フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163901411

作品紹介・あらすじ

これは凄い本。



2008年のリーマンショックで、ウォールストリートは規制が強化され健全になった、と信じられてきたが、その規制と民主化によって逆に、市場は、本当のイカサマ市場になってしまった、ということを白日の元にさらした本だ。





証券市場の民主化によってニューヨーク証券取引所とNasdaq以外の証券取引所が乱立するようになった2009年ぐらいから、ディーラーたちは不思議な現象に悩まされる。コンピュータスクリーンが映し出す各証券市場の売値と買値で取引しようとすると、ふっと売り物や買い物が消えてしまうのだ。その値が消えて、買う場合だったらば、必ずそれより高い値で、売る場合だったらばそれより低い値で取引が成立してしまう。



ウォール・ストリートの二軍投資銀行に務めるブラッド・カツヤマは、ドンキホーテのように、単身調査に乗り出す。



するとそこには、私たちの注文を10億分の1秒の差で先回りしていく超高速取引業者「フラッシュ・ボーイズ」の姿があったのだ。



取引所も、SECも大手投資銀行もすべてぐる。簒奪されるのは、善良な一般投資家。



日本での「フラッシュ・ボーイズ」の跋扈を解剖したFACTA発行人阿部重夫の特別原稿も収録。

感想・レビュー・書評

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  • ロイヤルカナダ銀行に勤める日系カナダ人ブラッド•カツヤマが、会社を辞めて公正な新しい取引所IEX(Investors Exchange)を設立し、High Frequency Traderに反逆する物語り。

    ルールに則って、時にはルールを自分に都合が良いように変更させて、自分ら以外の全ての市場参加者をカモにする、卑怯でかつ超絶優秀なウォール街の人たち。

    そんなことに偉大な才能を使うのは社会の損失なので、そういう出し抜き行為を無効化することに全力を尽くすブラッドたち。終盤にこの動きに同調するマネージャーがゴールドマンサックスのなかから登場するところが最大の救いだった。


    P4 ジェレミー•フロマーCEOの発言
    「自分がファーストクラスに乗っているだけではだめだ。友人たちがエコノミーに乗っていると知っていることが大事なんだ」
    (感心するくらいのくそ野郎発言だ。)

  • ウォール街で今何が起きているのか。フェアであるはずの証券取引所、投資家に利益をもたらすように動くはずの投資銀行やブローカーが実際に行っている事は何か。
    ニューヨークの証券取引所の規模が拡大し、2008年にはその数が13に増え、証券取引所は電子取引を促進した。取引が人の手からコンピュータに移った時、何が起こったのか。
    カナダロイヤル銀行ニューヨーク支店のトレーダー、日系カナダ人のブラッド・カツヤマが目にしたのは、目の前に表示されている株を表示価格で買おうとすると、取引成立直前に瞬時に売り株が無くなったり株価が変動して高値で買わされて損をしたりするという不思議な動きだった。これこそが「超高速取引業者=フラッシュ・ボーイズ」の仕業だ。超高速取引業者は、いくつもある証券取引所の情報を集め、取引の先回りをして莫大な利益を得ているのだ。そして彼らの犠牲になって得られるはずの利益を失っているのが、何も知らない一般投資家だ。それはナノ秒という人間の感覚では全くわからない瞬時の出来事で、しかも、テクノロジーの進化に追いつかない現行法の下では違法行為にはならない。ナノ秒単位のスピードを競うため、サーバーセンターでの場所取り合戦や、取引所からサーバーセンターへまっすぐ光ファイバーをひくために何千万ドルもの投資がなされるという異常な状況だ。
    ブラッドはこの事実を突き止めた時、「超高速取引で銀行に大きな利益をあげ、自身の年収アップを図る」ではなく、「証券取引を正常な状態に戻し、証券取引の公平性を取り戻す」戦いに出ることに決めた。年収200万ドルの仕事を捨てて。
    本書は、ブラッドが証券取引の異変に気付いてから、公平な証券取引所を作ることを決意し、各方面から志を同じくする一流のプロフェッショナルを集め、超高速取引業者に対向し公平な取引を可能にする証券取引所を立ち上げるまでの戦いの記録だ。ノンフィクションだとわかっていても、その進展にハラハラ・ドキドキさせられ、まるで優れた小説を読んでいるようだ。
    読み終えてから実際にブラッドが立ち上げた証券取引所「IEX」のウェブサイトを開き、メンバーの紹介欄に本に出てきた人物の名前を見つけ、やはりノンフィクションなんだと妙に感動したりメンバーの写真を検索して、ブラッドってこんなに天才で実行力があり優れた人物なのに、その辺に居る普通の日本人の顔をしているな、と変な感心をしたり、色々な楽しみ方もできるのがちょっと面白い。
    ところで、日本の証券取引所はどうなっているのだろうか?本書の最後に解説が加えられているが、それによると東京証券取引所も大阪証券取引所も、既にニューヨークと似た様相を示しだしているらしい。これから社会の至る所で様々なテクノロジーが進化していくことだろう。しかしテクノロジーの進化は社会構造を複雑にし、時としてそれに精通している人達とそれ以外の一般人に恐ろしいほどの不公平をもたらすかもしれない。本書は、それを目の前に突きつけた1冊だ。見えない所で何が起きているのか、そんな事に興味をかき立てられる。

