伶也と

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163901619

作品紹介・あらすじ

同僚に誘われて初めてライブに参加したその日、瀧羽直子はロックバンド「ゴライアス」のボーカル、伶也と出会った。それからは、伶也が彼女の全てになった。持てるお金、時間のすべてを注ぎ込み、スターダムにのし上がっていく伶也を見守り続ける直子。失われていく若さ、変わっていく家族や友人たち……。四十年後、彼女に残ったものは一体なんだったのか?「別册文藝春秋」連載時より異例の人気を誇った傑作長編。

感想・レビュー・書評

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  • マンションの1室、死後2ヶ月が過ぎたと思われる男女の遺体が発見される。

    直子は30歳を過ぎて初めて本当の恋を知る。
    大学院から大手企業に就職し、真面目にコツコツと働いてきた。恋人と呼べる相手もいたけれど、それも1年を過ぎた頃からはもうただなんとなくで6年が過ぎ別れた。
    転職先は大手ではないけれど、和気藹々と直子を迎えてくれた。ある日、同僚から誘われた初めてのライブで、バンドボーカルである伶也に一瞬にして心を奪われてしまう。

    怒涛の推し活物語。
    伶也のために生きる。伶也に全て捧げる。
    いつか伶也の目に止まる日が…。
    いつか伶也と付き合える日が…。
    「は?ないない!なに夢見ちゃってんの?」
    そんな軽口は叩けない!
    芸能人に嵌まったことのある人ならば、身に覚えがないなんて言わせない。
    ただ、その気持ちが1ヶ月で色褪せてしまうのか、3年5年と続くのか…ただそれだけ。

    直子の推し活に終始していたのなら、これほど引き込まれることはなかったと思うのだけど、直子の周りにちゃんと生活がある。
    両親は歳をとっていくし、推しを辞める友人、結婚してゆく友人、亡くなる同僚に伶也のスキャンダル…と、やけにリアリティーがある。

    スターダムにのし上がってゆく伶也を、自信をなくし幼子のようになってしまう伶也を、結婚してしまう伶也を、スキャンダルに追われる伶也を、一線から退きボロボロになってゆく伶也を、すべての「伶也と」共に生きた人生。

    馬鹿だなぁと思う人もいるだろう。
    だけど、本当に好きになった人のために捧げた人生を生きた直子は幸せだったと思う。愛のカタチは人それぞれで、それをとやかく言うことは誰にだってできない。
    一生尽くします!言うのは簡単。だけど、貫くって簡単じゃない。いやできない。それをやってのけた直子はすげぇ!

    今年の13冊目
    2022.2.21

  • 瀧羽直子31歳。
    大手電機メーカーのプログラマブルコントローラの
    設計開発担当する理系女子。
    体調不良となり、全く違う業種に転職。
    今迄と全く違うタイプの同僚達…。楽しかった。
    新しい職場で親しくなった由佳に誘われて行った
    インディーズバンド『ゴライアス』のライブ
    それまで芸能人など殆ど知らなかった直子。
    初めてのライブでボーカル伶也に夢中になった…。


    『ゴライアス』のボーカル・伶也と出会ってからの直子は、
    伶也が全てになった。
    持てるお金や時間の全てを注ぎ込み
    見守り続け支え続けて来た。
    出会ってからの40年余り…。
    失っていく若さや変わっていく友達たち
    伶也の周りも様々に変化する。
    アイドルとして光輝く伶也
    人気モデルとの結婚…離婚。
    覚醒剤で逮捕…バンドの解散。
    霊能力者への洗脳…。
    テレビで時々目にする芸能界で起こる様々な事が、
    伶也にも起こって、浮き沈みする。
    どんな境遇になっても、直子だけは伶也を支え続ける。
    近くに居ても、決して手の届かない触れる事の出来ない伶也
    見返りを求めない究極の無償の愛…。
    人って、これ程まで愛を貫く事が出来るんだね。

    芸能人にそれ程迄、夢中になった事のないからか…。
    人生を台無しにしただけの伶也
    どうして、そこまで好きでいられるのか理解出来ない…。
    感情移入が出来なかった。

