです。改めてそのことを、再認識できました。

    自分、1978年生まれなんですよ。今年で43歳になりまして。で、津村さんも、1978年生まれなんですよね。完璧同世代!っていうのも、なんだかこう、凄いなあ!って思います。津村さんが見てきた日本の世の中と、俺が見てきた日本の世の中と、世代的には完全に一致してるんだなあ。で、津村さんは、こんなドえらい作品を、生み出してるんだなあ、、、尊敬。ただただ尊敬、ですね。

    で、この小説は、2012年5月号~2013年1月号の別冊文芸春秋にて連載されていたんですね。津村さん、34歳くらいの時か。これが、当時の、津村さんのリアルだったのか。

    で、物語の中のリアルな時間帯はというと、ソフトボール部の野末が、落合博満さんの著書「采配」で読書感想文を書こうとしている、という場面があったのです。落合さんの「采配」の刊行は、2011年の11月。うーむ。ほぼほぼ、あの当時の、リアルな中学三年生を題材にした、という具合を感じますね。

    しっかし、大土居よ、、、中学三年で、ニルヴァーナ、シガー・ロス、エイミー・マン、エイジアン・ダブ・ファウンデーションを聴くのか、、、更にニルヴァーナの(カート・コバーンの)ヒストリー本「病んだ魂」を読むのか、、、中三やで?ロックミュージック的に早熟すぎへんか?とか思った。いいじゃん。すげえ良いじゃん。

    ちなみに自分が、34歳くらいの時に、こんなにも克明に、自分の中三時代を思い返して、こんな感じの青春小説を書くことできるか?というと、まったく完全にその自信はありません。もう、中学生の記憶は、43歳の今でもおぼろげだけど、34歳の時もだいぶおぼろげだったのだろうと思われます。色々と、もう、はるか昔の記憶の彼方だよなあ、、、

    でも、この作品。この中学三年生を主人公にした作品には、間違いなく心を打たれました。その、打たれ方は、43歳になった自分が、過去の中学三年生だった自分を懐かしんで心打たれたのかな?という思いが、かなり、強い。即ち、自分は、郷愁小説として、この作品を、読みました。そして、ガツンと来ました。

    翻って、どうなんだろう?この作品が刊行された2014年当時、そして現在の2021年現在。この作品は、それぞれの年代の、まさに中学三年生が手に取ったとして、それはもうまさに「これぞ中三のリアル!マジ刺さる!」という作品なのだろうか?この、中三を主人公にした作品は、実際のその時代時代のリアルタイムの中三には、「刺さる」作品なんだろうか?という思いが、ちょっと、ある。あります。

    どっちかというと、その瞬間瞬間のリアルの中学三年生の方々には、この作品は、刺さらない気がする。中学三年生をとうに通り過ぎて年齢を重ねてしまった(それは、『大人になった』という意味合いではない)方々にこそ、真に「刺さる」。それが、この作品だと、なんだか勝手に思いました。ええ、思いました。

    津村さんが、リアルな中学三年生を読者層に想定してこの作品を書いたのか?それとも、もっと年齢が上の人々を読者層に想定してこの作品を書いたのか?そこらへん、ちょっと、聞いてみたいですね。というか、津村さんとしては、「読んで刺されば年代なんか関係ないっしょ」ってところ、だとは思うのですけれどね。

    それにしても間中。それにしても大土居の義父と大土居の実の母。見事に邪悪だった。例えば魔王、とかではない。例えばラスボス、とかではない。それでも、見事に、この世に遍く存在するであろう邪悪、という感じ、か。世の中には、こういう邪悪は、存在するんだよなあ。存在するんだよなあ~。津村さんは、その描き方が、、、実に上手いな、とね。思いましたね。

    大土居の義父に対して、かえでちゃんが言った、あの言葉。「お母さん、わたしはこの人といたくない」のあの言葉。あれは、この小説のなかの人物のみならず、読者も救ったのだと思う。あの言葉に至るまでの見事な流れを、津村さんが書いてくれたお陰で。小説世界も救うし、読者も救うし、って、凄くこうね、なんともね、素敵なことですよね。

