ペテン師と天才 佐村河内事件の全貌

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (321ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163901848

作品紹介・あらすじ

稀代のペテン師・佐村河内守の虚飾の真相!18年間、ゴーストライターを務めた新垣隆の懺悔告白によって暴かれた、何重にも嘘に塗り固められた佐村河内守の虚飾の姿。二人の共犯関係はなぜ成立し、誰もが騙され続けたのか―ー。テレビ、新聞、出版、音楽業界……。あらゆるメディアを巻き込んで繰り広げられた壮大なペテンの真相に迫った渾身のノンフィクション。週刊文春が告発した佐村河内守のゴーストライター事件の全貌。第45回大宅壮一ノンフィクション賞(雑誌部門)受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 2020.02.17

    「音楽という真実」は、当事者…新垣さんの目線、主観だが
    世間は、報道は、外側から見た彼らは
    というところから次元を読み取る。
    綻びが出てフェイクが現れ告発から発表されるまでのスピード感たるや。
    この本が全部をわかりやすく整えているので新垣さんの本はこの本の後に読むべきだっただろうか。真実が罪なら全貌は罰だ
    反省する者に救いを与え、なお騙し続け反省もせぬものにはとことん追い回す
    真面目な方々の尽力のある件だったが、やはり週刊誌というかマスコミの方はいささかやり過ぎではないだろうか
    読み物としてはこちらも面白かった

  • ゴーストライター騒動後の佐村河内氏を追ったドキュメンタリー映画『FAKE』を観た後にこの本を読んだ。この本が先か、映画が先か、いずれの順番になるにせよ『FAKE』を観るのであれば、この本を読むとより一層楽しめること間違いない。特に、映画を観る上で知っておくべきことは、当然のことながら少なくとも監督の森達也はこの本を間違いなく読んでいるということだ。この内容を知った上で、あの映画を撮り、あの編集を行っているのだ。
    つまり、佐村河内氏が「ペテン師」とまで言うかはおくとしても、少なくともある種の虚言症の気があることは理解し、警戒をした上でこの撮影を始めているということだ。

    この辺りについては、次のサイトでの分析がおもしろい。おもしろいので、ここではその内容はあまり触れない。リンク先の解説を楽しんでもらいたい。
    「佐村河内守のウソの付き方が“まだら”なのがおもしろい 森達也監督『FAKE』をもっと楽しむ方法」
    http://bylines.news.yahoo.co.jp/iidaichishi/20160615-00058863/

    ただ、「森達也は古賀淳也(※注:佐村河内を扱ったNHKスペシャルのプロデューサ)を反復している。そういう見立てで観たほうが、『FAKE』は絶対におもしろい。天地神明に誓って」という最後の部分は首肯しかねる。映画のラストシーン(ぜひ映画を観てほしい)とタイトルがそのことを示している。映画の終わり近くになって、森監督は佐村河内氏とその妻である香さんに対して自分のことを信頼しているかと尋ねる。佐村河内氏はもちろん信頼していると言い、香さんも「同じ船に乗っている」として信頼感を示す。そこには今の段階でその質問が来るのかという若干の戸惑いが感じられる。そしてこの質問はラストシーンに向けての質問の布石にもなっているのだ(ぜひ映画を観てほしい(※)) 。

    そのことは森監督自身が映画公開後に受けたインタビューからも明確にわかる。
    「森監督:信頼関係という言葉は安易に使いたくありません。信頼関係がなくても作品は成立しますし、人間関係において100%の信頼なんて存在しないと思います。向こうが僕のことをどう思っていたかも分かりません。佐村河内さん本人に対しては、撮影を開始する時に、「僕はあなたの名誉を回復する気はありません。僕は映画のためにあなたを利用します」と伝えてありました。」
    http://getnews.jp/archives/1466205

    もうひとつ『FAKE』を別の視点でおもしろくしているのは本書の著者である神山典士氏のリアクションだ。

    「「残酷なるかな、森達也」- 神山典士」
    http://blogos.com/article/178313/
    「佐村河内氏映画の森監督vs神山氏、場外舌戦ゴング」
    http://www.nikkansports.com/entertainment/news/1666276.html

    ここでの神山氏の反応は端的に言って的外れだ。神山氏は森監督には真相や真実を問う姿勢がなく、その作品はジャーナリズムではないと批判する。その批判がいかに的外れかは、森氏の過去の作品や発言を知っていれば明らかだ。森監督の目的は、正義の名の元に世の中においてたたいてもよいとされたものに対して安全地帯からためらうことなく迷うこともなく判断することもなく横並びに報道の名の元にこき下ろすことがいかに暴力的であるかを示すことである。そして、それはジャーナリズムではなく、ドキュメンタリにおいて可能になるような批評だ。
    神山氏の批判がいかに的外れであるのかは、森氏の視点からではあり、フェアではないかもしれないが、次のインタビューに表れている。

    「さらにテレビドキュメンタリーの場合は、新垣(隆)さんや神山(典士)さん(週刊文春で最初にゴーストライター疑惑を報じたノンフィクション作家)にインタビューする場面が必要になるでしょうね。中立を装わなくてはならないから。映画では彼らに出演を断られましたが、今作は佐村河内さんのドキュメンタリーであってジャーナリズムではないので、僕は必要ないと思いました。まあもっと直截に言えば、興味がないから撮りません。」
    http://getnews.jp/archives/1466205

    神山氏は先のブログでの批評にて次のように締める。
    「残酷なるかな「森達也」。とはいえ最も残酷さを被るのは、このエンタメ記録映画を見せられてしまう観客でこそあるのだけれど。」
    残酷さを被るのは神山氏かもしれない。さらに最もその残酷さを被っているのは佐村河内氏とその妻香であるように思う。その意味で、神山氏が「佐村河内氏が哀れにもなる」と語り、残酷だと言うことはとても正しい。


