私を通りすぎた政治家たち

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163901138

作品紹介・あらすじ

今回、「最後の著書」と銘打って刊行した『私を通りすぎた政治家たち』は、いわゆる「佐々メモ」に基づく政治家閻魔帳ともいうべき本です。政治家でもあった佐々さんの祖父(友房)や父(弘雄)をはじめ、幼少の頃から遭遇し、学生時代に教えを請い、官僚になってから職務上接触したさまざまな内外の政治家を取り上げています。よくいわれる話ですが、政治家には、「政治家」(ステーツマン)と「政治屋」(ポリティシャン)の二種類があります。権力に付随する責任を自覚し、ノーブレス・オブリージュ(高貴なる者の義務)を心得ている人は「政治家」。権力に付随する利益や享楽を優先して追求するのは「政治屋」と、佐々さんは定義しています。その観点から戦後日本の政治史で、ベスト5の「政治家」といえるのは、、①吉田茂、②岸信介、③佐藤栄作、④中曾根康弘、⑤石原慎太郎。一方、国益より私益を優先したワースト5の「政治屋」といえば、①三木武夫、②小沢一郎、③田中角栄、④加藤紘一、⑤河野洋平。「要は、佐々さんはリベラルが嫌いなだけだろう」と感じる向きもあるかもしれません。しかし、そうではない。自民党内のリベラルな人は、いささか無節操で、新聞世論に迎合するだけのタイプの政治家が多かった。それに比べて、同じリベラルでも野党にいる人はちょっと違うタイプの政治家もいました。例えば、本書には「憎めない政治家たち」という章がありますが、そこに登場するのは、不破哲三、上田耕一郎、大出俊といった、反自衛隊反警察の共産党、社会党左派の論客たちです。国会答弁でも、何度もやりあった「天敵の仲」ですが、こういう人たちは思想信条が首尾一貫しており、論敵ではあったけれども、どこかで心が通じ合うものを感じていたとのこと。佐々節が冴えるユニークな政治家論です。

感想・レビュー・書評

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  •  なかなか政治家というのは評価が難しい人たちだと思う。ある本では礼賛され、またある本では貶され、そのどちらにも支持者がいる。この本が他の政治家評と異なるのは、筆者が直に見た人間的なところにも踏み込んでいる点にある。これは危機管理の専門家として長いあいだ外から政治家を間近に見続けた著者ならではの面白さがある。パフォーマンスを抜きにした、本当の人となりというのは一般人にはなかなか見えないものであり、読者もこれまで何となく想像してきたそのイメージを覆されるかもしれない。客観性と引き換えに小説のようであり、誰におもねることもなく切り捨ててゆくところがなんとも痛快である。しかし著者がこうも鋭く政治家を切り捨てるのは、政治家たりえない人間が政治をすることは、国益を損なうからだということを忘れてはいけない。

     著者は政治屋(ポリティシャン)と政治家(ステーツマン)を区別する。政治のために生きる人間と、国益・国民のために生きる人間がいる。国益を損なう政治家の多くは、自らの利益やプライドといった私益を優先する。肩書のために平気で魂を売る。我欲に走るばかりで清廉を守り思想を貫く政治家が居ないという著者が、新しい世代の政治家として小泉進次郎や橋下徹について言及しているのも、今となっては興味深い。今までもこれからも、政治には政治家と政治屋が居続けるのだろうが、それでも私たちは政治家が政治家たりうる人間なのかを見極めなければならない。

  • 官僚の目から見た政治家たちの姿が垣間見えますし、官僚は官僚としての国の未来への考え方がある、ということがわかる一冊です。
    志のある官僚が、付いてくるような政治家はどういうものか、ということがわかります。著者は、この本を読む限り一徹な方のようにお見受けします。官僚としての道を突き進んだことはこの人にとっては幸せなことだと思いました。

  • ●ポリティシャンは政治屋 ステーツマンは政治家、権力に付随する責任を自覚している人。
    ●国益を損なう政治家たち。小沢、角栄、三木、菅直人、加藤、河野洋平、村山。
    ●湾岸戦争の海部さん、何も戦闘要員を送らなくてもよかった。戦闘要員、輸送機でもよかった。それだけしておけば貢献度Aだった。
    ●三木総理 「人名は地球より重い」と言う台詞を使って、ダッカのハイジャック事件、クアラルンプール米国大使館占拠事件の時に獄中犯を釈放した。今の人質になってる人数よりも、犯人たちを自由にさせておいた場合に、将来脅かされるであろう何万と言う人との命を比較すべき。
    ●角栄は官僚を金で操った。ノブレスオブリージュが無い。
    ●河野洋平は言わずもがな。平成5年、宮沢内閣の官房長官として、軍の関与を認め「お詫びと反省」の談話を発表した。詳細に調査しても日本軍が慰安婦の強制連行を示す証拠は全く見つからなかったにもかかわらず、である。いちど認めれば、それ以上文句を言わないだろうとでも思ったのだろうが、長年にわたり日本の名誉と好景気を損なっている。さらに平成6年には村山総理が。

