ブルース

著者 :
  • 文藝春秋
3.58
  • (21)
  • (57)
  • (50)
  • (14)
  • (1)
本棚登録 : 295
レビュー : 56
  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163901794

作品紹介・あらすじ

外道を生きる孤独な男か、それとも女たちの「夢の男」か――釧路ノワールの傑作、誕生。没落した社長夫人が新聞の社告の欄に見た訃報、それはかつて焦がれた六本指の少年のものだった。深い霧たちこめる北の街の「崖の下」で生まれた男が、自らの過剰を切り落とし、釧路の夜の支配者へのしあがる。男の名は影山博人。苛烈な少年時代を経て成熟していった、謎めく「彼」をめぐる八人の女たちの物語。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • うーん、どうだろう。
    面白ことは面白いんだけど内容が薄っぺらいかな。
    レビューでも桜木紫乃の新境地と書かれていたりするけれど、主人公が男性になっただけでこれと言って目新しいこともない。
    桜木さんお得意の連作短編集で安易に話をつなげたポルノ小説まがいのような・・・。
    まあ、帯にも写真入りの壇蜜が載っていると言う時点で予想はつくので仕方ないか。

    両手両足に六本指を持つ謎の男、影山博人。
    8編の短編それぞれでは彼を取り巻く女たちの姿が時系列で描かれる。
    彼女たちの目線を通じて博人がどんな生い立ちだったのか、どのようにして釧路の街を牛耳るフィクサーに成り上がって行ったのかつまびらかにされていく。

    桜木さんの連作小説はいつも巧いなと感心するけれど、今回はなんとも中途半端。
    博人の内面が描かれていないせいかなぜ女性達がここまでこの男に惹かれてしまうのか理解できず。
    要するに見た目が良くてセックスが上手いってことなんだろうけど。

    そう考えるとこの小説は大人の女性の願望がつまったファンタジーなのかもしれない。
    それが前提で読めば良かったんだ。
    「ラブレス」のように人の生きざまを壮大に描く作品を期待するからがっかりしてしまうのだろう。
    次作に期待。

  •  前からこの作家に興味を持っていながら、直木賞受賞作すら読んでいない状況で、先にこれはと思う本が出てしまった。連作短編という形を取りながら全体が長篇小説としても読めるこの本、なんとキャッチコピーが<釧路ノワール>。

     釧路を舞台にした小説と言えば、高城高。彼の時代を超越した短編小説群は秀逸で、ぼくはとても好みである。何よりも、感情移入を見せない距離を置いた淡々とした文体に、日本ハードボイルドの始祖の一人と言われる意味を感じ取ることができる。

     さて本書の桜木紫乃も、その意味ではただものではなかった。8作の短編で、8人の女性を通して、一人の男を語らせる一冊となっているのだが、この男の生涯が凄まじい。一作一作の短編に凄みがある。異なる種類の凶器が並べられた危険な陳列台のようだ。それらを通して表現された男が、どのような修羅の人生を送ってきたのであるか、はっきりと表現することはせず、その断面断面だけを、切り口のように見せてゆく。

     男の生い立ちも(おそらくその親の生い立ちも)、小説の中で徐々に露わにされてゆく修羅の道だったのだが、釧路の底の底のような生活から脱け出し、いくつもの怪しげな職業を経て、裏社会の一大人物にのし上がってゆくという、おとぎ話のような成功物語も、陰影の濃いこれら短編作品群の連なりを通して見てゆくと、男の内側の闇の深さばかりが反映されているようにしか見えない。

     こういう不思議なモノトーンのノワールを書き切れる作者の筆力と、敢えて言えば、妄想力とに脱帽させられる。この方向性でさらなる凄みを追及してほしいと思うのは、きっとぼくだけではないだろう。

     ちなみに釧路や札幌の地理を知っていると、楽しみが倍々になると思う。それほど、釧路を知る作家の良さは、この遠き街の独特の匂い、音、港から湧き出す霧、寒さといったものすべてを小説に自然に写し込んでいるので、実は釧路という街がハードボイルドやノワールによく似合う、という新たな発見をかしこに見つけることができるのである。