    で、実際には、この現実世界では、ああした邪悪は、ちゃんとのさばっても、いるのだろう。間違いなく。間中は、大土居の義父は、ああした邪悪は、上手い事やっていたりも、するのだろう。大土居の母のような、無意識の邪悪、ともいうべき存在は、相変わらず無意識に邪悪なのだろう。その「どうしようもなさ」すらも、なんだか、津村さんは、突きつけてきている、気がする。

    「それ」にホンマに出会ってしまったときに、現実世界の俺は、いったい、どのような対応をするのか?という事すら、突きつけられている気がする。そんな気がしてならんのです。津村さん、やっぱ、凄いなあ、とね。思うんですよ。

    ま、とにかく、とにかくね。良い小説でした。うむ。良い小説でした。津村さん、ありがとうございます。

  • Everything flows.
    この世に永遠に変わらないものなんてない。
    だけど、まだ親の庇護のもとで狭い世界で生きている中学生たちには、抗いようのないと自分たちが思っている現実や環境でさえ変えていけるものだということを、まだ知らない。大人の都合で振り回される無力感と憤りにさいなまれながらも、この子たちは自分たちの力で困難に向き合い、受験をへて、それぞれの道へ進んでいく。

    子どもってたくましいなぁ。
    そして、私たち大人は、勝手な理由を押し付けて「子どもなんだから従え」なんて言っちゃ絶対だめだなぁ。
    努力している子に「がんばれ」なんて無責任に言っちゃだめだなぁ。

  • 中3の新学期、クラス発表の掲示の前のヒロシにボソッと声をかけたのは、背の高いヤザワだった。
    ヒロシとその周りの男女数人の1年間の話。

    どこにでもいる中3の男女の日常が、ゆるく淡々とと描かれています。
    だだそこには、いじめや幼児虐待など、社会問題も潜んでいて、実は気が抜けない。
    それぞれの問題は無事解決とは行かないまでも、妥協を許す形では収束します。
    ある意味そこがリアルだなと思わされました。

    1年が経ち、目の前の女子の目線が変わったことに気づいたヒロシ。
    あ~成長してる、と、切ないような、キュンとする気持ちを味わいました。

    ヒロシは、ウエストウイングに登場していた小学生だったのですね。
    すっかり忘れているので、また読まなくちゃ。

    そして、数年たったヒロシにも、是非会いたいと思います。
    続編に期待したいです。

  • 中学三年生のヒロシは、おしゃべりな母親のもとでそれなりにたくましく何事もなく育ってきた。同じクラスには、無口で背の高い矢澤、ソフトボール部の野末と大土居、絵の巧い増田など個性の強いクラスメイトがいて、だんだんと親交を深めていく。
    学校という閉鎖された空間での日々は「流れるように」結果的には過ぎていくけれど、その日その日にはかなりの事件も起こっていく。いじめや家庭問題、再婚問題…そういった物事を乗り越えたりやり過ごしたりして、少しずつヒロシたちは成長していっている、のかもしれない。あくまで身の丈にあわせての行動しかできないけれど、だからこそのひたむきさややるせなさが、じわじわと胸にしみわたっていく。
    力の無い子供たち。けれど、絆をはぐくみ前を向いて進んでいく子供たちの姿が、とてもきらきらしているようにも見えました。それは大人から見ると、とてもかけがえのない、手の届くなったもののように感じたのです。

  • まず、登場人物7人のキャラクターがそれぞれ個性的で魅力的で、自分が主人公ヒロシの立場だったら、ヒロシと同じように彼らに興味を持ち友達になっていたかもしれない。個人的には、絵のうまい増田が好きだな。結構長く同じクラスにいるのに、下ばかり向いているせいで、顔がよくわからないというところが笑える。
    大土居の会話にカート・コバーンが出てくるが、今の中学生でカート・コバーンって知ってるのかな。
    文化祭あたりを契機に、同級生の女生徒3人(野末、大土居、増田)への気持ちが嫌いから好きへと変化していくヒロシのやや頼りないが正義感が強い性格が面白い。ただ、結局想像していたとおり、最後はやや優等生的作家の締めくくりかたで(無難な、悪く言えば面白味のない、終わりかた)、みんなと別れ別れになってしまったのが残念。心が高揚するような、思わず拍手したくなるような終わりかたでも良かったのではないか。ヤザワかフジワラが同じ高校に合格して、更に友情を深めていくような、あるいは女生徒4人のうちの一人がヒロシと同じ高校に合格していて、あるいはフルノなら予備校で出会って、増田となら絵の展覧会か地元の図書館で出会って、恋愛関係になることを予感させるような・・・・・。
    または、高校生か大学生になった7人がまた何かのきっかけで再会するような設定の続編に期待したい。