  • 100ドルの売り注文があったときに、100.5ドルの買い注文が入ったとする。
    普通は100ドルで約定しておしまい。
    だけど、ここに超高速取引業者が入るとどうなるか。
    100.5ドルの注文が入った後、瞬時に100ドルで買った後、100.5ドルで売るのだ。
    そうすればリスクなしに0.5ドル儲ける。
    ある超高速取引業者は5年間で1度しか負けてないらしい。しかもその1度は注文ミス笑
    超高速取引のためには取引所から物理的距離が近いことがすごく重要で、取引所は近くの場所を高値で超高速取引業者に売りつけている。
    そういうサービスをコロケーションと呼ぶ。
    しかも超高速取引業者の取引は全部プログラムがやってくれてるってさ。なんてことだ。

  • アメリカはウォール街。欲望渦巻く株式市場。21世紀現在は、コンピューターが支配する魑魅魍魎なブラックボックス。
    コンピューター回線の速度、万分の1秒、億分の1秒、というミクロな時間のズレを利用して、一般投資家を食い物にする「フラッシュ・ボーイズ」という悪党ども。
    その「フラッシュ・ボーイズ」を相手に、一介の日系カナダ人の銀行員が、徒手空拳で戦いを挑む。
    ノンフィクションなんです。実話です。

    2014年にアメリカで出版された本です。つい、最近の本ですね。
    マイケル・ルイスさんは、友人に勧められて「マネー・ボール」を読んで大感心。

    「フラッシュ・ボーイズも面白いですよ。株式市場の話です」
    「株に詳しいの?」
    「いえ、まったく知りません。でも、面白かったです」

    という友人のオススメで。

    自慢じゃありませんが、株式のことはテンで判りません。正直、興味もありません。人生で一度も買ったことがありません。ぜんぜん、何にも知りません。
    高速インターネットとか光回線についても、同じくです。
    それでも、矢鱈と面白かったです。

    本文中でも触れられていますが、<ミステリー>と<七人の侍>なんです。

    どういう仕掛けで「フラッシュ・ボーイズ」たちがずるをしているかというと、実を言うと読み終えても詳しくはわかりません(笑)。
    なんとなく分かったのは、つまり、「後出しじゃんけん」なんです。
    本文で触れられていますが、「絶対負けないジャンケンロボット」というのが存在するそうなんです。
    人間相手にジャンケンをして、ゼッタイに勝つ。
    どうしてかというと、当然からくりがあります。
    そのロボットのコンピューターは、相手が出したのが、グーチョキパーどれか、視認してから、それに勝つように出してるんです。
    なんだけど、その認知判断動作が、人間の感覚では早すぎて、後出しと認識できないんだそうです。