  • 危機管理のエキスパート・佐々淳行氏が亡くなったのは2018年。
    本書は亡くなる4年前の発行だ。これまでも佐々氏の作品はいく
    つか読んだが、本書からは「佐々氏も老いたんだな」との印象
    が強かった。

    冒頭の佐々家3代の系譜は興味深いのだが、それ以降の戦後日本の
    政治家についての論評は、論評に名を借りた自分語りでしかない。

    佐々氏は言う、政治家はノブレス・オブリージュでなければならない。
    それを基本にして政治家を論評しているのだが、岸信介にはじまって
    小泉進次郎まで、そんな政治家いるかぁ?という感じだ。

    日本でノブレス・オブリージュを体現されているのは天皇皇后両陛下
    に代表される皇室の方々だけではないだろうか。多かれ少なかれ、
    政治家は私利私欲で動いているとしか思えないし、責任など感じて
    いる人はごく稀なのではなか。

    福島第一原子力発電所事故の際の民主党政権の対応はボロクソに書いて
    いるのに、JCO臨界事故の際、事故対応より組閣を優先した小渕恵三氏
    の項ではまったく触れずに持ち上げまくり。

    毎度おなじみ危機管理のお話でも同様。危機管理のエキスパートとして
    海外にも「人を殺さない警備」を助言しているのだが、樺美智子さんの
    死に関してはなかったことか?

    佐々氏も都合の悪いことは「なかったこと」にしたいのだな。やっぱり
    官僚は官僚体質を抜けきれないのか。

    あさま山荘事件や安田講堂事件、よど号ハイジャックなどに関する著作
    では参考になることも多かったが、本書は駄本の類かな。

    ただ、ひとつだけ収穫がある。2004年に邦人3人がイラクで人質にされ
    た時、時の小泉政権に「人質3人の行動は自己責任を問うことを原則と
    する」と助言していたとの話。

    「時の政権に対して、自分はこれだけの影響力があった」との自慢話と
    して記したのかもしれないが、これが近年日本に蔓延している自己責任
    論の発生源だったんだな。

    死者に鞭打つことはしたくはないが、この助言だけで私の中の佐々氏へ
    の評価は大暴落なのである。

  • 政治

  • 佐々氏には申し訳ないですが、全く期待しないで読み始めましたが、読み応えありました。

  • 警察官僚で後藤田正晴氏の薫陶をうけてきた著者だけあって、政治に一家言あることは分かるが、どうも自民党寄りな立ち位置なのが気になる。加藤氏など、自民党議員に対してもバッサバッサと切り捨てる論調は小気味いいが、それでも立ち位置は自民党寄り。後藤田氏のように軍隊を反対する立場を見てきた著者は、昨今の安倍政権が憲法改正してでも自衛隊を軍事派遣しようとしている姿勢を見て、それでも安倍晋三氏を支持するのか、そこを知りたいと思った。

  • 佐々淳行氏は警察官僚として入庁され、退官後は安全保障のスペシャリストとして活躍された方です。もう御歳84歳になられるので、枯れた宰相論が読めると思っていましたが、まだまだお元気ですね。石原慎太郎氏の横田基地の空域の削減の話、扇千景さんの女傑ぶりが印象的でした。

  • いろんな政治家に対する人物評は著者との関わりで触れられており、それが真実かは分からないが、知らなかった側面について多々書かれており、参考になった。

  •  先日、佐々 淳行 氏 による「私を通りすぎた政治家たち」を読み終えました。
     おそらく私が初めて耳にするような事実や想像とは大きく異なる評価が書かれているのだろうと、期待して手に取った本です。
     ご存知の通り著者の佐々淳行氏は警察官僚出身の評論家です。
     本書は佐々氏が今に至るキャリアの中で実際に接した数々の政治家の中から、これはという方々をそのエピソードとともに、佐々氏なりの評価を紹介しています。

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著者プロフィール

1930年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、国家地方警察本部(現警察庁)に入庁。「東大安田講堂事件」「連合赤軍あさま山荘事件」等に警備幕僚長として危機管理に携わる。86年より初代内閣安全保障室長をつとめ、89年昭和天皇大喪の礼警備を最後に退官。2000年、第四八回菊池寛賞を受賞。2001年、勲二等旭日重光章受章。著書に『東大落城』(文藝春秋読者賞受賞)等がある

「2016年 『重要事件で振り返る戦後日本史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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