    でも、直子の人生は直子にとって最高に幸せな人生だったんだろうな。

  • 一気読みしました。思ってた感じと違った。
    わたし自身もアイドルの軽い追っかけみたいなものをやってたのでのめり込む気持ちはわかるけれど、そこまで献身的に支えられる気持ちがわからないなあ。けれど直子にとって最後はとても幸せな人生だったんだろうな、と。

  • こういう人生も素晴らしい。悔いなく責めなく、性根が座っていて見事

  • バンドの追っかけの女性とバンドマンを描いた作品。自分自身もバンドの追っかけをしている時期(現在は休止中)があったので、他人事には思えず…。直子のように繋がりやガチ恋といったものには一切、興味はないのだがステージ上で輝くバンドマンにときめくというのはとても共感ができる。帯に書かれているとおり、最初の1ページで結末がわかってしまう作品なのだが、どうしてこうなってしまったのかというのが気になってページをめくる手が止まらないくらい素敵な作品だった。

  • 最後にこんな満ち足りた死を迎えられたら、いいな。・゜・(ノД`)・゜・。

  • 二人の結末から展開していくので、哀しい最後が分かるゆえに切なさを募らせながら読んだ。周りからなんと思われようとも、理解されなくても直子は幸せだったんだろうと思う。人の価値観を押し付けられるのべきものではない。自分の人生に色を付けてくれた人と最期は一緒にいられた。浅はかな人生と思われるかもしれないけど、直子の最期は穏やかだったと思う。

  • 最初淡々と読んでいましたが途中から夢中になり一気読みでした。

    主人公の瀧羽直子は大学院まで出た理系女子です。
    それまで芸能人の事など殆ど知らずに生きて来ましたが転職先で知り合った由香に誘われて
    「ゴライアス」と言うロックバンドのライブへ行き、そこでたちまちボーカルの伶也に夢中になってしまいます。

    転職先での同僚たちも現実に実在しそうな面々でその会話もリアリティーがあって物語を盛り上げています。
    「ゴライアス」の他の3人のメンバー、マネージャーのReiko、その他の登場人物の描写も丁寧で違和感なくストーリーが進みます。

    伶也の栄光や転落など良く芸能界で耳にする出来事ではありますが
    主人公、直子の献身的かつ盲目的な愛情は凄い物がありました。
    そこにはもう伶也と言う男性を愛する1人の女を超越して母性すら感じました。

    エンディングは冒頭に書かれているので二人の結末を知っていたに関わらず
    最後のページが近づくに連れて感極まる感情が込み上げました。

    浮き沈みの多い伶也の人生だったけれど、これほどまでに1人の女性に想われたのは幸福だったでしょうし
    これほどまでに人を愛せた直子に羨ましさも感じます。
    ページ数はさほど多くはありませんでしたが二人の濃い人生が詰まっていて読み応え十分でした。

  • 切ない!最後まで読んで、めちゃくちゃ切ない気持ちになった。

    あるバンドのボーカルに恋した女が、そのボーカルとお近づき(?)になって、年を重ねていく話…なんだけど。

    それで本人が幸せならいいけれど、なんか悲しくもあり羨ましくもありで複雑な気持ちになった。70歳過ぎても、相手の色んな一面を見てきたとしても、ずーーーっとファンであり好きな人であり続けるのって単純にすごい。


    文章構成が、各章はじめの方に世間の目線や客観的な視点が入って、主人公目線に戻るのが面白かった。読みやすかった。

  • 推し活の最終形。
    本人がしあわせだと思ってるなら、他人が口を挟むことはない。

    自分の子どもがこうなったら、挟んじゃうと思うけどさ。

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著者プロフィール

1970年神奈川県生まれ。2002年、第42回講談社児童文学新人賞を受賞した『十二歳』でデビュー。07年『しずかな日々』で第45回野間児童文芸賞、08年第23回坪田譲治文学賞、17年『明日の食卓』で第3回神奈川県本大賞、20年『昔はおれと同い年だった田中さんとの友情』で第69回小学館児童出版文化賞を受賞。『明日の食卓』は21年映画化。その他の著書に『消えてなくなっても』『純喫茶パオーン』『ぼくたちの答え』『さしすせその女たち』などがある。

「2021年 『つながりの蔵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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