    まあつまり、そういうことなんです。

    まず、そういうことでずるをしている奴らがいるらしい、という気づき。
    カナダの二流の銀行の日系人、ブラッド・カツヤマさんが気づきます。
    そして、ほとんど個人的な捜査を続けていくと。
    なんと、その「フラッシュボーイズ」たちは、株式市場そのもの、あるいは投資銀行と実質上結託してるんですね。
    だから、年金などを投資しているいたいけな投資家たちは、ゼッタイに勝てない。
    それも、複雑怪奇な仕組みの上に、キワキワながら合法の砂上に立っている楼閣なわけです。

    ただ、それを誰も知らない。
    知っている人は言わない。

    さあ、ここからブラッド・カツヤマさん。

    彼らと結託すれば良いわけです。
    勝ち組に入れば済むわけです。

    けれども。釈然としない。

    独り、真相究明と糾弾、そして広報と対策に立ち上がる訳です。

    この蟷螂の斧のような戦いに、徐々に仲間が集まってくる。
    ここのところの見せ方が実に上手い。書き方、読ませ方ですね。
    もう、完全に「水滸伝」や「七人の侍」の世界なんです。
    奇妙奇天烈、個性横溢、変人奇人な金融マンや証券マンやSEや理系の天才などが集まってくる訳です。

    そして、とうとうブラッドさんは「新しい株式市場を作る」という最終勝負に出る訳です。
    大手の圧倒的な迫害や妨害に晒されながら、「フェアな株式市場」を立ち上げる。
    誰もが、あっというまに潰れると予想していた…。
    もう、この辺のワクワク感は、「プロジェクトX」なんです。風の中のすーばるー。

    最後は、ハッピーエンド。

    もちろん、「フラッシュ・ボーイズ」的なずるい手段や、それを覆い隠す不要に複雑な仕組みやら、と言うこと自体は解決しません。
    それは日本でも、企業でも、行政でも、僕らが安心している「世の中の仕組み」の隙間にゴキブリのように入り込んでいるんだと思います。
    それを黙認したり承諾したりすることで、利益を得ている人も大勢いるんだと思います。

    そんな現実の厳しい寒風も感じさせながら、エンターテイメントとしての読み物になっている。
    「マネー・ボール」もそうですけど、マイケル・ルイスさん、すごい。
    日本語の作家さんではありませんが、同時代にこういう人がいるっていうのは、わくわくしますね。

  • ☆2(付箋6枚/P346→割合1.73%)

    超高速取引、というコンセプトを聞いて思い浮かべたのは、裁定取引で価格差を検知し、それをやり取りするのに他の業者と競う為速度を競う、というイメージだった(意味分かります??)。

    実際はそんな優しい物じゃない。
    「証券業者は一番いい条件で顧客の為に取引しなければならない」という法律を逆手に取って、一般の証券取引所と逆に取引に手数料を“払う”。そこで少額のオファーを多数の株に関して出しておいて、そこに売買取引が来た時点で他の証券取引所に出ている同銘柄の株を買い占めてしまうのだ。最初取引しようとしていた業者を後から追いぬくため(&他の同業者に勝つため)に超高速が必要になる。
    これって毎回インサイダーがいるようなものですよね。注文が生じるのが分かってから買い占めて値段を吊り上げるのです。そこにSEC(アメリカの証券取引委員会)が絡んでいるというのだから、世も末だ。。

    ・BATSでリストに載せた株が常に100%売買できたのは、彼らの注文を最初に受けるのがそこだったからだ。RBCの売買の情報が他の市場に行き渡る時間はなかった。「『なんてこった、BATSがいちばん近いからだったのか』とそんな感じでした。あのでかいトンネルを抜けたすぐ先ですからね」。
    BATSの中では超高速取引業者たちが、ほかの取引所で使える情報が入ってくるのを待っている。彼らはまずBATSで公開株すべてに対してそれぞれごく小さな―たいていは百株の―ビッドとオファー(買いと売り)を出し、情報を手に入れる。そしてX社の株の売り手と買い手を洗い出したあとで、別の取引所を目指すレースを開始し、売買を順番に行っていく。
    …あるブローカー(あなたが仲介料を払う相手)に、XYZ社の株を1株25ドルで10万株買うことを依頼する。市場には折よく25ドルで10万株分が、1万株ずつ10の異なる取引所で売りに出されていた。それらの取引所はどこも、あなたの代理であるブローカーに対し、手数料を要求する。しかしほかに100株分が同じく25ドルで、BATSに売りに出されていた。違うのはBATSがブローカーに報奨金を支払うということだ。この場合、シークエンシャル・コストエフェクティブ・ルーター(効率を自動判断するルーター)は、まずBATSへ行ってその100株を買う。するとこの動きがきっかけとなり、先の10万株は超高速トレーダーの手中に消えてしまう。超高速トレーダーは、すぐさま売りに転じて、XYZ社の株をさっきよりも高値でオファーしてもいいし、ほんの2、3秒だけ手元にとどもて、さらに値をつり上げてもいい。