    すっかり映画『FAKE』の話になってしまったけれど、本書は佐村河内氏の虚構を暴いたノンフィクションとしておもしろい本だと思う。また、その虚構を暴いた取材についても賞賛されるべきだと思う。後に続いたマスコミよりもよほど。そして、だからこそ、この本を読むことで『FAKE』がより一層おもしろくなる。『FAKE』と一緒に、強くおすすめ。


    ----
    (※)ラストシーンについて、どうしても映画を観ることができないけれども知りたい人は、次のサイトを参考に。
    「映画『FAKE』のラストショットについて」
    http://swingbooks.jp/2016/06/20/fake01/

  • 徹夜して本を一気に読むなんて久しぶりだ。この本はポルノです。日本的なものの恥部を一堂に会させたごった煮のポルノ本と言えると思う。主役は、佐村河内守、新垣隆、メディア、メディアを通じて美しい話に酔った一般人。。

    昔、吉里吉里人を読んだ時に、日本のタブーに対する切込み、風刺がすごいなと思ったが、この本はそれが実話として、何も隠すことなく剥き出しで綴られている。なんというか偽善がメルトダウンを起こしている。

    物語は佐村河内の虚構が織り成す不思議な人の縁を中心に生々しく続く。しかも、彼自身の嘘(耳が聞こえない)により、ほぼすべてのやり取りがメールで残っているという奇跡的な記録性の高さ。どれを以ってしてもこれを超える話はそう出てこないだろう。劇性があり過ぎる。

    作者も書いているように、これは有名になる為には何でもよいと考える非常識な男と、才能溢れる音楽バカとの奇跡のコラボレーションの話であるとも解釈できる。そうすると、二人は日本の音楽業界、あるいは美しい話に酔いたいメディアや一般人に何を残し、これから何を作っていくのだろう? まだまだ続きがあるような気がしてならないが、とりあえずは、ここまでのところでも十分なので映画化したほうがよいと思う。そんな衝撃の本だった。

  • 『みっくん』を以前から知っていて、絵本も書き、真っ先に事件を知り新垣氏に告白を勧めた著者。著者にすればもっと早くに相当の物を書きあげることはできただろう。しかし、敢えて時間を掛け、徹底した後追い取材でより深化した内容になった。
    忘れてはならないのはこれは一件のペテン師とゴーストライターの話しではない。
    著者が最も述べたかったのは、『現代のベートーベン』を無責任に報道して来て真実がばれると手のひらを返して、素知らぬ顔で非難する方に回る、そんなメディアに対しての痛烈な批判だ。
    報道に係わる者こそ、『テキストとして』率先して読むべきだ!

  • 人間とは何か考えさせられます。
    面白くて一気読みしました。

  • 新垣も同罪。最悪のタイミングで暴露して自身の贖罪の様に振舞う様は最悪の状況だね。

  • 2014年。 作者はジャーナリストの神山典士(かみやま のりお)。

    佐村河内守が起こしたゴーストライター騒動についての、ノンフィクション。

    佐村河内守についてのドキュメンタリー、『FAKE』(2016年 / 森達也監督)を観たけど全然楽しめなかったので、読んでみました。

    佐村河内守の嘘をつきまくる人生がすごくて、麻原彰晃を思い出しました。 強引ながら行動力もあって、それがまた面白いです。

    新垣隆の生い立ちや経歴も面白くて、小学生の時から天才と言われていた物静かな男。 佐村河内からの依頼で曲を作り、それが演奏されたり評価されたりすることで結構充実してたのも面白かった。 ある意味いいコンビです。

    佐村河内がもっと賢かったり、まともなマネージャーが入れば今でも活躍していたかもしれないです。 それだけ彼が作り出した、聾唖で被爆二世の作曲家というキャラクターは需要があったし、メディアも取り上げやすかったという事でしょう。

    書いてある事実はすごく面白いのだが、著者に人間的深みが感じられなくて、しょうもない意見が散見されるのがとても残念です。

    これを読むと森達也監督が佐村河内の事を全然信用してなくて、それを踏まえて撮影していた事がよくわかります。 あの作品の中で、佐村河内が作曲したシーンが撮影されておらず、演奏シーンだけあるのだが、「あの時期は理由は忘れたけど腹を立てていて、しばらく佐村河内の家にいってなかった」というのも嘘だと思う。 

    映画を観る前に読むと、10倍くらい楽しめると思います。 新垣隆の書いた本も読んでみようと思います。

  • 偶然の出会い
    たまたま一致した動機
    真実が暴露された後の2人の態度
    その後の2人の状況を見ると
    中身がある人は強い

  • 2015/8/1だんだん化けの皮が剥がされていくところは良かったが、遅すぎたね。勧善懲悪、悪いことをする人間は懲らしめられなくてはならない。NHKをはじめマスコミも問題あり。★3

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著者プロフィール

1960年埼玉県入間市生まれ。信州大学人文学部卒業。96年『ライオンの夢、コンデ・コマ=前田光世伝』にて第三回小学館ノンフィクション賞優秀賞受賞。2012年度『ピアノはともだち、奇跡のピアニスト辻井伸行の秘密』が青少年読書感想文全国コンクール課題図書選定。14年「佐村河内守事件」報道により、第45回大宅壮一ノンフィクション賞(雑誌部門)受賞。「異文化」「表現者」「アウトロー」をテーマに、様々なジャンルの主人公を追い続けている。

「2017年 『成功する里山ビジネス ダウンシフトという選択 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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