  • 私の長男がまさに今、中学3年で受験を控えていることを差し引いても、本当に引き込まれる佳作でした。
    子どもたちを信じ、もう十分に大人の感覚を持っていることを認めないといけないですね。

    中3生の心の中と、その成長・その日常をさりげなく、しかも濃密に描いていて一気読みでした。
    シチュエーションは重たく、だけど私たちの周りにもあるかもしれないというまさに現代そのもので等身大の「今」が描かれています。

  • 津村さん、突き抜けたなあ。
    これはなんだかとても沁みた。

    津村さんの小説を読んでるときって、いつも作者の人柄とか趣味みたいなのが感じられてそこが好きだったんだけど、たとえばそれってその作者と自分が友達になれそう、みたいな感覚の好き、で。
    小説の中の世界と自分との距離や価値観が近い感じがするので、ハラハラドキドキの非日常ではなくて、そこの生活にどっぷり入って一緒に日常を体験している感じが妙に好きだったのですが。

    それってでも、わりと読者を選ぶとこではあって。
    自分自身はほぼ全部読んでるくらい好きなんだけど、「面白い?」って聞かれたら薦める人を選ぶというか。

    でも、今回のこれは、ドラマの作り方とストーリーのまとめ方がすごく小説として完成されてるので、このままちょっとうまいこと映像化してしまってもいけるんじゃないかと思ったくらい。津村さんの本ではじめてそんな感じがした。

    もちろん万人受けすることが小説の価値ではないし、映画化する作品がすごいというわけでもないんですが、小説としての起承転結がくっきりしてて、キャラクターの個性もブレてなくて、最後にはストレートにがつんと伝わってくるものがあるという点で。

    おこがましいこと言っちゃえば、今までのいいとこを失わないまま、一皮むけた感じがしましたです。

    んで、最後のほうまで、けっこう本気でええ感じの青春、しかもさわやかなんだよな。
    キラキラの海風のさわやかさではなくて、大阪の海から吹いてくるなまあったかいような風なんだけど。
    倉庫が立ち並んで、何もないところにぽつんとイケアあって、という景色を知ってるからまた余計に共感値(そんな言葉あるのかしら)が上がってるのかもしれないんだけど。

    それにしても「ウエスト・ウイング」のあの男の子がこんな感じになったとは。
    あの子、もっとすごい賢い感じの少年に育つと思ったら、意外にふつうな中学生になってしまってて、最初は「あれ?」って感じだったんだけど。
    でもちゃんと成長を見られてよかった。

    エブリシング・フロウズってまたこの題名がいいよね。

  •  当たり前の日常が大切だと、この前の本のレビューでにて書いた。
     そして、これを読むと「何にも無くてもいいじゃ無い」「だめでもいいじゃない」と思える。とてつもないレベルの日常礼賛である。

     出てくる人々は「こいつダメだな」と思うところのある人たちばかり。
     良くある物語のように、志があったり、立派だったり凄かったりしない。
     けれども、だからこそ面白い。
     ただ、当たり前の人々が繰り広げる日常の豊かさ、面白さなんてものを、ぬくぬくとした現実を過ごしつつ感じられるのは貴重だ。
     あー。読んでよかった。面白かった。

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著者プロフィール

1978年大阪市生まれ。2005年「マンイーター」(のちに『君は永遠にそいつらより若い』に改題)で第21回太宰治賞。
2009年「ポトスライムの舟」で第140回芥川賞、2016年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、2023年『水車小屋のネネ』で谷崎潤一郎賞受賞、2024年「本屋大賞」第2位となった。
他著作に『ミュージック・ブレス・ユー!!』『ワーカーズ・ダイジェスト』『サキの忘れ物』『つまらない住宅地のすべての家』『現代生活独習ノート』『やりなおし世界文学』『ディス・イズ・ザ・デイ』などがある。

津村記久子の作品

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