    ・やがていわゆるフラッシュ・クラッシュが起こった。2010年5月6日、2:45、これといった理由もなく、市場は10分足らずで600ポイントも下げた。その後、数分間で、前より高い水準まで反発した。まるで酔っ払いが金魚鉢につまずいてペットの金魚を殺してしまったのを、必死で隠そうとしたかのようだ。目をこらして見ていなければ、気づかなかったほどの、あっという間の出来事だった。もちろん特定の銘柄を売買していた人は別だ。たとえばプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は、その間に最低1ペニー、最高10万ドルで取引された。ほんの一瞬前より60%も下げた株価で、2万回も取引された銘柄もあった。その5ヶ月後、証券取引委員会(SEC)は報告書を発表し、この大参事の原因は、カンザスシティーの名もない投資信託会社が、先物取引での大口の売り注文を、シカゴの取引所に誤って出したことだと糾弾した。
    …ニューヨーク証券取引所のCEO、ダンカン・ニードラウアーが投資家へのあいさつまわりを始めると、一流投資家のほとんどがそれに反応したのを、ブラッドは見逃さなかった。ニードラウアーの目的は、ニューヨーク証券取引所がフラッシュ・クラッシュと無関係だとする理由を説明することのようだった。「何かあった。そう思ったのはこのときだ」。そう語るのは、株式市場での投資を専門とするヘッジ・ファンド、シーウルフ・キャピタルのダニー・モーゼスだ。モーゼスはブラッドとローナンの話を聴いたことがあった。「ニードラウアーが言おうとしていたのは『われわれを信用してください。あれはうちの責任じゃなかったんですから』ということだ。ちょっと待て、こっちはあんたらなんて思ってなかったよ。そんな心配をしなくちゃならなかったのか?まるで子どもが家へ帰ってきて、こう言うみたいじゃないか。『パパ、車をへこませたの、ぼくじゃないよ』。待った、車はへこんでたのか?」

    ・2007年以降、200人以上のSEC職員が官職を去り、超高速取引業者、あるいは超高速取引業者のエージェントとしてワシントンへのロビー活動を行う企業へ移っていることがわかった。そのうちの何割かは、超高速取引をどう規制するか、あるいはそもそも規制すべきかを決定する際に、中心的な役割を果たした者たちだ。たとえばSECのトレーディング・アンド・マーケット部の副部長、エリザベス・キングは、2010年6月にSECを去ってゲッコーに移った。SECまでもが、公共の証券取引所と同じように、超高速トレーダーの将来の利益という株を買っていたのだ。

    ・2011年秋、シュウォールはビジネス用SNS、リンクトインを自在に使いこなし、超高速取引の内部や周辺にいる人間の情報を集めていた。シュウォールは超高速取引の顔を、もっと言うなら二つの顔を明らかにした。「おれはこのゲームに参加しているやつの目星がつくようになっていた」とシュウォールは言う。「それで人脈をつかむために、そいつらとつながりを作ったんだ。その中で何が起こってるか、しっかり把握してる連中が、たぶん25人くらいいた。おれはそいつらを5番ピン(キングピン)って呼んでいた」。
    食物連鎖の頂点にいるのは40代の白人男たちで、その経歴は、多少の差はあれ、初期の電子証券取引所にまでさかのぼれる。時期としては、1987年の株価大暴落直後に規制が導入されたころだ。