  • 大好きな桜木さんの作品だが、今回は切ない感じだった。幼少期からいろんな辛いことも乗り越えて生きてきた博人に、もっと違う生き方をしてほしかった。

  • 「星々たち」に続いてまた桜木ワールドへ。
    主人公は美貌の男性ですが、登場する女性のテイストはやはりみんな似ていると感じてしまうのは私だけか。
    しかし桜木さんが影山を楽しんで書かれているのが伝わります。

    映画化は難しいんでしょうけど何だか映画で観てみたいようなストーリーです。女は指がきれいな男に惹かれる…流石だな~と思いますね。ただ単に指がきれいなんてものじゃなくその指の物語が男の人生について回る…それぞれの章の街の空気感も登場人物たちの背景から滲み出てくるような文章です。
    読み進めていくと、釧路のしっとりとした濃い霧に包まれているような気持ちになってきます。

    女としては影山のような男に出会ってみたいですねぇ。
    一生で会うことはなさそうな人種なだけに。

  • 女たちの口から語られる影山のすがたは陽炎のように曖昧なのに、様々な時代のどの影山も確かな存在感があり、強烈な魅力を放っている。
    哀しみと引き換えに女の欲望を叶えてきた影山の失われた6本目の指は、もしかしたら私のなかにあるんじゃないかと錯覚しそうになるほどの生々しさ。かなしく、切なく、とても美しい物語。

  • 楽しく読めました。博人ワールドです。読んででムラムラ…

  • ドラマティックの一言。最初のうち、うわー(いつもながら)濃い、いやそれにしても濃すぎるかも...と思っていたものの、どんどん博人に惹き付けられていく。読む側の悲しみも、情も深くなる。その愉悦。強い昭和の匂いと、登場人物たちの想像を上回る生い立ちとが混在して生み出される、いつもの桜木さんの世界。8編の中で特に、幼馴染の女性・圭との邂逅を描いた"ブルース"、博人の妻となるまち子と、その娘である莉菜が軸となる"カメレオン"、"いきどまりのMoon"が良かった。本作は桜木さんの他の作品に比べてエンターテイメント寄りかな。

  • 影山という男の生き様を、色んな女の視点から見る。
    また道東の訳ありの生い立ちの話か…、と特に期待はしてなかったけど、私は今までの桜木紫乃の本の中では面白かった。一気読み。
    2015年1月7日

  • 映画化できそうなお話。以前読んだ(映画にもなった)「つやのよる」とテイストが似ている、男版。
    それぞれの女たちとのエピソードを影山目線での語りで、もう一つのストーリーにしてもらいたいな。

  • 「恋人形」を読み、すっかり影山博人に取り込まれてしまった。
    短編集とのことだったので、この男の人生の続きが読めないことにすこしがっかりしつつも次の「楽園」を読んだら、成長した影山博人が登場して嬉しくなり、また夢中で最後まで読み進めました。
    「鍵」までの博人は礼儀正しく他人行儀で表情の変化も無かったのに、「ブルース」以降で艶っぽい悪い男で描かれていて、そのギャップも素晴らしく魅力的だった。
    実生活では決して出会えそうもないこの男、果たしてどんな顔をしているのだろうと想像したけれど、全く思い浮かびそうにもなかった。

    そんな想像をするのも楽しく、登場する北海道の哀愁ある風景も味があり、荒涼とした土地の匂いが伝わってくるようだった。
    装丁も美しく、眠れない夜に何度でもこっそりと読みたくなるような一冊です。

全56件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1965年北海道生まれ。2002年「雪虫」で第82回オール讀物新人賞を受賞。07年、同作を収録した『氷平線』で単行本デビュー。13年、『ラブレス』で第19回島清恋愛文学賞、『ホテルローヤル』で第149回直木三十五賞を受賞。『氷の轍』『裸の華』『霧(ウラル)』『それを愛とは呼ばず』『起終点駅(ターミナル)』『ブルース』『星々たち』『蛇行する月』『ワン・モア』『誰もいない夜に咲く』等、著書多数。

「2017年 『砂上』 で使われていた紹介文から引用しています。」

桜木紫乃の作品

ブルースを本棚に登録しているひと

ツイートする