    ・注文形式を検討するうちに、二人は株式市場における捕食行動をどう分類すればいいかもわかってきた。大まかに言って、おぞましいほど不公平で、膨大な量の取引につながる活動は、三つに分けられるようだった。一つ目は“電子フロントランニング”。投資家がある場所で行動を起こそうとしたら、その投資家と次の場所まで競争するのだ(ブラッドがRBCで取引しているときに起きたことだ)。二つ目は“報奨金さや取り”。複雑になった制度を利用して、取引所が払う報奨金を抜け目なく獲得する。報奨金は市場に流動性を呼び込むように設けられたはずだが、実際にそれを市場に提供することもしない。三つ目はおそらく最も広く行われている手口で“スローマーケットさや取り”である。これが発生するのは、ある株価が変動するところを見て、取引所が反応するより前に、超高速トレーダーがすかさずほかの市場に出ているその株式を取得することができた場合だ。たとえばP&Gの気配値が80ドル―80.01ドルで、すべての市場で売り手と買い手が取引の売買両サイドに存在したとする。大口の売り手がNYSEに現れて、気配値は79.98ドル―79.99ドルに下がる。超高速トレーダーはNYSEで79.99ドルで買い、相場が公式に変動する前に、その他すべての取引所で80ドルで売る。これが毎日、一日中行われ、ほかの戦略で生み出される総額よりも、さらに年間何十億ドルも多く生み出されるようになった。

    ・「みんな、複雑っていうのは“ややこしい”の進んだ状態だと思ってる。だがそうじゃない。車のキーは単純。車はややこしい。路上に出た車は複雑だ」

  • 高速取引行為、高頻度取引行為、HFT業者、普段の生活の中では見えてこない、市場が電子化されたこと等により生まれた、スピード勝負の取引ビジネス。彼らの中で勝負しているだけならよいが、それにより他の投資家が不当な損失を被っている、金融市場の安定性が脅かされている、となると見過ごすわけにはいかない。
    このような新たな取引者の実態と、それに対抗しようとした人達の戦い、大手金融機関や政府関係者の動きなど、10年ほどたった今でも、どこかで戦いが行われているだろうと思える、大変参考になる一冊。

  • 10億分の1秒単位で取引を繰り返す超高速取引業者が、証券取引所や機関投資家と投資家の間に入ってサヤを抜き、ボロ儲けしている事実を暴いた本。

    恐ろしいのは、この行為が法律に違反しておらず、また、証券取引所も超高速取引業者に便宜を図ることで多大な利益を得ていたこと。

    損をするのは個人投資家や個人が預けた年金基金のみ。

    これは昔の話ではなく、今の日本にも超高速取引業者は進出しており、東京証券取引所は彼らに便宜を図ることで、年間20億円もの利益を上げている。

  • 図書館で邦訳を借りて呼んだがおもしろかった。
    そもそも我々が通信をするときには100分の1秒単位の速度の違いは誤差だが、本書ではナノ秒(10億分の1秒)単位で通信速度を求める人々が描かれる。
    高速取引事業者と呼ばれる彼らはそのスピードを武器に、株式市場の売り注文と買い注文を先回りすることで利益を出す。
    これを可能にするのはアメリカに複数ある株式取引市場と投資銀行が抱えるプライベートな取引所「ダークプール」という複雑な構図である。
    本書の後半では、高速取引を打ち破るためにIEXという「あえて遅延を発生させるダークプール」を立ち上げる主人公たちの物語である。
    何でもないコードを持ち出した従業員を企業秘密の漏洩として訴えたゴールドマン・サックスが、
    自らは高速取引の勝者とはなれないという打算のもとに、IEXでの取引量を増やすところで本書はおわる。
    本書には描かれないが今でもIEXとその創業者ブラッド・カツヤマ氏は現役で、IEXは2016年に米証券取引委員会が認める証券取引所に出世したそうだ。

  • 自分に金融の知識がなかったのでとても難しかった。けれど、NISAにちょっと興味があるので、金融について色々知りたい気もする。そしてまたこの本を読んでみたい。

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